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アーバネット Research Memo(2):投資用ワンルームを主力にして規模を拡大

注目トピックス 日本株
■事業概要

(1)事業内容

アーバネットコーポレーション<3242>は、東京23区内を基盤として投資用ワンルームの開発・1棟販売(卸売:BtoB)を基軸事業としている。用地取得からマンション販売会社への卸売までを手掛けており、設計・開発に特化しているところに特徴がある。設計事務所からスタートしたデベロッパーとして、機能性やデザイン性に優れた「ものづくり」や、東京23 区駅10分以内という好立地へのこだわりが入居者からの高い支持を受けるとともに、従来からの不動産投資家に加え、将来の老後生活に不安を抱える新たな若年層の国内個人投資家や海外投資家を抱える新たな若年層の国内個人投資家、相続税対策の富裕層などからの堅調な需要に支えられて業績は好調に推移している。

事業セグメントは、「不動産事業」の単一となるが、サブセグメントとして「不動産開発販売」「不動産仕入販売」「その他」の3つに分類される。「不動産開発販売」は、投資用ワンルームマンション「アジールコート」を中心として、分譲用ファミリーマンション「グランアジール」や分譲用コンパクトマンション「アジールコフレ」も手掛ける。なお、分譲用マンションは、現在までのところ3年に2棟の開発にとどめており、販売は自社で行っている。「不動産仕入販売」は、他社が開発した新築残戸物件の戸別販売や不動産仕入販売等を行っている。「その他」は、不動産仲介及び不動産賃貸業等である。なお、自社保有の賃貸収益物件は、2016年6月末時点で4棟程度(そのうち2物件は前期に取得したもの)となっている。2016年6月期の実績では、「不動産開発販売」が売上高の約89.0%を占めている。

投資用ワンルームマンションの販売は、提携する販売会社への1棟販売が基本であるが、信頼性が高い販売会社を厳選した上で緊密な関係を築いている。また、販売手法の多様化を図る目的から、引き合いが強くなってきた海外投資家に対する1棟一括直接販売についても試行的に行っている。

また、2015年3月には、戸別分譲事業及び賃貸事業、マンション管理事業に関わる子会社アーバネットリビングを設立した(2015年7月1日より操業開始)。基軸事業でのBtoBを親会社に残し、BtoCの分野を子会社にて取り込むことにより、将来に向けたグループでの事業拡大が目的とみられる。操業初年度となる2016年6月期において、買取販売等の拡大により黒字化を実現した。

(2)会社沿革

同社は、一級建築士である現代表取締役社長の服部信治(はっとりしんじ)氏によって1997年7月に設立された。マンション専門の設計会社に共同経営者として勤務していた服部氏は、自らのデザインによるマンションの企画・開発を行うことを目的として独立した。

設立当初は、企画や設計、コンサルティングを中心に実績を積み上げ、設立3年後の2000年12月に、当初の計画どおり、マンション開発販売事業を投資用ワンルームマンションでスタートさせた。

投資用ワンルームを主力としたのは、その頃からJリートや不動産ファンドなど、賃貸収益物件への投資事業が拡大し始めたことや、自社開発物件を販売専門会社へ任せられる製販分離型の業界構造となっていることが、少数精鋭の経営を目指していた同社にとって参入しやすかったことによる。同社の得意とする設計・開発に特化したことで、入居者ニーズを実現した人気の高い物件を開発できたことに加えて、都内のワンルームマンションに対する需給ギャップ(需要が供給を上回る状況)や個人投資家からのニーズの拡大など、外部環境も同社の成長を後押しして、2007年3月にはJASDAQ市場へ上場を果たした。2008年のリーマンショックによる金融引き締め時には開発物件の凍結を余儀なくされたが、損失を1期に集中することと、金融機関やゼネコンとの良好な関係を続けることを前提とした徹底的な資産縮小の経営計画の下、それまで保有していなかった販売部門の販売員を新規採用して新設して他社物件の買取再販事業に全社を挙げて参入したことにより、厳しい環境を乗り切ることができた。その時期に培われた販売ノウハウなどは、現在の買取再販事業や分譲用マンションの販売等に活かされている。

(3)特長

同社の特長(強み)として、a)優れたデザイン性や機能性、好立地へのこだわりによる差別化、b)少数精鋭による固定費を圧縮した効率的な経営を挙げることができる。

a)優れたデザイン性や機能性、好立地へのこだわり
同社は、得意とする設計・開発に経営資源を集中することで、デザイン性や機能性に優れた「ものづくり」による差別化を図っている。特に流行に左右されず、インパクトのあるモノトーンの外観や芸術性にこだわったエントランス、収納スペースを最大限に確保する居住空間、自社開発の足を伸ばせるユニットバスなどがターゲットとなる若い世代に支持されてきた。入居者に定期的にアンケート調査を実施し、ユーザーニーズをくみ上げるなど、高い技術力にマーケティング志向を併せ持つところが同社の最大の強みと言えよう。立地に関しては、都内23区内で駅から徒歩10分以内の用地を基本としている。

なお、同社はアートと住空間の融合による社会貢献活動(CSR)の一環として、学生のみを対象とした立体アートコンペティション「アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション」を2001年より毎年開催し、若手アーティストの発掘、支援、育成を行っている。この活動は企業メセナ協議会※からメセナ(企業文化支援)として認定されている。

※企業による芸術文化支援活動の活性化を目的とした中間支援機関。

b)少数精鋭による効率的な経営
同社は、マンション販売会社への1 棟販売(卸売)をビジネスの核としているが、そのビジネスモデルによって少人数による効率的な経営を実現している。また、その事業モデルを支えているものは、同社の開発物件に対する評価の高さと販売先との信頼関係と考えられる。2016年6月期(連結)における正社員数は37名、1人当たりの売上高が約478百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が約30百万円と高い生産性を示している。

特に固定費を低く抑えることで、高い収益性の確保と景気変動にも柔軟に対応できる体制を堅持している。加えて、1棟の卸売は売れ残りリスクがなく、竣工から短期間での資金回収を可能としており、不動産業界にあって安定性の高い事業構造と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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