トライSTG Research Memo(6):テレビ事業の収益力向上を図るほか、海外事業、通販事業の黒字化を目指す
[18/05/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■トライステージ<2178>の今後の見通し
2. 新中期経営計画「Tri's vision 2021」を発表
(1) 前中期計画の振り返り
2018年2月期までの3ヶ年中期経営計画では、テレビ事業の収益力強化と同時にWeb事業との連動による多様なサービス提供による収益拡大と、東南アジア市場への展開による業容の拡大を成長戦略として取り組んできた。経営数値目標としては、2018年2月期に連結売上高555億円、のれん控除前営業利益24億円、のれん控除前ROEで10%を掲げていたのに対して、実績としては売上高で557億円と計画を上回ったものの、のれん控除前営業利益は12億円、のれん控除前ROEは3期平均で9.4%とそれぞれ未達に終わった。DM事業の売上高が目標を大きく上回ったものの、テレビ事業の収益が悪化したほか、海外事業についても売上高が想定を下回ったことが要因だ。また、投融資についても100億円の枠を設定していたが、実績は53億円にとどまった。
(2) 新中期経営計画の概要
新たに発表した2021年2月期までの中期経営計画「Tri's vision 2021」では、グループビジョンとして「ダイレクトマーケティングからダイレクトデータマーケティング(DDM)へ」を掲げ、2021年2月期の経営数値目標として、連結売上高600億円、営業利益率4.5%を目指し、また、財務健全性を維持しながら各事業の収益性向上を図ることで、3年後のROE15%を目指していく。
3年後の事業別売上高及び営業利益を見ると、テレビ事業及びDM事業については大きな成長を見込んでおらず、安定収益事業として収益性の改善を図っていく方針で、それ以外の事業を成長事業として位置付け、売上の拡大とともに利益増を目指していく計画となっている。
(3) 事業別戦略
a) ダイレクトマーケティング支援事業
ダイレクトマーケティング支援事業ではダイレクトデータマーケティング(DDM)基盤の構築によって、新規顧客の獲得とLTV(顧客生涯価値)の最大化を実現し、収益を拡大していく戦略となっている。DDMとは同社が保有する各種メディア枠の膨大なデータやコールセンターで蓄積したコンタクト履歴や顧客情報等と、クライアント企業が保有するカスタマーデータを統合し、カスタマーデータプラットフォーム(以下、CDP)を構築、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールと連携することで、クライアント企業の売上最大化を目指すマーケティング施策を指す。
DDMの構築スケジュールとしては、1年目でシステムの要件・定義を行い、2年目に一部顧客の試験運用を開始、検証を進めながら導入方針を決定し、3年目からの本格導入開始を目指している。DDM基盤を構築することによって、各事業へのサービス提供にも有機的に連動させることで、グループ全体の企業価値向上につなげていく考えだ。
その他、今後の施策としてはテレビとWebを連動したクロスメディア戦略によるサービスの開発、リテンション領域(CRM領域)におけるサービスの開発、効率的なオペレーションの実現等に取り組んでいく。
b) DM事業
DM事業ではDMの企画・制作といった川上領域へ進出することで、トータルサービスの実現を目指し、収益の拡大と同時に収益性の向上も目指していく。DM市場の環境としては、運送会社の送料値上げ等によって不透明感が残るものの、DMはダイレクトマーケティング事業者にとって新規顧客の獲得、あるいはLTV向上を実現するための重要なツールとしての位置付けは変わらないため、今後も業界大手として事業を拡大していくチャンスはあると弊社では見ている。
今後の施策としては、トータルサービス(主に制作・データ加工・印刷・作業)へのシフトによる収益性向上を図るため、トータルサービスに対応できる組織・人材の育成に取り組んでいくほか、同領域に強みを持つ企業との提携等も進めていく。
c) 海外事業
海外事業では、商品開発・供給強化とOmni Cannelへの対応を進めていくことで、2021年2月期の黒字転化を目指している。現状は、日本商品の販売について、特に健康食品などは規制等のハードルが高く想定よりも伸び悩んでいるものの、今後の東南アジアの経済成長を考えれば、引き続き注力していくことで事業を拡大していく可能性はあると弊社では見ている。
今後の施策としては、販売状況把握、商品開発・仕入のための情報インフラの構築に加えて、新たな商品開発(映像付商品等)、調達ルートの開拓、テレビだけでなくEC・店舗も含めたOmni Channel施策に注力していく計画となっている。
d) 通販事業
通販事業では主力商品の確立とCRM施策の確立に取り組んでいく。PDCAサイクルを回すことで、最適な広告戦略を確立し、新規顧客の獲得を増やしていく。また、健康食品やサプリメントは継続してユーザーが購入するケースも多いため、最適なCRM施策を通じた顧客定着率の向上を目指していく。なお、黒字化の時期としては事業開始3年目となる2020年2月期を目標としている。
e) その他の事業
その他の事業では、「日本百貨店」の多店舗展開推進と国内外における卸販売の強化を進めていく。多店舗展開ではPOSシステム等のオペレーションシステムの整備を進めていくほか、EC事業者との協業やOmni Channel施策による実店舗とECとの連携なども行っていく。また、「日本百貨店」のフランチャイズ展開についても視野に入れている。
(4) 組織改編・役員制度の見直し
中期経営計画を実行していくため同社は2018年3月より、組織の改編並びに役員制度等の見直しも実施している。3月から執行役員会を決議機関としたほか、役員制度については5月の株主総会後から従来の会長、社長職を廃止し、CVO(Chief Visionary Officer:最高事業計画責任者)、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)、COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)を新設し、また、常勤取締役全員を執行役員とすることで、業務執行の推進力とガバナンスの強化を図っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 新中期経営計画「Tri's vision 2021」を発表
(1) 前中期計画の振り返り
2018年2月期までの3ヶ年中期経営計画では、テレビ事業の収益力強化と同時にWeb事業との連動による多様なサービス提供による収益拡大と、東南アジア市場への展開による業容の拡大を成長戦略として取り組んできた。経営数値目標としては、2018年2月期に連結売上高555億円、のれん控除前営業利益24億円、のれん控除前ROEで10%を掲げていたのに対して、実績としては売上高で557億円と計画を上回ったものの、のれん控除前営業利益は12億円、のれん控除前ROEは3期平均で9.4%とそれぞれ未達に終わった。DM事業の売上高が目標を大きく上回ったものの、テレビ事業の収益が悪化したほか、海外事業についても売上高が想定を下回ったことが要因だ。また、投融資についても100億円の枠を設定していたが、実績は53億円にとどまった。
(2) 新中期経営計画の概要
新たに発表した2021年2月期までの中期経営計画「Tri's vision 2021」では、グループビジョンとして「ダイレクトマーケティングからダイレクトデータマーケティング(DDM)へ」を掲げ、2021年2月期の経営数値目標として、連結売上高600億円、営業利益率4.5%を目指し、また、財務健全性を維持しながら各事業の収益性向上を図ることで、3年後のROE15%を目指していく。
3年後の事業別売上高及び営業利益を見ると、テレビ事業及びDM事業については大きな成長を見込んでおらず、安定収益事業として収益性の改善を図っていく方針で、それ以外の事業を成長事業として位置付け、売上の拡大とともに利益増を目指していく計画となっている。
(3) 事業別戦略
a) ダイレクトマーケティング支援事業
ダイレクトマーケティング支援事業ではダイレクトデータマーケティング(DDM)基盤の構築によって、新規顧客の獲得とLTV(顧客生涯価値)の最大化を実現し、収益を拡大していく戦略となっている。DDMとは同社が保有する各種メディア枠の膨大なデータやコールセンターで蓄積したコンタクト履歴や顧客情報等と、クライアント企業が保有するカスタマーデータを統合し、カスタマーデータプラットフォーム(以下、CDP)を構築、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールと連携することで、クライアント企業の売上最大化を目指すマーケティング施策を指す。
DDMの構築スケジュールとしては、1年目でシステムの要件・定義を行い、2年目に一部顧客の試験運用を開始、検証を進めながら導入方針を決定し、3年目からの本格導入開始を目指している。DDM基盤を構築することによって、各事業へのサービス提供にも有機的に連動させることで、グループ全体の企業価値向上につなげていく考えだ。
その他、今後の施策としてはテレビとWebを連動したクロスメディア戦略によるサービスの開発、リテンション領域(CRM領域)におけるサービスの開発、効率的なオペレーションの実現等に取り組んでいく。
b) DM事業
DM事業ではDMの企画・制作といった川上領域へ進出することで、トータルサービスの実現を目指し、収益の拡大と同時に収益性の向上も目指していく。DM市場の環境としては、運送会社の送料値上げ等によって不透明感が残るものの、DMはダイレクトマーケティング事業者にとって新規顧客の獲得、あるいはLTV向上を実現するための重要なツールとしての位置付けは変わらないため、今後も業界大手として事業を拡大していくチャンスはあると弊社では見ている。
今後の施策としては、トータルサービス(主に制作・データ加工・印刷・作業)へのシフトによる収益性向上を図るため、トータルサービスに対応できる組織・人材の育成に取り組んでいくほか、同領域に強みを持つ企業との提携等も進めていく。
c) 海外事業
海外事業では、商品開発・供給強化とOmni Cannelへの対応を進めていくことで、2021年2月期の黒字転化を目指している。現状は、日本商品の販売について、特に健康食品などは規制等のハードルが高く想定よりも伸び悩んでいるものの、今後の東南アジアの経済成長を考えれば、引き続き注力していくことで事業を拡大していく可能性はあると弊社では見ている。
今後の施策としては、販売状況把握、商品開発・仕入のための情報インフラの構築に加えて、新たな商品開発(映像付商品等)、調達ルートの開拓、テレビだけでなくEC・店舗も含めたOmni Channel施策に注力していく計画となっている。
d) 通販事業
通販事業では主力商品の確立とCRM施策の確立に取り組んでいく。PDCAサイクルを回すことで、最適な広告戦略を確立し、新規顧客の獲得を増やしていく。また、健康食品やサプリメントは継続してユーザーが購入するケースも多いため、最適なCRM施策を通じた顧客定着率の向上を目指していく。なお、黒字化の時期としては事業開始3年目となる2020年2月期を目標としている。
e) その他の事業
その他の事業では、「日本百貨店」の多店舗展開推進と国内外における卸販売の強化を進めていく。多店舗展開ではPOSシステム等のオペレーションシステムの整備を進めていくほか、EC事業者との協業やOmni Channel施策による実店舗とECとの連携なども行っていく。また、「日本百貨店」のフランチャイズ展開についても視野に入れている。
(4) 組織改編・役員制度の見直し
中期経営計画を実行していくため同社は2018年3月より、組織の改編並びに役員制度等の見直しも実施している。3月から執行役員会を決議機関としたほか、役員制度については5月の株主総会後から従来の会長、社長職を廃止し、CVO(Chief Visionary Officer:最高事業計画責任者)、CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)、COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)を新設し、また、常勤取締役全員を執行役員とすることで、業務執行の推進力とガバナンスの強化を図っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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