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アーバネット Research Memo(10):既存事業の拡大を軸とし、持続的な成長を目指す

注目トピックス 日本株
■今後の方向性と進捗

アーバネットコーポレーション<3242>の成長戦略は、既存事業の拡大を軸としつつ、ストックビジネス(自社保有の賃貸収益物件やホテル事業など)や子会社によるBtoC事業(マンション管理及び賃貸事業等)の強化により、事業ポートフォリオの拡充と財務基盤の安定化を図るものである。

1. 既存事業の拡大
既存事業については、都心での用地仕入れが難しい状況となってきたなかで、アパートなど新しい分野への挑戦や開発エリアの見直しなどにより業績の伸び(高い水準での業績の維持)を継続する方針である。特に、新しい分野への挑戦については、従来の投資用マンションの用地としては取得してこなかった狭小用地の活用ができることや、1棟当たりの投資金額が小さいことから投資ニーズを幅広く広い上げることができるところに狙いがある。前期(2017年6月期)はアパート1棟(12戸)の販売実績を上げ、今期(2018年6月期)もアパート3棟24戸、テラスハウス2棟13戸を予定しており、今後も一定量をコンスタントに手掛けていく構えだ。規模や収益性では投資用マンションに劣位するものの、実績を積み上げることで用地情報を入手しやすくなる好循環が期待でき、新たな成長ドライバーの1つとなる可能性も高い。

また、開発エリアの見直しについても、前述したように、これまであまり手掛けてこなかったものの、最近人気が高くなってきたエリアへの展開などに注力する方針である。さらに中長期的な視点からは、少子高齢化や離婚率及び生涯未婚率の上昇などが見込まれるなかで、若年層以外の単身所帯の増加に向けて、シニア向けマンションなど新しい需要の取り込みも視野に入れているようだ。

2. ストックビジネスの強化
ストックビジネスの強化については、ここ数年、賃貸収益物件を自社保有することによる安定収益源や融資担保の確保に取り組んできた。2017年12月末の賃貸収益物件は6棟となり、年間の不動産収入は約400百万円(弊社推定)にまで拡大している。今後も賃貸収益物件を着実に増やしていくとともに、新たに開始したホテル事業がストックビジネスの拡大に寄与する見通しである。なお、ホテル事業については、まずは既存6施設の取得及び賃貸からスタートしたが、来期以降においては自社開発物件1号店のオープンを目指すとともに、それが軌道に乗ってくれば少なくとも20〜30店舗までは拡大する計画を描いている。B&B型※のロードサイドホテルであり、平日は出張族、週末は旅行者(家族等)による安定稼働を見込むとともに、比較的投資規模が小さい(弊社推定では1件当たり平均3億円程度の規模)ことから、ローリスク・ローリターンの事業と位置付けることができる。

※Bed and Breakfast の略。朝食付きの比較的低価格の宿泊施設を目指す。


3. BtoC事業の拡大
同社の中核事業である投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売では、物件竣工後のマンション販売会社への物件引き渡しで事業のルーチンが完了しており、同社が開発してきた分譲マンションにおいても、戸別分譲後はマンション管理等については管理会社に引き継いで終了としてきた。すなわち、賃貸管理並びにマンションビル管理等の収益については対応しておらず、取りこぼしてきた感があるが、アーバネットリビングの設立により、この分野での収益が可能となることから、ボリュームビジネスと言われるこの分野も積極的に推進を図っていく。

なお、2015年3月に設立したアーバネットリビングについては、これまで同社内にあった分譲用マンションの販売部門を別会社化し、自社保有の賃貸収益物件の管理や他社物件の買取販売などにより順調に立ち上がってきた。今後は、年間500戸以上を供給している投資用マンションの一部の管理業務を販売先との調整が可能なものに限って取り込む可能性を追求するほか、ホテル事業の運営を含め、他社との提携やM&Aも視野に入れた事業拡大により、グループ全体の収益力の底上げを図る方針である。

弊社では、都心における投資用ワンルームマンションは、循環的な景気変動の影響や一時的な相場調整等により強弱を繰り返しながらも、持続的な成長が可能な市場であるとみているが、その一方で、事業ポートフォリオの拡充及び安定収益源の確保は同社にとって重要な中長期的テーマと考えている。特に、財務基盤の安定化は、リスク対応力はもちろん、新たな成長に向けた投資の原動力となることから、業績が好調な今のうちにしっかりとした手を打つことは合理的な戦略と言えるだろう。

さらに長期的な視点からは、国内人口が減少傾向をたどるなかで、持続的な成長を実現するためには、新たな需要を取り込む分野へのチャレンジも視野に入れる必要があるだろう。弊社では、これまで都心及び好立地にて、小さくても快適な居住空間を開発してきた同社にとって、そのノウハウやネットワークが生かせる宿泊施設やシニア向けマンションへの進出は成功への確率が高いものと評価している。また、今後、市場が縮小する環境下においては、周辺分野を含めて業界淘汰に伴う成長機会(残存者利益の享受)が顕在化する可能性もある。いずれにしても、持続的な成長のためには、強固な財務基盤をしっかりと維持・拡大していくことと、投資機会の取捨選択の判断、及びそのタイミングが一層重要となると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



<NB>

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