ダイキアクシス Research Memo(7):海外事業は、中国とインドに新たな製造拠点を開設へ
[18/03/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ダイキアクシス<4245>の中長期の成長戦略
2. 海外市場の開拓
世界経済フォーラムは、2018年版の報告書において「最も影響が大きいと思われるグローバルリスク」の5番目に「水の危機」を挙げている。ちなみに、1位から4位は、「大量破壊兵器」「異常気象」「自然災害」「気候変動緩和・適応への失敗」である。アジア13ヶ国で構成する「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」は水質汚濁防止を進めている。水質汚濁防止には従来のし尿処理だけでは不十分なため、生活排水を併せて処理する方向で環境規制の強化に動いており、日本の技術・製品力及び施設運営・保守に関わるノウハウなどが評価される時代が到来したと言えるだろう。
環境省が「環境インフラ海外展開基本戦略」(2017年7月)を発表したことも追い風となる。日本の技術を途上国に提供し、環境問題の解決支援と日本企業の事業展開につなげることを企図している。2018年春までに、想定される市場規模などを盛り込んだ計画が提示される予定だ。
環境省の基本戦略には、6つの環境インフラの分野別アクションがある。そのうちの「浄化槽」に関わるものとして、1)マスタープラン段階からの、下水道・浄化槽の包括的な汚水処理サービスの提案、2)FS支援、各途上国におけるビジネスモデルの確立、標準的な仕様書の作成、ADB等の金融機関との連携などによる案件組成を支援、3)アジア地域における浄化槽の制度面や維持管理体制整備に係る働きかけを含めた支援を実施、4)産官学によるASEAN地域での浄化槽の標準化を目指し、製品仕様の現地化、公平な性能評価スキームの社会実装支援という4つのアクションプランが掲げられている。国レベルでの施策として、環境省による啓蒙活動への貢献に期待したい。途上国では、法規上の規制が強化されても、それを遵守するための設備投資や基準を維持し続けるための監視・運営体制が十分とは言い難い。
水インフラビジネスは主要3業務で構成される。すなわち、部材・部品・機器製造と装置設計・組立・施工・運転、及び事業運営・保守・管理(水売り)である。フランスのヴェオリアとスエズ、米国のGEウォーターなどのメジャーはすべての領域を網羅する。一方、日系企業は水処理機器、エンジニアリング、オーガナイザーなど各分野に特化している。同社は、中小規模の排水処理をターゲットとすることから、水メジャーと棲み分ける。主要3業務を一貫して提供する機能を持つことが、日系企業に対する差別化となる。生活排水処理・事業場排水処理、公共水域浄化のいずれにも対応できる。
同社は、中小規模の排水処理で、ASEANやインド、アフリカでの市場拡大に際して、先行者利得を得る可能性が大きい。2015年4月にグローバル事業本部を新設し、傘下に海外子会社を置き、社長自らが本部長として陣頭指揮を執ることで海外展開のスピードアップを図っている。日系企業で現地に進出して、工場や商業施設の建設、マンションや戸建て住宅団地の不動産開発を手掛ける企業に対して、日本国内でも顧客企業に採用を働きかけている。新たな規制のレベルがかなり高く、実際に地元企業が速やかに遵守するかは、国によってばらつきが出そうだ。一方、外資に対して厳格な適用が行われるのは、共通した傾向と言える。
同社は、厳格化された水処理基準をクリアし、設置される地域の気候に適合した製品を開発し、現地生産により生産コストと運送費を抑え、より短い納期で提供できるため、品質・コスト・納期(QCD)における競争力が強い。2015年7月に本格稼働を開始したインドネシアの新工場は、生産能力を以前の5倍に拡大した。新規生産設備の導入により自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。合併浄化槽を利用する住居、ビル、工場、商業施設の個別処理システムがターゲットになる。大型・中型・小型槽で各200〜250基の年産能力を持ち、既にフル稼働に入った。今後は、稼働時間を延ばして生産増加を図る。2016年から2017年にかけて、ミャンマー、インド、ベトナム、ケニアにおいて販売代理店契約を締結したことから、引き合いも急増している。2018年は、人口が世界1位と2位で、排水処理率が低い中国とインドにおいて、現地企業との合弁会社や新設する子会社により浄化槽の現地生産に乗り出す予定でいる。
海外事業は、売上高を2015年12月期の602百万円から1,224百万円へと3ヶ年で倍増を見込んでいたが、目標が前倒しで達成されたため、2018年12期の予算は1,712百万円に引き上げられた。海外売上高比率を2015年12月期の1.9%から4.8%への拡大することになる。
以下に国別の進展状況を説明する。
(1) インドネシア
同社は2015年6月にインドネシア第2の都市のスラバヤに支店を開設した。営業拠点を設ければ受注につながる状況にある。2015年8月に同社のグループ会社であることを明確にするため、子会社の商号を変更した。日系メーカーとの競争では、日本からの輸入製品に15〜20%の関税がかかるため現地生産が有利に働く。
東急不動産(株)は、2018年12月の完工を目指して首都ジャカルタに商業棟を含む大規模マンション(2棟、381戸)を開発している。同社は、同プロジェクトに参加し、FRP円筒の浄化槽10本を納入する。ほかに、イオン<8267>やトヨタホーム(株)の案件に関与している。
(2) ミャンマー
2016年1月にミャンマーにおける販売代理店として1社と契約し、納入実績ができた。ティラワ工業団地内の商業施設(処理能力188立方メートル/日)と外資系のノボテル・ホテルへの設備(同300立方メートル/日)、広告宣伝効果の高いナイトマーケット(ヤンゴン市)に6基(各20立方メートル/日)とヤンゴン銀行(10立方メートル/日)などである。新政権への移行により、公共事業の予算執行に進展がみられる。経済発展に伴う汚濁量増加に伴い、政府による規制運用が強化され、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)ではBOD20が標準化されている。ミャンマーの品質基準に、固有メーカー名と同等レベルのものとの表示があるが、クボタ<6326>と同社が認定メーカーとなっている。既に、安定供給体制を確立しており、月間5〜10基の納入実績ができている。
(3) インド
インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。インドの下水道普及率は約15%にとどまる。2014年10月に発表された「クリーン・インディア」プロジェクトでは、国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年になる2019年までに約3兆5,000億円を投じて、1億2,000万家庭に専用トイレを設置するという目標を掲げている。小中学校のトイレや公衆トイレも整備する。人口の約48%、農村では67%が専用のトイレを持っていないため、「屋外排泄」が恒常化しており、公衆衛生の脅威になっている。また、学校に男女別のトイレがないため、女子生徒が通学を断念する事態に陥っている。さらに、夜間の屋外排泄が女性に対する性的暴行を引き起こす原因となっている。国策として取り組んでいる政府は、啓蒙活動にも力を入れている。歌って踊るボリウッドでも、「TOILET:A Lover Story」という題名の映画が製作され、2017年8月に封切られた。
同社は、2016年7月にインド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10立方メートル/日)の設置場所は、インド中西部にあるナーグプル市の公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件になる。
同社は、2016年に1社と、さらに2017年に4社と地域別の販売代理店契約を締結した。デンマークの世界的ポンプメーカーの代理店であるBI Marketing Pvt. Ltd.と、その親会社で大型水処理事業を行うHECSと浄化槽等の販売店契約を締結した。
2017年4月にインド全土で排水量2,000立方メートル以上の不動産に対し、水質汚濁防止の規制レベルが従来のBOD30からBOD10へ強化された。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)は汚水のみで生活排水の処理ができないため、強化される規制をクリアできない。トライアルマーケティングを行った結果、多くの需要が見込めると判断した。インドネシア製の製品に対する関税と輸送費により価格が割高となるため、2018年7月にシンガポールの地域統括子会社を通じて100%出資の子会社「DAIKI AXIS INDIA Private Limited」を設立する予定。同子会社は、インド国内における浄化槽の製造・販売・施工・維持管理を手掛ける。2018年内にも小型浄化槽の生産を開始する計画でいる。
(4) 中国
中国では大連に100%子会社を有し、エンジニアリング会社として活動している。日系企業からの指名で大型案件を獲得している。2018年に入って、新しい展開があった。2017年11月、習近平国家主席は、きれいなトイレを整備する「トイレ革命」を推進するよう指示した。習氏の「重要指示」と伝えられた「トイレ革命」では、観光地や都市だけでなく、農村部でも大衆生活の品質として充足すべきことと言及されており、農村部でも下水処理施設の導入が急がれる機運となった。中国においては2014年以降、農村の環境改善のためPPP(Public Private Partnership:官民協力事業)が進展している。農村人口8億人中の1〜2億世帯が、浄化槽の潜在市場と推測される。民間導入による価格適正化と水質基準の厳格化により、日本型浄化槽の進出余地が高まっている。市・鎮などの自治体が、浄化槽製造・敷設・運営を一体で入札を募集し、25年間の水質保証を義務付けている。
同社は、2018年3月に中国企業と合弁会社を設立することで合意した。現地企業の凌志環保股フン有限公司(江蘇省宜興市)は、下水処理施設(腐敗槽)で20年の実績を持つ。合弁会社「凌志大器浄化槽(江蘇)有限公司(予定)」への出資比率は、中国側が51%、同社が49%を予定しており、同社にとって持分法適用会社となる見込みだ。合弁先の敷地内に、同社技術による家庭用合併浄化槽の新工場を建設する。同工場の製品は、それぞれの出資会社に供給される。中国の農村で設置されている腐敗槽は汚水処理に対応するものの、生活排水までは処理できず、水質基準をクリアするには不十分だ。そのため、一般家庭3〜4世帯ごとに腐敗槽を設置し、合併浄化槽が後処理をする仕組みとなる。
(5) その他の地域
農業国のベトナムは、BOD、窒素、アンモニアなどに対する排水規制の厳格化を進めており、処理性能の高い日本仕様製品への需要が期待される。同社は、ローカルパートナーを選定し、受注活動を開始した。さらに2017年8月には、アフリカのケニア向けに初出荷をし、搬入・据付工事を完了した。ナイロビの新規代理店から引き合いが急増している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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2. 海外市場の開拓
世界経済フォーラムは、2018年版の報告書において「最も影響が大きいと思われるグローバルリスク」の5番目に「水の危機」を挙げている。ちなみに、1位から4位は、「大量破壊兵器」「異常気象」「自然災害」「気候変動緩和・適応への失敗」である。アジア13ヶ国で構成する「アジア水環境パートナーシップ(WEPA)」は水質汚濁防止を進めている。水質汚濁防止には従来のし尿処理だけでは不十分なため、生活排水を併せて処理する方向で環境規制の強化に動いており、日本の技術・製品力及び施設運営・保守に関わるノウハウなどが評価される時代が到来したと言えるだろう。
環境省が「環境インフラ海外展開基本戦略」(2017年7月)を発表したことも追い風となる。日本の技術を途上国に提供し、環境問題の解決支援と日本企業の事業展開につなげることを企図している。2018年春までに、想定される市場規模などを盛り込んだ計画が提示される予定だ。
環境省の基本戦略には、6つの環境インフラの分野別アクションがある。そのうちの「浄化槽」に関わるものとして、1)マスタープラン段階からの、下水道・浄化槽の包括的な汚水処理サービスの提案、2)FS支援、各途上国におけるビジネスモデルの確立、標準的な仕様書の作成、ADB等の金融機関との連携などによる案件組成を支援、3)アジア地域における浄化槽の制度面や維持管理体制整備に係る働きかけを含めた支援を実施、4)産官学によるASEAN地域での浄化槽の標準化を目指し、製品仕様の現地化、公平な性能評価スキームの社会実装支援という4つのアクションプランが掲げられている。国レベルでの施策として、環境省による啓蒙活動への貢献に期待したい。途上国では、法規上の規制が強化されても、それを遵守するための設備投資や基準を維持し続けるための監視・運営体制が十分とは言い難い。
水インフラビジネスは主要3業務で構成される。すなわち、部材・部品・機器製造と装置設計・組立・施工・運転、及び事業運営・保守・管理(水売り)である。フランスのヴェオリアとスエズ、米国のGEウォーターなどのメジャーはすべての領域を網羅する。一方、日系企業は水処理機器、エンジニアリング、オーガナイザーなど各分野に特化している。同社は、中小規模の排水処理をターゲットとすることから、水メジャーと棲み分ける。主要3業務を一貫して提供する機能を持つことが、日系企業に対する差別化となる。生活排水処理・事業場排水処理、公共水域浄化のいずれにも対応できる。
同社は、中小規模の排水処理で、ASEANやインド、アフリカでの市場拡大に際して、先行者利得を得る可能性が大きい。2015年4月にグローバル事業本部を新設し、傘下に海外子会社を置き、社長自らが本部長として陣頭指揮を執ることで海外展開のスピードアップを図っている。日系企業で現地に進出して、工場や商業施設の建設、マンションや戸建て住宅団地の不動産開発を手掛ける企業に対して、日本国内でも顧客企業に採用を働きかけている。新たな規制のレベルがかなり高く、実際に地元企業が速やかに遵守するかは、国によってばらつきが出そうだ。一方、外資に対して厳格な適用が行われるのは、共通した傾向と言える。
同社は、厳格化された水処理基準をクリアし、設置される地域の気候に適合した製品を開発し、現地生産により生産コストと運送費を抑え、より短い納期で提供できるため、品質・コスト・納期(QCD)における競争力が強い。2015年7月に本格稼働を開始したインドネシアの新工場は、生産能力を以前の5倍に拡大した。新規生産設備の導入により自動化を進め、日本品質を確立するとともに生産性を向上させた。製品面では1年中温暖な東南アジアでは低温時の対策が不要であることから、機能を絞り込んで製造コストを削減した。合併浄化槽を利用する住居、ビル、工場、商業施設の個別処理システムがターゲットになる。大型・中型・小型槽で各200〜250基の年産能力を持ち、既にフル稼働に入った。今後は、稼働時間を延ばして生産増加を図る。2016年から2017年にかけて、ミャンマー、インド、ベトナム、ケニアにおいて販売代理店契約を締結したことから、引き合いも急増している。2018年は、人口が世界1位と2位で、排水処理率が低い中国とインドにおいて、現地企業との合弁会社や新設する子会社により浄化槽の現地生産に乗り出す予定でいる。
海外事業は、売上高を2015年12月期の602百万円から1,224百万円へと3ヶ年で倍増を見込んでいたが、目標が前倒しで達成されたため、2018年12期の予算は1,712百万円に引き上げられた。海外売上高比率を2015年12月期の1.9%から4.8%への拡大することになる。
以下に国別の進展状況を説明する。
(1) インドネシア
同社は2015年6月にインドネシア第2の都市のスラバヤに支店を開設した。営業拠点を設ければ受注につながる状況にある。2015年8月に同社のグループ会社であることを明確にするため、子会社の商号を変更した。日系メーカーとの競争では、日本からの輸入製品に15〜20%の関税がかかるため現地生産が有利に働く。
東急不動産(株)は、2018年12月の完工を目指して首都ジャカルタに商業棟を含む大規模マンション(2棟、381戸)を開発している。同社は、同プロジェクトに参加し、FRP円筒の浄化槽10本を納入する。ほかに、イオン<8267>やトヨタホーム(株)の案件に関与している。
(2) ミャンマー
2016年1月にミャンマーにおける販売代理店として1社と契約し、納入実績ができた。ティラワ工業団地内の商業施設(処理能力188立方メートル/日)と外資系のノボテル・ホテルへの設備(同300立方メートル/日)、広告宣伝効果の高いナイトマーケット(ヤンゴン市)に6基(各20立方メートル/日)とヤンゴン銀行(10立方メートル/日)などである。新政権への移行により、公共事業の予算執行に進展がみられる。経済発展に伴う汚濁量増加に伴い、政府による規制運用が強化され、水質の汚濁状況を表すBOD(生物化学的酸素要求量)ではBOD20が標準化されている。ミャンマーの品質基準に、固有メーカー名と同等レベルのものとの表示があるが、クボタ<6326>と同社が認定メーカーとなっている。既に、安定供給体制を確立しており、月間5〜10基の納入実績ができている。
(3) インド
インドでは「スワッチ・バーラト」(クリーン・インディア)がモディ政権の最優先課題の1つになっている。インドの下水道普及率は約15%にとどまる。2014年10月に発表された「クリーン・インディア」プロジェクトでは、国父マハトマ・ガンディーの生誕150周年になる2019年までに約3兆5,000億円を投じて、1億2,000万家庭に専用トイレを設置するという目標を掲げている。小中学校のトイレや公衆トイレも整備する。人口の約48%、農村では67%が専用のトイレを持っていないため、「屋外排泄」が恒常化しており、公衆衛生の脅威になっている。また、学校に男女別のトイレがないため、女子生徒が通学を断念する事態に陥っている。さらに、夜間の屋外排泄が女性に対する性的暴行を引き起こす原因となっている。国策として取り組んでいる政府は、啓蒙活動にも力を入れている。歌って踊るボリウッドでも、「TOILET:A Lover Story」という題名の映画が製作され、2017年8月に封切られた。
同社は、2016年7月にインド政府に浄化槽を寄贈し、製品品質をアピールした。浄化槽(処理能力10立方メートル/日)の設置場所は、インド中西部にあるナーグプル市の公園内のトイレ、村の公衆トイレ、テストマーケティングとしてプラスチック工場の排水処理用の3件になる。
同社は、2016年に1社と、さらに2017年に4社と地域別の販売代理店契約を締結した。デンマークの世界的ポンプメーカーの代理店であるBI Marketing Pvt. Ltd.と、その親会社で大型水処理事業を行うHECSと浄化槽等の販売店契約を締結した。
2017年4月にインド全土で排水量2,000立方メートル以上の不動産に対し、水質汚濁防止の規制レベルが従来のBOD30からBOD10へ強化された。新築だけでも膨大な需要が発生するが、既存設備にも規制が及ぶ。既設のセプティックタンク(腐敗槽)は汚水のみで生活排水の処理ができないため、強化される規制をクリアできない。トライアルマーケティングを行った結果、多くの需要が見込めると判断した。インドネシア製の製品に対する関税と輸送費により価格が割高となるため、2018年7月にシンガポールの地域統括子会社を通じて100%出資の子会社「DAIKI AXIS INDIA Private Limited」を設立する予定。同子会社は、インド国内における浄化槽の製造・販売・施工・維持管理を手掛ける。2018年内にも小型浄化槽の生産を開始する計画でいる。
(4) 中国
中国では大連に100%子会社を有し、エンジニアリング会社として活動している。日系企業からの指名で大型案件を獲得している。2018年に入って、新しい展開があった。2017年11月、習近平国家主席は、きれいなトイレを整備する「トイレ革命」を推進するよう指示した。習氏の「重要指示」と伝えられた「トイレ革命」では、観光地や都市だけでなく、農村部でも大衆生活の品質として充足すべきことと言及されており、農村部でも下水処理施設の導入が急がれる機運となった。中国においては2014年以降、農村の環境改善のためPPP(Public Private Partnership:官民協力事業)が進展している。農村人口8億人中の1〜2億世帯が、浄化槽の潜在市場と推測される。民間導入による価格適正化と水質基準の厳格化により、日本型浄化槽の進出余地が高まっている。市・鎮などの自治体が、浄化槽製造・敷設・運営を一体で入札を募集し、25年間の水質保証を義務付けている。
同社は、2018年3月に中国企業と合弁会社を設立することで合意した。現地企業の凌志環保股フン有限公司(江蘇省宜興市)は、下水処理施設(腐敗槽)で20年の実績を持つ。合弁会社「凌志大器浄化槽(江蘇)有限公司(予定)」への出資比率は、中国側が51%、同社が49%を予定しており、同社にとって持分法適用会社となる見込みだ。合弁先の敷地内に、同社技術による家庭用合併浄化槽の新工場を建設する。同工場の製品は、それぞれの出資会社に供給される。中国の農村で設置されている腐敗槽は汚水処理に対応するものの、生活排水までは処理できず、水質基準をクリアするには不十分だ。そのため、一般家庭3〜4世帯ごとに腐敗槽を設置し、合併浄化槽が後処理をする仕組みとなる。
(5) その他の地域
農業国のベトナムは、BOD、窒素、アンモニアなどに対する排水規制の厳格化を進めており、処理性能の高い日本仕様製品への需要が期待される。同社は、ローカルパートナーを選定し、受注活動を開始した。さらに2017年8月には、アフリカのケニア向けに初出荷をし、搬入・据付工事を完了した。ナイロビの新規代理店から引き合いが急増している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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