ナガイレーベン Research Memo(4):15/8期は微減収減益、期ずれが発生するが中長期的には平準化される
[15/10/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
(1) 2015年8月期の業績概要
●損益状況
ナガイレーベン<7447>の2015年8月期の連結業績は、売上高が前期比0.4%減の16,150百万円、営業利益が同2.2%減の4,813百万円、経常利益が同1.0%減の5,088百万円、当期純利益が同0.1%増の3,225百万円となった。売上高及び営業利益は元々微減益予想であったが、結果はこの計画もやや下回ったが、計画とのずれはいずれも少額であり、特に大きく懸念される結果ではなかったと言える。
売上高は前期比で0.4%減となったが、2014年春の診療報酬改訂や2015年春の介護報酬改訂の影響は出ていないことから、市場構造や市場環境が大きく変化していることは考え難く、これが減収の要因ではないようだ。会社も「売上高が計画を下回ったのは、特にこれと言った特定の要因があるわけではないが、あえて減収要因を挙げれば、大病院向けのリース案件の更新が今までとは異なるパターンとなり一部が翌期に後ずれしたことだろう」と述べている。ただしこれらのずれ込みは時間を通しては平準化されるので中長期的に大きく懸念される要因ではないようだ。もう1つの減収要因は、売上高の約30%を占める個人の診療所やクリニック向けなどの小口案件の動向だ。これらの小口向け売上高は消費税増税前の昨年3月までに駆け込み需要により売上高が増加し、その後減少に転じたがその影響が依然として尾を引いたようだ。しかしこの要因も、時間の経過とともに解消するはずであり今後大きく懸念される要因ではない。
売上総利益率は前期の46.7%から46.6%となり、ほぼ前期並みであった。売上総利益額は7,532百万円となり前期比で53百万円減少したが、減収による要因が▲30百万円、利益率低下による要因が▲23百万円であった。利益率へのマイナス要因は、原材料・加工賃の上昇が▲42百万円、売上原価における為替レート(円安)の影響が▲94百万円であった。平均の為替レートは2014年8月期の88.1円/ドルから2015年8月期には93.5円/ドルとなった。長期の先物予約によってスポットレートほど円安にはなっていないが、この先物予約の効果も徐々に薄れつつある。一方で海外生産比率が前期の43.1%から45.6%へ上昇したことで、約100百万円のプラス要因となったが、その他諸々のコスト削減策によって円安によるコストアップを吸収した結果と言える。
販管費は同2.1%増の2,719百万円となったが、主な増加要因は、新本社移転による減価償却費の増加分が35百万円、100周年記念式典関連が25百万円であった。これらは当初から見込まれていたものであり、計画比では1.2%減であった。この結果、営業利益は前期比2.2%減となった。
一方、経常利益は前期比1.0%減となり営業利益よりは減益幅が小さくなったが、これは営業外収益、特に為替差益の増加が主因だ。売上原価での円安の影響をヘッジするために保有しているドル預金から発生した為替差益は前期の87百万円から226百万円へ大幅に増加した。特別損益では、前期に発生した特別利益(本社移転に伴う固定資産売却益114百万円)がなくなったが、固定資産(亀戸研究所)売却益30百万円が発生したことや税率が予想以下であったことなどから、当期純利益は前期比でわずかであるが増益となった。
●アイテム別売上高
アイテム別の売上高は、ヘルスケアウェアが前期比0.1%減の9.429百万円、ドクターウェアが同2.6%減の2,604百万円、ユーティリティウェアが同9.8%減の670百万円、患者ウェアが同7.2%増の1,451百万円、手術ウェアが同2.3%増の1,560百万円、シューズが同10.9%減の211百万円、その他が同7.0%減の222百万円となった。
主力のヘルスウェアは記述のように一部で更新需要の切り替えや売上計上のずれなどがあったことから前期比ではマイナスとなった。ドクターウェアが減収となったのは同様に更新需要のずれ込みに加えて前年同期の伸び率が高かったことも影響しているが、市場トレンドに大きな変化はない。ユーティリティウェアは依然として個人支給から共用品への移行傾向が続いており減収傾向が続いている。金額は小さいものの、患者ウェアは市場の需要増を背景に堅調に推移し、手術ウェアもスクラブウェアとコンペルパックの市場浸透により売上は堅調に推移した。
●地域別売上高
地域別売上高は東日本が前期比1.2%減の8,357百万円、中部日本が同1.7%増の1,774百万円、西日本が同0.0%の5,842百万円、海外が同5.4%増の176百万円となった。
東日本では、患者ウェア等の拡販に努めたが主力のヘルスウェアの更新需要の一部に期ずれが発生したことから前期比では減収となったが、需要が飽和状態にあるとかの根本的な問題ではなく一時的な傾向である。中部日本は市場性が大きくないため物件の多寡による影響が大きいが、販促に注力し前期の大幅増収に続いて増収を達成した。西日本では新規物件の獲得によりヘルスウェアは堅調であったが、ユーティリティウェア等の落ち込みにより前年並みにとどまった。海外はまだまだ売上規模は小さいものの、知名度は浸透しつつあり、順調に増収が続いている。
●商品別売上高
商品別売上高は、DCブランドが前期比9.9%減の846百万円、高機能性商品が同3.8%増の8,090百万円、標準機能性商品が同3.2%減の6,252百万円、量販品が同5.6%減の960百万円となった。DCブランドや標準機能性商品は伸び悩んだが、同社が注力している高機能性商品が増収となったことは好ましい結果であったと言える。
●財務状況
財務状況は引き続き安定している。2015年8月期末の資産合計は39,008百万円となり、前期末に比べ142百万円減少した。流動資産は29,711百万円となり同122百万円増加したが、主な要因は現預金の減少381百万円、棚卸資産の増加364百万円など。固定資産は9,296百万円となり、同264百万円減少したが主に減価償却による。
負債合計は4,213百万円となり、前期末に比べ255百万円減少した。主な要因は、買掛債務の減少118百万円、未払法人税の減少182百万円など。純資産合計は34,795百万円となり、同114百万円増加した。主な要因は、当期純利益の計上による利益剰余金の増加1,471百万円、自己株式の取得による減少1,500百万円など。この結果、自己資本比率は89.2%となり前期末の88.6%から上昇した。
●キャッシュフローの状況
2015年8月期の営業活動によるキャッシュ・フローは2,727百万円の収入であったが、主な収入は税引前当期純利益の計上5,115百万円、減価償却費360百万円、主な支出は棚卸資産の増加364百万円など。投資活動によるキャッシュ・フローは143百万円の収入であったが、主なものは定期預金の増加(ネット)による収入200百万円、有形固定資産の取得による支出204百万円など。財務活動によるキャッシュ・フローは3,211百万円の支出であったが、主なものは配当金の支払いによる支出1,711百万円、自己株式の取得による支出1,500百万円など。この結果、期間中の現金及び現金同等物は179百万円の減少となり、期末の現金及び現金同等物の残高は8,491百万円となった。有利子負債が皆無であることに加え、自己株式を4,902百万円(4,989,504株)保有していることから手元ネット・キャッシュは依然として潤沢である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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(1) 2015年8月期の業績概要
●損益状況
ナガイレーベン<7447>の2015年8月期の連結業績は、売上高が前期比0.4%減の16,150百万円、営業利益が同2.2%減の4,813百万円、経常利益が同1.0%減の5,088百万円、当期純利益が同0.1%増の3,225百万円となった。売上高及び営業利益は元々微減益予想であったが、結果はこの計画もやや下回ったが、計画とのずれはいずれも少額であり、特に大きく懸念される結果ではなかったと言える。
売上高は前期比で0.4%減となったが、2014年春の診療報酬改訂や2015年春の介護報酬改訂の影響は出ていないことから、市場構造や市場環境が大きく変化していることは考え難く、これが減収の要因ではないようだ。会社も「売上高が計画を下回ったのは、特にこれと言った特定の要因があるわけではないが、あえて減収要因を挙げれば、大病院向けのリース案件の更新が今までとは異なるパターンとなり一部が翌期に後ずれしたことだろう」と述べている。ただしこれらのずれ込みは時間を通しては平準化されるので中長期的に大きく懸念される要因ではないようだ。もう1つの減収要因は、売上高の約30%を占める個人の診療所やクリニック向けなどの小口案件の動向だ。これらの小口向け売上高は消費税増税前の昨年3月までに駆け込み需要により売上高が増加し、その後減少に転じたがその影響が依然として尾を引いたようだ。しかしこの要因も、時間の経過とともに解消するはずであり今後大きく懸念される要因ではない。
売上総利益率は前期の46.7%から46.6%となり、ほぼ前期並みであった。売上総利益額は7,532百万円となり前期比で53百万円減少したが、減収による要因が▲30百万円、利益率低下による要因が▲23百万円であった。利益率へのマイナス要因は、原材料・加工賃の上昇が▲42百万円、売上原価における為替レート(円安)の影響が▲94百万円であった。平均の為替レートは2014年8月期の88.1円/ドルから2015年8月期には93.5円/ドルとなった。長期の先物予約によってスポットレートほど円安にはなっていないが、この先物予約の効果も徐々に薄れつつある。一方で海外生産比率が前期の43.1%から45.6%へ上昇したことで、約100百万円のプラス要因となったが、その他諸々のコスト削減策によって円安によるコストアップを吸収した結果と言える。
販管費は同2.1%増の2,719百万円となったが、主な増加要因は、新本社移転による減価償却費の増加分が35百万円、100周年記念式典関連が25百万円であった。これらは当初から見込まれていたものであり、計画比では1.2%減であった。この結果、営業利益は前期比2.2%減となった。
一方、経常利益は前期比1.0%減となり営業利益よりは減益幅が小さくなったが、これは営業外収益、特に為替差益の増加が主因だ。売上原価での円安の影響をヘッジするために保有しているドル預金から発生した為替差益は前期の87百万円から226百万円へ大幅に増加した。特別損益では、前期に発生した特別利益(本社移転に伴う固定資産売却益114百万円)がなくなったが、固定資産(亀戸研究所)売却益30百万円が発生したことや税率が予想以下であったことなどから、当期純利益は前期比でわずかであるが増益となった。
●アイテム別売上高
アイテム別の売上高は、ヘルスケアウェアが前期比0.1%減の9.429百万円、ドクターウェアが同2.6%減の2,604百万円、ユーティリティウェアが同9.8%減の670百万円、患者ウェアが同7.2%増の1,451百万円、手術ウェアが同2.3%増の1,560百万円、シューズが同10.9%減の211百万円、その他が同7.0%減の222百万円となった。
主力のヘルスウェアは記述のように一部で更新需要の切り替えや売上計上のずれなどがあったことから前期比ではマイナスとなった。ドクターウェアが減収となったのは同様に更新需要のずれ込みに加えて前年同期の伸び率が高かったことも影響しているが、市場トレンドに大きな変化はない。ユーティリティウェアは依然として個人支給から共用品への移行傾向が続いており減収傾向が続いている。金額は小さいものの、患者ウェアは市場の需要増を背景に堅調に推移し、手術ウェアもスクラブウェアとコンペルパックの市場浸透により売上は堅調に推移した。
●地域別売上高
地域別売上高は東日本が前期比1.2%減の8,357百万円、中部日本が同1.7%増の1,774百万円、西日本が同0.0%の5,842百万円、海外が同5.4%増の176百万円となった。
東日本では、患者ウェア等の拡販に努めたが主力のヘルスウェアの更新需要の一部に期ずれが発生したことから前期比では減収となったが、需要が飽和状態にあるとかの根本的な問題ではなく一時的な傾向である。中部日本は市場性が大きくないため物件の多寡による影響が大きいが、販促に注力し前期の大幅増収に続いて増収を達成した。西日本では新規物件の獲得によりヘルスウェアは堅調であったが、ユーティリティウェア等の落ち込みにより前年並みにとどまった。海外はまだまだ売上規模は小さいものの、知名度は浸透しつつあり、順調に増収が続いている。
●商品別売上高
商品別売上高は、DCブランドが前期比9.9%減の846百万円、高機能性商品が同3.8%増の8,090百万円、標準機能性商品が同3.2%減の6,252百万円、量販品が同5.6%減の960百万円となった。DCブランドや標準機能性商品は伸び悩んだが、同社が注力している高機能性商品が増収となったことは好ましい結果であったと言える。
●財務状況
財務状況は引き続き安定している。2015年8月期末の資産合計は39,008百万円となり、前期末に比べ142百万円減少した。流動資産は29,711百万円となり同122百万円増加したが、主な要因は現預金の減少381百万円、棚卸資産の増加364百万円など。固定資産は9,296百万円となり、同264百万円減少したが主に減価償却による。
負債合計は4,213百万円となり、前期末に比べ255百万円減少した。主な要因は、買掛債務の減少118百万円、未払法人税の減少182百万円など。純資産合計は34,795百万円となり、同114百万円増加した。主な要因は、当期純利益の計上による利益剰余金の増加1,471百万円、自己株式の取得による減少1,500百万円など。この結果、自己資本比率は89.2%となり前期末の88.6%から上昇した。
●キャッシュフローの状況
2015年8月期の営業活動によるキャッシュ・フローは2,727百万円の収入であったが、主な収入は税引前当期純利益の計上5,115百万円、減価償却費360百万円、主な支出は棚卸資産の増加364百万円など。投資活動によるキャッシュ・フローは143百万円の収入であったが、主なものは定期預金の増加(ネット)による収入200百万円、有形固定資産の取得による支出204百万円など。財務活動によるキャッシュ・フローは3,211百万円の支出であったが、主なものは配当金の支払いによる支出1,711百万円、自己株式の取得による支出1,500百万円など。この結果、期間中の現金及び現金同等物は179百万円の減少となり、期末の現金及び現金同等物の残高は8,491百万円となった。有利子負債が皆無であることに加え、自己株式を4,902百万円(4,989,504株)保有していることから手元ネット・キャッシュは依然として潤沢である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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