ケネディクス Research Memo(8):第2四半期業績は通期予想に対して高い進捗率で推移
[16/09/09]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
(3)2016年12月期第2四半期決算の概要
ケネディクス<4321>の2016年12月期第2四半期累計期間の業績は、営業収益が前年同期比2.8%減の12,911百万円(通期予想に対する進捗率57.1%)、営業利益が同9.2%増の6,364百万円(進捗率68.4%)、経常利益が同37.2%増の7,233百万円(進捗率71.6%)、親会社株主に帰属する純利益が同10.6%減の7,090百万円(進捗率70.9%)となった。通期予想に対して、営業収益及び各利益がともに高い進捗率となっているのは、足元の好調な不動産市況を踏まえて、物件売却を前倒しで進めていることが要因であり、概ね想定通りのようである。また、受託資産残高(トータルAUM)も1兆6,854億円(前期末比2.5%増)に増加したが、同社の中長期的な成長イメージからはスローな伸びと言える。
連結対象不動産(棚卸資産)の売却が一巡したことで営業収益はわずかに減収となった。一方、営業総利益は、アセットマネジメント事業が物件取得(アクイジションフィー)の遅れにより微増にとどまったものの、不動産関連事業及び不動産投資事業の拡大により増益を確保した。また、総合的な収益力を示す親会社株主に帰属する四半期純利益についても、法人税等や非支配株主に帰属する純利益の増加により減益とはなったものの、持分法による投資利益(営業外収益)の拡大や、連結対象不動産の売却益(特別利益)を前倒しで計上したことから期初予想に対しては高い進捗率となっている。
事業セグメント別の営業総利益の状況は以下のとおりである。
アセットマネジメント事業の営業総利益は前年同期比0.8%増の4,548百万円と微増にとどまったものの、通期予想に対しては順調に進捗(進捗率56.9%)している。受託資産残高の増加によりアセットマネジメントフィーが伸びたが、アクイジションフィーについては、REIT向けビジネスの一巡から一旦縮小する予算となっているうえ、物件取得の遅れも重なりやや低調に推移した。一方、インセンティブフィー及びディスポジションフィーは物件売却を前倒しで進めたことから極めて高い進捗率となっている。
不動産関連事業の営業総利益は同61.6%増の913百万円と大きく伸び、期初予想に対しても順調に進捗(進捗率55.3%)している。管理物件の拡大によりプロパティマネジメントフィーが伸びたほか、マスターリース損益等も好調であった。
不動産投資事業の営業総利益は同19.9%増の4,108百万円と伸長するとともに、期初予想に対しても高い進捗率(進捗率61.8%)となっている。連結対象不動産(棚卸資産)の売却が一巡したことによる不動産売却損益の縮小や過去投資案件(レガシー)一掃に伴う賃貸事業損益の落ち込みは想定の範囲内とみられる。一方、今後の不動産投資事業の中心となっていく匿名組合分配損益については、債権の回収益による寄与もあり大きく伸長した。また、総合的な不動産投資損益についても、支払金利の削減に加えて、連結対象不動産(固定資産)の売却益(特別利益)を前倒しで計上したことから、前年同期比5.1%増の7,078百万円に増加するとともに、通期予想に対しても高い進捗率(進捗率71.2%)となっている。
以上から、第2四半期決算のポイントをまとめると、1)物件売却を前倒しで進めたことから、通期予想に対して全般的に高い進捗率となっていること、2)受託資産残高の拡大により安定的な手数料収入(アセットマネジメントフィー及びプロパティマネジメントフィー)が順調に伸びたこと、3)過去投資案件(レガシー)の一掃等により不動産投資事業における損益が匿名組合分配損益にシフトしてきたこと、4)物件取得(オフィス、住宅等)が難しい環境にあるため、アクイジションフィーに若干の遅れがみられることの4つをあげることができる。
一方、受託資産残高(トータルAUM)は、前述のとおり、1兆6,854億円(前期末比2.5%増)となったが、そのうち、同社が重視しているベースAUM※1の残高についても1兆1,547億円(前期末比2.6%増)に増加している。ただ、中期経営計画(2017年12月末のベースAUM残高1.5兆円)の実現に向けて必要となる伸び率(年間10%程度)と比べるとスローなペースと言える。過熱感のみられる不動産市況が影響しているようだ。一方、私募ファンドについては3,607億円(前期末比1.3%減)と若干減少したものの、これまでの縮小一辺倒からは底打ちの兆しがみられる。2015年7月に第一生命との共同投資により不動産コアファンド※2を組成したほか、今後は新規分野への取り組み等により拡大を図る方針である。
※1同社がメインスポンサーとなっているREIT及び私募ファンドのAUM
※2首都圏に所在する複数の賃貸住宅を対象
財務面では、REIT向けや長期保有(過去投資案件)などの物件売却が前期で一巡したことにより連結対象不動産の残高がプラスに転じたことや現預金の増加等により総資産が184,451百万円(前期末比7.5%増)に拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより89,163百万円(前期末比7.0%増)に増えたことから自己資本比率は48.3%(前期末は48.6%)とほぼ横ばいで推移した。有利負債残高についても、連結対象不動産の増加に伴ってノンリコースローン※が54,815百万円(前期末比20.1%増)に増加したが、通常のコーポレートローンについては22,371百万円(前期末比5.5%減)に減少しており、財務基盤の安定性に懸念はない。今後は、現在の総資産の規模や財務レバレッジを維持していく方針のようだ。
※返済の原資となる資産を投資物件等に限定した借入方法である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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(3)2016年12月期第2四半期決算の概要
ケネディクス<4321>の2016年12月期第2四半期累計期間の業績は、営業収益が前年同期比2.8%減の12,911百万円(通期予想に対する進捗率57.1%)、営業利益が同9.2%増の6,364百万円(進捗率68.4%)、経常利益が同37.2%増の7,233百万円(進捗率71.6%)、親会社株主に帰属する純利益が同10.6%減の7,090百万円(進捗率70.9%)となった。通期予想に対して、営業収益及び各利益がともに高い進捗率となっているのは、足元の好調な不動産市況を踏まえて、物件売却を前倒しで進めていることが要因であり、概ね想定通りのようである。また、受託資産残高(トータルAUM)も1兆6,854億円(前期末比2.5%増)に増加したが、同社の中長期的な成長イメージからはスローな伸びと言える。
連結対象不動産(棚卸資産)の売却が一巡したことで営業収益はわずかに減収となった。一方、営業総利益は、アセットマネジメント事業が物件取得(アクイジションフィー)の遅れにより微増にとどまったものの、不動産関連事業及び不動産投資事業の拡大により増益を確保した。また、総合的な収益力を示す親会社株主に帰属する四半期純利益についても、法人税等や非支配株主に帰属する純利益の増加により減益とはなったものの、持分法による投資利益(営業外収益)の拡大や、連結対象不動産の売却益(特別利益)を前倒しで計上したことから期初予想に対しては高い進捗率となっている。
事業セグメント別の営業総利益の状況は以下のとおりである。
アセットマネジメント事業の営業総利益は前年同期比0.8%増の4,548百万円と微増にとどまったものの、通期予想に対しては順調に進捗(進捗率56.9%)している。受託資産残高の増加によりアセットマネジメントフィーが伸びたが、アクイジションフィーについては、REIT向けビジネスの一巡から一旦縮小する予算となっているうえ、物件取得の遅れも重なりやや低調に推移した。一方、インセンティブフィー及びディスポジションフィーは物件売却を前倒しで進めたことから極めて高い進捗率となっている。
不動産関連事業の営業総利益は同61.6%増の913百万円と大きく伸び、期初予想に対しても順調に進捗(進捗率55.3%)している。管理物件の拡大によりプロパティマネジメントフィーが伸びたほか、マスターリース損益等も好調であった。
不動産投資事業の営業総利益は同19.9%増の4,108百万円と伸長するとともに、期初予想に対しても高い進捗率(進捗率61.8%)となっている。連結対象不動産(棚卸資産)の売却が一巡したことによる不動産売却損益の縮小や過去投資案件(レガシー)一掃に伴う賃貸事業損益の落ち込みは想定の範囲内とみられる。一方、今後の不動産投資事業の中心となっていく匿名組合分配損益については、債権の回収益による寄与もあり大きく伸長した。また、総合的な不動産投資損益についても、支払金利の削減に加えて、連結対象不動産(固定資産)の売却益(特別利益)を前倒しで計上したことから、前年同期比5.1%増の7,078百万円に増加するとともに、通期予想に対しても高い進捗率(進捗率71.2%)となっている。
以上から、第2四半期決算のポイントをまとめると、1)物件売却を前倒しで進めたことから、通期予想に対して全般的に高い進捗率となっていること、2)受託資産残高の拡大により安定的な手数料収入(アセットマネジメントフィー及びプロパティマネジメントフィー)が順調に伸びたこと、3)過去投資案件(レガシー)の一掃等により不動産投資事業における損益が匿名組合分配損益にシフトしてきたこと、4)物件取得(オフィス、住宅等)が難しい環境にあるため、アクイジションフィーに若干の遅れがみられることの4つをあげることができる。
一方、受託資産残高(トータルAUM)は、前述のとおり、1兆6,854億円(前期末比2.5%増)となったが、そのうち、同社が重視しているベースAUM※1の残高についても1兆1,547億円(前期末比2.6%増)に増加している。ただ、中期経営計画(2017年12月末のベースAUM残高1.5兆円)の実現に向けて必要となる伸び率(年間10%程度)と比べるとスローなペースと言える。過熱感のみられる不動産市況が影響しているようだ。一方、私募ファンドについては3,607億円(前期末比1.3%減)と若干減少したものの、これまでの縮小一辺倒からは底打ちの兆しがみられる。2015年7月に第一生命との共同投資により不動産コアファンド※2を組成したほか、今後は新規分野への取り組み等により拡大を図る方針である。
※1同社がメインスポンサーとなっているREIT及び私募ファンドのAUM
※2首都圏に所在する複数の賃貸住宅を対象
財務面では、REIT向けや長期保有(過去投資案件)などの物件売却が前期で一巡したことにより連結対象不動産の残高がプラスに転じたことや現預金の増加等により総資産が184,451百万円(前期末比7.5%増)に拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより89,163百万円(前期末比7.0%増)に増えたことから自己資本比率は48.3%(前期末は48.6%)とほぼ横ばいで推移した。有利負債残高についても、連結対象不動産の増加に伴ってノンリコースローン※が54,815百万円(前期末比20.1%増)に増加したが、通常のコーポレートローンについては22,371百万円(前期末比5.5%減)に減少しており、財務基盤の安定性に懸念はない。今後は、現在の総資産の規模や財務レバレッジを維持していく方針のようだ。
※返済の原資となる資産を投資物件等に限定した借入方法である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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