リプロセル Research Memo(5):創業以来初の営業利益ベースでの黒字化を目指す
[16/08/12]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
(1)中期経営計画
リプロセル<4978>は2016年5月に、3ヶ年の中期経営計画を発表しており、最終年度となる2019年3月期に売上高で2,661百万円、営業利益で1百万円と会社創業以来初の営業利益ベースでの黒字化を経営目標値として打ち出した。
売上高に関しては研究試薬と創薬支援事業を伸ばしていく計画で、再生医療分野に関しては受託サービスの展開によって臨床ノウハウを蓄積し、2020年以降の本格参入に向けた準備期間と位置付けている。特にけん引役となるのは創薬支援事業で、ヒトiPS細胞由来の機能性細胞の販売だけでなく、ヒトiPS細胞の作製や前臨床試験受託サービスなども積極的に展開していく考えだ。製薬企業やバイオベンチャー等でヒトiPS細胞を使った研究開発が活発化しており、高い品質での細胞作製技術を持つ同社の活躍余地も大きいと見られる。
一方、研究試薬事業においても安定成長を見込んでいる。前期に発売した新製品を中心に国内外で売上高を伸ばしていく。アジア展開については、2016年4月に島津製作所の子会社と中国市場での販売業務提携を締結し、同市場での販売増を見込んでいる。島津製作所では中国で13の販売拠点と5つのアプリケーション・センターを持ち、また、最先端研究機関や大学等との共同ラボも70ヶ所以上展開するなど強固な事業基盤を構築している。現在は現地の営業スタッフ向けにトレーニングを実施している段階だが、中国でもiPS細胞に対する研究開発が進んでいることから、今後の売上増が期待される。その他のアジアでは韓国やシンガポールでも代理店経由での販売を行っているが実績はまだ僅少で、今後はインドも含めて有力な代理店の開拓を進めていく方針となっている。
研究開発に関しては2016年度よりグループ全体の研究開発機能を統合し、グローバルチームとすることで、一段の体制強化を図っていく。特に、米国と英国の子会社をそれぞれ合併することで、開発効率の向上が期待される。国内では公的助成金を有効活用した研究開発を継続していく方針となっており、連結ベースの研究開発費としては年間で3億円強のペースを見込んでいる。
人員規模については、事業の成長に合わせて毎年増員していく予定となっている。技術部門では新規技術開発及び既存製品の技術改良のための研究要員に加えて、細胞製品の受注拡大に備えた製造要員を強化していく。また、営業部門については海外事業の拡大に合わせた増員を進めていく予定となっている。5月時点でのグループ人員は91名(日本43名、米国27名、欧州21名)、このうち営業部門は13名(日本5名、米国5名、欧州3名)となっており、2016年度に関してはほぼ適正水準と考えているが、2017年度以降は売上拡大に合わせて営業人員も増員していくことになる。また、将来的に事業化を計画している再生医療分野での人員体制の強化も進めていく予定だ。
再生医療分野に関しては、培地や試薬品、ヒトiPS細胞由来の機能性細胞の販売を既に開始しているが、将来的にはパートナー企業と組んで自社でも細胞医薬品等の事業化を目指している。まずは国内で「再生医療等の条件・期限付き早期承認制度」を活用して臨床試験を進めていくことになる。再生医療分野では日本が最も短期間で上市できる制度を導入しており、海外の有力ベンチャー企業からの問い合わせも多い。同社では、ヒトiPS細胞の作製技術や細胞培養受託サービスにおいてノウハウを蓄積した後に、事業化を進めていくことを考えている。
なお、日産化学工業<4021>と共同研究を進めている造血幹細胞の増幅方法(従来比30倍以上の増幅)については、現在、動物モデルを使った実験を行っている段階にある。造血幹細胞は臍帯血中等に含まれる細胞であり、同細胞を効率的に増幅することによって臍帯血の量が十分確保できることになり、臍帯血移植を必要とする白血病患者への治療適用の可能性が飛躍的に高まることが期待されている。実用化に向けては細胞培養装置等のGLP適合など課題も残っていることから、現在は日産化学工業と協議中の段階であり、事業化に向けた具体的なスケジュールはまだ固まっていない。
経済産業省の調査報告書によれば、世界の再生医療の市場規模は2012年の3,400億円から、2020年に2兆円、2030年に17兆円、2050年に53兆円(うち同社関連分野は42兆円)と急速に成長すると予測されるなど有望市場と位置付けられている。同社は、ヒトiPS細胞に関する高品質・高効率な作製技術を保有するだけでなく、関連試薬の製造販売や創薬支援サービスまでをワンストップで、かつグローバルに展開できる企業としての強みを活かすことで、今後の再生医療市場において飛躍的な成長を遂げる可能性がある企業の1つとして弊社では注目している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(1)中期経営計画
リプロセル<4978>は2016年5月に、3ヶ年の中期経営計画を発表しており、最終年度となる2019年3月期に売上高で2,661百万円、営業利益で1百万円と会社創業以来初の営業利益ベースでの黒字化を経営目標値として打ち出した。
売上高に関しては研究試薬と創薬支援事業を伸ばしていく計画で、再生医療分野に関しては受託サービスの展開によって臨床ノウハウを蓄積し、2020年以降の本格参入に向けた準備期間と位置付けている。特にけん引役となるのは創薬支援事業で、ヒトiPS細胞由来の機能性細胞の販売だけでなく、ヒトiPS細胞の作製や前臨床試験受託サービスなども積極的に展開していく考えだ。製薬企業やバイオベンチャー等でヒトiPS細胞を使った研究開発が活発化しており、高い品質での細胞作製技術を持つ同社の活躍余地も大きいと見られる。
一方、研究試薬事業においても安定成長を見込んでいる。前期に発売した新製品を中心に国内外で売上高を伸ばしていく。アジア展開については、2016年4月に島津製作所の子会社と中国市場での販売業務提携を締結し、同市場での販売増を見込んでいる。島津製作所では中国で13の販売拠点と5つのアプリケーション・センターを持ち、また、最先端研究機関や大学等との共同ラボも70ヶ所以上展開するなど強固な事業基盤を構築している。現在は現地の営業スタッフ向けにトレーニングを実施している段階だが、中国でもiPS細胞に対する研究開発が進んでいることから、今後の売上増が期待される。その他のアジアでは韓国やシンガポールでも代理店経由での販売を行っているが実績はまだ僅少で、今後はインドも含めて有力な代理店の開拓を進めていく方針となっている。
研究開発に関しては2016年度よりグループ全体の研究開発機能を統合し、グローバルチームとすることで、一段の体制強化を図っていく。特に、米国と英国の子会社をそれぞれ合併することで、開発効率の向上が期待される。国内では公的助成金を有効活用した研究開発を継続していく方針となっており、連結ベースの研究開発費としては年間で3億円強のペースを見込んでいる。
人員規模については、事業の成長に合わせて毎年増員していく予定となっている。技術部門では新規技術開発及び既存製品の技術改良のための研究要員に加えて、細胞製品の受注拡大に備えた製造要員を強化していく。また、営業部門については海外事業の拡大に合わせた増員を進めていく予定となっている。5月時点でのグループ人員は91名(日本43名、米国27名、欧州21名)、このうち営業部門は13名(日本5名、米国5名、欧州3名)となっており、2016年度に関してはほぼ適正水準と考えているが、2017年度以降は売上拡大に合わせて営業人員も増員していくことになる。また、将来的に事業化を計画している再生医療分野での人員体制の強化も進めていく予定だ。
再生医療分野に関しては、培地や試薬品、ヒトiPS細胞由来の機能性細胞の販売を既に開始しているが、将来的にはパートナー企業と組んで自社でも細胞医薬品等の事業化を目指している。まずは国内で「再生医療等の条件・期限付き早期承認制度」を活用して臨床試験を進めていくことになる。再生医療分野では日本が最も短期間で上市できる制度を導入しており、海外の有力ベンチャー企業からの問い合わせも多い。同社では、ヒトiPS細胞の作製技術や細胞培養受託サービスにおいてノウハウを蓄積した後に、事業化を進めていくことを考えている。
なお、日産化学工業<4021>と共同研究を進めている造血幹細胞の増幅方法(従来比30倍以上の増幅)については、現在、動物モデルを使った実験を行っている段階にある。造血幹細胞は臍帯血中等に含まれる細胞であり、同細胞を効率的に増幅することによって臍帯血の量が十分確保できることになり、臍帯血移植を必要とする白血病患者への治療適用の可能性が飛躍的に高まることが期待されている。実用化に向けては細胞培養装置等のGLP適合など課題も残っていることから、現在は日産化学工業と協議中の段階であり、事業化に向けた具体的なスケジュールはまだ固まっていない。
経済産業省の調査報告書によれば、世界の再生医療の市場規模は2012年の3,400億円から、2020年に2兆円、2030年に17兆円、2050年に53兆円(うち同社関連分野は42兆円)と急速に成長すると予測されるなど有望市場と位置付けられている。同社は、ヒトiPS細胞に関する高品質・高効率な作製技術を保有するだけでなく、関連試薬の製造販売や創薬支援サービスまでをワンストップで、かつグローバルに展開できる企業としての強みを活かすことで、今後の再生医療市場において飛躍的な成長を遂げる可能性がある企業の1つとして弊社では注目している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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