ダイナムジャパンHD Research Memo(3):4つの強みが相互に連関し、強固な経営基盤と他社との差別化を実現
[17/06/29]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
2. ダイナムグループの特長と強み
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の様々な特長・強みの中で、弊社では1)国内トップの店舗数、2)ローコストオペレーション、3)顧客視点の経営、4)資金調達力の4点に注目している。ポイントはそれぞれの強みが互いにつながっていることだ。すなわち、他社が同社と同じ強さを実現するのは容易ではないということだ。
(1) 国内トップの店舗数
同社はグループの店舗数が446店舗(2017年3月末現在)と国内トップを誇る。国内シェアは約4%となる。
店舗数が多いことのメリットは、いわゆる規模の利益(スケールメリット)の獲得にある。スケールメリットは、店舗の新規出店、改装、機械の導入、景品の仕入れ、物流など様々な面に及ぶ。なかでも重要なのは機械の導入だ。店舗数が多いことはパチンコ・パチスロ機の保有台数も当然多くなり、機械メーカーに対するバイイングパワー(価格交渉力)が強まることになる。
スケールメリットの具体的な事例として、2015年11月にグループ化した夢コーポレーションのケースがある。夢コーポレーションは、同社グループに入った後、遊技台購入、物流、金融費用などの各項目で総額約7億円の費用を削減した(年度換算ベース)。これは夢コーポレーションの従来費用の12%に相当する水準だ。
(2)ローコストオペレーション
ローコストオペレーションは同社の競争力の源泉であり、成長戦略を含めたすべての施策を実現し、かつ有効ならしめる裏付けとなっているというのが弊社の理解だ。同社のローコストオペレーションの背景には、チェーンストア理論が理論的裏付けとして存在している。パチンコホール事業の2大経費は人件費と機械費であるが、その直接的な費用の削減だけでなく、少ない従業員数でのオペレーションを可能にする店舗設計や店舗運営システム(各台計数機)の導入、新規出店の標準化など、様々な面にチェーンストア理論が生かされ、同社グループ全体としてのローコスト化につながっている。
前述のように同社は国内トップの446店舗を誇る。これは積極的な多店舗展開策の結果にほかならないが、それを可能ならしめたのもローコストオペレーションのノウハウだ。店舗数が増えると、スケールメリットによるコスト削減という好循環が生まれて、現状の地位があるものと弊社では推測している。また、後述する顧客視点に立った経営も、ローコストオペレーションがあるからこそ実現できていると考えている。
同社がチェーンストア理論を経営に活用するに至った経緯は沿革で述べたとおりだ。同社はまた、志を同じくする同業者と、業界団体「パチンコ・チェーンストア協会(PCSA)」を設立し、チェーンストア理論をパチンコホールの経営に生かす研究を重ねている。またPCSAの活動は、同業他社の経営基盤の強化に貢献しただけでなく、夢コーポレーションのグループ化という形で同社の業容拡大にも貢献した。こうした例は今後も起こる可能性がある。
(3) 顧客視点の経営
同社は5つの経営方針の1つに“顧客第一主義”を掲げ、現に実践している。同様の経営方針を掲げる同業他社はあっても、それを実践できているところは少ないと思われ、同社の特長の1つと弊社では考えている。
“顧客視点に立った経営”とは顧客とホールが共存共栄可能な施策を行うということだと弊社では理解している。その視点から、同社の様々な経営施策のうちで、“低貸玉営業”と、“射幸性に頼らない営業”の2つを特に弊社では評価している。同社はかねてよりパチンコを“時間消費型レジャー”として位置付けており、それを実践していると言える。
a) 低貸玉営業
パチンコは玉を借りて遊ぶという形態となっており、その際の玉を借りる(店側からは玉を貸す)料金が玉貸料で、従来は1玉4円が基本だった。低貸玉営業とは、より安い、1円もしくは2円に引き下げた営業形態のことだ。同じ料金でも客はより多くの玉を借りることができ、それだけ長く遊ぶことが可能になる。低貸玉機の構成比を高くした低貸玉店舗を積極的に展開するほか、従来型店舗内でも低貸玉機の設置を増やし、現在では同社のパチンコ機70.5%、パチスロ機の55.0%が低貸玉機となっており、業界平均を大きく上回っている(2016年12月末時点)。
低貸玉営業店舗は、高貸玉営業店舗に比べて集客力があることは明白にデータに現れている。しかし、この戦略を採用するには、相応の企業体力が必要だ。低貸玉店舗は、高貸玉店舗よりも営業収入が低いのに対して営業費用はそれほど差がないので、利益率が低くなってしまうためだ。それをカバーする方策の1つが店舗数拡大による成長であり、同社はまさにそれを実践してきた。
b) 射幸性に頼らない営業
文字どおり、射幸性の高い機種を集客の中心的な戦略とはしないということだ。パチンコ機には大当たりの確率が高いものから低いものまでたくさんの種類がある。確率が低い機種ほど大当たりした場合の出玉数が多く、パチンコファンはそうした機種を好む傾向がある。したがってパチンコホールも低確率機種(すなわち高射幸性機種)の構成比を高めた店づくりをして集客を行っているところが多い。
しかしながら、2017年3月期にこの射幸性に規制が入り、確率の最低ラインが1/400から1/320へと引き上げられた。これは明確な客離れを招いた。詳細は後述するが、射幸性に対する規制は1/320で終了というわけではなく、今後も規制強化が継続する可能性が高い。高射幸性機種を売り物とする店舗は再び客数減に見舞われる可能性がある。
これに対して同社は、高射幸性機の割合が業界平均に比べて低く、反対に最も射幸性の低い確率1/100タイプの構成比が業界平均よりも20%ポイントも高い構成となっている。射幸性規制の強化の影響は同社も避けられないが、機種構成を反映して相対的にはマイナス影響が軽微であると弊社では考えている。
(4)資金調達力
同社は2012年にパチンコホール業界で初めて香港証券取引所に株式を上場した。約3,500社のパチンコホール企業の中で株式を上場しているのは同社を含めて2社だけだ。今後予想される業界再編において、買い手となれるかどうかの重要な条件の1つが資金調達力であることは議論の余地はないだろう。
同社は2015年11月の夢コーポレーションのグループ化で、上場企業としての強みを生かし、全株式を株式交換により取得した。M&A以外でも将来的にはカジノやリゾート開発など様々な資金需要が想定され、上場企業であることのメリットは非常に大きく働くと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<NB>
2. ダイナムグループの特長と強み
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>の様々な特長・強みの中で、弊社では1)国内トップの店舗数、2)ローコストオペレーション、3)顧客視点の経営、4)資金調達力の4点に注目している。ポイントはそれぞれの強みが互いにつながっていることだ。すなわち、他社が同社と同じ強さを実現するのは容易ではないということだ。
(1) 国内トップの店舗数
同社はグループの店舗数が446店舗(2017年3月末現在)と国内トップを誇る。国内シェアは約4%となる。
店舗数が多いことのメリットは、いわゆる規模の利益(スケールメリット)の獲得にある。スケールメリットは、店舗の新規出店、改装、機械の導入、景品の仕入れ、物流など様々な面に及ぶ。なかでも重要なのは機械の導入だ。店舗数が多いことはパチンコ・パチスロ機の保有台数も当然多くなり、機械メーカーに対するバイイングパワー(価格交渉力)が強まることになる。
スケールメリットの具体的な事例として、2015年11月にグループ化した夢コーポレーションのケースがある。夢コーポレーションは、同社グループに入った後、遊技台購入、物流、金融費用などの各項目で総額約7億円の費用を削減した(年度換算ベース)。これは夢コーポレーションの従来費用の12%に相当する水準だ。
(2)ローコストオペレーション
ローコストオペレーションは同社の競争力の源泉であり、成長戦略を含めたすべての施策を実現し、かつ有効ならしめる裏付けとなっているというのが弊社の理解だ。同社のローコストオペレーションの背景には、チェーンストア理論が理論的裏付けとして存在している。パチンコホール事業の2大経費は人件費と機械費であるが、その直接的な費用の削減だけでなく、少ない従業員数でのオペレーションを可能にする店舗設計や店舗運営システム(各台計数機)の導入、新規出店の標準化など、様々な面にチェーンストア理論が生かされ、同社グループ全体としてのローコスト化につながっている。
前述のように同社は国内トップの446店舗を誇る。これは積極的な多店舗展開策の結果にほかならないが、それを可能ならしめたのもローコストオペレーションのノウハウだ。店舗数が増えると、スケールメリットによるコスト削減という好循環が生まれて、現状の地位があるものと弊社では推測している。また、後述する顧客視点に立った経営も、ローコストオペレーションがあるからこそ実現できていると考えている。
同社がチェーンストア理論を経営に活用するに至った経緯は沿革で述べたとおりだ。同社はまた、志を同じくする同業者と、業界団体「パチンコ・チェーンストア協会(PCSA)」を設立し、チェーンストア理論をパチンコホールの経営に生かす研究を重ねている。またPCSAの活動は、同業他社の経営基盤の強化に貢献しただけでなく、夢コーポレーションのグループ化という形で同社の業容拡大にも貢献した。こうした例は今後も起こる可能性がある。
(3) 顧客視点の経営
同社は5つの経営方針の1つに“顧客第一主義”を掲げ、現に実践している。同様の経営方針を掲げる同業他社はあっても、それを実践できているところは少ないと思われ、同社の特長の1つと弊社では考えている。
“顧客視点に立った経営”とは顧客とホールが共存共栄可能な施策を行うということだと弊社では理解している。その視点から、同社の様々な経営施策のうちで、“低貸玉営業”と、“射幸性に頼らない営業”の2つを特に弊社では評価している。同社はかねてよりパチンコを“時間消費型レジャー”として位置付けており、それを実践していると言える。
a) 低貸玉営業
パチンコは玉を借りて遊ぶという形態となっており、その際の玉を借りる(店側からは玉を貸す)料金が玉貸料で、従来は1玉4円が基本だった。低貸玉営業とは、より安い、1円もしくは2円に引き下げた営業形態のことだ。同じ料金でも客はより多くの玉を借りることができ、それだけ長く遊ぶことが可能になる。低貸玉機の構成比を高くした低貸玉店舗を積極的に展開するほか、従来型店舗内でも低貸玉機の設置を増やし、現在では同社のパチンコ機70.5%、パチスロ機の55.0%が低貸玉機となっており、業界平均を大きく上回っている(2016年12月末時点)。
低貸玉営業店舗は、高貸玉営業店舗に比べて集客力があることは明白にデータに現れている。しかし、この戦略を採用するには、相応の企業体力が必要だ。低貸玉店舗は、高貸玉店舗よりも営業収入が低いのに対して営業費用はそれほど差がないので、利益率が低くなってしまうためだ。それをカバーする方策の1つが店舗数拡大による成長であり、同社はまさにそれを実践してきた。
b) 射幸性に頼らない営業
文字どおり、射幸性の高い機種を集客の中心的な戦略とはしないということだ。パチンコ機には大当たりの確率が高いものから低いものまでたくさんの種類がある。確率が低い機種ほど大当たりした場合の出玉数が多く、パチンコファンはそうした機種を好む傾向がある。したがってパチンコホールも低確率機種(すなわち高射幸性機種)の構成比を高めた店づくりをして集客を行っているところが多い。
しかしながら、2017年3月期にこの射幸性に規制が入り、確率の最低ラインが1/400から1/320へと引き上げられた。これは明確な客離れを招いた。詳細は後述するが、射幸性に対する規制は1/320で終了というわけではなく、今後も規制強化が継続する可能性が高い。高射幸性機種を売り物とする店舗は再び客数減に見舞われる可能性がある。
これに対して同社は、高射幸性機の割合が業界平均に比べて低く、反対に最も射幸性の低い確率1/100タイプの構成比が業界平均よりも20%ポイントも高い構成となっている。射幸性規制の強化の影響は同社も避けられないが、機種構成を反映して相対的にはマイナス影響が軽微であると弊社では考えている。
(4)資金調達力
同社は2012年にパチンコホール業界で初めて香港証券取引所に株式を上場した。約3,500社のパチンコホール企業の中で株式を上場しているのは同社を含めて2社だけだ。今後予想される業界再編において、買い手となれるかどうかの重要な条件の1つが資金調達力であることは議論の余地はないだろう。
同社は2015年11月の夢コーポレーションのグループ化で、上場企業としての強みを生かし、全株式を株式交換により取得した。M&A以外でも将来的にはカジノやリゾート開発など様々な資金需要が想定され、上場企業であることのメリットは非常に大きく働くと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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