GTS Research Memo(2):北海道大学発のバイオベンチャーで、日本のバイオシミラー開発で先駆
[18/08/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 会社沿革
ジーンテクノサイエンス<4584>は、北海道大学遺伝子病制御研究所における研究成果を診断薬や治療薬として開発することを目的として、2001年に設立された大学発のバイオベンチャーとなる。バイオ新薬の研究開発では、2007年6月に科研製薬(株)<4521>に対して、抗α9インテグリン抗体をライセンスアウトし、現在も研究開発が進められている。また、安定した収益基盤を構築するために、バイオシミラーの開発にも着手し、2007年に富士製薬工業(株)<4554>とフィルグラスチム※BSの共同開発契約を締結、2012年11月にフィルグラスチムBSとして国内バイオシミラー・ガイドラインの下で初めて製造販売承認され、2013年5月から富士製薬工業(株)及び持田製薬(株)<4534>から販売が開始されている。なお、2012年11月には東証マザーズ市場に上場を果している。
※フィルグラスチム:顆粒球増殖因子製剤。がん化学療法(抗がん剤投与)を行った後の好中球減少症の治療等に利用される。先行品は協和発酵キリン<4151>のグラン。
同社は、バイオシミラーの開発パイプラインを強化していくなかで、共同開発先との業務提携も積極的に進めている。2014年1月に(株)三和化学研究所とダルベポエチンアルファBSの共同開発契約を締結したほか、2015年8月には持田製薬(株)とがん治療領域において、同年11月には千寿製薬(株)と眼科治療領域においてバイオシミラーの共同開発及び販売に関する業務提携の基本合意書を締結し、それぞれ共同開発を進めている。
また、2016年にはノーリツ鋼機グループのNKリレーションズ(株)等が資本参加し、同グループ会社となったほか、同グループで再生医療分野の開発を手掛ける(株)日本再生医療と資本業務提携契約を締結し、バイオ新規事業への足掛かりを築いた。そのほかにも、同社は、2016年にJSR(株)<4185>と資本業務提携契約を締結したほか、2017年には伊藤忠ケミカルフロンティア(株)と2つ目のバイオシミラー開発品に関して共同開発を行うための資本業務提携契約を締結(2013年に1度目の資本出資を受けている)、2018年4月にはナノキャリア(株)<4571>と資本業務提携契約を締結し、それぞれが同社の主要株主となっている。
バイオシミラーの開発では国内トップクラスのノウハウを持つ
2. バイオ医薬品、バイオシミラーについて
同社が事業展開するバイオ医薬品とは、微生物や細胞に備わっているたんぱく質を作る機能を活用し、医薬品として役立つ特定のたんぱく質(ホルモン、酵素、抗体等)を作り、医薬品化したものを指す。元々、人間の体内にあるたんぱく質を使って医薬品化するため、からだに優しく、また、バイオ医薬品の一種である抗体医薬品は疾患部分に直接作用するため副作用のリスクも少ないといった長所を持つ。良く知られているバイオ医薬品としては、インスリン(糖尿病治療薬)やインターフェロン(C型肝炎治療薬)などがある。
一般的な医薬品(低分子化合物)が分子レベルの化学合成によって量産されるのに対して、バイオ医薬品は遺伝子組み換え技術や細胞培養・精製技術を用いて大量の微生物や細胞を培養し、それらを合成させ精製することから、開発費や量産に必要な製造設備のコスト負担が大きい。また、生物製剤であるため、使用期限も一般的な医薬品に対して短く、薬価も総じて高価なものが多い。
また、一般的な医薬品には新薬として開発された先行品と、先行品と同一の分子構造の化合物を医薬品化した後発医薬品(ジェネリック医薬品)とがあるのと同様に、バイオ医薬品においても後続品となるバイオシミラーがある。ただ、先行品に対してたんぱく質自体は同一で、薬効、安全性等は変わらないものの、たんぱく質に付加される糖鎖などに微妙な差異があるため、完全に同一なものはできない。このため、先行品に類似したものを製造するために独自で製法を確立し、物理化学的なデータを積み重ね、同等性と同質性を証明する必要がある。また、臨床試験においては安全性や有効性などの同等性試験が必要となる。これらを満たして初めて製造販売承認が取得できるため、研究開発費は一般的なジェネリック医薬品と比較すれば格段に大きくなる。
薬価に関しては、先行品の約70%で設定されるため、いかに生産性の高い製造プロセスを確立できるかが、バイオシミラーを開発し商用生産化していくうえでは重要な要素となる。特に、製造プロセスを確立するためのノウハウや開発品の特性・品質を解析するノウハウなどを持つ企業は国内ではまだ少ない。同社はバイオ医薬品に特化して、10年以上にわたる研究開発を進めてきた蓄積があり、バイオシミラーの領域においては国内でもトップクラスの開発ノウハウを持つ企業として位置付けられている。
なお、バイオ新薬とバイオシミラーを比較した場合、研究着手から上市までの期間は新薬が15〜17年、バイオシミラーが6〜8年程度となっている。新薬の場合は、遺伝子の探索(機能解析)で2〜3年、医薬候補化合物のスクリーニングで2〜4年の時間を要するほか、非臨床から臨床試験に至るまでの期間も長期間を要するためだ。このため、研究開発費の規模は新薬が200〜300億円程度であるのに対して、バイオシミラーは50〜100億円程度となり、また、開発から上市に至るまでの成功確率も新薬と比較して格段に高くなる。同社のようなバイオベンチャーにとってバイオシミラー事業は開発効率の高い領域とも言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 会社沿革
ジーンテクノサイエンス<4584>は、北海道大学遺伝子病制御研究所における研究成果を診断薬や治療薬として開発することを目的として、2001年に設立された大学発のバイオベンチャーとなる。バイオ新薬の研究開発では、2007年6月に科研製薬(株)<4521>に対して、抗α9インテグリン抗体をライセンスアウトし、現在も研究開発が進められている。また、安定した収益基盤を構築するために、バイオシミラーの開発にも着手し、2007年に富士製薬工業(株)<4554>とフィルグラスチム※BSの共同開発契約を締結、2012年11月にフィルグラスチムBSとして国内バイオシミラー・ガイドラインの下で初めて製造販売承認され、2013年5月から富士製薬工業(株)及び持田製薬(株)<4534>から販売が開始されている。なお、2012年11月には東証マザーズ市場に上場を果している。
※フィルグラスチム:顆粒球増殖因子製剤。がん化学療法(抗がん剤投与)を行った後の好中球減少症の治療等に利用される。先行品は協和発酵キリン<4151>のグラン。
同社は、バイオシミラーの開発パイプラインを強化していくなかで、共同開発先との業務提携も積極的に進めている。2014年1月に(株)三和化学研究所とダルベポエチンアルファBSの共同開発契約を締結したほか、2015年8月には持田製薬(株)とがん治療領域において、同年11月には千寿製薬(株)と眼科治療領域においてバイオシミラーの共同開発及び販売に関する業務提携の基本合意書を締結し、それぞれ共同開発を進めている。
また、2016年にはノーリツ鋼機グループのNKリレーションズ(株)等が資本参加し、同グループ会社となったほか、同グループで再生医療分野の開発を手掛ける(株)日本再生医療と資本業務提携契約を締結し、バイオ新規事業への足掛かりを築いた。そのほかにも、同社は、2016年にJSR(株)<4185>と資本業務提携契約を締結したほか、2017年には伊藤忠ケミカルフロンティア(株)と2つ目のバイオシミラー開発品に関して共同開発を行うための資本業務提携契約を締結(2013年に1度目の資本出資を受けている)、2018年4月にはナノキャリア(株)<4571>と資本業務提携契約を締結し、それぞれが同社の主要株主となっている。
バイオシミラーの開発では国内トップクラスのノウハウを持つ
2. バイオ医薬品、バイオシミラーについて
同社が事業展開するバイオ医薬品とは、微生物や細胞に備わっているたんぱく質を作る機能を活用し、医薬品として役立つ特定のたんぱく質(ホルモン、酵素、抗体等)を作り、医薬品化したものを指す。元々、人間の体内にあるたんぱく質を使って医薬品化するため、からだに優しく、また、バイオ医薬品の一種である抗体医薬品は疾患部分に直接作用するため副作用のリスクも少ないといった長所を持つ。良く知られているバイオ医薬品としては、インスリン(糖尿病治療薬)やインターフェロン(C型肝炎治療薬)などがある。
一般的な医薬品(低分子化合物)が分子レベルの化学合成によって量産されるのに対して、バイオ医薬品は遺伝子組み換え技術や細胞培養・精製技術を用いて大量の微生物や細胞を培養し、それらを合成させ精製することから、開発費や量産に必要な製造設備のコスト負担が大きい。また、生物製剤であるため、使用期限も一般的な医薬品に対して短く、薬価も総じて高価なものが多い。
また、一般的な医薬品には新薬として開発された先行品と、先行品と同一の分子構造の化合物を医薬品化した後発医薬品(ジェネリック医薬品)とがあるのと同様に、バイオ医薬品においても後続品となるバイオシミラーがある。ただ、先行品に対してたんぱく質自体は同一で、薬効、安全性等は変わらないものの、たんぱく質に付加される糖鎖などに微妙な差異があるため、完全に同一なものはできない。このため、先行品に類似したものを製造するために独自で製法を確立し、物理化学的なデータを積み重ね、同等性と同質性を証明する必要がある。また、臨床試験においては安全性や有効性などの同等性試験が必要となる。これらを満たして初めて製造販売承認が取得できるため、研究開発費は一般的なジェネリック医薬品と比較すれば格段に大きくなる。
薬価に関しては、先行品の約70%で設定されるため、いかに生産性の高い製造プロセスを確立できるかが、バイオシミラーを開発し商用生産化していくうえでは重要な要素となる。特に、製造プロセスを確立するためのノウハウや開発品の特性・品質を解析するノウハウなどを持つ企業は国内ではまだ少ない。同社はバイオ医薬品に特化して、10年以上にわたる研究開発を進めてきた蓄積があり、バイオシミラーの領域においては国内でもトップクラスの開発ノウハウを持つ企業として位置付けられている。
なお、バイオ新薬とバイオシミラーを比較した場合、研究着手から上市までの期間は新薬が15〜17年、バイオシミラーが6〜8年程度となっている。新薬の場合は、遺伝子の探索(機能解析)で2〜3年、医薬候補化合物のスクリーニングで2〜4年の時間を要するほか、非臨床から臨床試験に至るまでの期間も長期間を要するためだ。このため、研究開発費の規模は新薬が200〜300億円程度であるのに対して、バイオシミラーは50〜100億円程度となり、また、開発から上市に至るまでの成功確率も新薬と比較して格段に高くなる。同社のようなバイオベンチャーにとってバイオシミラー事業は開発効率の高い領域とも言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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