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ダイコク電 Research Memo(8):市場環境に影響を受けない収益構造の確立を目指す

注目トピックス 日本株
■今後の戦略的方向性

ダイコク電機<6430>は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画「Next50 第一章」を推進している。足元の市場環境は不透明感が漂うものの、中期的には緩やかに回復に向かうとの想定のもと、市場変化への対応(よりゲーム性を重視したファンの獲得)やパチンコホール経営の変革(データ分析に基づく戦略的な経営判断)に貢献するための事業基盤の強化に取り組む内容となっている。特に、これまで積極的な開発を行ってきた次世代ホールコンピュータ(周辺機器を含む)によるシェア拡大のほか、データ分析力や企画開発力を生かした新たな価値の創出により、成長力及び収益力の向上を実現する方針である。

相次ぐ外部要因により、定量目標※の達成は難しい状況となってきたものの、以下に掲げる戦略的方向性については着実に前進しているものと評価して良いだろう。

※2020年3月期の目標として、売上高570億円、営業利益40億円、ROE 7.0%以上を掲げてきた。


1. 情報システム事業
市場における投資意欲は、しばらく消極的な姿勢が続くことが予想される一方、今回の「新規則」により、遊技機の入れ替えに伴う設備機器の需要が徐々に動き出していることから、市場変化に柔軟に対応しながら、シェア拡大と新規ファン獲得に貢献できる製品・サービスの開発を目指していく方針である。具体的な対応・施策として以下の3つを挙げている。

(1) これまで同様、CRユニット及び情報公開機器などの各種製品の拡販とストック型ビジネスモデル(MGサービス)の拡大により、シェア拡大と収益構造の転換を図っていく。特に、MGサービスの提供を通じて、顧客であるパチンコホールの競争力と省力化に貢献し、顧客の囲い込みと業績の安定化の両方を実現する。

(2) 「新規則」に伴う業界変化に柔軟に対応した製品・サービスをタイムリーに市場に投入していく。業界変化をビジネスチャンスと捉え、ファン向け各種情報提供サービスの拡大など、新規ファン獲得(離反した顧客の呼び戻しや新規顧客の掘り起こし)に貢献できる製品・サービスの開発を目指す。

(3) 「次世代システム」の開発には規則改正に伴う見直しを行った上で、継続的な投資を推進する。市場環境の変化に沿って、新たなルールへ対応した仕様の追加や開発工程の見直し、ホール業務の効率化・省力化へ貢献する製品・サービスの強化を進めており、市場投入時期においても市場動向を見定めながら柔軟に対応していく。

2. 制御システム事業
市場は、遊技機の開発コスト低減への志向を強めるとともに、今後の市場環境の変化に対応した新たな提案へのニーズが高まり、企画力がより重要になっているなかで、情報システム事業との連携による差別化戦略と市場環境の変化への迅速な対応、業務効率の向上に取り組む方針である。具体的な対応・施策として以下の3つを挙げている。

(1) 娯楽性に重点を置き、新規則に適したゲームの創出による遊技環境の活性化に注力することで、パチンコホールの稼動に貢献する。

(2) 遊技機メーカーの要望に迅速に対応し、顧客の開発期間の短縮、コスト削減、品質向上に貢献する体制を構築すると同時に、同社自身のコスト削減にも結び付ける。

(3) 情報システム事業の保有する「DK-SIS」データ及び「Fan-SIS」データを活用し、新たな遊技価値を生み出す企画提案の実施と事業領域の拡大にも取り組む。

弊社でも、パチンコ業界が大きな転換期を迎えていることにより、足元の業績にはマイナスに影響しているものの、中長期的に見れば、周辺機器を含めた次世代ホールコンピュータに積極的な開発を行ってきた同社には大きなアドバンテージがあるものとみている。特に、同社ならではのサービスやデータ分析による経営支援及び価値提案は、今後の業界の進むべき方向性に合致したものと評価できる。例え、市場がしばらく縮小傾向をたどったとしても、付加価値の高い「次世代製品群」の本格稼動により既存店向けの入れ替え需要を取り込みながら、持続的な成長を実現することは可能であるとみている。また、パチンコホールも資本力のあるところを中心に勝ち残り、二極化がさらに進む可能性が高く、そうなってくれば次世代ホールコンピュータによる囲い込みや市場シェアの向上を目指す同社にとってプラスに働くものとみている。

外部環境の影響を受けやすい売上高の伸びについては、しばらくは慎重に判断する必要があると捉えているが、市場環境の変化に対応した製品・サービスの開発やMGサービスの拡大などによる収益性の向上に注目している。また、中長期的な視点からは、圧倒的なポジショニングを生かした同社自身の成長に加えて、業界全体の活性化に向けた取り組みにも期待している。特に、パチンコホールや各遊技機メーカーにとどまらず、パチンコ・パチスロファン、アミューズメントファン、新たなファン層にも直接的に働きかける活動(スマートフォンアプリによる会員向け情報提供のほか、ホールに誘導する仕掛けなど)にも注目したい。


■株主還元

2019年3月期も前期と同額の1株当たり年間40円配当を予定。中期的には利益成長に伴う増配余地は十分に期待できる
2018年3月期については、市場環境の先行き不透明感等を踏まえ、1株当たり10円減配の年間40円配当(中間10円、期末30円)を実施した。また、2019年3月期についても、前期と同額の1株当たり年間40円配当(中間10円、期末30円)を予定している。

同社は、業績に合わせて配当の上乗せを判断する方針であることから、中期的に見れば利益成長に伴う増配の余地も十分にある。

また、同社株式への投資の魅力を高め、中長期保有の促進を目的として株主優待制度を導入している。毎年9月30日現在の株主(100株以上保有)を対象に、保有株式数と保有期間に応じて商品(食品、飲料、電化製品、旅行・体験、社会貢献活動への寄付等)と交換できるポイントが贈呈される内容となっており、同社IR担当者によれば、個人株主からの高い評価を得ているようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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