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アウトソーシング Research Memo(10):国内事業の着実な伸長とM&Aを活用した海外事業の拡大進む

注目トピックス 日本株
■成長戦略

(2)アウトソーシング<2427>の主要事業の戦略と進捗

a)国内技術系アウトソーシング事業
成長性や付加価値が高く、人材ニーズも大きいIT及び土木建築分野を中心に事業拡大を目指す。IT分野においては、様々なモノのインターネット接続が進むIoTやビッグデータビジネス、クラウド化といった新たな需要を取り込むとともに、土木建築分野においても、道路・鉄道の拡充やオリンピック・震災復興の大型需要を見込んでいる。特に、成功のカギを握る技術者の確保については、人材育成カリキュラムによるキャリアチェンジを活用して差別化を図っていく戦略である。また、IT及び土木建築分野に加え、新たに機械・電機や医薬分野の顧客ニーズを反映した最新の技術研修も開始するようだ。2020年12月期におけるKENスクールからの配置人数を1,800名以上、配置後のキャリアチェンジの人数を1,200名以上に増やし、売上高は970億円(5年間の平均成長率25.2%)を目指している。

b)国内製造系アウトソーシング事業
国内市場が縮小する想定のもと、PEOスキームを活用した事業モデルに特化し、景気変動による影響の少ない新たな長期事業領域での市場創出により持続的な成長を目指す。前期は労働者派遣法改正に伴ってメーカー直接雇用の期間社員から派遣活用への転換ニーズが顕在化し、PEOスキームが軌道に乗り始めた。PEOスキームにより新たに参入する領域(メーカーが直接雇用してきた期間社員のゾーン)は約70万人(同社推定)の潜在的な市場があるとみられる。2018年には、5年ルールを定めた2013年の労働契約法改正から5年が経過するため、それに向けた準備を含めてPEOスキームへの参画企業が加速度的に拡大していくことが予想されている。最終年度の2020年12月期末のPEO在籍人数を20,000名に増やし、売上高は880億円(5年間の平均成長率24.5%)を目指している。

c)国内サービス系アウトソーシング事業
米軍基地向け事業は、既に沖縄などの各米軍基地における福利厚生施設(レストラン・売店等)内業務の派遣等を同社が集約して受託しているが、今後も国内の他基地へ事業展開を加速する方針である。また、今年8月には「アメリカンエンジニアコーポレイション」の子会社化に関する基本合意を締結した。今期中に基地内の滑走路や格納庫等の軍事設備の改修及びメンテナンス業務を受注予定であり、さらには環太平洋の米国(カリフォルニア、アラスカ、ハワイ、グアム)、豪州、韓国の主要基地へ展開する計画である。

一方、コンビニ業界向け事業は、大手コンビニ本部から各フランチャイズが使う派遣会社の一括管理業務を受託するものである。具体的には、チェーン全店舗の派遣発注を本部経由で一括受注のうえ、各派遣会社へ割当するとともに、派遣社員に対する保険加入や残業等の賃金支給などの適正性を管理・指導する。各派遣会社から売上の5%を手数料で受け取る収益モデルとなる。既に、大手コンビニ本部から首都圏全店舗で、店舗ごとに使っている派遣会社の一括管理を受託しており、来期からは全国展開による本格的な業績貢献が見込まれている(2017年12月期のコンビニ業界向け売上高30億円、粗利益率50%を見込んでいる)。また、上記ビジネスモデルを確立することで、全国チェーン展開している様々な企業へも進出する方針である。

d)海外事業
海外事業は、グループシナジーの創出を追求しながら、各地域でのM&Aを強化する方針である。特に、先行して進出している東南アジアは、経済成長が著しいものの、同時にローカルリスクも高いことから安定した大きな市場がある欧米への進出を加速していくようだ。前期は、相次ぐM&Aによりアジア及びオセアニアにおける事業拡大のほか、新たに欧州や南米にも進出した。今後は、公的サービスの民間委託が進む国で各種事業の請負に注力する方針である。公務の受託事業は景気や環境変化の影響を受けにくいうえ、先進各国では公務員を削減して公務を民間委託する動きが活発であり、民間委託される市場はグローバルで数兆円規模と推定されている。また、サービス系では、シナジーを発揮しやすい給与計算代行(ペイロール)事業の展開をアジアで加速するとともに、製造系でも、南米チリでの製造系事業のさらなる拡大、欧州有数の工業国ドイツへの進出などを計画しているようだ。

同社は4月1日付で英国Hamsard 3393 Limited及びHamsard 3394 Limitedの株式の取得を通じて、公的債権回収代行大手であるJBW及び「CASE DYNAMICS LIMITED(以下、CDL)」を同社のグループ傘下に入れた。JBWは英国において、中央政府並びに地方公共団体の公的債権の回収代行サービスを展開し、同国で実質業界3位のシェアを誇る。英国内の未回収債権は年を追うごとに金額も増え続けており、今後も外部委託領域が拡大する見通しだ。

また、同日豪州Beddison グループの子会社5社の株式及び4つのユニットトラストの持分の約80%を取得し、子会社化している。Beddisonグループは同国6州に拠点展開する地場資本の大手人材会社である。同社はこの子会社化により、成長が見込まれるIT系及び金融系分野での事業強化をはかるとともに、重要戦略である景気の影響を受けにくい政府機関への人材ビジネスへ進出する。英国及び豪州での相次ぐM&Aにより、豪州をはじめ、シンガポールや香港など英国から独立した各国・地域の早期展開と、カナダなど関連する各国へもグローバル展開を図り、同社グループの事業安定化と拡大の両立を加速させていく考えだ。

さらに8月1日には、英国で政府・地方自治体等における各種業務の受託事業を展開する2社「Allen Lane Consultancy Limited(以下、ALC)」、「Liberata UK Limited(以下、Liberata)」を子会社化した。ALCは、各省庁の会計業務、経理業務、ビジネスプロセス改善業務、プロジェクトマネジメント業務など、政府系業務の中でハイエンドの業務を請け負っている。また、Liberataは、中央政府並びに地方公共団体へのBPOサービス等を提供している。なお、ALCは、中央政府サービス・サプライチェーンの川上的位置づけであり、4月に買収したJBW(CDL)及びLiberataにとって入札準備に重要な情報源となり、かつサポート役的な存在となる。また、JBW(CDL)は、政府案件の直接受注に加え、Liberataが中央政府から包括的に受注したBPO作業の一部を請け負うことができるなど、グループ各社の相乗効果が期待できる。同社では、中央政府サービス・サプライチェーンの上流から下流までを押さえる事業モデルを確立し、他の国へも展開していく計画であり、そのためのM&Aも継続的に行っていく方針のようだ。

弊社では、同社の中期経営計画は、労働者派遣法改正に伴って想定される特需の影響や今後のM&A等の業績貢献を織り込んでいない点で保守的な水準とみている。特に、「国内製造系アウトソーシング事業」においては、1)法改正から5年を迎える2018年に向けてPEOスキームが大きく拡大する可能性を見込んでいないことや、2)労働者派遣事業の許可制への移行(許可要件の厳格化)に伴って業界淘汰が進展することによる特需を見込んでいないことに加えて、3)「国内サービス系アウトソーシング事業」においても、今年8月に基本合意を締結した「アメリカンエンジニアコーポレイション」による寄与(2017年4月連結化を予定)や、4)来期以降、本格的に稼働するコンビニ業界向けの業績貢献が織り込まれていない。従って、追加のM&Aの実施を含め、これらの材料が業績に与える影響をフォローするとともに、中期経営計画が再度見直しとなる可能性にも注意が必要である。

また、相次ぐ大型M&Aの実施により財務内容が大きく変化しており、有利子負債の拡大やのれんに対する減損リスクを懸念する見方もあるが、前述のとおり、同社のM&Aは各国政府や米軍基地向けのアウトソーシング分野など、固定資産を保有せず、キャッシュフローが安定的にプラスとなっている企業が対象となっているため、回収期間が短いうえ、景気変動の影響を受けにくいことから減損リスクも小さいものと分析している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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