オンコリス Research Memo(1):テロメライシンの治験が日米で進捗、併用療法での開発に関心が高まる
[18/03/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャー。開発品の上市実績はまだなく、現在は国内及び米国で臨床試験を行う開発ステージの企業となる。
1. 食道がん、メラノーマ等を対象とした臨床試験が国内外で進む
同社の主要パイプラインであるテロメライシンの臨床試験が国内外で進んでいる。国内では食道がんを対象に放射線治療との併用による第1相臨床試験が2017年7月よりスタート。2019年に第2/3相試験を開始し、先駆け審査指定制度※1などを用いた承認申請を目指す。また、食道がん等の固形がんを対象としたチェックポイント阻害剤との併用による第1相の医師主導臨床試験も国立がん研究センター東病院で同年12月より開始され、2018年中にも中間報告が発表される見通しだ。一方、海外では米国でメラノーマを対象とした単剤での第2相臨床研究が2017年7月より開始されたほか、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法により、2019年以降に胃がんや胃食道接合部がんを対象に臨床試験が開始される可能性が出てきている。米国のNRG Oncology※2が最新治療法としてテロメライシンに関心を寄せているためだ。また、台湾・韓国では提携先のMedigen Biotechnology Corp.(以下、Medigen)と共同で肝細胞がんを対象とした第1/2相臨床試験での反復投与試験を実施中。同臨床データをもって中国の提携先である江蘇恒瑞医薬股フン有限公司(以下、ハンルイ)※3が自社のチェックポイント阻害剤(承認申請中)との併用による第2相臨床試験を2018年中にも開始したい考えだ。
※1 先駆け審査指定制度は、対象疾患の重篤性など、一定の要件を満たす画期的な新薬などについて、薬事承認に関する相談・審査で優先的な取扱いをすることで、承認審査の期間を短縮し、早期の実用化を目指すもの。通常の新医薬品の場合、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行っているが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月に短縮することが可能となる。
※2 がんの治療法に関するガイドラインの策定や臨床試験を実施する非営利団体組織。臨床試験は国立がん研究所の資金援助によって行われている。
※3 ハンルイはがん治療薬を中心とした中国の大手製薬メーカーで、2016年度の売上高は約1,800億円、従業員数は約1.3万人を有している。
2. その他パイプラインの開発動向
その他のパイプラインでは、「OBP-801」(エピジェネティックがん治療薬)に関して眼科領域での非臨床研究が京都府立医科大学で進んでいる。当初は緑内障手術後の瘢痕形成抑制を対象に研究を進めていたが、白内障や加齢黄斑変性にも薬効が確認できるデータが取れ始めていると言う。当面は非臨床研究が続く見通しだが、ニーズの高い領域であるため、今後の動向が注目される。また、がん検査薬のテロメスキャンに関しては、2017年11月に順天堂大学呼吸器内科と共同研究契約を締結した。がんの早期発見・再発診断用としての実用化に取り組んでいく方針。米国では非小細胞肺がんの再発診断目的での臨床研究を2018年から開始する予定のほか、子宮頸がんの診断用としての臨床研究もニューヨーク大学と協議を進めている。子宮頸がん検査は従来、子宮頸部の細胞を採取する必要があったが、テロメスキャンでは血液検査により、CTC(血中循環がん細胞)が子宮頸がんの原因因子であるHPVに感染しているかどうかを調べるだけで診断が可能となる。手軽に検査できるため、実用化されれば需要は大きい。また、テロメスキャンについては現在、米国及び韓国で現地企業とライセンス契約を締結している。
3. 業績動向
2017年12月期の業績は、売上高で前期比28.5%増の229百万円、営業損失で1,078百万円(前期は861百万円の損失)となった。売上高はマイルストーン収入やMedigenからの開発協力金の計上により増収となった。一方、臨床試験の開始等による研究開発費の増加で営業損失は拡大した。2018年12月期は売上高で前期比0.4%増の230百万円、営業損失で1,400百万円を見込む。今期もマイルストーン収入を計上する一方で、研究開発費や特許費用の増加が続く。また、2018年2月には米バイオベンチャーのUnleash Immuno Oncolytics, Inc.(以下、アンリーシュ)への出資を発表している。アンリーシュは遺伝子改変アデノウイルスの開発に特化したバイオベンチャーで、従来実現できなかった全身投与による転移性腫瘍に向けた開発を進めている。今回、アンリーシュの転換社債3百万米ドルを同社が引き受けることで(すべて行使されれば議決権比率は約27%)、「遺伝子改変アデノウイルスを用いたがんのウイルス療法」のプラットフォームを拡大し、「がんと重症感染症」パイプラインを推進し、将来的なビジネスチャンス拡大につなげていく考えだ。
Key Points
・ウイルス製剤を用いた医薬品事業及び検査薬事業を展開
・食道がん、メラノーマ等の固形がんを対象に日米で臨床試験を開始、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に関心高まる
・米バイオベンチャー2社に出資し、遺伝子改変アデノウイルスを用いたウイルス療法のプラットフォームを拡充、ビジネスチャンスを広げる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャー。開発品の上市実績はまだなく、現在は国内及び米国で臨床試験を行う開発ステージの企業となる。
1. 食道がん、メラノーマ等を対象とした臨床試験が国内外で進む
同社の主要パイプラインであるテロメライシンの臨床試験が国内外で進んでいる。国内では食道がんを対象に放射線治療との併用による第1相臨床試験が2017年7月よりスタート。2019年に第2/3相試験を開始し、先駆け審査指定制度※1などを用いた承認申請を目指す。また、食道がん等の固形がんを対象としたチェックポイント阻害剤との併用による第1相の医師主導臨床試験も国立がん研究センター東病院で同年12月より開始され、2018年中にも中間報告が発表される見通しだ。一方、海外では米国でメラノーマを対象とした単剤での第2相臨床研究が2017年7月より開始されたほか、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法により、2019年以降に胃がんや胃食道接合部がんを対象に臨床試験が開始される可能性が出てきている。米国のNRG Oncology※2が最新治療法としてテロメライシンに関心を寄せているためだ。また、台湾・韓国では提携先のMedigen Biotechnology Corp.(以下、Medigen)と共同で肝細胞がんを対象とした第1/2相臨床試験での反復投与試験を実施中。同臨床データをもって中国の提携先である江蘇恒瑞医薬股フン有限公司(以下、ハンルイ)※3が自社のチェックポイント阻害剤(承認申請中)との併用による第2相臨床試験を2018年中にも開始したい考えだ。
※1 先駆け審査指定制度は、対象疾患の重篤性など、一定の要件を満たす画期的な新薬などについて、薬事承認に関する相談・審査で優先的な取扱いをすることで、承認審査の期間を短縮し、早期の実用化を目指すもの。通常の新医薬品の場合、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行っているが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月に短縮することが可能となる。
※2 がんの治療法に関するガイドラインの策定や臨床試験を実施する非営利団体組織。臨床試験は国立がん研究所の資金援助によって行われている。
※3 ハンルイはがん治療薬を中心とした中国の大手製薬メーカーで、2016年度の売上高は約1,800億円、従業員数は約1.3万人を有している。
2. その他パイプラインの開発動向
その他のパイプラインでは、「OBP-801」(エピジェネティックがん治療薬)に関して眼科領域での非臨床研究が京都府立医科大学で進んでいる。当初は緑内障手術後の瘢痕形成抑制を対象に研究を進めていたが、白内障や加齢黄斑変性にも薬効が確認できるデータが取れ始めていると言う。当面は非臨床研究が続く見通しだが、ニーズの高い領域であるため、今後の動向が注目される。また、がん検査薬のテロメスキャンに関しては、2017年11月に順天堂大学呼吸器内科と共同研究契約を締結した。がんの早期発見・再発診断用としての実用化に取り組んでいく方針。米国では非小細胞肺がんの再発診断目的での臨床研究を2018年から開始する予定のほか、子宮頸がんの診断用としての臨床研究もニューヨーク大学と協議を進めている。子宮頸がん検査は従来、子宮頸部の細胞を採取する必要があったが、テロメスキャンでは血液検査により、CTC(血中循環がん細胞)が子宮頸がんの原因因子であるHPVに感染しているかどうかを調べるだけで診断が可能となる。手軽に検査できるため、実用化されれば需要は大きい。また、テロメスキャンについては現在、米国及び韓国で現地企業とライセンス契約を締結している。
3. 業績動向
2017年12月期の業績は、売上高で前期比28.5%増の229百万円、営業損失で1,078百万円(前期は861百万円の損失)となった。売上高はマイルストーン収入やMedigenからの開発協力金の計上により増収となった。一方、臨床試験の開始等による研究開発費の増加で営業損失は拡大した。2018年12月期は売上高で前期比0.4%増の230百万円、営業損失で1,400百万円を見込む。今期もマイルストーン収入を計上する一方で、研究開発費や特許費用の増加が続く。また、2018年2月には米バイオベンチャーのUnleash Immuno Oncolytics, Inc.(以下、アンリーシュ)への出資を発表している。アンリーシュは遺伝子改変アデノウイルスの開発に特化したバイオベンチャーで、従来実現できなかった全身投与による転移性腫瘍に向けた開発を進めている。今回、アンリーシュの転換社債3百万米ドルを同社が引き受けることで(すべて行使されれば議決権比率は約27%)、「遺伝子改変アデノウイルスを用いたがんのウイルス療法」のプラットフォームを拡大し、「がんと重症感染症」パイプラインを推進し、将来的なビジネスチャンス拡大につなげていく考えだ。
Key Points
・ウイルス製剤を用いた医薬品事業及び検査薬事業を展開
・食道がん、メラノーマ等の固形がんを対象に日米で臨床試験を開始、放射線治療や免疫チェックポイント阻害剤との併用療法に関心高まる
・米バイオベンチャー2社に出資し、遺伝子改変アデノウイルスを用いたウイルス療法のプラットフォームを拡充、ビジネスチャンスを広げる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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