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エネクス Research Memo(8):17/3期1Qはほぼ計画通りの推移、通期でも期初予想を据え置き

注目トピックス 日本株
■2017年3月期通期業績見通し

2017年3月期通期見通しについて伊藤忠エネクス<8133>は、売上高1,060,000百万円(前期比1.1%減)、営業活動に係る利益17,500百万円(同6.8%増)、税引前利益17,000百万円(同13.3%増)、当社株主に帰属する当期純利益10,000百万円(同33.9%増)を予想している。これらの数値は期初から変更はない。

前述のように2017年3月期第1四半期決算は、カーライフ部門などで想定よりも損益が悪化したものの、電力・ユーティリティ部門やホームライフ部門では計画プラスアルファで推移したため、全社ベースではほぼ計画線での推移となったと弊社ではみている。第1四半期は同社の製品群全般には不需要期に当たることもあり、この第1四半期決算で通期の見通しを大きく変える必要はなく、現時点で期初予想を維持するという同社の判断は至極当然と言えよう。

今第1四半期は前年同期比減益という結果ではあったが、悲観する必要はないと弊社では考えている。前述のように2016年3月期は期を追って原油価格が下落した。今期は、期が進むにつれて前年同期比較のハードルは次第に低下してくることになる。また、同社の今年度の業績予想の前提値は35〜40ドル/バレルとなっており、この点でも安心感があると言えよう。

事業セグメント別の注目ポイントは以下のとおり。

(1)ホームライフ部門

ホームライフ部門の通期業績は、売上高94,700百万円(前期比0.4%減)、営業活動に係る利益5,000百万円(同47.0%)と予想されている。弊社では期初の時点から、この業績見通しは保守的なものであり、特に利益面で上振れになる可能性があると考えていたが、この見方に変更はない。

同社は今期の予算策定にあたりCPの前提値を270ドル/トンとしている。ここまでのCPはこの前提値を大きく上回って推移しており、今後もこうした状況が続けば、上振れ要因として働いてくると期待される。上振れ期待に対するリスク要因としては、為替レートの円高進行が挙げられよう。為替レートの変動は直接的には同社の業績にはニュートラルとみられるが、国内CPはドル建てCPと為替の関数となっているため、円高が進行するとドル建てCPの上昇効果が打ち消されてしまうためだ。

(2)電力・ユーティリティ部門

電力・ユーティリティ部門の通期業績は、売上高58,700百万円(前期比35.0%増)、営業活動に係る利益3,900百万円(同12.6%減)が予想されている。第1四半期実績は定修や設備更新などがなかったため、前年同期比で増益となったが、通期ベースでは会社予想どおり、営業活動に係る利益が前期比で減益となる可能性は考慮しておくべきと考えている。ただし、減益は以下に述べるような会計上の理由によるところが大きく、実質的に増収増益基調が維持されていると評価している。

同社は今期、熱供給のTTSで大型都市開発案件と設備更新を予定している。これに関して600百万円の除却損の計上が見込まれているが、同社が採用するIFRS(国際財務報告基準)ではこれが営業費用として認識されるため、営業活動に係る利益を押し下げることになる。減益予想の主因はこれだ。他に、防府の発電設備での定期修理に関する費用計上や、原油価格の上昇によるTTSでの原料費上昇なども減益要因の一部として織り込まれている

事業面での注目ポイントは小売電力量だ。同社は今期、1,950GWh(前期比123.9%増)を計画している。現行中計における2017年3月期の電力販売計画量は、全体で2,200GWhで、うち1,700GWhを小売販売とされていたが、今期の期初予想の段階でこれを上方修正してきた。前述したように今年4月から一般家庭向け電力販売がスタートしており、家庭向け電力供給契約件数と並んで、採算性の高い小売電力量の構成比は同部門におけるKPI(重要経営指標)であると弊社では考えている。

(3)カーライフ部門

カーライフ部門の通期業績は、売上高538,400百万円(前期比0.8%増)、営業活動に係る利益4,800百万円(同14.9%増)が予想されている。第1四半期決算では予想外の営業損失に陥った。これを挽回して通期ベースで期初予想の営業活動に係る利益を達成するのはハードルが高くなったことは否定できないが、ある程度取り戻すことは十分可能だと考えている。

同社は期初の段階からガソリン類の販売数量については慎重に(すなわち前年比割れで)見ていたと弊社では推測している。しかし第1四半期の販売数量はそれをさらに下回り、それがトリガーとなって適正利潤を確保できないレベルの価格競争に巻き込まれたとみられる。

ガソリン需要の低迷は構造的なものであるため、非ガソリン収益の拡大がカーライフ部門の立て直しと成長軌道回帰へのカギとなる。その中心施策である「カースタ」ブランドで展開される車関連6分野の事業展開に弊社は注目している。特に、比較的即効性が期待できるとみられるレンタカー事業や車買取事業などの収益動向を見守っていきたいと考えている。

(4)エネルギーイノベーション部門

エネルギーイノベーション部門の通期業績は、売上高371,300百万円(前期比6.9%減)、営業活動に係る利益3,800百万円(同0.2%増)が予想されている。第1四半期決算ではプラス要因とマイナス要因が交錯した結果、前年同期比で減益で着地した。しかし、第1四半期は年間需要の4分の1以下の構成比しかなく、第2四半期以降で埋め合わせることは十分可能だと弊社ではみている。

エネルギーイノベーション部門では、原油価格の影響や数量の増減以外に、非効率取引の見直しを進めているという事情がある。したがって、売上高の表面上の減収率は、必ずしも実態を正確に表しているわけではないと弊社では考えている。利益面では、各製品の販売数量の動向が価格動向よりも重要になるとみている。なかでも主力製品のアスファルトの動向に注目している。アスファルトはここ数年、原油市況の下落が続いた結果在庫影響によって損益が悪化してきたとみられる。しかし2017年3月期は原油価格が予算の前提値を上回って推移していることもあって、一定の利幅が獲得できているもようだ。したがって数量の動向がカギとなるが、政府の経済対策の恩恵がどの程度及ぶのか、見守りたいと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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