MCJ Research Memo(7):製品力とIT感度の高い顧客層という2つの強みを生かし更なる拡大を図る
[16/12/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画
MCJ<6670>は5月13日に2017年度から2019年度まで3年間の中期経営計画を発表した。詳細は以下のとおりである。
(1)製品力とIT感度の高い顧客層が強み
同社グループとして、製品力とIT感度の高い顧客層という2つの強みを生かし、両辺の価値の最大化を図るとしている。まず、製品力については、同社グループの起点であるPC関連はもとより、「PC関連に限らず、使って楽しい、役に立つ、目新しい、広義のITデバイス製品のタイムリーな開発・仕入・販売を通じて、総合ITデバイス企業を目指す」としている。したがって、PC、VR、AR(Augmented Reality:拡張現実)、ドローン、ウェアラブルなど顧客の求める多様なデバイスを、店頭を始めとした情報リサーチで把握し、開発・仕入・販売していく。このため、自社だけでなく、必要な製品開発力を持ったベンチャー企業に対して、投資を行い、グループとして取り扱う製品群の拡充と開発力の強化を図る方針である。
次に、IT感度の高い顧客層を持つという強みである。これらの層は最先端のITデバイスへの感度の高い層であり、またかかる顧客層はそれぞれのITデバイスを使う上で、ソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど様々な利便性、楽しさ、安全性などを要求する。そこで同社グループは、これらの顧客ニーズを満足させるサービスを提供する。
この目指す事業領域が、同グループの標榜しているマルチデバイス・マルチサービスの総合IT企業のイメージである。
(2)中長期ビジョンにおける今回の中期経営計画の位置付け
今後は、日常社会の中でIoT(Internet of Things)化が進展していくことが確実であり、様々な製品がネットワークにつながり、色々なサービスニーズが生まれてくることが予想される。同社グループのビジョンは、無限のビジネスチャンスの可能性を秘めるなかで、非常に遠大で一見夢物語的にも見えるかもしれない。しかし、中長期ビジョンは10年単位のビジョンかもしれないが、足元で何をすべきかという点で、同社グループは着実に具体的な行動計画を立てている。
上記の中長期ビジョンにおける目指す姿を実現するために、2019年までの中期経営計画期間は、まず基盤固めのフェーズという位置づけである。つまり、コア事業であるパソコン関連事業の強化は継続しつつ、デバイスの種類拡充を図る期間としている。そして、各デバイスに関わるサービスについては、進出のための基盤作りを行う方針である。デバイス・サービス、それぞれの新規開発について、必要に応じてM&Aを含めベンチャー企業との事業連携を加速させていく。そのため、同社では、かかる経営のスピードアップを担う経営人材の育成強化を行うとしている。
(3) M&A・アライアンス方針
同社は中長期ビジョンを実現するために、積極的にM&A・アライアンスを行っていくとしており、その基本的な方針を示している。1つは、既存事業関連で、Value Chain強化と製品・顧客軸強化を進めることで、今後の事業拡大のためのオペレーション上の基盤強化と取り扱うデバイスの拡充、商流の強化を図ることである。次に、新規事業関連では、ITデバイスによらない既存事業の枠外の投資やソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど領域は限定しないものの、あくまでデバイス事業との相乗効果が期待できる領域を選択して新事業を探求するとしている。
(4)ベンチャー投資方針
3月24日発表したものづくりベンチャープラットフォーム構想では、「最先端のデバイス情報取得や取扱いデバイスの拡充に、ベンチャー育成をミックスする」とし、投資の基本方針を定めている。同社グループが持つ既存のValue Chain上の開発・仕入・製造・販売・アフターサービスの各機能で培ったノウハウを活かして、投資先のVB(ベンチャー・ビジネス)が自社で対応できない機能を各社のニーズに合わせてテーラーメイド型で補完・支援を行うという考え方である。
したがって、同社グループの各社の事業とのシナジーが期待できるVBを投資対象先とし、事業上のバリューアップありきで投資を行うので、投機目的の投資などは対象外である。また、同社はグループ事業を束ねて、かかる効果的な投資を行うための経営人材を採用・育成していくとしている。
(5)中長期ビジョンに沿った足元の動き
中長期ビジョンに沿って直近では以下のような具体的な活動を行っている。
a)子会社等売却
中長期ビジョンの実現のために、中核事業とは関係性が薄く不採算の事業を整理し、本業回帰するという考えのもとに、下記2子会社の売却を行っている。
●株式会社秀和システム売却
2015年12月22日株式譲渡完了
事業内容:書籍の出版及び販売
売却先:株式会社ウエノグループ
●ティアクラッセ株式会社売却
2016年4月1日株式譲渡完了
事業内容:女性向けアパレル製品の企画・販売及びECサイト運営
売却先:株式会社オンワードホールディングス
b)従来型PCの枠外の製品への進出
●スティックPC
日本初のスティック型のPCを製品化
2015年日経「優秀商品・サービス賞」等を受賞
●Windowsスマートフォン・タブレット
日本初でSIM-freeのWindows版スマートフォンを製品化
タブレット端末も取り扱う
●VR関連製品
Oculus、HTC等のVRに対する高性能PC の提供、GALAXY Microsystems社のVR端末
の取扱い等を積極化
c)ベンチャー企業への投資
●ヒアラブルデバイス開発企業
投資先:株式会社ネイン
事業内容:ヒアラブルデバイスの開発、製造及び販売
契約締結日:2016年11月1日
●VR専用ゲームコンテンツ開発企業
投資先:株式会社桜花一門
事業内容:VRゲームソフトの企画、制作及び販売
契約締結日:2016年11月1日
(6)重要視する事業上の経営管理指標
同社では、4つのKPI(Key Performance Indicators)を最重要KPIとし、安定的にそれぞれの目標値を達成することとしている。尚、同社の掲げる各数値基準は今後のM&A等による一時的な数値指標悪化を考慮した上での下限値であり、前期実績数値よりも悪化する事を前提としているわけでは無い。ROICをKPIに選定しているのは、M&Aを積極的に推進する同社として、この指標をよりどころとするゆえんである。また、株主還元を重視し配当性向については20%以上としており、好業績の今期はさらに上積みして25%とした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)
<NB>
MCJ<6670>は5月13日に2017年度から2019年度まで3年間の中期経営計画を発表した。詳細は以下のとおりである。
(1)製品力とIT感度の高い顧客層が強み
同社グループとして、製品力とIT感度の高い顧客層という2つの強みを生かし、両辺の価値の最大化を図るとしている。まず、製品力については、同社グループの起点であるPC関連はもとより、「PC関連に限らず、使って楽しい、役に立つ、目新しい、広義のITデバイス製品のタイムリーな開発・仕入・販売を通じて、総合ITデバイス企業を目指す」としている。したがって、PC、VR、AR(Augmented Reality:拡張現実)、ドローン、ウェアラブルなど顧客の求める多様なデバイスを、店頭を始めとした情報リサーチで把握し、開発・仕入・販売していく。このため、自社だけでなく、必要な製品開発力を持ったベンチャー企業に対して、投資を行い、グループとして取り扱う製品群の拡充と開発力の強化を図る方針である。
次に、IT感度の高い顧客層を持つという強みである。これらの層は最先端のITデバイスへの感度の高い層であり、またかかる顧客層はそれぞれのITデバイスを使う上で、ソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど様々な利便性、楽しさ、安全性などを要求する。そこで同社グループは、これらの顧客ニーズを満足させるサービスを提供する。
この目指す事業領域が、同グループの標榜しているマルチデバイス・マルチサービスの総合IT企業のイメージである。
(2)中長期ビジョンにおける今回の中期経営計画の位置付け
今後は、日常社会の中でIoT(Internet of Things)化が進展していくことが確実であり、様々な製品がネットワークにつながり、色々なサービスニーズが生まれてくることが予想される。同社グループのビジョンは、無限のビジネスチャンスの可能性を秘めるなかで、非常に遠大で一見夢物語的にも見えるかもしれない。しかし、中長期ビジョンは10年単位のビジョンかもしれないが、足元で何をすべきかという点で、同社グループは着実に具体的な行動計画を立てている。
上記の中長期ビジョンにおける目指す姿を実現するために、2019年までの中期経営計画期間は、まず基盤固めのフェーズという位置づけである。つまり、コア事業であるパソコン関連事業の強化は継続しつつ、デバイスの種類拡充を図る期間としている。そして、各デバイスに関わるサービスについては、進出のための基盤作りを行う方針である。デバイス・サービス、それぞれの新規開発について、必要に応じてM&Aを含めベンチャー企業との事業連携を加速させていく。そのため、同社では、かかる経営のスピードアップを担う経営人材の育成強化を行うとしている。
(3) M&A・アライアンス方針
同社は中長期ビジョンを実現するために、積極的にM&A・アライアンスを行っていくとしており、その基本的な方針を示している。1つは、既存事業関連で、Value Chain強化と製品・顧客軸強化を進めることで、今後の事業拡大のためのオペレーション上の基盤強化と取り扱うデバイスの拡充、商流の強化を図ることである。次に、新規事業関連では、ITデバイスによらない既存事業の枠外の投資やソフトウェア、セキュリティ、コンテンツなど領域は限定しないものの、あくまでデバイス事業との相乗効果が期待できる領域を選択して新事業を探求するとしている。
(4)ベンチャー投資方針
3月24日発表したものづくりベンチャープラットフォーム構想では、「最先端のデバイス情報取得や取扱いデバイスの拡充に、ベンチャー育成をミックスする」とし、投資の基本方針を定めている。同社グループが持つ既存のValue Chain上の開発・仕入・製造・販売・アフターサービスの各機能で培ったノウハウを活かして、投資先のVB(ベンチャー・ビジネス)が自社で対応できない機能を各社のニーズに合わせてテーラーメイド型で補完・支援を行うという考え方である。
したがって、同社グループの各社の事業とのシナジーが期待できるVBを投資対象先とし、事業上のバリューアップありきで投資を行うので、投機目的の投資などは対象外である。また、同社はグループ事業を束ねて、かかる効果的な投資を行うための経営人材を採用・育成していくとしている。
(5)中長期ビジョンに沿った足元の動き
中長期ビジョンに沿って直近では以下のような具体的な活動を行っている。
a)子会社等売却
中長期ビジョンの実現のために、中核事業とは関係性が薄く不採算の事業を整理し、本業回帰するという考えのもとに、下記2子会社の売却を行っている。
●株式会社秀和システム売却
2015年12月22日株式譲渡完了
事業内容:書籍の出版及び販売
売却先:株式会社ウエノグループ
●ティアクラッセ株式会社売却
2016年4月1日株式譲渡完了
事業内容:女性向けアパレル製品の企画・販売及びECサイト運営
売却先:株式会社オンワードホールディングス
b)従来型PCの枠外の製品への進出
●スティックPC
日本初のスティック型のPCを製品化
2015年日経「優秀商品・サービス賞」等を受賞
●Windowsスマートフォン・タブレット
日本初でSIM-freeのWindows版スマートフォンを製品化
タブレット端末も取り扱う
●VR関連製品
Oculus、HTC等のVRに対する高性能PC の提供、GALAXY Microsystems社のVR端末
の取扱い等を積極化
c)ベンチャー企業への投資
●ヒアラブルデバイス開発企業
投資先:株式会社ネイン
事業内容:ヒアラブルデバイスの開発、製造及び販売
契約締結日:2016年11月1日
●VR専用ゲームコンテンツ開発企業
投資先:株式会社桜花一門
事業内容:VRゲームソフトの企画、制作及び販売
契約締結日:2016年11月1日
(6)重要視する事業上の経営管理指標
同社では、4つのKPI(Key Performance Indicators)を最重要KPIとし、安定的にそれぞれの目標値を達成することとしている。尚、同社の掲げる各数値基準は今後のM&A等による一時的な数値指標悪化を考慮した上での下限値であり、前期実績数値よりも悪化する事を前提としているわけでは無い。ROICをKPIに選定しているのは、M&Aを積極的に推進する同社として、この指標をよりどころとするゆえんである。また、株主還元を重視し配当性向については20%以上としており、好業績の今期はさらに上積みして25%とした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)
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