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ハウスコム Research Memo(2):「地域社会の玄関」と位置付ける賃貸仲介店舗を首都圏と東海圏に展開

注目トピックス 日本株
■会社概要

1. 会社概要と沿革
ハウスコム<3275>は、1998年に大東建託の100%出資子会社として、賃貸建物の仲介斡旋を事業目的に設立された。2003年に現在の(株)ジューシィ情報センターから、首都圏及び東海圏の62店舗の営業権を取得し、店舗網の基盤とした。直営店の新規出店とともに、周辺業務(損害保険代理店・リフォーム工事取次・引越取次・広告代理店など)を取り込み、順調に業績を伸ばしてきた。「住まいを通して人を幸せにする。」というミッションを掲げ、「地域社会の玄関」と位置付ける店舗を通して入居者や家主に対してのお役立ちや地域密着を徹底。出店は関東と東海が中心であり、全国165店舗(直営店164店舗、FC店1店舗)を持つ(2018年3月末)。2011年6月に、大証JASDAQ市場(現東証JASDAQ市場)に上場。将来的には東証本則市場を視野に入れていることも公表している。

2014年3月に同社社長に就任した現在の田村穂社長は、4年にわたりリーダーシップを発揮し、収益構造を維持・改善しながら、事業規模の拡大を行ってきた。営業収益は、8,244百万円(2014年3月期)から10,822百万円(2018年3月期)に31.3%増加し、当期純利益は、402百万円(2014年3月期)から856百万円(同)に112.7%増加し、5年連続の増収増益に導いた。この4年間に、積極的かつ立地を吟味した店舗網の拡大(純増30店舗)、WebやAIなどのITツールの積極活用、リフォーム事業への進出などを成功させている。

2. 事業構成
同社の事業は、「不動産賃貸仲介事業」と「仲介関連サービス事業」が柱であり、営業収益の85.3%(2018年3月期)を占める。「不動産賃貸仲介事業」は、住宅を探す個人に対して、アパートやマンションなどの賃貸物件を紹介し、成約時に不動産仲介手数料を得るサービスである。営業収益構成比は47.6%(同)であり、同社事業の中核である。「仲介関連サービス事業」は、家主及び入居者の不動産仲介に伴って発生するニーズに対応した事業である。広告代理店手数料、リフォーム・リノベーション、鍵交換、損害保険、ブロードバンド/CATVサービスなど多岐にわたり、営業収益構成比は37.7%(同)である。なかでもリフォームサービスには力を入れており、リフォーム営業所の開設に伴い成長が加速している。住む人と部屋をつなぐという点では両事業は類似する事業である。

3. 事業領域とポジション
賃貸仲介市場は、世帯数の推移に影響を受ける。国立社会保障・人口問題研究所によると、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)及び愛知県においては、2025年まで世帯数が増加し、それ以降の減少も他の地域よりも緩やかなペースになると予測されている。同社の直営店舗は、首都圏に115店舗(構成比70.1%)、愛知県で27店舗(構成比16.5%)であり、市場の成長を取り込める環境にある。また、これらの地域は企業活動及び雇用が好調だ。雇用のある地域には人も動き、賃貸需要もより多く発生することが見込まれる。

国土交通省によると、宅地建物取引業者の数は個人営業が減り、法人営業は増える傾向にある。特に賃貸仲介ではチェーン化した企業グループが業界内のポジションを高めている。同社は、週刊全国賃貸住宅新聞が発表した賃貸仲介件数ランキング(直営店のみ、2016年10月−2017年9月)において、大東建託(1位)、(株)ミニミニ(2位)、に次ぐポジションに位置している※。今回の調査では前回2位であったエイブルが回答していないため、実質的に4位のポジションと位置付けられる。競合他社には、仲介手数料を半額にするなど価格面の競争を指向する不動産業者もあるが、同社はサービス内容の充実を図ることで顧客満足度を高め、価格競争を回避している。

※2015年10月-2016年9月は大東建託グループとして集計されているが、同社単体の賃貸仲介件数はランキングにおいて実質4位である。

■事業概要

1. 新規出店の継続
ハウスコム<3275>は店舗数の増加とともに営業収益を伸ばしてきた。2011年3月期末の122店舗から7年後の2018年3月期末には1.34倍の164店舗に、営業収益もその間1.43倍となった。2018年3月期は、期初の新規出店計画は11店舗であったが、実際の出店は8店舗となった。出店に当たっては、店舗当たり人材が4名〜6名必要であり、駅などの集客施設から1分から数分の一等地の視認性の良い物件をタイミングよく見つける必要がある。同社の店舗の特徴は、コンビニのように入りやすく、白を基調に明るく相談しやすい店内だ。なお、同社のメインの対象エリアは首都圏と愛知県だが、出店候補地は200箇所以上あると推定され、新規出店の伸びしろは大きい。

2. 店舗競争力の強化:「不動産テック」と「豊かな地域情報」
インターネットの普及は不動産業界に大きな変化をもたらしている。顧客はスマートフォンで、ポータルサイトを利用して物件を吟味し、メールやSNSで不動産会社と連絡を取るようになっている。また、現在のネット上の物件情報は規格化されたスペック情報が主であり、住み始めた後に価値がわかる地域に根差した情報(“豊かな地域情報”)が求められるようになってきている。不動産業界に求められる対応としては、ネット上に掲載させる物件情報の質と数、信頼・安心できる店舗であることの伝達、効率的なツールの提供、対応スピードと24時間化、“豊かな地域情報”の充実と提供、などがある。

(1) 「不動産テック」への取組み
同社では3年ほど前から顧客接点のレベルアップを目的に“不動産テック”の導入を行ってきた。代表的な取り組みとしては、AI(人工知能)を使った物件検索やチャットサービス、「マイボックス」システム、LINE上でやりとりができる仕組み、オンラインのライブ中継内見システム、IT重説システムなど、賃貸仲介の業界では一歩先を行くシステム・サービスである。大きな進捗を見せているのは「マイボックス」システムだ。個人別に設けられる専用Webサイト「マイボックス」では、チャット形式でスピーディに店舗スタッフとやりとりができる。チャットはLINEなどを日頃から使用する若年層にマッチしたコミュニケーションとして注目の接客ツールだ。夜間や休日は「人工知能@コムるくん」が、24時間365日、物件に関する質問にスピーディに答える機能や予約機能が便利である。「マイボックス」を持つ登録者は、累積で250万人に達し、同社にとって貴重な情報資産となっている。

(2) 「豊かな地域情報」に関する
同社は、地域に根差した“豊かな情報”を充実させるために、他社との業務提携を積極的に活用している。第1弾として昭文社<9475>の「まっぷる」とデータ連携し、賃貸物件の近所のお店や施設の情報を提供するサービスを開始。具体的には、同社物件サイト及び「マイボックス」に掲載している物件を対象に、近所の飲食店、ショッピング、レジャー、宿泊・温泉などの施設を自動的にピックアップし紹介する。昭文社のデータを活用することで所在地や外観写真だけでなく、お店の特徴や営業時間等まで紹介している。また、ご近所SNS「マチマチ」と業務提携し、賃貸物件・口コミ情報に関するサービスの相互紹介を開始した。具体的には、マチマチのサイト内で同社の物件情報を表示・紹介したり、マチマチ内の口コミ情報を個人情報が特定できない安全な形に加工した上で、同社の営業マンが活用するなどである。地域の“豊かな地域情報”を充実させる取り組みとして注目したい。

3. 収益構造の多様化:リフォーム事業の拡大
2016年3月期から本格的にスタートしたリフォーム事業は成長期を迎えている。船橋、川口、立川とリフォーム営業所を増やしてきた同社だが、2018年3月期は一気に3営業所(横浜、静岡、名古屋)を開設した。元々「大家さんへのお役立ち」を主目的として開始されたサービスではあるが、案件をこなすなかで既に黒字化。今後は、現在主体となっている“空室を埋めるための軽微なリフォーム”に加え、“資産価値を大幅に高めるための本格リフォーム”を増やしていく方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)



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