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丸運 Research Memo(4):「丸運グループ長期経営ビジョン」を策定

注目トピックス 日本株
■今後の課題・展望

運送業界は、景気動向といった経済的な要因のほかに、慢性的な人手不足など業界内で深刻な問題を抱えている。丸運<9067>は、こうした業界の事情だけではなく、大口の顧客である石油業界の再編に伴うビジネスの縮小という要因もあり、解決すべき課題は少なくない。

そのため、同社はまず、社員のマインドを変えることに着手した。具体的に実施しているのは、「守りの丸運」と称しながら肝心の守備に綻びが生じていることから、それを是正するため、パラダイムシフト研修を実行している。管理職、中間管理職、一般社員の各階層に分け、全部で12の研修を新たにスタートし、社員の意識構造を変えるように努めている。

さらに、今後も成長を目指すために、以下に示すような様々な施策を講じ、成果が現われ始めている。

1. 丸運グループ長期経営ビジョン(2017〜2026)
前述した研修の充実を具体例とする、業務及び意識改革を目的とする「丸運イノベーション」を柱とした経営計画体系を整備するとともに、同社グループの10年後のあるべき姿を示す「丸運グループ長期経営ビジョン」を策定した。ここでは、今後10年間に2%以上の成長を続けることで、組織・個人ともに20%以上パワーアップした姿に進化することを目指す。

具体的な数値目標として、営業収益600億円以上、経常利益20億円、売上高経常利益率3.5%以上を設定。また、今後、働き方改革が進むとみられるなか、1人当たりの年間労働量20%削減、女性社員(スタッフ、ドライバー、オペレーター)比率20%以上増加、外国籍社員(海外採用含む)20%以上占有などを目標として挙げた。

2. 中期経営計画
「丸運グループ長期経営ビジョン」の実現を確たるものとするために、2018年3月期をスタートとする新たな中期経営計画を再策定した。各部門において様々な施策を打ち出しているが、貨物輸送においては拠点統廃合、石油輸送についてはJXTGホールディングス統合への対応、国際貨物に関しては中国の強化と東南アジア拠点の確立などがポイントになってきそうだ。

数値目標としては、最終年度の2020年3月期に、売上高530億円、経常利益16億円を掲げている。

3. 縮小する石油輸送への対応
2017年4月1日にJXホールディングスは東燃ゼネラルと統合、JXTGホールディングスが誕生した。新会社は合併に伴って1,000億円規模の統合シナジーを実施するため、その余波が大きいと想定される。

中期的に見ても、石油輸送はパイが縮小傾向にあるとみられ、実際、会社側の中期経営計画も市場縮小を前提としており、長期ビジョンで示した年2%成長を確保するためには、他の部門で年3〜4%成長を確保するとともに、石油輸送部門でいかに守るかが課題になりそうだ。

同社は、関西地区で旧JX系のビジネスで強みを持っていたが、エクソン・モービル系も関西に強いことから、そこから顧客を取り込むほか、コスト削減にも努めていく。さらに、石油輸送については、ドライバーの確保も重要な課題だ。危険物を取り扱うため有資格者でなければならず、特に需要期の冬場はドライバーを取り合う状況になっているという。今後もドライバー確保に全力を注ぐ。

4. 海外事業
現在、中国では丸運国際貨運代理(上海)有限公司 、丸運安科迅物流(常州)有限公司、丸運物流(天津)有限公司などの拠点があるが、機能集約を行い、湾岸部を基点に、点から線へ、線から面へとネットワークを広げていく。

他方、2017年8月に現地法人化したベトナムでは、同国を拠点にメコンデルタ地域を攻めていく方針である。ここに来るまで、日本企業のベトナム進出が活発化しており、それら日系企業の輸送面をサポートする考えだ。

5. ドライバー不足
ドライバー不足については、ヤマト運輸などのBtoC中心の業者に比べて、同社のようなBtoB業者はより深刻な問題となっている。宅配便の配達には普通免許で対応可能だが、路線トラックでは大型免許が必須で、対象ドライバーの数が限定されるからだ。

大型免許は取得に時間を要するため、ドライバーが一朝一夕に増えず、トレーラーの運転に必要なけん引免許は実運転経験が必要で、取得がさらに難しいうえに労働時間の問題も加わる。

同社は、ビジネスのあり方を変えることを顧客に要請することで対応する。例えば、従来だと集荷の際、待ち時間などのロスは業務外と位置付けていたが、それもトータルで業務に含めていく。そうすることで、効率化を図ることができる。いずれにしても、ドライバー不足が成長を目指すうえで、解決しなければならない課題になっていきそうだ。

6. 値上げ機運について
ドライバー不足も大きな要因となっている値上げ機運については、現状では宅配などのBtoC業者は喫緊の課題として取り組み、BtoB業者はもよう眺めだという。値上げは、宅配、路線トラック専業、そして同社のような企業の順で波及していくとみられる。

会社側では、値上げについて下期の収益計画に織り込んでいない。値上げによって得られた利益は、ドライバー確保など労務関係の改善費用になるとしている。

7. システムイノベーション
同社のシステムは旧型で、今後の事業発展を踏まえると対応が難しくなるため、4つの基幹システムについて、2019年3月期からシステム投資を実施。新システムは2020年7月の稼働を目指す。

成長戦略に不可欠な投資ではあるが、投資金額が大きくなるため、この投資は中期計画の枠外で実行するという。なお、資金面については長期借入金で対応する。

8. M&Aに関しての考え方
M&Aについては、長期的な成長戦略に不可欠との考えだ。国内に関しては、一般貨物について、良いパートナーがあればタイミングを計ってM&Aを実行する。海外については、海外のコンサルを通じて日系企業ではなく、現地資本の企業を考え、拠点のあるベトナムの企業がターゲットになりそうだ。

M&Aを実施する場合、資金は長期借入金と手持ち資金にも余裕があるため、借入れと自己資金で賄うという。

9. 新規事業・案件
新規事業・案件は持っているノウハウを活用して開拓する。例えば、一般的に既存の冷蔵倉庫は老朽化しており、きめ細かな対応ができない。同社の冷蔵倉庫は5温度帯(常温・定温・冷蔵・ 氷温・冷凍)物流で対応しており、これらを活用すれば、後発でも十分ビジネスチャンスがあると目論む。CVS(コンビニエンスストア)のスイーツに関する案件も、こうしたノウハウを武器に獲得した。

また、CSR的な事業にも、実ビジネスにつながるものに積極的に取り組んでいる。その1つがスポーツ物流で、例えば、大学の事業は基本的に入札だが、学生の自主的な活動である部活についてはその限りではない。運動部の遠征などを効率的に行い、部のコスト削減になるような運送を提案し、アマチュアスポーツをサポートする。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)



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