ソフトバンテク Research Memo(3):人員を含めたリソースの有効活用で固定費全体の伸びを抑える
[15/12/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■2016年3月期第2四半期連結決算
b)利益分析
営業利益の増加は、利益率の高いストックビジネスの売上高拡大が大きな要因の1つである。限界利益は前年同期比6.7%増の5,445百万円 、EBITDA(減価償却前営業利益)も同5.9%増の1,129百万円となった 。これは、グループ会社を含めた全社の人員の効率的な配置による社内リソースの有効活用と、プロジェクト管理体制の強化、社員のスキルアップへの積極的な取組みによって、利益率の高いビジネスを着実に拡充できたためと考えられる。特にプロジェクト管理体制の強化では、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)という専門組織によるプロジェクト進行状況の適宜確認が徹底された。社員のスキルアップへの取組みでは、プロジェクト管理資格(PMP)の取得推奨により、15年10月でPMP取得者が32人と、前年同月時点に比べ4倍となった。なお、PMPに関しては、16年3月には取得者を50人にまで引き上げる計画となっている。
また、営業利益の増加要因としては、2016年3月期第1四半期(2015年4月−6月期)決算で既に確認されたが、2016年3月期第2四半期(2015年4月−9月期)においても、固定費の伸びが抑制された点も重要である。ソフトバンク・テクノロジー<4726>は人員拡充によって外注比率を落とすと同時にM&Aによって自社サービスを拡大してきた。その結果、重要指標に掲げる限界利益は構造改革が着実に進むにつれて、上昇を続けてきた。しかし、一方で人件費が増加し、場合によっては限界利益の上昇以上に固定費が拡大してしまい、営業利益が伸び悩んでいた。固定費のコントロールは同社の大きな課題の1つであった。
2016年3月期第2四半期(2015年4月−9月期)においても、固定費は前年同期比5.9%増の4,795百万円と引き続き上昇している。主な増加要因は、人件費が前年同期比311百万円増加となったためである。しかし、M&Aや採用によって人員拡充が進むなか、2015年3月期第2四半期(2014年4月−9月期)の固定費の伸び率が47.8%に及んだことに比べると、伸び率が大きく抑制されたことが分かる。
また、限界利益の増加分の353百万円に対し、固定費増加による減益分は266百万円 にとどまっている。人員を含めたリソースの有効活用とコストコントロールによって固定費全体の伸びを抑えることに成功したと言っていいだろう。また、活動経費も前年同期比で28百万円減少している。
なお、参考までに2016年3月期第2四半期末の連結従業員数は、861人と、前年同期末比46人増えている。うち、29人が単体の採用となっている。大型案件の受注が可能な人員規模にまで成長したことが改めて確認できよう。
c)事業別の業績及びトピックス
次に事業別の業績について説明するとともに、トピックスに触れる。
デジタルマーケティング事業
デジタルマーケティング事業の売上高は前年同期比11.7%増の10,457百万円、限界利益は同26.3%増の1,675百万円となった。
ECサービス事業においては、売上高が前年同期比7.7%増の9,278百万円、限界利益が同19.9%増の1,215百万円となった。ECサービス事業の主力であるシマンテックストアの売上高が国内とアジアを合わせて同6.0%増の8,374百万円となった。子会社のフォントワークス(株)のWebフォントサービスも好調で、その他ECサービスとの合計売上高は同25.9%増の903百万円となった。
また、ECサービス事業は利益にも貢献した。シマンテックストアの運営に関しては、過年度より構造改革の進展とともに効率化を進め、人員のスリム化に成功していた。更に、今期、ECシステムのフロントサーバーをクラウド化したことにより効率性がより一層向上した。同事業はベンダー側の米・シマンテック・コーポレーションの意向に強く左右される側面があるものの、コントロール可能な範囲における事業効率化を進め、利益に寄与している点も評価に値すると言えよう。
一方、注力事業であるデータアナリティクス事業の売上高は前年同期比58.6%増の1,178百万円、限界利益は同47.2%増の460百万円と大きく伸びた。既に触れたが、ストックビジネスの売上高が同29.7%増の625百万円と順調な伸びを見せた。さらに、ライセンス販売や個別開発のフロービジネスの売上高が同約2.1倍の553百万円と急拡大した。 急拡大の要因は、Adobeツール、コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)案件の大型化である。フロービジネスは、今後、システムの保守・運用といったストックビジネスへの移行がほぼ確実であることから、同事業の大きな成長に期待が高まると考えられる。
事業のトピックスとしては、自社サービスの拡充が挙げられる。1つは、クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure(以下、Azure)」の利用時に、同社が24時間365日の運用監視やセキュリティ対策を提供するサービスと、データアナリティクス分野のソリューション及び子会社サービスをワンストップで提供できるようになったことだ。Azure上に、子会社のミラクル・リナックスが提供する法人向けLinux OS「Asianux」を構築し、Asianux上にAEMを導入することで、プラットフォームからアプリケーション・分析の領域まで一貫して対応できることが特徴。さらに、AEMとミラクル・リナックスのデジタルサイネージを連携し、Webとデジタルサイネージのコンテンツ管理を統合するソリューションも開始した。
また、11月には、感情を解析する人工知能を開発しているEmotion Intelligence(株)と共同で、世界で初めて感情と行動データをリアルタイムで連携するサービス「Emotion i」を発売した。
プラットフォームソリューション事業
プラットフォームソリューション事業の売上高は前年同期比13.3%減の5,342百万円、限界利益は同3.1%減の1,934百万円となった。
注力事業のセキュリティソリューション事業においては売上高が前年同期比6.5%減の1,536百万円、限界利益が同6.0%減の734百万円となった。ストック売上高は、同4.6%増の1,073百万円と増加したが、フロー売上高は、同25.0%減の462百万円となった。ソフトバンクグループ向けの機器販売やシステム構築減少が要因といえるが、運用保守やサポートは着実に増加しているようだ。
同事業におけるトピックスは、データアナリティクス事業と同様、自社サービスの拡充である。8月にWebサイト向けのクラウド型多機能セキュリティソリューション「サイバートラストWAF Plus」、8月にクラウドアクセス制御サービス「オンラインサービスゲート(以下、OSG)」に「サイバートラスト デバイスID」を標準連携させるサービスを開始した。
一方、プラットフォームソリューション事業の売上高は、前年同期比15.7%減の3,806百万円、限界利益は同1.2%減の1,200百万円となった。既述のとおり、ソフトバンクグループ向けの機器販売が減少したことが要因である。しかし、利益率の高いシステムの保守・運用などのストックビジネスの売上高は同8.2%増の2,055百万円となり、限界利益の減少率は売上高ほどにはならなかった。
システムインテグレーション事業
システムインテグレーション事業の売上高は前年同期比7.7%減の3,840百万円となったが、限界利益は同3.1%増の1,835百万円と増益になった。
注力事業のマイクロソフトソリューション事業の売上高が前年同期比15.7%増の1,380百万円、限界利益が同7.2%増の499百万円となった。Office 365及び自社サービスであるOSGが好調に推移した。第1四半期にはフロービジネスであるライセンス販売と個別のシステム開発が前年同期に大口の新規顧客を獲得した反動減が見られたものの、特にライセンス販売で一気に巻き返した。その結果、フロービジネスの売上高は同6.5%増の1,098百万円となった。さらに、重視する、保守・運用、自社開発サービスであるストックビジネスの売上高は同74.6%増の281億円と大幅な伸びを示した。ストックビジネスは利益率が高いため、この伸びが同事業の限界利益の増加につながったと考えられる。
マイクロソフトソリューション事業のトピックスは、ストックビジネスの拡大にも見られるとおり、ユーザー数が堅調に拡大している点が挙げられるだろう。Office 365の累計ユーザー数は2016年3月期第1四半期末で前年同期比84%増の約40万ユーザーとなったが、2016年3月期第2四半期末では41万7,000ユーザーと堅調に拡大し、導入社数は166社となった。独自開発のクラウドサービスの累計ユーザー数も第1四半期末で同94%増の約35万ユーザーとなったが、第2四半期末では39万3,000ユーザーと大きく伸び、導入社数は332社となった。
さらに、新サービスもリリースした。メールシステム以外のクラウド利用に備えたサービスを開始した。具体的には、情報共有サービス「OnePortal」、前述のAdobe Experience Manager on Azure提供を可能にしたエンタープライズLinux OS「Asianux」のクラウド展開などがある。
一方、システムインテグレーション事業の売上高は前年同期比17.1%減の2,460百万円、限界利益は同1.7%増の1,335百万円となった。既に触れたが、ソフトバンクグループ向けの受注減少が売上減少の要因である。しかし、内製化が進んだことで、限界利益は上昇した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)
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b)利益分析
営業利益の増加は、利益率の高いストックビジネスの売上高拡大が大きな要因の1つである。限界利益は前年同期比6.7%増の5,445百万円 、EBITDA(減価償却前営業利益)も同5.9%増の1,129百万円となった 。これは、グループ会社を含めた全社の人員の効率的な配置による社内リソースの有効活用と、プロジェクト管理体制の強化、社員のスキルアップへの積極的な取組みによって、利益率の高いビジネスを着実に拡充できたためと考えられる。特にプロジェクト管理体制の強化では、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)という専門組織によるプロジェクト進行状況の適宜確認が徹底された。社員のスキルアップへの取組みでは、プロジェクト管理資格(PMP)の取得推奨により、15年10月でPMP取得者が32人と、前年同月時点に比べ4倍となった。なお、PMPに関しては、16年3月には取得者を50人にまで引き上げる計画となっている。
また、営業利益の増加要因としては、2016年3月期第1四半期(2015年4月−6月期)決算で既に確認されたが、2016年3月期第2四半期(2015年4月−9月期)においても、固定費の伸びが抑制された点も重要である。ソフトバンク・テクノロジー<4726>は人員拡充によって外注比率を落とすと同時にM&Aによって自社サービスを拡大してきた。その結果、重要指標に掲げる限界利益は構造改革が着実に進むにつれて、上昇を続けてきた。しかし、一方で人件費が増加し、場合によっては限界利益の上昇以上に固定費が拡大してしまい、営業利益が伸び悩んでいた。固定費のコントロールは同社の大きな課題の1つであった。
2016年3月期第2四半期(2015年4月−9月期)においても、固定費は前年同期比5.9%増の4,795百万円と引き続き上昇している。主な増加要因は、人件費が前年同期比311百万円増加となったためである。しかし、M&Aや採用によって人員拡充が進むなか、2015年3月期第2四半期(2014年4月−9月期)の固定費の伸び率が47.8%に及んだことに比べると、伸び率が大きく抑制されたことが分かる。
また、限界利益の増加分の353百万円に対し、固定費増加による減益分は266百万円 にとどまっている。人員を含めたリソースの有効活用とコストコントロールによって固定費全体の伸びを抑えることに成功したと言っていいだろう。また、活動経費も前年同期比で28百万円減少している。
なお、参考までに2016年3月期第2四半期末の連結従業員数は、861人と、前年同期末比46人増えている。うち、29人が単体の採用となっている。大型案件の受注が可能な人員規模にまで成長したことが改めて確認できよう。
c)事業別の業績及びトピックス
次に事業別の業績について説明するとともに、トピックスに触れる。
デジタルマーケティング事業
デジタルマーケティング事業の売上高は前年同期比11.7%増の10,457百万円、限界利益は同26.3%増の1,675百万円となった。
ECサービス事業においては、売上高が前年同期比7.7%増の9,278百万円、限界利益が同19.9%増の1,215百万円となった。ECサービス事業の主力であるシマンテックストアの売上高が国内とアジアを合わせて同6.0%増の8,374百万円となった。子会社のフォントワークス(株)のWebフォントサービスも好調で、その他ECサービスとの合計売上高は同25.9%増の903百万円となった。
また、ECサービス事業は利益にも貢献した。シマンテックストアの運営に関しては、過年度より構造改革の進展とともに効率化を進め、人員のスリム化に成功していた。更に、今期、ECシステムのフロントサーバーをクラウド化したことにより効率性がより一層向上した。同事業はベンダー側の米・シマンテック・コーポレーションの意向に強く左右される側面があるものの、コントロール可能な範囲における事業効率化を進め、利益に寄与している点も評価に値すると言えよう。
一方、注力事業であるデータアナリティクス事業の売上高は前年同期比58.6%増の1,178百万円、限界利益は同47.2%増の460百万円と大きく伸びた。既に触れたが、ストックビジネスの売上高が同29.7%増の625百万円と順調な伸びを見せた。さらに、ライセンス販売や個別開発のフロービジネスの売上高が同約2.1倍の553百万円と急拡大した。 急拡大の要因は、Adobeツール、コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)案件の大型化である。フロービジネスは、今後、システムの保守・運用といったストックビジネスへの移行がほぼ確実であることから、同事業の大きな成長に期待が高まると考えられる。
事業のトピックスとしては、自社サービスの拡充が挙げられる。1つは、クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure(以下、Azure)」の利用時に、同社が24時間365日の運用監視やセキュリティ対策を提供するサービスと、データアナリティクス分野のソリューション及び子会社サービスをワンストップで提供できるようになったことだ。Azure上に、子会社のミラクル・リナックスが提供する法人向けLinux OS「Asianux」を構築し、Asianux上にAEMを導入することで、プラットフォームからアプリケーション・分析の領域まで一貫して対応できることが特徴。さらに、AEMとミラクル・リナックスのデジタルサイネージを連携し、Webとデジタルサイネージのコンテンツ管理を統合するソリューションも開始した。
また、11月には、感情を解析する人工知能を開発しているEmotion Intelligence(株)と共同で、世界で初めて感情と行動データをリアルタイムで連携するサービス「Emotion i」を発売した。
プラットフォームソリューション事業
プラットフォームソリューション事業の売上高は前年同期比13.3%減の5,342百万円、限界利益は同3.1%減の1,934百万円となった。
注力事業のセキュリティソリューション事業においては売上高が前年同期比6.5%減の1,536百万円、限界利益が同6.0%減の734百万円となった。ストック売上高は、同4.6%増の1,073百万円と増加したが、フロー売上高は、同25.0%減の462百万円となった。ソフトバンクグループ向けの機器販売やシステム構築減少が要因といえるが、運用保守やサポートは着実に増加しているようだ。
同事業におけるトピックスは、データアナリティクス事業と同様、自社サービスの拡充である。8月にWebサイト向けのクラウド型多機能セキュリティソリューション「サイバートラストWAF Plus」、8月にクラウドアクセス制御サービス「オンラインサービスゲート(以下、OSG)」に「サイバートラスト デバイスID」を標準連携させるサービスを開始した。
一方、プラットフォームソリューション事業の売上高は、前年同期比15.7%減の3,806百万円、限界利益は同1.2%減の1,200百万円となった。既述のとおり、ソフトバンクグループ向けの機器販売が減少したことが要因である。しかし、利益率の高いシステムの保守・運用などのストックビジネスの売上高は同8.2%増の2,055百万円となり、限界利益の減少率は売上高ほどにはならなかった。
システムインテグレーション事業
システムインテグレーション事業の売上高は前年同期比7.7%減の3,840百万円となったが、限界利益は同3.1%増の1,835百万円と増益になった。
注力事業のマイクロソフトソリューション事業の売上高が前年同期比15.7%増の1,380百万円、限界利益が同7.2%増の499百万円となった。Office 365及び自社サービスであるOSGが好調に推移した。第1四半期にはフロービジネスであるライセンス販売と個別のシステム開発が前年同期に大口の新規顧客を獲得した反動減が見られたものの、特にライセンス販売で一気に巻き返した。その結果、フロービジネスの売上高は同6.5%増の1,098百万円となった。さらに、重視する、保守・運用、自社開発サービスであるストックビジネスの売上高は同74.6%増の281億円と大幅な伸びを示した。ストックビジネスは利益率が高いため、この伸びが同事業の限界利益の増加につながったと考えられる。
マイクロソフトソリューション事業のトピックスは、ストックビジネスの拡大にも見られるとおり、ユーザー数が堅調に拡大している点が挙げられるだろう。Office 365の累計ユーザー数は2016年3月期第1四半期末で前年同期比84%増の約40万ユーザーとなったが、2016年3月期第2四半期末では41万7,000ユーザーと堅調に拡大し、導入社数は166社となった。独自開発のクラウドサービスの累計ユーザー数も第1四半期末で同94%増の約35万ユーザーとなったが、第2四半期末では39万3,000ユーザーと大きく伸び、導入社数は332社となった。
さらに、新サービスもリリースした。メールシステム以外のクラウド利用に備えたサービスを開始した。具体的には、情報共有サービス「OnePortal」、前述のAdobe Experience Manager on Azure提供を可能にしたエンタープライズLinux OS「Asianux」のクラウド展開などがある。
一方、システムインテグレーション事業の売上高は前年同期比17.1%減の2,460百万円、限界利益は同1.7%増の1,335百万円となった。既に触れたが、ソフトバンクグループ向けの受注減少が売上減少の要因である。しかし、内製化が進んだことで、限界利益は上昇した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)
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