Shinwa Research Memo(3):業界のパイオニアとして国内の美術品オークション市場をリード(2)
[18/03/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
3. ホールディングス体制への移行
Shinwa Wise Holdings<2437>は、第1次中期経営計画(2013年6月から2018年5月までの5年間)の最終年度を迎え、これまでの活動の集大成(戦略子会社構想の完成や様々な新規事業の展開など)として、ホールディングス体制へと移行した。グループの成長戦略の立案機能と実現機能を分化し、グループ経営の意思決定の迅速化を図るとともに、グループ各社が事業環境の変化に柔軟に対応できる体制を構築するところに狙いがある。
新体制のポイントは、これまでのオークション関連事業をShinwa Auction(株)(オークション事業)とShinwa Prive(株)(アートディーリング、画廊業)、Shinwa Market(宝石オークション、インターネットオークション開発)の3つに分社化し、新規事業を束ねる戦略子会社Shinwa ARTEXとを合わせた4社を中核とする体制を確立したところである。各事業の強化と連携、新規事業の育成が最大のテーマであり、いかに各事業のシナジーを生み出していくのかが成功のカギを握ると言える。
4. 企業特長
同社の主力事業である美術品オークションは、安定的な価値付けが必要であり、最近普及しているネットオークションとは一線を画している。したがって、取扱商品に対する専門性の高さや実績に裏打ちされた信頼性のほか、オークション開催に関わるノウハウ(作品の預かりから、鑑定、査定、カタログ作製、下見会、オークション会場運営、作品の発送等の業務プロセス)などが参入障壁となっている。特に、同社が業界のリーディングカンパニーとしての地位を確保することが可能であったのは、(1)近代美術を得意分野として実績を積み上げてきたこと、(2)富裕層マーケティングの積み重ねにより人的ネットワークを構築してきたことが挙げられる。また、今後さらに「アートから始まる富裕層向けのセレクトサービスカンパニー」として発展していくためには、(3)グループ一体となって富裕層向けに独自のラインナップを提供できることも大きな優位性になるものと考えられる。
(1) 近代美術オークションにおける実績の高さ
同社が得意とする近代美術は、高い専門性が要求される分野であり、高価格帯になればなるほど、取引の安全性に対する要求水準は高くなる。同社は、創業以来、近代美術の分野での実績を積み上げており、その豊富な実績に裏打ちされた専門性や信用力、ブランド力の高さが、出品者及び参加者双方に同社を利用する動機付けとして働いていると考えられる。出品者は多数の参加者により客観性のある合理的な価格を付けてくれるところに、参加者は優れた作品が数多く出品されるところに集まるため、相互作用による正の循環が働く構造となっているところも同社にとってアドバンテージと言える。特に、高額のものを売ってきた実績は、優れた出品作品を確保するうえで他社との大きな差別化要因となっている。
(2) 富裕層マーケティングによる人的ネットワーク
同社の強みとして、30年近くにわたって積み重ねてきた富裕層マーケティングによる人的ネットワーク(2万人を超える富裕層データベースを管理)も挙げられる。外資系金融機関にて欧州での勤務経験がある代表取締役社長の倉田陽一郎(くらたよういちろう)氏は、人と人とのつながりを密にしながら顧客の資産を管理するプライベートバンクのイメージで富裕層マーケティングを展開してきた。同社がこれまで積み上げてきた人的ネットワークは、これからのオークション事業の基盤を支えるとともに、新たな富裕層ビジネスへの展開にも活用できる。
(3) 富裕層向けに独自のラインナップを提供
戦略子会社の活用などにより、これまでの美術品オークションやプライベートセールに加え、高付加価値不動産事業(節税や利回りを目的とした太陽光発電施設の販売や海外不動産の紹介など)、資産防衛のための「シンワダイヤモンド倶楽部」メディカル事業(医療ツーリズム、アンチエイジングなど)など、同社ならではの独自のラインナップを提供しているところも、富裕層ビジネスの拡大に向けて大きな優位性になるものと考えられる。
5. 沿革
同社の前身である株式会社親和会は、1989年6月に画商5社((株)永善堂、(株)表玄、(株)泰明画廊、みずたに美術(株)、(株)平野古陶軒)の出資によって設立された(1991年6月にシンワアートオークション株式会社に商号変更)。欧米では古くから定着している公開の場で誰でも参加できる「オークション」という美術品の新たなる取引形態を日本の市場に創造することが設立の経緯である。当初は、美術業者間取引を行うセリ市(以下、交換会)と、美術業者だけでなく一般の美術品愛好家も参加可能なオークションの両輪で展開していた。
その後、「公明正大かつ信用あるオークション市場の創造と拡大」の実現を目指し、2000年6月に同社が会主として運営していた交換会事業から撤退すると、2001年6月には同社を顧客としていた投資顧問会社から倉田氏を代表取締役社長に迎え入れるとともに、これまで同社役員を兼任していた創業画廊の代表取締役全員が役員を退任することで新たな経営体制を確立した。
子供の頃からアートが好きで、大学生の時も美術サークルに所属していた倉田氏は、外資系金融機関に入社した後も、趣味でアートに接しながら、オークションの必要性を強く感じていた。32 歳の時に投資顧問会社を立ち上げ、同社を顧客としたことをきっかけとして、コンサルタント的な立場で事業計画や組織づくりに関わったことから経営を任されることになった。出品者の利益の最大化をもたらすとともに、参加者にとっても価格決定プロセスにおいて透明性の高いオークションの仕組みを築き上げ、同社の信用力やブランド力を高めたことから業績も順調に拡大。2005年4月には大阪証券取引所ヘラクレス(現東京証券取引所JASDAQ)に株式の上場を果たした。
その後、長期間にわたるデフレ経済の環境下で同社の業績も伸び悩みが続いたことから、2014年5月期より第1次(新)中期経営計画をスタートした。第2の創業期と位置付け、「日本近代美術再生プロジェクト」に取り掛かるとともに、デフレ下においても安定的な収益を確保できる新たな事業としてエネルギー関連事業及びメディカル事業への参入を図った。その一環として、2013年4月にメディカル事業を行うシンワメディカル(株)(現シンワメディコ(株))を設立。また、エネルギー関連事業を行うエーペック(現Shinwa ARTEX)を株式取得により子会社化した。
2016年1月には医療ツーリズムのマーケティング拠点、及び決済プラットフォームの構築を目的として、香港にShinwa Medico Hong Kong Limitedを開設すると、2016年10月には、海航資本集団との連携を見据えた戦略提携を締結した(海航資本集団が文化事業構想のために設立した采譽投資有限公司に対する第三者割当による新株発行、並びに采譽投資有限公司の100%子会社である喜昌投資有限公司との業務提携)。また、2017年8月にはミャンマーでのマイクロファイナンス事業を開始した。
2017年12月には「シンワアートオークション」から「Shinwa Wise Holdings(シンワワイズホールディングス)」へ社名変更し、ホールディングス体制へと移行した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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3. ホールディングス体制への移行
Shinwa Wise Holdings<2437>は、第1次中期経営計画(2013年6月から2018年5月までの5年間)の最終年度を迎え、これまでの活動の集大成(戦略子会社構想の完成や様々な新規事業の展開など)として、ホールディングス体制へと移行した。グループの成長戦略の立案機能と実現機能を分化し、グループ経営の意思決定の迅速化を図るとともに、グループ各社が事業環境の変化に柔軟に対応できる体制を構築するところに狙いがある。
新体制のポイントは、これまでのオークション関連事業をShinwa Auction(株)(オークション事業)とShinwa Prive(株)(アートディーリング、画廊業)、Shinwa Market(宝石オークション、インターネットオークション開発)の3つに分社化し、新規事業を束ねる戦略子会社Shinwa ARTEXとを合わせた4社を中核とする体制を確立したところである。各事業の強化と連携、新規事業の育成が最大のテーマであり、いかに各事業のシナジーを生み出していくのかが成功のカギを握ると言える。
4. 企業特長
同社の主力事業である美術品オークションは、安定的な価値付けが必要であり、最近普及しているネットオークションとは一線を画している。したがって、取扱商品に対する専門性の高さや実績に裏打ちされた信頼性のほか、オークション開催に関わるノウハウ(作品の預かりから、鑑定、査定、カタログ作製、下見会、オークション会場運営、作品の発送等の業務プロセス)などが参入障壁となっている。特に、同社が業界のリーディングカンパニーとしての地位を確保することが可能であったのは、(1)近代美術を得意分野として実績を積み上げてきたこと、(2)富裕層マーケティングの積み重ねにより人的ネットワークを構築してきたことが挙げられる。また、今後さらに「アートから始まる富裕層向けのセレクトサービスカンパニー」として発展していくためには、(3)グループ一体となって富裕層向けに独自のラインナップを提供できることも大きな優位性になるものと考えられる。
(1) 近代美術オークションにおける実績の高さ
同社が得意とする近代美術は、高い専門性が要求される分野であり、高価格帯になればなるほど、取引の安全性に対する要求水準は高くなる。同社は、創業以来、近代美術の分野での実績を積み上げており、その豊富な実績に裏打ちされた専門性や信用力、ブランド力の高さが、出品者及び参加者双方に同社を利用する動機付けとして働いていると考えられる。出品者は多数の参加者により客観性のある合理的な価格を付けてくれるところに、参加者は優れた作品が数多く出品されるところに集まるため、相互作用による正の循環が働く構造となっているところも同社にとってアドバンテージと言える。特に、高額のものを売ってきた実績は、優れた出品作品を確保するうえで他社との大きな差別化要因となっている。
(2) 富裕層マーケティングによる人的ネットワーク
同社の強みとして、30年近くにわたって積み重ねてきた富裕層マーケティングによる人的ネットワーク(2万人を超える富裕層データベースを管理)も挙げられる。外資系金融機関にて欧州での勤務経験がある代表取締役社長の倉田陽一郎(くらたよういちろう)氏は、人と人とのつながりを密にしながら顧客の資産を管理するプライベートバンクのイメージで富裕層マーケティングを展開してきた。同社がこれまで積み上げてきた人的ネットワークは、これからのオークション事業の基盤を支えるとともに、新たな富裕層ビジネスへの展開にも活用できる。
(3) 富裕層向けに独自のラインナップを提供
戦略子会社の活用などにより、これまでの美術品オークションやプライベートセールに加え、高付加価値不動産事業(節税や利回りを目的とした太陽光発電施設の販売や海外不動産の紹介など)、資産防衛のための「シンワダイヤモンド倶楽部」メディカル事業(医療ツーリズム、アンチエイジングなど)など、同社ならではの独自のラインナップを提供しているところも、富裕層ビジネスの拡大に向けて大きな優位性になるものと考えられる。
5. 沿革
同社の前身である株式会社親和会は、1989年6月に画商5社((株)永善堂、(株)表玄、(株)泰明画廊、みずたに美術(株)、(株)平野古陶軒)の出資によって設立された(1991年6月にシンワアートオークション株式会社に商号変更)。欧米では古くから定着している公開の場で誰でも参加できる「オークション」という美術品の新たなる取引形態を日本の市場に創造することが設立の経緯である。当初は、美術業者間取引を行うセリ市(以下、交換会)と、美術業者だけでなく一般の美術品愛好家も参加可能なオークションの両輪で展開していた。
その後、「公明正大かつ信用あるオークション市場の創造と拡大」の実現を目指し、2000年6月に同社が会主として運営していた交換会事業から撤退すると、2001年6月には同社を顧客としていた投資顧問会社から倉田氏を代表取締役社長に迎え入れるとともに、これまで同社役員を兼任していた創業画廊の代表取締役全員が役員を退任することで新たな経営体制を確立した。
子供の頃からアートが好きで、大学生の時も美術サークルに所属していた倉田氏は、外資系金融機関に入社した後も、趣味でアートに接しながら、オークションの必要性を強く感じていた。32 歳の時に投資顧問会社を立ち上げ、同社を顧客としたことをきっかけとして、コンサルタント的な立場で事業計画や組織づくりに関わったことから経営を任されることになった。出品者の利益の最大化をもたらすとともに、参加者にとっても価格決定プロセスにおいて透明性の高いオークションの仕組みを築き上げ、同社の信用力やブランド力を高めたことから業績も順調に拡大。2005年4月には大阪証券取引所ヘラクレス(現東京証券取引所JASDAQ)に株式の上場を果たした。
その後、長期間にわたるデフレ経済の環境下で同社の業績も伸び悩みが続いたことから、2014年5月期より第1次(新)中期経営計画をスタートした。第2の創業期と位置付け、「日本近代美術再生プロジェクト」に取り掛かるとともに、デフレ下においても安定的な収益を確保できる新たな事業としてエネルギー関連事業及びメディカル事業への参入を図った。その一環として、2013年4月にメディカル事業を行うシンワメディカル(株)(現シンワメディコ(株))を設立。また、エネルギー関連事業を行うエーペック(現Shinwa ARTEX)を株式取得により子会社化した。
2016年1月には医療ツーリズムのマーケティング拠点、及び決済プラットフォームの構築を目的として、香港にShinwa Medico Hong Kong Limitedを開設すると、2016年10月には、海航資本集団との連携を見据えた戦略提携を締結した(海航資本集団が文化事業構想のために設立した采譽投資有限公司に対する第三者割当による新株発行、並びに采譽投資有限公司の100%子会社である喜昌投資有限公司との業務提携)。また、2017年8月にはミャンマーでのマイクロファイナンス事業を開始した。
2017年12月には「シンワアートオークション」から「Shinwa Wise Holdings(シンワワイズホールディングス)」へ社名変更し、ホールディングス体制へと移行した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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