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TKP Research Memo(3):市場創造型のビジネスモデルにより高い成長性を実現

注目トピックス 日本株
■事業内容等

1. ビジネスモデル
ティーケーピー<3479>のビジネスモデルは、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから大口取引で不動産を賃貸などで割安に仕入れ、物件を貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行い貸会議室仕様にする。同社の顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいる。また、最近では、グレードの高いオフィスビルの企画・設計の段階から参画することにより、カンファレンスルームなど共有部分の有効活用(収益化等)を手掛ける新しいシェアリングの形も増えているようだ。

同社のビジネスモデルの特徴の1つに「持たざる経営」が挙げられる。仕入れは賃貸契約を主軸としているため、同社の業績における不動産価格の変動影響は小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なっていることに注意したい。

2. 法人向け貸会議室
法人向け貸会議室はグレード別に展開しているのも同社の特徴の1つだ。グレードは、単価の高いものから、ガーデンシティPREMIUM(GCP)、ガーデンシティ(GC)、カンファレンスセンター(CC)、ビジネスセンター(BC)、スター貸会議室があり、GCPとGCはフラッグシップの位置付けで、CCはスタンダードとなっている。GCPは新築・築浅物件だが、ほかはすべてリノベーションが中心だ。GCPはマルチ活用できるスタイリッシュな複合施設で、GCは同社における最高品質の多目的ホールとなっている。GCPは16拠点に177室、GCは40拠点に427室ある。スタンダード会議室のCCは、拠点数・室数で最大となる84拠点、932室。ライトユーズとして展開しているBCとスター貸会議室のうち、BCはリーズナブルな会議室で51拠点に330室あり、スター貸会議室は小規模会議室で39拠点に94室ある。同社は低価格での会議室利用で顧客を獲得し、利便性などのメリットを顧客に認識させ、次の高グレードな貸会議室への利用につなげていく戦略を取っており、その幅広いグレード及び拠点数・室数の会議室利用で顧客単価及びリピート率につなげている。

3. 拠点と貸会議室・宴会場数
国内では1,958室の貸会議室・宴会場を展開(2018年5月末時点)。地域別内訳は、北海道93室、東北143室、北陸・甲信越39室、関東913室、東海142室、関西412室、中国・四国77室、九州・沖縄139室と日本全国に広く展開している。全国に会議室を展開していることで、大学の入試試験や大手企業の全国採用など、大口案件を一斉に引き受けることが可能となっている。海外ではニューヨーク、ニュージャージー、香港、シンガポール、台湾、ミャンマー、マレーシアに進出しており、合計46室を展開している。

4. 周辺事業
同社が他の貸会議室ビジネスを行っている企業との差別化要因の1つに、周辺サービスの展開が挙げられる。同社は、料飲、オプション、宿泊、その他にも展開、顧客の幅広いニーズに応えている。料飲については、ケータリング、弁当、カフェ、レストランから成り、特にケータリングや弁当は貸会議室での懇親会など食事を伴う用途展開に欠かせない周辺サービスである。駅に近いシティホテルでは宿泊施設はあるが会議室や食事を提供するための大規模キッチンを設けるだけのスペースがないことが多い。同社がケータリングや弁当事業として抱えることで、駅にアクセスしやすい物件においても会議室のスペースさえあれば食事の提供や懇親会会場にも転用が可能なことは特筆すべきだろう。また、同社は、幅広いオプションも提供しており、それには、同時通訳システム、テレビ会議システム、研修コーディネート、映像・音響・照明、人事採用向けレンタル、オフィス家具・機器、パーテーション組立、高機能プロジェクターなどがあり、顧客の利便性を高める内容となっている。

さらに、同社は顧客からの要望により宿泊も提供している。研修旅行や社員旅行として使用されており、リゾート型セミナーホテルである「レクトーレ」(6拠点)、ハイクラスなリゾート型セミナー旅館の「石のや」(伊豆長岡温泉旅館)、ホテルと会議室のハイブリッド施設として「アパホテル」(5拠点)、コンパクトホテルと会議室のハイブリッド施設の「ファーストキャビン」(1拠点)、都市型リゾート宿泊施設の「アジュール竹芝」を展開している※。

※2018年5月末時点では、TKPグループ全体で5ブランド、計13施設(計画を含めると20施設)。そのうち、「アパホテル」、「ファーストキャビン」はフランチャイジー(FC加盟者)としての展開。それ以外は自社ブランド。


昨今は大企業であっても、宿泊施設を自社で保有していることは少なく、また保有していてもコスト上、運営が難しいことが多い。同社はそのような企業ニーズを取り込み、リピート率の向上を狙う。また、高級旅館として有名な「石亭」は稼働率の低さから経営不振に陥っていたが、同社が「石のや」としてリブランドし、平日の法人需要を取り込むことで、経営が改善するなど資産の有効活用の観点からもメリットが多い。加えて、貸会議室だけでなく、食事・機器・宿泊場所・交通手配までワンストップで一連のサービスが提供され、顧客にとって利便性の高い内容となっているのが、同社が幅広い顧客に支持されているゆえんと言える。

5. 顧客
年間利用企業は約24,000社で、うち約2,000社が上場企業となっており、上場会社の半数以上が同社の貸会議室を利用している。年間延べ利用企業は約95,000社。売上順位別構成比を見ると、2018年2月期実績では上位500社で約40%(2017年2月期は約50%)、上位2,500社で約60%(同約80%)を占めしているが、2017年2月期と比べて上位依存度がなだらかになってきている。その一方で、上位500社の平均顧客単価は前期比13%増と上昇していることから、顧客の深掘りと裾野拡大の両面で成果を上げていると言える。また、既存顧客が売上高の約85%を占めており、高いリピート率を誇る。

会議用途は幅広く、件数の割合は会議が20%弱、セミナー・講演会が20%弱、研修が10%台半ば、採用関連が10%台前半、試験が約10%、懇親会が約10%、説明会・展示会が数%、残りがその他という構成になっている。以前は懇親会にはホテルの宴会場という選択肢しかなかったが、同社の格安料金設定及び料飲事業への拡大により顧客側の選択肢が広がった。また、学習塾や予備校の模試会場、大学の入試会場などの新規需要の獲得も進んでおり、季節要因(繁閑差)の解消にもつながっている。

6. 収益構造
2019年2月期第1四半期におけるサービス別連結売上高構成比は、「会議室料」が53.7%、「オプション」が9.2%、「料飲」が19.0%、「宿泊」が9.1%、「その他」が8.9%となっており、会議室料が最も高い構成比であることはもちろんだが、「料飲」が「会議室料」に次ぐ稼ぎ手となっている。グレード別では、フラッグシップの位置付けのガーデンシティPREMIUM(GCP)とガーデンシティ(GC)が合わせて38.1%を占めるほか、スタンダードのカンファレンスセンター(CC)が33.8%、ライトユーズのビジネスセンター(BC)が6.8%、スター貸会議室が0.9%、宿泊・研修施設が10.7%、その他が9.7%となっており、上位3グレードだけで71.9%に達する。また、上位グレードの伸びに連動して、「料飲」等の周辺サービスが拡大する構造となっており、高付加価値化が同社戦略の方向性となっている。

会議室料の売上総利益率は約25%、オプションは80%超、料飲は45%前後。広告宣伝費・不動産賃料・運営人件費等の固定費を低く抑えているため、損益分岐点が低いのが特徴だ。具体的な料金を見ると、ホテルの宴会場で会議と食事をすると、立食であっても1人当たり10,000円程度かかるが、同社のホテルグレードの会議室だと、4,500円〜5,000円の負担で済むなど、同社の価格優位性は圧倒的に高い。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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