オンコリス Research Memo(3):がん治療に関わるプロセスを網羅的にカバー
[18/03/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■開発パイプラインの動向
オンコリスバイオファーマ<4588>は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、がんや重症感染症等の医療ニーズ充足に貢献する新薬の開発を行っている。
特にがん領域では、固形がんの局所療法として腫瘍溶解ウイルスのテロメライシン、並びに第2世代テロメライシンの開発を進めるとともに、がんの早期発見または術後検査を行うCTC(血中循環がん細胞)検査薬のテロメスキャン、がんの全身療法を目指すエピジェネティックがん治療薬OBP-801の開発を進めている。がんの早期発見から治療、術後検査、転移がん治療に至るまで、がん治療に関わるプロセスを網羅的にカバーしていることが特徴と言える。以下、主要な開発パイプラインの概要について説明する。
1. テロメライシン
(1) 概要
テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルスのことで、腫瘍溶解性ウイルス製剤の一種である。テロメライシンの特徴は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に感染することでテロメライシンを複製させ、自己増殖的に増加してがん細胞を破壊していくことにある。このため、テロメライシンは局所的ながん細胞だけでなく、周辺のがん細胞まで破壊することが可能であり、治療効果の高いウイルス製剤とされている。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るが、軽度なものであり人体の安全性に問題はないとされている。また、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため、副作用も少ない。オンコリスバイオファーマ<4588>では食道がんやメラノーマなど固形がんを対象疾患として、開発を進めている。
(2) 開発状況
テロメライシンについては国内と米国、台湾・韓国にて、合計5つのプロジェクトが進んでいる。
a) 食道がん(放射線療法との併用)
2013年より岡山大学にて行っている医師主導の臨床研究では、手術不能な末期の食道がん患者を対象に、テロメライシンと放射線治療との併用治療を行っている。治療期間6週間で、週5日の放射線治療とテロメライシンを合計3回投与し、腫瘍縮小効果を見ると言うもの。予定していた13例の組入れが完了し、そのうち2018年2月時点で11例が終了。2018年3月までにはすべての症例が終了し、岡山大学でデータの集計と解析を行い学会発表する予定となっている。
今後については、同社が2017年7月より開始した臨床試験に引き継がれていく。現在、第1相臨床試験を岡山大学と国立がん研究センター東病院にて実施しており、全6例中、3例の組入れが完了しており、2018年中にはすべて完了する予定となっている。初期ステージの食道がんで外科手術による切除や根治的化学放射線療法が困難な患者(高齢者等)を対象としている。既に医師主導臨床研究でも好結果が出ているため、順調に次の段階に進む可能性が高い。同社ではオーファン・ドラッグ申請を近々行う準備を進めているほか、先駆け審査指定制度を使った早期承認も目指していく考えで、厚生労働省との協議を進めている。順調に進めば、2019年から第2/3相臨床試験が開始される見込みで、症例数10〜20例程度だとすれば臨床試験期間として1年程度は少なくともかかると見られる。このため、薬事承認申請の時期としては2020〜2021年頃が目標となってくる。
b) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用)
国内では食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんを対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブとの併用療法による医師主導の第1相臨床試験が、2017年12月より国立がん研究センター東病院等で開始された。症例数は28例を予定しており、2018年2月時点で2例の組み込みが完了、2020年7月頃の終了を目途としている。
c) メラノーマ(単剤→免疫チェックポイント阻害剤との併用)
米国では第3、4ステージの切除不能、または転移性メラノーマ患者を対象とした第2相臨床試験が2017年7月から開始されている。症例数は最大50例を予定しており、最初の10例は単剤投与試験を行い、中間解析を行った上で問題がなければ、免疫チェックポイント阻害剤との併用試験に進む予定となっている。治療期間は24週間で、医療施設は5施設を予定、うち4施設がオープンしている。途中で治験プロトコルの修正(免疫反応も一緒に評価)を行ったこともあり当初想定より進捗は遅れたが、2018年中には中間解析を行うところまで進めたい考えだ。中間解析の結果を見て、免疫チェックポイント阻害剤との併用による症例数を決定する。第1相臨床試験では、単剤投与で転移性がんの腫瘍縮小効果も確認されており、中間解析の結果が注目される。
d) 肝細胞がん(単剤→免疫チェックポイント阻害剤との併用)
台湾の提携先であるMedigenと共同で2014年より、ステージ3/4の肝細胞がん患者を対象とした第1/2相臨床試験を韓国・台湾で進めている。既に安全性は確認されており、2017年より反復投与試験(2週間おきに3回投与)を実施している。現在は2016年までに実施した単回投与の症例(12例)についてデータ解析を行っており、同データを持って中国の提携先であるハンルイが第2相臨床試験の実施申請を行う予定。早ければ2018年後半にも中国において臨床試験が開始される可能性があり、そうなれば同社にマイルストーン収入が入ることになる。
なお、ハンルイの治験デザインは未確定なものの、現在、ハンルイが承認申請中の免疫チェックポイント阻害剤「SHR-1210」との併用で進めていく可能性が高い。肝臓がんではオプジーボの臨床試験時における単剤投与の奏効率※は18%程度とされており、免疫チェックポイント阻害剤との併用で30%程度の奏効率を獲得できれば承認される可能性があると見ている。中国ではがん疾患の中で肝細胞がんがもっとも死亡者数が多く、治療薬の開発ニーズが高い。また、同時並行してMedigenが実施している反復投与試験の結果が良好であれば、同社も大手製薬企業とのライセンス契約交渉を本格的に開始し、早期の契約締結を目指していく考えだ。
※全症例数の中で、投薬によって腫瘍が完全に消失または70%まで縮小した割合を指す。
e) 頭頸部扁平上皮がん、サルコーマ(放射線治療との併用)
その他の適応疾患として、頭頸部扁平上皮がん及びサルコーマ(骨肉腫)※についてもテロメライシンの薬効が前臨床試験において確認されており、今後、医師主導の臨床研究が開始される見込みとなっている。頭頸部扁平上皮がんについては熊本大学、サルコーマは岡山大学で進めていく予定だ。特に、サルコーマについては外科手術により切除不能な場合は抗がん剤治療が一般的に行われているが、副作用リスクの低い安全な治療薬の開発が望まれており、期待度は大きい。
※全身の骨や軟部組織(脂肪、筋肉、神経など)から発生する悪性腫瘍の総称で希少疾患。
f) 米国で食道がんの適応拡大として胃がん・胃食道接合部がんで開発が進む可能性
まだ、開発パイプラインには載っていないが、2019年以降、米国で食道がんの適応拡大として転移性の胃がん及び胃食道接合部がんのステージ4患者や、ステージ2〜3で手術不能または手術適応患者を対象に、免疫チェックポイント阻害剤や放射線療法との併用による臨床試験が開始される可能性が出てきている。米国でがん疾患に関する様々な治療法のガイドライン策定や臨床試験を実施している非営利団体であるNRG Oncologyが食道がんの最新治療法としてテロメライシンの可能性を取り上げたためだ。既に、治験計画はほぼできているが、臨床試験の費用については、NCI(国立がん研究所)の資金援助で賄うため、予算が取れるのは早くて2019年となる見込み。
ここ最近は免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による臨床試験が国内外で活発化しているが、ウイルス療法もその1つとなっている。がんのウイルス療法では国内外の製薬メーカーやバイオベンチャーが開発にしのぎを削っており、現在69種類のウイルス製剤で102の臨床試験が行われているが、食道がんをターゲットに開発を進めているのは同社のみであり、同領域での優位性は高いと言える。国内で進めている臨床試験の進捗とともに、米国でも臨床試験が開始されれば、ライセンス契約締結に向けた可能性が一段と高まるものと思われる。
(3) ウイルス製剤の競合
腫瘍溶解性ウイルス製剤の競合としては複数あるが、唯一製造販売承認されたものとしては米Amgenの「T-VEC」(Talimogene Laherparepvec (ImlygicTM))があり、2015年10月にメラノーマを適用疾患として米国で承認されている。開発中のものではタカラバイオ<4974>の「HF10」が国内でメラノーマを対象とした第2相臨床試験、膵がんを対象とした第1相臨床試験を行っているほか、米国でメラノーマを対象とした第2相臨床試験が終了、2018年1月より免疫チェックポイント阻害剤との併用による医師主導第2相試験を開始している。ここ最近の傾向としては、免疫チェックポイント阻害剤との併用による臨床試験を行う企業が増えている。
開発のベースとなるウイルスは各社各様だが、同社のアデノウイルス製剤については他のウイルス製剤と比較していくつかの長所がある。第1に、安全性で優れており、品質管理など規制上のハードルが低いこと、第2に、がんの転移原因になるがん幹細胞に対しても効果があること、第3に、放射線療法との親和性が高いことが挙げられる。
放射線療法はがん細胞の遺伝子を破壊することで、がん細胞を死滅させる治療法となるが、放射線照射後のがん細胞の表面が、アデノウイルスを付着しやすくなるように改質されること、また、がん細胞の遺伝子修復機能を抑制する働きを持つ「E1B遺伝子」をアデノウイルスのみが持っていることなどが、放射性療法との親和性が高い理由となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
オンコリスバイオファーマ<4588>は、ウイルス遺伝子改変技術を活用した新規がん治療薬、新規がん検査薬の開発を行い、がんや重症感染症等の医療ニーズ充足に貢献する新薬の開発を行っている。
特にがん領域では、固形がんの局所療法として腫瘍溶解ウイルスのテロメライシン、並びに第2世代テロメライシンの開発を進めるとともに、がんの早期発見または術後検査を行うCTC(血中循環がん細胞)検査薬のテロメスキャン、がんの全身療法を目指すエピジェネティックがん治療薬OBP-801の開発を進めている。がんの早期発見から治療、術後検査、転移がん治療に至るまで、がん治療に関わるプロセスを網羅的にカバーしていることが特徴と言える。以下、主要な開発パイプラインの概要について説明する。
1. テロメライシン
(1) 概要
テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖し、がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルスのことで、腫瘍溶解性ウイルス製剤の一種である。テロメライシンの特徴は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に感染することでテロメライシンを複製させ、自己増殖的に増加してがん細胞を破壊していくことにある。このため、テロメライシンは局所的ながん細胞だけでなく、周辺のがん細胞まで破壊することが可能であり、治療効果の高いウイルス製剤とされている。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るが、軽度なものであり人体の安全性に問題はないとされている。また、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため、副作用も少ない。オンコリスバイオファーマ<4588>では食道がんやメラノーマなど固形がんを対象疾患として、開発を進めている。
(2) 開発状況
テロメライシンについては国内と米国、台湾・韓国にて、合計5つのプロジェクトが進んでいる。
a) 食道がん(放射線療法との併用)
2013年より岡山大学にて行っている医師主導の臨床研究では、手術不能な末期の食道がん患者を対象に、テロメライシンと放射線治療との併用治療を行っている。治療期間6週間で、週5日の放射線治療とテロメライシンを合計3回投与し、腫瘍縮小効果を見ると言うもの。予定していた13例の組入れが完了し、そのうち2018年2月時点で11例が終了。2018年3月までにはすべての症例が終了し、岡山大学でデータの集計と解析を行い学会発表する予定となっている。
今後については、同社が2017年7月より開始した臨床試験に引き継がれていく。現在、第1相臨床試験を岡山大学と国立がん研究センター東病院にて実施しており、全6例中、3例の組入れが完了しており、2018年中にはすべて完了する予定となっている。初期ステージの食道がんで外科手術による切除や根治的化学放射線療法が困難な患者(高齢者等)を対象としている。既に医師主導臨床研究でも好結果が出ているため、順調に次の段階に進む可能性が高い。同社ではオーファン・ドラッグ申請を近々行う準備を進めているほか、先駆け審査指定制度を使った早期承認も目指していく考えで、厚生労働省との協議を進めている。順調に進めば、2019年から第2/3相臨床試験が開始される見込みで、症例数10〜20例程度だとすれば臨床試験期間として1年程度は少なくともかかると見られる。このため、薬事承認申請の時期としては2020〜2021年頃が目標となってくる。
b) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用)
国内では食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんを対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブとの併用療法による医師主導の第1相臨床試験が、2017年12月より国立がん研究センター東病院等で開始された。症例数は28例を予定しており、2018年2月時点で2例の組み込みが完了、2020年7月頃の終了を目途としている。
c) メラノーマ(単剤→免疫チェックポイント阻害剤との併用)
米国では第3、4ステージの切除不能、または転移性メラノーマ患者を対象とした第2相臨床試験が2017年7月から開始されている。症例数は最大50例を予定しており、最初の10例は単剤投与試験を行い、中間解析を行った上で問題がなければ、免疫チェックポイント阻害剤との併用試験に進む予定となっている。治療期間は24週間で、医療施設は5施設を予定、うち4施設がオープンしている。途中で治験プロトコルの修正(免疫反応も一緒に評価)を行ったこともあり当初想定より進捗は遅れたが、2018年中には中間解析を行うところまで進めたい考えだ。中間解析の結果を見て、免疫チェックポイント阻害剤との併用による症例数を決定する。第1相臨床試験では、単剤投与で転移性がんの腫瘍縮小効果も確認されており、中間解析の結果が注目される。
d) 肝細胞がん(単剤→免疫チェックポイント阻害剤との併用)
台湾の提携先であるMedigenと共同で2014年より、ステージ3/4の肝細胞がん患者を対象とした第1/2相臨床試験を韓国・台湾で進めている。既に安全性は確認されており、2017年より反復投与試験(2週間おきに3回投与)を実施している。現在は2016年までに実施した単回投与の症例(12例)についてデータ解析を行っており、同データを持って中国の提携先であるハンルイが第2相臨床試験の実施申請を行う予定。早ければ2018年後半にも中国において臨床試験が開始される可能性があり、そうなれば同社にマイルストーン収入が入ることになる。
なお、ハンルイの治験デザインは未確定なものの、現在、ハンルイが承認申請中の免疫チェックポイント阻害剤「SHR-1210」との併用で進めていく可能性が高い。肝臓がんではオプジーボの臨床試験時における単剤投与の奏効率※は18%程度とされており、免疫チェックポイント阻害剤との併用で30%程度の奏効率を獲得できれば承認される可能性があると見ている。中国ではがん疾患の中で肝細胞がんがもっとも死亡者数が多く、治療薬の開発ニーズが高い。また、同時並行してMedigenが実施している反復投与試験の結果が良好であれば、同社も大手製薬企業とのライセンス契約交渉を本格的に開始し、早期の契約締結を目指していく考えだ。
※全症例数の中で、投薬によって腫瘍が完全に消失または70%まで縮小した割合を指す。
e) 頭頸部扁平上皮がん、サルコーマ(放射線治療との併用)
その他の適応疾患として、頭頸部扁平上皮がん及びサルコーマ(骨肉腫)※についてもテロメライシンの薬効が前臨床試験において確認されており、今後、医師主導の臨床研究が開始される見込みとなっている。頭頸部扁平上皮がんについては熊本大学、サルコーマは岡山大学で進めていく予定だ。特に、サルコーマについては外科手術により切除不能な場合は抗がん剤治療が一般的に行われているが、副作用リスクの低い安全な治療薬の開発が望まれており、期待度は大きい。
※全身の骨や軟部組織(脂肪、筋肉、神経など)から発生する悪性腫瘍の総称で希少疾患。
f) 米国で食道がんの適応拡大として胃がん・胃食道接合部がんで開発が進む可能性
まだ、開発パイプラインには載っていないが、2019年以降、米国で食道がんの適応拡大として転移性の胃がん及び胃食道接合部がんのステージ4患者や、ステージ2〜3で手術不能または手術適応患者を対象に、免疫チェックポイント阻害剤や放射線療法との併用による臨床試験が開始される可能性が出てきている。米国でがん疾患に関する様々な治療法のガイドライン策定や臨床試験を実施している非営利団体であるNRG Oncologyが食道がんの最新治療法としてテロメライシンの可能性を取り上げたためだ。既に、治験計画はほぼできているが、臨床試験の費用については、NCI(国立がん研究所)の資金援助で賄うため、予算が取れるのは早くて2019年となる見込み。
ここ最近は免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による臨床試験が国内外で活発化しているが、ウイルス療法もその1つとなっている。がんのウイルス療法では国内外の製薬メーカーやバイオベンチャーが開発にしのぎを削っており、現在69種類のウイルス製剤で102の臨床試験が行われているが、食道がんをターゲットに開発を進めているのは同社のみであり、同領域での優位性は高いと言える。国内で進めている臨床試験の進捗とともに、米国でも臨床試験が開始されれば、ライセンス契約締結に向けた可能性が一段と高まるものと思われる。
(3) ウイルス製剤の競合
腫瘍溶解性ウイルス製剤の競合としては複数あるが、唯一製造販売承認されたものとしては米Amgenの「T-VEC」(Talimogene Laherparepvec (ImlygicTM))があり、2015年10月にメラノーマを適用疾患として米国で承認されている。開発中のものではタカラバイオ<4974>の「HF10」が国内でメラノーマを対象とした第2相臨床試験、膵がんを対象とした第1相臨床試験を行っているほか、米国でメラノーマを対象とした第2相臨床試験が終了、2018年1月より免疫チェックポイント阻害剤との併用による医師主導第2相試験を開始している。ここ最近の傾向としては、免疫チェックポイント阻害剤との併用による臨床試験を行う企業が増えている。
開発のベースとなるウイルスは各社各様だが、同社のアデノウイルス製剤については他のウイルス製剤と比較していくつかの長所がある。第1に、安全性で優れており、品質管理など規制上のハードルが低いこと、第2に、がんの転移原因になるがん幹細胞に対しても効果があること、第3に、放射線療法との親和性が高いことが挙げられる。
放射線療法はがん細胞の遺伝子を破壊することで、がん細胞を死滅させる治療法となるが、放射線照射後のがん細胞の表面が、アデノウイルスを付着しやすくなるように改質されること、また、がん細胞の遺伝子修復機能を抑制する働きを持つ「E1B遺伝子」をアデノウイルスのみが持っていることなどが、放射性療法との親和性が高い理由となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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