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ラクス Research Memo(1):成長投資が奏功しクラウド経費精算システム「楽楽精算」の成長が加速

注目トピックス 日本株
ラクス<3923>は、代表取締役社長の中村崇則(なかむらたかのり)氏が2000年に創業したクラウドサービスを主力とするIT企業である。問い合わせメール共有・管理システム「メールディーラー」(2001年発売)の開発を皮切りにクラウド事業を開始し、メール配信システム「配配メール」(2007年)、Webデータベース「働くDB」(2008年)、経費精算システム「楽楽精算」(2009年)をリリースし、クラウドサービスの優良なポートフォリオを確立した。創業以来、増収を続けており、増益率の高さにも定評がある。2015年12月に東証マザーズ市場上場を果たした。

同社は業務効率化をテーマにクラウドサービスを提供し、ストック型で高収益なビジネスモデルを確立している。特徴の一例を挙げると、他のクラウド企業で行われている初期カスタマイズや機器販売を極力行わないため、9割以上がストック売上(継続売上)である。利便性の追求を徹底することで解約率が低く抑えられ、新規売上は積み上がっていく。売上の増加に伴うコストの増加率が低いため、売上高が固定費を超えると急激に利益率が高くなる。「メールディーラー」などの複数サービスが高収益を生み出し、次期主力サービス「楽楽精算」に集中投資するのが基本戦略である。

2017年3月期第2四半期累計の売上高は前年同期比20.3%増の2,337百万円、営業利益は同6.9%増の410百万円、経常利益は同6.1%増の406百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同9.7%増の278百万円となり、売上高、各利益ともに過去最高を更新した。増収の主な要因は、主力のクラウド事業が好調に推移し、導入社数及び業績を伸ばしたためだ。特に経費精算システム「楽楽精算」においては、導入社数が1,600社を突破し(2016年11月)、シェアNo.1を固めた。営業人員の増強やTVCMなどのマーケティング投資、前会計年度下期からの販売代理店強化施策効果が早くも顕在化した形だ。各利益がやや低めの成長なのは、広告費や人件費への積極的な投資のためであり、戦略的な意図である。2017年3月期通期の業績予想は、期初の値が据え置かれたが、上半期の進捗率は前年を超えており、ストックビジネスの特性を考慮すると上振れの可能性が高い。

クラウド経費精算システムの市場は成長期にあり、同社は「楽楽精算」の導入企業1,600社(2016年11月)を早期に5,000社に引き上げ、圧倒的No.1を狙う。従来は直販部隊を中心に営業活動を行ってきたが、上場を機に代理店販売を強化し、提携先を増やしていく方針に舵を切った。2016年以降に、三菱UFJフィナンシャル・グループで三菱東京UFJ銀行の子会社であるエム・ユー・ティ・ビジネスアウトソーシング、オリックス<8591>、ソフトブレーン<4779>などと共同販売や相手先ブランド販売などの形態で業務提携を行った。早くも一部で効果は出始めており、足もとの販売代理店やアライアンスパートナー経由の導入が約4割に達したもようだ。

2016年11月には「楽楽精算」の利便性をさらに向上することを目的に、人工知能(AI)に知見のある(株)ブレインチャイルドと共同プロジェクトを開始した。2017年3月には、第1弾の機能開発が完了する予定であり、その成果が期待される。

当面は成長のための投資を優先する方針だが、株主還元も強化する。10月1日には普通株式1株につき2株の株式分割を行っており、買いやすくなった。2017年3月期はさらに株主還への還元を強化し、配当性向を12%に高め、年3.05円(株式分割前の基準で6.10円)の増配を予想する。

■Check Point
・2017年3月期2Q決算は過去最高売上高、利益を更新、注力する「楽楽精算」が続伸
・矢継ぎ早の販売アライアンスの効果が早くも顕在化
・人工知能(AI)を活用し、「楽楽精算」の利便性向上プロジェクト開始

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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