ハウスドゥ Research Memo(4):高齢化社会の問題解決をビジネスチャンスに(1)
[18/09/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ハウスドゥ<3457>の事業概要
3. 高齢化社会の問題点
(1) 高齢者の老後の備えと現金収入
日本は、高齢者に正味金融資産や持家が偏っているものの、現金収入が限られるため、豊かな老後を送っていると言い難い。
内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、先進国の中でも日本の高齢者の老後の備えは十分ではない。「老後の備えとしての現在の貯蓄や資産の充足度」に対する国別のアンケート調査では、日本は「まったく足りないと思う」が22.1%、「やや足りないと思う」が34.9%であったのに比べ、「まあ十分だと思う」が27.0%、「十分だと思う」が10.4%であった。ドイツでは、「まったく足りないと思う」が5.4%、「やや足りないと思う」が12.6%にとどまる。米国では、それぞれ11.8%、13.1%であった。
日本の正味金融資産の大半が、60代以上の高齢者によって保有されているが、一部の富裕層に集中している。一方、持家率では、60代が93.3%、70代以上も94.8%と極めて高い。2016年の「家計調査」(総務省統計局)によると、世帯主の年齢階級別の年間所得は、30代が562万円、40代が671万円、50代が744万円であるに比べ、60代が531万円、70歳以上が405万円と低くなる。所得水準を反映して、年齢階級別の1ヶ月当たり消費支出は、30代が243千円、40代が290千円、50代の296千円が高く、60代が247千円、70歳以上が202千円へ低下する。高齢者は、住宅という資産を所有しているものの、収入と支出が低水準にとどまっている。
(2) 多死社会と相続
日本は、2017年に年間死亡数が134万人に達し、多死社会を迎えている。団塊世代が80歳以上になる2030年には160万人を超える見通しだ。相続でもめる遺産規模の割合は、5,000万円以下の43.0%、1,000万円以下の31.9%を合わせて4分の3を占め、大きな規模よりも小さい方が圧倒的に多い。主な遺産が自宅である場合、分割が困難な不動産を複数の人が相続することになるため、トラブルの原因となりやすい。ハウス・リースバックにより資産を資金化してあれば、相続での争いを緩和しやすくなる。
同社は、2013年10月より自宅を売却後も住み続けられる「ハウス・リースバック」サービスを始め、2016年7月より一時的な資金ニーズはあるものの、自宅を売却するほどの金額を必要としない人向けに「不動産担保ローン」を開始した。さらに、2017年10月より地域の金融機関と提携して自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」の保証事業をスタートさせた。幅広い商品のラインナップにより多様な顧客ニーズに応える。
同社は、不動産ストックの流動化により資産を資金化することで資金を市場に還流化させ、経済活性化の一翼を担う。また、高齢者が自宅に住みながら老後の生活資金を得るため、資金面で老後のQOLを向上させることになる。
日本は、少子化や核家族化、高齢化などにより、65歳以上の1人暮らし高齢者は増加傾向にあり、2015年時点で600万人を超えた。同社は、「ハウス・リースバック」利用者で65歳以上の単身者を対象に、家族に代わって毎日電話をかける「安心コールサービス」を行っている。さらに、2017年11月より定期訪問サービス「みまもりDo!」の提供を開始した。無料訪問サービスの内容は、1)30分程度の対話/コミュニケーション、2)身の回りのお手伝いサービス、3)必要品などのお届けサービスである。お手伝いサービスは、家具や家電製品の移動・組立、風呂掃除、洗濯物干しなどの軽作業や、病院同行、各種申請などの同行など1時間程度でできるものを含む。訪問頻度は、65歳から74歳までが2ヶ月に1度、75歳以上は毎月となる。
4. ハウス・リースバック事業
(1) ハウス・リースバックの仕組み
ハウス・リースバックは、持ち主が自宅を売却して資金を得た後も、愛着のある住居や地域で住み続けられる、新しい不動産活用の提案である。同社が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶ。「ハウス・リースバック」の商標登録は、2013年に出願し、2015年7月に取得した。2018年6月期は、ハウス・リースバックについて1年間で9,000件以上の問い合わせが来ており、同事業で圧倒的ナンバーワンの座を獲得している。
ハウス・リースバックは、資金需要のある顧客ニーズを捉えており、金融機関が提供するリバースモーゲージの制限の多さや利用しにくさを克服していることもあって潜在需要が大きい。資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がない上、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを持っていることから、ハウス・リースバックに必要な機能を自社の経営リソースでカバーできるのが強みになる。
(2) ハウス・リースバック事業の地域展開
ハウス・リースバック事業のターゲットとするのは全国となる。ハウス・リースバックの対象となる物件は、リース契約終了後に市場で売却することもあるため、不動産市場で流動性がある物件になる。戸建住宅だけでなく、区分所有のマンションも対象となる。地域別では、三大都市圏周辺が物件数ベースで9割弱を占めており、2018年6月期末の保有件数の地域別構成比は、首都圏が47.6%、近畿が25.6%、中部が14.0%であった。この3地区に集中的に広告を打った結果でもある。年間9,000件以上の問い合わせに対応するため、人員増強を図り、取扱いエリアの更なる拡大を図っている。
(3) ハウス・リースバック事業の収益
ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は、顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが、年間で仕入額の約8%程度がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度でキャピタルゲインが発生する。
2018年6月期の売上高(単独ベース)5,199百万円の内訳は、保有物件からの賃料収入が780百万円(前期比48.0%増)、事務手数料等が170百万円(同22.3%増)、売却売上高が4,249百万円(同148.0%増)であった。売却件数は、前期の44件から238件に増加した。元の所有者への再売買や処分売却は50件、1,176百万円、売上総利益262百万円、売上総利益率22.3%であった。一方、不動産ファンド・不動産会社や投資家への売却は、188件、3,018百万円、売上総利益572百万円、売上総利益率19.0%となり、売却件数、売上高、利益を大きく押し上げた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<NB>
3. 高齢化社会の問題点
(1) 高齢者の老後の備えと現金収入
日本は、高齢者に正味金融資産や持家が偏っているものの、現金収入が限られるため、豊かな老後を送っていると言い難い。
内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」によると、先進国の中でも日本の高齢者の老後の備えは十分ではない。「老後の備えとしての現在の貯蓄や資産の充足度」に対する国別のアンケート調査では、日本は「まったく足りないと思う」が22.1%、「やや足りないと思う」が34.9%であったのに比べ、「まあ十分だと思う」が27.0%、「十分だと思う」が10.4%であった。ドイツでは、「まったく足りないと思う」が5.4%、「やや足りないと思う」が12.6%にとどまる。米国では、それぞれ11.8%、13.1%であった。
日本の正味金融資産の大半が、60代以上の高齢者によって保有されているが、一部の富裕層に集中している。一方、持家率では、60代が93.3%、70代以上も94.8%と極めて高い。2016年の「家計調査」(総務省統計局)によると、世帯主の年齢階級別の年間所得は、30代が562万円、40代が671万円、50代が744万円であるに比べ、60代が531万円、70歳以上が405万円と低くなる。所得水準を反映して、年齢階級別の1ヶ月当たり消費支出は、30代が243千円、40代が290千円、50代の296千円が高く、60代が247千円、70歳以上が202千円へ低下する。高齢者は、住宅という資産を所有しているものの、収入と支出が低水準にとどまっている。
(2) 多死社会と相続
日本は、2017年に年間死亡数が134万人に達し、多死社会を迎えている。団塊世代が80歳以上になる2030年には160万人を超える見通しだ。相続でもめる遺産規模の割合は、5,000万円以下の43.0%、1,000万円以下の31.9%を合わせて4分の3を占め、大きな規模よりも小さい方が圧倒的に多い。主な遺産が自宅である場合、分割が困難な不動産を複数の人が相続することになるため、トラブルの原因となりやすい。ハウス・リースバックにより資産を資金化してあれば、相続での争いを緩和しやすくなる。
同社は、2013年10月より自宅を売却後も住み続けられる「ハウス・リースバック」サービスを始め、2016年7月より一時的な資金ニーズはあるものの、自宅を売却するほどの金額を必要としない人向けに「不動産担保ローン」を開始した。さらに、2017年10月より地域の金融機関と提携して自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」の保証事業をスタートさせた。幅広い商品のラインナップにより多様な顧客ニーズに応える。
同社は、不動産ストックの流動化により資産を資金化することで資金を市場に還流化させ、経済活性化の一翼を担う。また、高齢者が自宅に住みながら老後の生活資金を得るため、資金面で老後のQOLを向上させることになる。
日本は、少子化や核家族化、高齢化などにより、65歳以上の1人暮らし高齢者は増加傾向にあり、2015年時点で600万人を超えた。同社は、「ハウス・リースバック」利用者で65歳以上の単身者を対象に、家族に代わって毎日電話をかける「安心コールサービス」を行っている。さらに、2017年11月より定期訪問サービス「みまもりDo!」の提供を開始した。無料訪問サービスの内容は、1)30分程度の対話/コミュニケーション、2)身の回りのお手伝いサービス、3)必要品などのお届けサービスである。お手伝いサービスは、家具や家電製品の移動・組立、風呂掃除、洗濯物干しなどの軽作業や、病院同行、各種申請などの同行など1時間程度でできるものを含む。訪問頻度は、65歳から74歳までが2ヶ月に1度、75歳以上は毎月となる。
4. ハウス・リースバック事業
(1) ハウス・リースバックの仕組み
ハウス・リースバックは、持ち主が自宅を売却して資金を得た後も、愛着のある住居や地域で住み続けられる、新しい不動産活用の提案である。同社が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶ。「ハウス・リースバック」の商標登録は、2013年に出願し、2015年7月に取得した。2018年6月期は、ハウス・リースバックについて1年間で9,000件以上の問い合わせが来ており、同事業で圧倒的ナンバーワンの座を獲得している。
ハウス・リースバックは、資金需要のある顧客ニーズを捉えており、金融機関が提供するリバースモーゲージの制限の多さや利用しにくさを克服していることもあって潜在需要が大きい。資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がない上、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを持っていることから、ハウス・リースバックに必要な機能を自社の経営リソースでカバーできるのが強みになる。
(2) ハウス・リースバック事業の地域展開
ハウス・リースバック事業のターゲットとするのは全国となる。ハウス・リースバックの対象となる物件は、リース契約終了後に市場で売却することもあるため、不動産市場で流動性がある物件になる。戸建住宅だけでなく、区分所有のマンションも対象となる。地域別では、三大都市圏周辺が物件数ベースで9割弱を占めており、2018年6月期末の保有件数の地域別構成比は、首都圏が47.6%、近畿が25.6%、中部が14.0%であった。この3地区に集中的に広告を打った結果でもある。年間9,000件以上の問い合わせに対応するため、人員増強を図り、取扱いエリアの更なる拡大を図っている。
(3) ハウス・リースバック事業の収益
ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は、顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが、年間で仕入額の約8%程度がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度でキャピタルゲインが発生する。
2018年6月期の売上高(単独ベース)5,199百万円の内訳は、保有物件からの賃料収入が780百万円(前期比48.0%増)、事務手数料等が170百万円(同22.3%増)、売却売上高が4,249百万円(同148.0%増)であった。売却件数は、前期の44件から238件に増加した。元の所有者への再売買や処分売却は50件、1,176百万円、売上総利益262百万円、売上総利益率22.3%であった。一方、不動産ファンド・不動産会社や投資家への売却は、188件、3,018百万円、売上総利益572百万円、売上総利益率19.0%となり、売却件数、売上高、利益を大きく押し上げた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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