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中電工 Research Memo(3):都市圏の事業拡大を進める

注目トピックス 日本株
■事業概要

1. 地域別状況
2017年3月期における地域別売上高構成比(個別)は、中国地方が93%、その他が7%であった。本社を構える広島県のウェイトが最も高く、35%を占めた。続いて、岡山県が24%、山口県18%、島根県10%、鳥取県が6%。中国地方以外では、東京が4%、大阪が2%、九州が1%となった。

中電工<1941>の事業体制は、本店(広島市)を置く中国地方に広島統括支社、広島中部支社、広島東部支社、岡山統括支社、倉敷支社、山口統括支社、山口東部支社、島根統括支社、鳥取統括支社の9つの拠点を置く手厚い陣容を敷いている。また、広島に電力建設所を岡山、山口、島根、鳥取に電力センターを配置している。小規模事業場を含めると、中国地域の事業所数は103ヶ所になる。日本の電力会社は、高品質の電力供給体制を確立しており、停電時間などは世界に比べて極めて短い。電力系工事会社も、現場に近いところに拠点を設け、万全のバックアップ体制を整えている。中国5県以外の事業エリアは、東京と大阪に本部を設け、九州に支社を置いている。全事業所数は、2017年4月現在、114ヶ所を数える。

国立社会保障・人口問題研究所が2013年3月に発表した「日本の地域別将来推計人口」によると、日本の総人口層は2010年の1億2,806万人から2025年までに5.8%減少、2040年では16.2%減少すると推定された。中国地方は、2025年までに8.5%減、2040年では20.2%減といずれも全国平均よりも大きな減少率となる。同社の本拠とする広島県の減少率は、それぞれ6.0%、16.4%だが、島根県と鳥取県の落ち込みが大きい。こうした想定を踏まえ、同社では、中国地方をベースとしながらも東京、大阪、名古屋等などの都市圏での事業拡大を目指す。

2. 部門別動向
電力関係の配電線工事と発送変電工事の需要は比較的安定している。大きな割合を占める屋内電気工事と空調管工事は、景気の波の影響を受ける。

(1) 配電線工事及び発送変電工事
中国電力等の配電線・引込線・地中配電線及び発送変電設備・地中送電線の新設、改修工事の施工を行っている。電力会社の設備投資の項目は、大きく電源、電力輸送、その他の3つに分かれる。電力輸送は、送電、変電、配電をカバーする。中国電力の電力輸送に関する設備投資額は、1999年度の991億円から、2005年度に限界ギリギリの302億円まで削られた。2016年度には511億円まで回復した。

電力会社向け工事は、比較的定型化されており、長年の蓄積から工法や体制も整備されている。そのため、施工効率が良く、一定の収益を確保できる。電柱などに経年劣化がみられ、更新投資が不可欠であることから、同社にとって安定した需要が見込め、業績を下支えする。ただし、成長余地は乏しい。現在、電力会社は、原子力発電所の稼働が停止していることが収益の圧迫要因となっている。同社に対しても、単価の引き下げ要請があり、電力会社と工法の改善などについて協働することで、単価改定の余地を作るようにしている。

(2) 屋内電気工事、空調管工事、情報通信工事
屋内電気工事は、ビル、工場、病院、店舗、学校、住宅などの電気設備やプラント、防災設備等の設計・施工を手掛ける。空調管工事は、ビル、工場、病院、店舗、学校、住宅等の空調、冷暖房、給排水、衛生、上下水道等の設計・施工になる。情報通信工事は、主に各県や市町村の地域情報基盤整備、防災無線・消防無線等の設計、施工になる。

2008年9月のリーマンショックに端を発した世界金融危機は、日本にも影響が波及し、実質経済成長率が2007年の2.2%から2008年はマイナス1.0%、2009年がマイナス5.5%へ落ち込んだ。金融市場における信用収縮に対応するため、民間企業は資金繰りを最優先して、設備投資を絞った。さらに、2011年春に東日本大震災が発生し、その後の日本企業は円高、高い法人税率、貿易自由化への対応の遅れ、労働規制、環境規制の強化、電力不足と六重苦に陥った。輸出産業は、為替変動の収益への影響を抑制するため、地産地消の動きが強まり、生産拠点を国内から海外へ移管することが加速化した。

2012年12月以降に始動したアベノミクス、日銀による「異次元の金融緩和策」、円安、株式や不動産価格の上昇が、民間企業の投資意欲を刺激した。さらに、地球温暖化の防止、エネルギー自給率の向上を目的に、再生可能エネルギーの普及を促進する政策がメガソーラーなどの太陽光発電システムの需要を拡大するなどビジネス機会を創出した。

a) 太陽光発電設備工事
日本は、2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を導入した。国の定めた固定価格で電気事業者が一定期間調達を義務付けられたため、再生可能エネルギーによる発電事業者は投資に対するリターンの確定がしやすくなった。特に、非住宅の太陽光発電は、買取期間が20年、買取価格が1キロワット時当たり40円と他の再生可能エネルギーよりも有利であったことから、メガソーラーの市場が立ち上がった。

太陽光発電の買取価格が年を追うごとに下がり、10kW以上の買取価格は2017年度に21円まで下落した。これ以降、市場の動向を見て価格改定が検討されることになった。大幅な買取価格の下落に加えて、電力各社が不安定電源である太陽光発電との新規連携手続きを保留にするなどの措置を講じたことが投資意欲を減退させた。さらに、事業認定を取得した未稼働案件が大きな問題となっていたことから、改正FIT法により2017年4月までに電力会社との接続契約が締結できていない場合は、原則、認定が失効となった。その規模は、認定された出力全体の約4分の1相当となった。

同社は、メガソーラーの新市場における太陽光発電設備工事の受注獲得に積極的に取り組んだため、受注高は2013年3月期に92億円、2014年3月期に183億円、2015年3月期に215億円と順調に拡大した。同3期間の売上高も、42億円、145億円、219億円と急増した。ピークとなった2015年3月期の太陽光発電設備工事の規模は、屋内電気工事の29.2%、総売上高の16.4%を占めた。メガソーラーのパネル設置・接続工事は、ビル・工場などの屋内電気工事に比べると約3〜4倍の作業効率を実現できる。しかし、固定買取価格の下落により、今後は同工事の需要減少が見込まれており、全体の減収の要因となる。2018年3月期を最終年度とする中期経営計画の営業利益目標値を抑える一因となった。

同社は、「瀬戸内kirei太陽光発電所建設プロジェクト」に参加している。岡山県瀬戸内市の塩田跡地に敷地面積約265ヘクタール、ソーラーパネル約90万枚、電力供給量約230MWのメガソーラーを建設する。2012年8月に運営母体が設立され、同社も10%資本出資をしている。売電価格は20年間、1kWh当たり40円で固定されている。2018年6月に試運転に入り、2019年4月から本運転を開始する予定だ。同社は、同プロジェクトに関わる電気工事と運転開始後の20年にわたる発電所の運用・保守業務を担当する。電気設備工事の進捗は、2017年3月期末で約4割まで進み、2018年3月期で約9割を達成する予定になっている。同プロジェクトが寄与し、今期の太陽光発電設備工事の売上高は80億円を計画している。期中の受注高が20億円に減少するとみていることから、大型プロジェクトが終了する来期以降の太陽光関連は、大幅な減収となるだろう。

b) リニューアル工事
少子高齢化が進む日本では、新規投資の需要が少ないため、同社は中国5県に専任担当者をおいてリニューアル工事の獲得に注力している。LED照明への交換など、主に省エネ及び環境関連の積極的な提案営業を展開している。自社主導による案件獲得のため、同社が元請となる場合も多く、採算面でも良い。2017年3月期の受注高が337億円、売上高は286億円と順調に伸び、総受注高・売上高の2割強を占めた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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