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TKP Research Memo(8):宿泊研修ブランドの確立のほか、新たに商業施設への展開も加速する方針

注目トピックス 日本株
■成長戦略

1. 中期経営計画
ティーケーピー<3479>は、2018年2月期の連結業績が計画を大きく上振れたことから、2018年1月24日付で、これまでの中期経営計画を増額修正するとともに、新たに2021年2月期を最終年度とする中期経営計画を発表した。ただ、方向性に大きな変更はない。すなわち、「持たざる経営」、「積極的な出店の継続」、「宿泊を含めた周辺事業の取り込み・内製化」、「M&Aを含む新規事業分野の開発」、「既存スペースの更なる有効活用」、「高付加価値化と効率化」などに取り組む方針である。特に、業績の伸びをけん引するのは、既に開発案件が進んでいるホテル事業であり、宿泊研修市場の確立によって成長を加速する戦略を描いている。2021年2月期の目標として、売上高45,858百万円(3年間の平均成長率16.9%)、営業利益6,702百万円(利益率14.6%)を掲げている。

2. 成長戦略
同社は今後の成長戦略の柱として、1)貸会議室・宴会場運営事業の拡大、2)コンテンツ拡充と営業体制の確立による販売強化、3)新しい空間再生への取り組み、の3つを掲げている。

(1) 貸会議室・宴会場運営事業の拡大
好調な外部環境のもと、積極的な出店を継続する方針である。出店には仕入れが欠かせないが、国内の不動産市況を見ると、都心地区では築20年以上のオフィスビルの割合が60%超と高く、老朽化によるオフィスの移転により、同社の仕入れ対象が今後も増加する可能性が高い。新築オフィスビルの着工も堅調であるが、オフィス移転による坪単価の上昇のため、企業は経費を削減する手段として会議室を減らす企業が増加する見込みであり、同社事業にとっては追い風となる。企業向け研修サービス市場規模は、2016年に5,080億円とも言われ、同社事業の拡大余地はまだ大きい。

また、「リアル」と「バーチャル」を交えた効率的な出店戦略も進める。すなわち、収益性の高い高付加価値グレードについては出店拡大を継続する一方、それ以外はボリューム確保と効率重視で取り組むとともに、「クラウドスペース」※の活用により、更なる効率性の追求と裾野の拡大を目指す方針である。

※スマートフォン上で空きスペースを貸したい人と借りたい人をマッチングするアプリ。


(2) コンテンツ拡充と営業体制の確立による販売強化
同社は、貸会議室を起点として、料飲・ケータリング、コールセンター(BPO)、ホテル&リゾート(宿泊研修)、イベント運営・制作などコンテンツの拡充を図ってきた。特に、ホテル事業と一体となって進めてきた宿泊研修市場の確立は今後の成長のカギを握ると考えられる。米国などではリゾート施設などで行う「オフサイト・ミーティング」が定着しているが、日本でも生産性の向上や連帯感の醸成、創造性の発揮などを目的として、拡大の余地があるとみられている。同社においても、会議室利用の法人からの要望に対応する形で、郊外型宿泊研修施設(石のや・レクトーレ)を展開しており、研修による法人利用が増加する傾向にある。同社の場合、年間利用企業約24,000社がターゲットになるとともに、年間延べ利用企業数は約95,000社に及ぶため、10回に1回の泊り込み研修でも展開余地は大きい。また、宿泊研修の1名当たりの売上単価は平均15,000円以上となっており、会議室のみでの利用に比べ、1名当たりの売上単価を大幅にアップすることが可能となる。稼働率についても、平日の法人利用と土日の個人利用の組み合わせにより高い水準を確保する戦略であり、平日の稼働率向上が課題となっているホテル業界においては、顧客基盤を有する同社にしかできない事業モデルと言える。

また、コンテンツの拡充を顧客単価の向上に結び付けていくために営業体制の確立にも注力する。具体的には、これまで2部体制でやってきた営業部隊をまずは6部体制(約100人体制)へと再編し、受注営業から攻める営業へと変革を進めている。特に、上位1,500〜2,000社(ヘビーユーザー及びその予備軍)との関係をより深掘りすることにより、効率的に顧客単価の向上を図っていく戦略である。また、顧客データベース化により潜在需要の発掘にも取り組む。

(3) 新しい空間再生(商業施設への展開)への取り組み
大塚家具とのアライアンスを契機として、新たな空間活用にも取り組む。具体的には、商業施設などの余剰となった店舗スペースの有効活用(イベントスペース、貸会議室、コワーキングスペース、ポップアップストア等)により、ビル全体の最適化(テナント店舗への送客効果など)を図るものであり、空間再生を通じて双方(同社及びテナント店舗) の事業活性化を実現するところがポイントとなっている※。これまでオフィスビル中心だった同社にとっては、新たに駅前の好立地な商業施設への出店が可能となり成長の軸が増えることになる。特に、家電量販店や百貨店、大型書店などが入居している商業施設においては、ECの普及に伴う店舗のショールーム化(店舗はモノを買う場所から体験を得る場所へと変化)の影響などにより余剰スペースが発生しやすい状況がみられるため、潜在的な需要は大きいと考えられる。また、商業施設ではこれまでと違って、「商売する人に貸す」ことが可能となるため、販売会・催事場・ポップアップストアなど、利用用途が広がり事業ドメインの拡大に結び付く(収益モデルもこれまでの時間貸し型に成果報酬型が追加される)。

※例えば、一般的な商業ビルにとって平日は土日に比べて集客力が落ちる傾向があるが、同社が出店することにより平日でも会議室の利用者による集客効果が期待できる。一方、同社にとっても、稼働率が低下する土日は、商業ビルの集客効果を生かしたイベントや催事場として利用することが可能となる。


弊社でも、貸会議室・宴会場運営事業が順調に拡大していること、ホテル事業も計画どおり進捗していることから、同社の中期経営計画は十分に達成可能であるとみている。むしろ、1)営業体制の増強やコンテンツの拡充(宿泊研修を含む)により顧客単価の向上余地が十分にあること、2)東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてホテル事業の稼働率や宿泊料金の上昇が期待できること、3)計画に織り込まれていない新たな空間再生(商業施設への展開)が本格的に事業化してくることになどより、計画を上振れる可能性が高いと捉えている。特に、全国のビルオーナー等から相談事例が増えている商業施設への展開については、同社の顧客基盤やコンテンツ、ノウハウなどが生かせることに加え、実績を積み上げることで同社の優位性がさらに高まる効果が期待できるため、今後の成長イメージを探るうえでも重要なカギを握ると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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