スターアジア不動産投 Research Memo(1):アクティブマネジメントを展開し、投資主利益の最大化を追及
[18/05/08]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
1. 概要
スターアジア不動産投資法人<3468>(以下、同REIT)は、独立系の不動産投資グループであるスターアジアグループ(後述)を母体とするREITであり、2015年12月に設立され、2016年4月に東証J-REIT市場に上場した。決算期は毎年1月と7月の2回であり、同REITは、2018年1月末に第4期(2017年8月から2018年1月までの6ヶ月間)を終了し、2018年3月中旬に決算内容を公表した。第4期の期初に物件売却を実行し、また内部成長(後述)にも注力した結果、1口当たり分配金は4,077円となった。同時に第5期(2018年7月期)及び第6期(2019年1月期)の運用状況の予想も公表しており、1口当たり分配金はそれぞれ2,750円、2,804円としている。同REITは第5期以降においても、1口当たり分配金の向上に資するアクティブマネジメントを展開し、投資主利益の最大化を追及する方針である。
2. 事業内容
同REITは「投資主利益第一主義」の理念に則り、スターアジアグループに蓄積されたノウハウと豊富な運用実績を活用して運用される総合型REITである。投資方針は、1)東京圏への優先・集中投資、2)アセットタイプの分散による収益の「安定性」と「成長性」の取り込み、3)ミドルサイズアセットを中心とした投資、であり、加えて運用スタイルとして4)既成概念にとらわれないアクティブマネジメントの展開、を特徴とする。直近では、2回目の公募増資(PO)(2018年1月公表)を実施、借入金と併せて第5期期初(2018年2月初旬)に6物件(総額107億円)を新規に取得し、ポートフォリオは860億円(取得価格の総額)、29物件まで拡大した。
(1) 東京圏への集中
29物件のうち22物件が東京圏に所在しており、その比率は80.1%(取得価格ベース)に達している。東京圏以外の物件に関しても流動性の高い大都市圏の駅近の物件が多い。
(2) アセットタイプの分散
成長性を重視するオフィス(構成比30.8%)及びホテル(構成比12.7%)で43.4%の資産を運用し、安定性を重視する住宅(構成比20.6%)及び物流施設(構成比36.0%)で残りの56.6%を運用する。
(3) ミドルサイズアセットを中心とした投資
29物件の平均取得金額は29.7億円であり、流動性の高い中規模物件への投資により、徹底したリスクの分散を志向する。
(4)既成概念にとらわれないアクティブマネジメントの展開
代表例として、これまで2度の資産の入替えを行っていること、上場REITとしては初となるメザニンローン債権への投資などが挙げられる。
今後の運用における注力点は、以下の通りである。
外部成長(運用資産の拡大)においては、当面の目標を2020年に2,000億円とおいており、スポンサーサポート(スポンサーグループが取得した物件売却情報の活用、スポンサーグループが運用する物件の取得等)の最大限の活用及び資産運用会社の独自ネットワークからの物件情報の獲得などにより、この目標達成を目指す。
内部成長(収益の拡大、費用削減等)においては、アセットタイプ別に力点が異なる。オフィスに関しては、賃料ギャップの解消がメインとなる。第3期末に6.8%だった賃料ギャップは第4期末に5.2%に減少し順調に解消が進んでおり、今後も賃料ギャップの解消により一層注力する方針である。物流施設に関しては、個々のテナントの状況に応じて賃貸借契約の再契約等の交渉に臨む。今期(第5期)に賃貸借契約が終了する2テナントに関しては、賃料を増額した上で再契約を締結した。住宅に関しては、第4期中に稼働率の上昇を達成した。今後は上昇した稼働率を維持していくことに取り組む。
3. 業績動向
2018年1月期(第4期)の営業収益は3,194百万円、営業利益2,051百万円、経常利益1,876百万円、当期純利益1,802百万円とほぼ前期同様の好業績を維持した。営業収益に関しては、第3期と同様に不動産売却を実行し営業収益を押し上げた(売却益:771百万円)。オフィスは期末稼働率が99.7%と高いなか、賃料ギャップが改善し、対予想比での収益増に貢献した。住宅では期初(2017年8月末)の稼働率93.8%から期末(2018年1月末)の97.1%へと稼働率の向上が著しかった。また当第4期は不動産売却に伴う利益を分配金として投資主に還元したため1口当たり分配金は、公表していた予想分配金を38円上回る4,077円と高い水準となった。また、113百万円を内部留保とし、将来の分配金の安定化のために活用する予定である。
2018年7月期(第5期)は、営業収益2,751百万円(前期比443百万円減)、営業利益1,504百万円(同547百万円減)、経常利益1,231百万円(同645百万円減)、当期純利益1,230百万円(同572百万円減)、1口当たり分配金は2,750円(同1,327円減)を予想する。第5期に業績が低下して見えるのは、前期に不動産売却益771百万円を計上したためであり、基盤となる賃料収入は325百万円伸びていることに注目したい。賃料収入の伸びの要因としては、公募増資による資産取得の影響が大きい。2018年1月に2回目の公募増資を実施し、同年2月に6物件107億円を取得した。第5期の期初に取得したことにより、これら6物件の収益が寄与することとなっている。なお、取得した6物件のうち3物件は物流施設、2物件は住宅、1物件がオフィスとなっており、同REITの位置付けとしては、主として「安定性を重視」した資産を増加させた形だ。
4. 成長戦略
同REITは、2020年に2,000億円という資産規模目標を掲げている。物件の主なソースとして、ビジネスライン(事業領域)を拡張するスターアジアグループからの物件供給が挙げられる。スターアジアグループは、オペレーショナルアセットの開発、運営、管理に進出した。学生専用レジデンスの運営管理をグローバルに展開するGSA(Global Student Accomodation)グループと共同出資したGSAスターアジア(株)が手がける、海外留学生を主たるターゲットとした学生専用レジデンスビジネスがその一例である。スターアジアグループは、日本政府が推進する「スーパーグローバル大学等事業」を背景として今後の海外からの留学生の増加を見込み、国際水準の学生専用レジデンスに対するニーズは高まるであろうという想定のもと、GSAグループと協働し当該分野への事業展開を決定した。国際水準の学生専用レジデンスの第1号案件となるのが、文京区白山において新築されたHAKUSAN HOUSE(364床、2018年2月竣工)である。HAKUSAN HOUSEについては同REITが、竣工から18ヶ月間の間、優先交渉権を獲得しており、ポートフォリオに組み入れられれば、新たなアセットタイプへの展開となる。加えて、スターアジアグループは、これまでと同様にスペシャルシチュエーション投資を継続しており、2017年9月末現在での運用資産は鑑定評価額ベースで551億円となっている。これら同グループが運用中の不動産及び今後取得する不動産も同REITの投資基準に合致すれば、取得検討の対象となり得る。外部成長においてはスポンサーの果たす役割が大きいと言われているが、同REITにおいては、スポンサーたるスターアジアグループの進化を同REITの成長に活用できるというアドバンテージがある。
さらに注目すべきは、小原智(おばらさとし)氏を新任取締役兼投資運用部長に抜擢した点である。小原氏はモルガン・スタンレー・キャピタル(株)などでの不動産投資及び運用の豊富な実績を持ち、また上場REITの投資運用においても中心的役割を担った経験を持つことから、その手腕とネットワークを買われて招聘された。スポンサーサポートのみならず、同REIT独自ネットワークの強化による案件発掘の加速が期待される。
■Key Points
・既成概念にとらわれないアクティブマネジメントを展開し、投資主利益の最大化を追及。ポートフォリオの構築方針として、東京圏を中心、アセットタイプの分散、中規模物件の集積を掲げる。
・ビジネスライン(事業領域)を拡張するスターアジアグループのサポートのもと成長を加速。スターアジアグループは、物件の管理運営機能及び開発機能を内製化し機能を拡充し、新たな事業領域であるオペレーショナルアセットの開発、管理、運営へと進出。
・上場後2年間で2回の公募増資を実施し資産は860億円に拡大。スターアジアグループのスペシャルシチュエーションファンドの運用資産及び新規取得物件、学生専用レジデンスに代表される新規開発案件などをベースに、
・2020年に資産規模2,000億円を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
<MW>
1. 概要
スターアジア不動産投資法人<3468>(以下、同REIT)は、独立系の不動産投資グループであるスターアジアグループ(後述)を母体とするREITであり、2015年12月に設立され、2016年4月に東証J-REIT市場に上場した。決算期は毎年1月と7月の2回であり、同REITは、2018年1月末に第4期(2017年8月から2018年1月までの6ヶ月間)を終了し、2018年3月中旬に決算内容を公表した。第4期の期初に物件売却を実行し、また内部成長(後述)にも注力した結果、1口当たり分配金は4,077円となった。同時に第5期(2018年7月期)及び第6期(2019年1月期)の運用状況の予想も公表しており、1口当たり分配金はそれぞれ2,750円、2,804円としている。同REITは第5期以降においても、1口当たり分配金の向上に資するアクティブマネジメントを展開し、投資主利益の最大化を追及する方針である。
2. 事業内容
同REITは「投資主利益第一主義」の理念に則り、スターアジアグループに蓄積されたノウハウと豊富な運用実績を活用して運用される総合型REITである。投資方針は、1)東京圏への優先・集中投資、2)アセットタイプの分散による収益の「安定性」と「成長性」の取り込み、3)ミドルサイズアセットを中心とした投資、であり、加えて運用スタイルとして4)既成概念にとらわれないアクティブマネジメントの展開、を特徴とする。直近では、2回目の公募増資(PO)(2018年1月公表)を実施、借入金と併せて第5期期初(2018年2月初旬)に6物件(総額107億円)を新規に取得し、ポートフォリオは860億円(取得価格の総額)、29物件まで拡大した。
(1) 東京圏への集中
29物件のうち22物件が東京圏に所在しており、その比率は80.1%(取得価格ベース)に達している。東京圏以外の物件に関しても流動性の高い大都市圏の駅近の物件が多い。
(2) アセットタイプの分散
成長性を重視するオフィス(構成比30.8%)及びホテル(構成比12.7%)で43.4%の資産を運用し、安定性を重視する住宅(構成比20.6%)及び物流施設(構成比36.0%)で残りの56.6%を運用する。
(3) ミドルサイズアセットを中心とした投資
29物件の平均取得金額は29.7億円であり、流動性の高い中規模物件への投資により、徹底したリスクの分散を志向する。
(4)既成概念にとらわれないアクティブマネジメントの展開
代表例として、これまで2度の資産の入替えを行っていること、上場REITとしては初となるメザニンローン債権への投資などが挙げられる。
今後の運用における注力点は、以下の通りである。
外部成長(運用資産の拡大)においては、当面の目標を2020年に2,000億円とおいており、スポンサーサポート(スポンサーグループが取得した物件売却情報の活用、スポンサーグループが運用する物件の取得等)の最大限の活用及び資産運用会社の独自ネットワークからの物件情報の獲得などにより、この目標達成を目指す。
内部成長(収益の拡大、費用削減等)においては、アセットタイプ別に力点が異なる。オフィスに関しては、賃料ギャップの解消がメインとなる。第3期末に6.8%だった賃料ギャップは第4期末に5.2%に減少し順調に解消が進んでおり、今後も賃料ギャップの解消により一層注力する方針である。物流施設に関しては、個々のテナントの状況に応じて賃貸借契約の再契約等の交渉に臨む。今期(第5期)に賃貸借契約が終了する2テナントに関しては、賃料を増額した上で再契約を締結した。住宅に関しては、第4期中に稼働率の上昇を達成した。今後は上昇した稼働率を維持していくことに取り組む。
3. 業績動向
2018年1月期(第4期)の営業収益は3,194百万円、営業利益2,051百万円、経常利益1,876百万円、当期純利益1,802百万円とほぼ前期同様の好業績を維持した。営業収益に関しては、第3期と同様に不動産売却を実行し営業収益を押し上げた(売却益:771百万円)。オフィスは期末稼働率が99.7%と高いなか、賃料ギャップが改善し、対予想比での収益増に貢献した。住宅では期初(2017年8月末)の稼働率93.8%から期末(2018年1月末)の97.1%へと稼働率の向上が著しかった。また当第4期は不動産売却に伴う利益を分配金として投資主に還元したため1口当たり分配金は、公表していた予想分配金を38円上回る4,077円と高い水準となった。また、113百万円を内部留保とし、将来の分配金の安定化のために活用する予定である。
2018年7月期(第5期)は、営業収益2,751百万円(前期比443百万円減)、営業利益1,504百万円(同547百万円減)、経常利益1,231百万円(同645百万円減)、当期純利益1,230百万円(同572百万円減)、1口当たり分配金は2,750円(同1,327円減)を予想する。第5期に業績が低下して見えるのは、前期に不動産売却益771百万円を計上したためであり、基盤となる賃料収入は325百万円伸びていることに注目したい。賃料収入の伸びの要因としては、公募増資による資産取得の影響が大きい。2018年1月に2回目の公募増資を実施し、同年2月に6物件107億円を取得した。第5期の期初に取得したことにより、これら6物件の収益が寄与することとなっている。なお、取得した6物件のうち3物件は物流施設、2物件は住宅、1物件がオフィスとなっており、同REITの位置付けとしては、主として「安定性を重視」した資産を増加させた形だ。
4. 成長戦略
同REITは、2020年に2,000億円という資産規模目標を掲げている。物件の主なソースとして、ビジネスライン(事業領域)を拡張するスターアジアグループからの物件供給が挙げられる。スターアジアグループは、オペレーショナルアセットの開発、運営、管理に進出した。学生専用レジデンスの運営管理をグローバルに展開するGSA(Global Student Accomodation)グループと共同出資したGSAスターアジア(株)が手がける、海外留学生を主たるターゲットとした学生専用レジデンスビジネスがその一例である。スターアジアグループは、日本政府が推進する「スーパーグローバル大学等事業」を背景として今後の海外からの留学生の増加を見込み、国際水準の学生専用レジデンスに対するニーズは高まるであろうという想定のもと、GSAグループと協働し当該分野への事業展開を決定した。国際水準の学生専用レジデンスの第1号案件となるのが、文京区白山において新築されたHAKUSAN HOUSE(364床、2018年2月竣工)である。HAKUSAN HOUSEについては同REITが、竣工から18ヶ月間の間、優先交渉権を獲得しており、ポートフォリオに組み入れられれば、新たなアセットタイプへの展開となる。加えて、スターアジアグループは、これまでと同様にスペシャルシチュエーション投資を継続しており、2017年9月末現在での運用資産は鑑定評価額ベースで551億円となっている。これら同グループが運用中の不動産及び今後取得する不動産も同REITの投資基準に合致すれば、取得検討の対象となり得る。外部成長においてはスポンサーの果たす役割が大きいと言われているが、同REITにおいては、スポンサーたるスターアジアグループの進化を同REITの成長に活用できるというアドバンテージがある。
さらに注目すべきは、小原智(おばらさとし)氏を新任取締役兼投資運用部長に抜擢した点である。小原氏はモルガン・スタンレー・キャピタル(株)などでの不動産投資及び運用の豊富な実績を持ち、また上場REITの投資運用においても中心的役割を担った経験を持つことから、その手腕とネットワークを買われて招聘された。スポンサーサポートのみならず、同REIT独自ネットワークの強化による案件発掘の加速が期待される。
■Key Points
・既成概念にとらわれないアクティブマネジメントを展開し、投資主利益の最大化を追及。ポートフォリオの構築方針として、東京圏を中心、アセットタイプの分散、中規模物件の集積を掲げる。
・ビジネスライン(事業領域)を拡張するスターアジアグループのサポートのもと成長を加速。スターアジアグループは、物件の管理運営機能及び開発機能を内製化し機能を拡充し、新たな事業領域であるオペレーショナルアセットの開発、管理、運営へと進出。
・上場後2年間で2回の公募増資を実施し資産は860億円に拡大。スターアジアグループのスペシャルシチュエーションファンドの運用資産及び新規取得物件、学生専用レジデンスに代表される新規開発案件などをベースに、
・2020年に資産規模2,000億円を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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