東京センチュ Research Memo(5):資産効率を重視した「高収益ビジネスモデル」への変革を推進
[18/10/18]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■成長戦略とその進捗
1. 第三次中期経営計画
東京センチュリー<8439>は2017年3月期より3ヶ年にわたる第三次中期経営計画をスタートした。「資産効率を重視した『高収益ビジネスモデル』への変革を推進し、更なる持続的成長の礎を築く」という基本方針のもと、「リース」という枠を超え、『金融×サービス×事業』の3軸融合による「金融機能を持つ事業会社」として、新しい金融・サービス業を目指す方向性である。同社のPBR(株価純資産倍率)は「その他金融業」セクターの中では高い位置にあるが、これは同社の、金融事業のみならず、サービス事業と見なすことができる事業性ビジネスのウエイトが相対的に高まりつつあることが理由だと考えられる。今後も同社は単純な資金の提供者としてのリース業から脱却し、自ら事業主体となる事業性ビジネスの拡大をも含めて、採算性の高い資産の積み上げを進めるものと見ている。
最終年度である2019年3月期の目標値として、経常利益800億円以上、ROA(経常利益/営業資産残高)2.3%以上、自己資本比率11.0%を掲げている。これまで目標としてきた営業資産残高については、あえて目標値を置いていないところに量から質(規模拡大から資産効率優先)への転換を見出すことができる。特に、注力するスペシャルティ事業分野においては、航空機ビジネスや太陽光発電など、事業そのものに踏み込んだ付加価値の高い事業モデルの展開により、セグメント資産残高の拡大及びROA(資産収益性)の向上を目指している。もちろん、事業に深く関わるということは、そこからのリターンを追求できる一方、事業リスクを抱える面もあるが、事業に精通している優良パートナーとのアライアンス(連携)の推進や得意分野への絞り込み、リスクコントロール手法の高度化などにより、リスクを最小限に抑える構造となっている。
弊社では、同社がみずほグループの顧客基盤や有利な資金調達環境を有しているほか、アライアンス戦略を強化しながら、経営自由度の高い事業環境を活用できる点が大きなアドバンテージと見ている。
したがって、このような有利な事業環境を生かし、スペシャルティ事業分野など収益性の高い分野の強化及び拡充を目指す同社戦略の方向性は極めて合理性が高いものと評価している。
将来を見据えた新事業への足掛かりをハイペースで進める
2. 主な活動成果
同社は、「高収益ビジネスモデル」への変革のため、将来を見据えた新事業への参入及び育成に取り組んでいるが、2018 年3 月期においても数々の足掛かりを築くことができた。特に、スペシャルティ事業分野(航空機及び不動産)や国内オート事業分野、国際事業分野においては、以下のような一定の成果を残した。
(1) 米国大手航空機リース会社とのパートナーシップ戦略(航空機)
米国大手航空機リース会社Aviation Capital Group(以下、ACG)※の持分20%を取得し、持分法適用関連会社とした(2017年12月より)。ACGは保有管理及び発注済機体数439機を有する航空機リースのリーディングカンパニーであり、今後、新規のオペレーティング・リースはACGを主体に展開していくことになる。優良パートナーを得たことにより、同社の航空機ビジネスのポテンシャルはさらに大きく拡大するものと評価できる。また、ACGの更なる成長加速に合わせて追加出資の可能性も検討されていくと思われる。
※米国大手生命保険会社Pacific Lifeの100%子会社。
(2) 神鋼不動産の連結子会社化(不動産)
総合不動産会社である神鋼不動産※の持分70%を取得し、連結子会社とする(2018年7月より)。総合不動産会社のフルプラットフォームを獲得することによって、開発、保有・管理、出口までの「ライフサイクルマネジメント」の実現が可能になった。神鋼不動産にとっても、同社のネットワーク(顧客基盤)や資金力を活用できることは成長加速に向けて大きなメリットと言える。同社は、これまでも日本土地建物(株)との連携(日土地アセットマネジメントへの出資等を含む)を進めてきたが、新たに神鋼不動産が加わることにより、更なる事業機会の拡大や出口戦略の多様化を図っていく。
※(株)神戸製鋼所の100%子会社
(3) ニッポンレンタカーサービスのフランチャイズ制見直しに伴う直営化(国内オート)
ニッポンレンタカーサービスが展開するフランチャイズ制を見直し、全国837拠点をすべて直営化した(2018年1月より)。運営の一体化を図り、迅速な意思決定ができる体制とすることで、「所有」から「使用」への顧客ニーズの変化やインバウンド需要の増加に対応する方針である。なお、本件によりニッポンレンタカーサービスの連結子会社は15社から22社に増加。収益の押し上げ要因となることも十分に想定される。また、カーシェアリングの開始や予約駐車場サービス・駐車場シェアサービスを運営するakippaとの提携など、新規事業へも積極的に取り組んでいる。
(4) インドネシアの大手財閥Lippoグループへ追加出資(新事業)
2016年11月に戦略的パートナーシップ協定を締結したLippoグループ※への追加出資を実施した(2017年12月)。当地に膨大な顧客基盤を有するLippoグループと協働で、Lippoグループが運営する電子マネー・ポイントサービス会社に集積されるビッグデータを活用し、FinTech事業等を展開する方針。本格的な業績貢献には中期的な目線が必要であるが、ポテンシャルの大きな事業として注目される。
※インドネシアの大手財閥であり、インドネシア最大の百貨店「Matahari(マタハリ)」などを展開する。
(5) 東南アジア地域での最大の配車サービスを展開するGrabへの追加出資(新事業)
2016年12月に戦略的パートナーシップ協定を締結したGrab(アプリを活用した配車サービスにおいて東南アジア最大手)への追加出資(数十億円規模)を実施した(2018年1月)。自動車リース及びレンタル事業を共同で取り組むほか、東南アジアで急拡大するライドシェアビジネスへの参入に狙いがあるとみられる。こちらも本格的な業績貢献には中期的な目線が必要であるが、ポテンシャルは大きい。
(6) サステナビリティ委員会の発足(全社)
同社は、2015年国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発目標(以下 SDGs: Sustainable Development Goals)」に向き合い、持続可能な企業活動(サステナビリティ)を推進・統括するための横断的組織として「サステナビリティ委員会」を新設。地球環境問題や社会全体課題の解決などを同社の経営戦略に取り込み、活動内容に関する情報開示も充実させていく方針。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<HN>
1. 第三次中期経営計画
東京センチュリー<8439>は2017年3月期より3ヶ年にわたる第三次中期経営計画をスタートした。「資産効率を重視した『高収益ビジネスモデル』への変革を推進し、更なる持続的成長の礎を築く」という基本方針のもと、「リース」という枠を超え、『金融×サービス×事業』の3軸融合による「金融機能を持つ事業会社」として、新しい金融・サービス業を目指す方向性である。同社のPBR(株価純資産倍率)は「その他金融業」セクターの中では高い位置にあるが、これは同社の、金融事業のみならず、サービス事業と見なすことができる事業性ビジネスのウエイトが相対的に高まりつつあることが理由だと考えられる。今後も同社は単純な資金の提供者としてのリース業から脱却し、自ら事業主体となる事業性ビジネスの拡大をも含めて、採算性の高い資産の積み上げを進めるものと見ている。
最終年度である2019年3月期の目標値として、経常利益800億円以上、ROA(経常利益/営業資産残高)2.3%以上、自己資本比率11.0%を掲げている。これまで目標としてきた営業資産残高については、あえて目標値を置いていないところに量から質(規模拡大から資産効率優先)への転換を見出すことができる。特に、注力するスペシャルティ事業分野においては、航空機ビジネスや太陽光発電など、事業そのものに踏み込んだ付加価値の高い事業モデルの展開により、セグメント資産残高の拡大及びROA(資産収益性)の向上を目指している。もちろん、事業に深く関わるということは、そこからのリターンを追求できる一方、事業リスクを抱える面もあるが、事業に精通している優良パートナーとのアライアンス(連携)の推進や得意分野への絞り込み、リスクコントロール手法の高度化などにより、リスクを最小限に抑える構造となっている。
弊社では、同社がみずほグループの顧客基盤や有利な資金調達環境を有しているほか、アライアンス戦略を強化しながら、経営自由度の高い事業環境を活用できる点が大きなアドバンテージと見ている。
したがって、このような有利な事業環境を生かし、スペシャルティ事業分野など収益性の高い分野の強化及び拡充を目指す同社戦略の方向性は極めて合理性が高いものと評価している。
将来を見据えた新事業への足掛かりをハイペースで進める
2. 主な活動成果
同社は、「高収益ビジネスモデル」への変革のため、将来を見据えた新事業への参入及び育成に取り組んでいるが、2018 年3 月期においても数々の足掛かりを築くことができた。特に、スペシャルティ事業分野(航空機及び不動産)や国内オート事業分野、国際事業分野においては、以下のような一定の成果を残した。
(1) 米国大手航空機リース会社とのパートナーシップ戦略(航空機)
米国大手航空機リース会社Aviation Capital Group(以下、ACG)※の持分20%を取得し、持分法適用関連会社とした(2017年12月より)。ACGは保有管理及び発注済機体数439機を有する航空機リースのリーディングカンパニーであり、今後、新規のオペレーティング・リースはACGを主体に展開していくことになる。優良パートナーを得たことにより、同社の航空機ビジネスのポテンシャルはさらに大きく拡大するものと評価できる。また、ACGの更なる成長加速に合わせて追加出資の可能性も検討されていくと思われる。
※米国大手生命保険会社Pacific Lifeの100%子会社。
(2) 神鋼不動産の連結子会社化(不動産)
総合不動産会社である神鋼不動産※の持分70%を取得し、連結子会社とする(2018年7月より)。総合不動産会社のフルプラットフォームを獲得することによって、開発、保有・管理、出口までの「ライフサイクルマネジメント」の実現が可能になった。神鋼不動産にとっても、同社のネットワーク(顧客基盤)や資金力を活用できることは成長加速に向けて大きなメリットと言える。同社は、これまでも日本土地建物(株)との連携(日土地アセットマネジメントへの出資等を含む)を進めてきたが、新たに神鋼不動産が加わることにより、更なる事業機会の拡大や出口戦略の多様化を図っていく。
※(株)神戸製鋼所の100%子会社
(3) ニッポンレンタカーサービスのフランチャイズ制見直しに伴う直営化(国内オート)
ニッポンレンタカーサービスが展開するフランチャイズ制を見直し、全国837拠点をすべて直営化した(2018年1月より)。運営の一体化を図り、迅速な意思決定ができる体制とすることで、「所有」から「使用」への顧客ニーズの変化やインバウンド需要の増加に対応する方針である。なお、本件によりニッポンレンタカーサービスの連結子会社は15社から22社に増加。収益の押し上げ要因となることも十分に想定される。また、カーシェアリングの開始や予約駐車場サービス・駐車場シェアサービスを運営するakippaとの提携など、新規事業へも積極的に取り組んでいる。
(4) インドネシアの大手財閥Lippoグループへ追加出資(新事業)
2016年11月に戦略的パートナーシップ協定を締結したLippoグループ※への追加出資を実施した(2017年12月)。当地に膨大な顧客基盤を有するLippoグループと協働で、Lippoグループが運営する電子マネー・ポイントサービス会社に集積されるビッグデータを活用し、FinTech事業等を展開する方針。本格的な業績貢献には中期的な目線が必要であるが、ポテンシャルの大きな事業として注目される。
※インドネシアの大手財閥であり、インドネシア最大の百貨店「Matahari(マタハリ)」などを展開する。
(5) 東南アジア地域での最大の配車サービスを展開するGrabへの追加出資(新事業)
2016年12月に戦略的パートナーシップ協定を締結したGrab(アプリを活用した配車サービスにおいて東南アジア最大手)への追加出資(数十億円規模)を実施した(2018年1月)。自動車リース及びレンタル事業を共同で取り組むほか、東南アジアで急拡大するライドシェアビジネスへの参入に狙いがあるとみられる。こちらも本格的な業績貢献には中期的な目線が必要であるが、ポテンシャルは大きい。
(6) サステナビリティ委員会の発足(全社)
同社は、2015年国連サミットにおいて採択された「持続可能な開発目標(以下 SDGs: Sustainable Development Goals)」に向き合い、持続可能な企業活動(サステナビリティ)を推進・統括するための横断的組織として「サステナビリティ委員会」を新設。地球環境問題や社会全体課題の解決などを同社の経営戦略に取り込み、活動内容に関する情報開示も充実させていく方針。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<HN>