萩原工業 Research Memo(5):2018年10月期はM&Aの会計処理により営業利益が微減に
[19/01/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2018年10月期の業績概要
(1) 業績の概況
萩原工業<7856>の2018年10月期の連結業績は、売上高が前期比13.9%増の26,457百万円、営業利益が同1.3%減の2,685百万円、経常利益が同1.0%増の2,781百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.1%減の1,884百万円となった。期初予想との比較では、売上高が8.0%上回ったが、営業利益が4.1%(115百万円)未達となった。
期中に合成樹脂加工製品関連としてEPCと東洋平成ポリマーの2社を買収し連結子会社とした。2018年2月に買収した販売代理店のEPCの連結化により、未実現利益排除が209百万円発生した。同社とEPCとの過去取引で、同社が売上高と利益を計上していたものの、依然EPCのたな卸資産にとどまっていた分は、連結化により内部取引となるため売上高と利益を戻す処理がされた。仮に連結決算の会計処理による利益の減少がなければ、3ヶ年中期経営計画の最終年度の営業利益目標値(2,800百万円)を達成していたことになる。中期経営計画ではEPCの買収はあらかじめ組み込まれていたが、未実現利益排除の額が想定外にふくらんだ。
同社の単独決算は売上高、営業利益とも過去最高を達成しており、連結子会社はすべて黒字決算だ。EPCは、8ヶ月間の決算になるが、売上高が2,081百万円、営業利益が245百万円、売上高営業利益率が11.8%であった。3ヶ月間の寄与となる東洋平成ポリマーの売上高は1,031百万円、営業利益は46百万円、売上高営業利益率が4.5%となった。
2社の買収費用(アドバイザリーフィー等)として30百万円(各15百万円)が計上された。EPCの買収に伴い、7,103千シンガポールドルののれん(5年償却)及び3,693千シンガポールドルの無形固定資産(10年償却)が発生した。2018年10月期は、両者の償却として8ヶ月分の108百万円が計上された。
(2) 事業セグメント別動向
a) 合成樹脂加工製品事業
合成樹脂加工製品事業では、売上高は20,854百万円(前期比17.5%増)だったが、営業利益は1,917百万円(同10.4%減)となった。売上高営業利益率は前期の12.1%から9.2%へ低下した。同セグメントの営業利益増減要因は、増収効果(+1,076百万円)が、粗利益率の悪化(-302百万円)、EPCへの未実現利益排除(-209百万円)、販管費の増加(-787百万円)をカバーしきれなかった。EPCと東洋平成ポリマーが加わり、売上高と販管費が増加した。
粗利益率の悪化は、原材料価格の高騰による。同社は、原材料価格の値上がりを販売価格に転嫁する基本方針を取っている。2018年10月期の場合、原材料の値上がりから価格転嫁までタイムラグがあり減益要因となったが、2019年10月期には価格転嫁の効果がフルに寄与する見込みである。主要な材料である国産ナフサの価格は、2018年10月の1キロリットル当たり36,600円に対し、会社予算では2割近く高い43,900円を前提としていた。四半期ごとの市場価格は、第1四半期が45,096円(前年同期比29.1%増)、第2四半期が44,830円(同12.6%増)、第3四半期が49,199円(同37.4%増)、第4四半期が52,355百万円(同45.8%増)で推移した。通期では47,800円と予算を8.9%上回った。
b) 機械製品事業
機械製品事業では、売上高が5,602百万円(前期比2.0%増)、営業利益が768百万円(同32.0%増)、売上高営業利益率が13.7%の好業績であった。営業利益の要因については、増収効果(+32百万円)、粗利益率改善(+159百万円)であった。主力のスリッター関連機器は、国内向けは軟包装系及び光学系が、海外向けはタイ及び東南アジア諸国で軟包装系が、中国で電池系がそれぞれ好調だった。押出関連機器は、高機能フィルム用スクリーンチャンジャ?並びに特殊樹脂用及びコンパウンド用造粒装置が順調だった。中国におけるリチウムイオン電池用フィルムスリッターは、需要の先行きを慎重に見極めた生産体制を取っているため、受注残高が積み上がった。
2. 財務状況と経営指標
2018年10月期末の総資産は31,870百万円と前期末比4,755百万円増加した。買収した2社の資産が加わった。流動資産は19,848百万円、同2,086百万円増加した。主要な増減項目は、現金及び預金(2,241百万円の減少)、受取手形及び売掛金(2,138百万円の増加)、たな卸資産(1,956百万円の増加)などである。現金及び預金の減少は、企業買収にともなう支出による。増収により、受取手形及び売掛金が増加した。たな卸資産は、販売先が決まっており、意図せざる在庫増ではない。貸方では、買収子会社の借入金が加わり有利子負債が同1,890百万円増えた。純資産は同1,270百万円増加した。
短期的な支払い能力を示す流動比率は223.4%、長期的な指標の自己資本比率は66.2%と、いずれも財務の安全性が高い。収益性指標となるROE(自己資本当期純利益率)は9.2%、ROA(総資産経常利益率)が9.4%、売上高営業利益率は10.2%であった。ROEでは、連結化した2社の売上高がそれぞれ8ヶ月と3ヶ月の寄与であったため、総資産回転率に不利に働いた。
2018年10月期末の現金及び現金同等物の残高は、4,167百万円と前期末比2,149百万円減少した。営業活動によるキャッシュ・フローは、2,009百万円の資金増加にとどまった。税金等調整前当期純利益2,779百万円と減価償却費1,054百万円の資金増加に対し、売上債権の増加(181百万円)とたな卸資産の増加(567百万円)などが資金を削減した。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社の取得による支出が2,304百万円と生産設備の新増設、更新及び合理化投資の充実で有形固定資産の取得による支出998百万円があり、3,341百万円の資金減少になった。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済などで837百万円の資金減少であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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1. 2018年10月期の業績概要
(1) 業績の概況
萩原工業<7856>の2018年10月期の連結業績は、売上高が前期比13.9%増の26,457百万円、営業利益が同1.3%減の2,685百万円、経常利益が同1.0%増の2,781百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.1%減の1,884百万円となった。期初予想との比較では、売上高が8.0%上回ったが、営業利益が4.1%(115百万円)未達となった。
期中に合成樹脂加工製品関連としてEPCと東洋平成ポリマーの2社を買収し連結子会社とした。2018年2月に買収した販売代理店のEPCの連結化により、未実現利益排除が209百万円発生した。同社とEPCとの過去取引で、同社が売上高と利益を計上していたものの、依然EPCのたな卸資産にとどまっていた分は、連結化により内部取引となるため売上高と利益を戻す処理がされた。仮に連結決算の会計処理による利益の減少がなければ、3ヶ年中期経営計画の最終年度の営業利益目標値(2,800百万円)を達成していたことになる。中期経営計画ではEPCの買収はあらかじめ組み込まれていたが、未実現利益排除の額が想定外にふくらんだ。
同社の単独決算は売上高、営業利益とも過去最高を達成しており、連結子会社はすべて黒字決算だ。EPCは、8ヶ月間の決算になるが、売上高が2,081百万円、営業利益が245百万円、売上高営業利益率が11.8%であった。3ヶ月間の寄与となる東洋平成ポリマーの売上高は1,031百万円、営業利益は46百万円、売上高営業利益率が4.5%となった。
2社の買収費用(アドバイザリーフィー等)として30百万円(各15百万円)が計上された。EPCの買収に伴い、7,103千シンガポールドルののれん(5年償却)及び3,693千シンガポールドルの無形固定資産(10年償却)が発生した。2018年10月期は、両者の償却として8ヶ月分の108百万円が計上された。
(2) 事業セグメント別動向
a) 合成樹脂加工製品事業
合成樹脂加工製品事業では、売上高は20,854百万円(前期比17.5%増)だったが、営業利益は1,917百万円(同10.4%減)となった。売上高営業利益率は前期の12.1%から9.2%へ低下した。同セグメントの営業利益増減要因は、増収効果(+1,076百万円)が、粗利益率の悪化(-302百万円)、EPCへの未実現利益排除(-209百万円)、販管費の増加(-787百万円)をカバーしきれなかった。EPCと東洋平成ポリマーが加わり、売上高と販管費が増加した。
粗利益率の悪化は、原材料価格の高騰による。同社は、原材料価格の値上がりを販売価格に転嫁する基本方針を取っている。2018年10月期の場合、原材料の値上がりから価格転嫁までタイムラグがあり減益要因となったが、2019年10月期には価格転嫁の効果がフルに寄与する見込みである。主要な材料である国産ナフサの価格は、2018年10月の1キロリットル当たり36,600円に対し、会社予算では2割近く高い43,900円を前提としていた。四半期ごとの市場価格は、第1四半期が45,096円(前年同期比29.1%増)、第2四半期が44,830円(同12.6%増)、第3四半期が49,199円(同37.4%増)、第4四半期が52,355百万円(同45.8%増)で推移した。通期では47,800円と予算を8.9%上回った。
b) 機械製品事業
機械製品事業では、売上高が5,602百万円(前期比2.0%増)、営業利益が768百万円(同32.0%増)、売上高営業利益率が13.7%の好業績であった。営業利益の要因については、増収効果(+32百万円)、粗利益率改善(+159百万円)であった。主力のスリッター関連機器は、国内向けは軟包装系及び光学系が、海外向けはタイ及び東南アジア諸国で軟包装系が、中国で電池系がそれぞれ好調だった。押出関連機器は、高機能フィルム用スクリーンチャンジャ?並びに特殊樹脂用及びコンパウンド用造粒装置が順調だった。中国におけるリチウムイオン電池用フィルムスリッターは、需要の先行きを慎重に見極めた生産体制を取っているため、受注残高が積み上がった。
2. 財務状況と経営指標
2018年10月期末の総資産は31,870百万円と前期末比4,755百万円増加した。買収した2社の資産が加わった。流動資産は19,848百万円、同2,086百万円増加した。主要な増減項目は、現金及び預金(2,241百万円の減少)、受取手形及び売掛金(2,138百万円の増加)、たな卸資産(1,956百万円の増加)などである。現金及び預金の減少は、企業買収にともなう支出による。増収により、受取手形及び売掛金が増加した。たな卸資産は、販売先が決まっており、意図せざる在庫増ではない。貸方では、買収子会社の借入金が加わり有利子負債が同1,890百万円増えた。純資産は同1,270百万円増加した。
短期的な支払い能力を示す流動比率は223.4%、長期的な指標の自己資本比率は66.2%と、いずれも財務の安全性が高い。収益性指標となるROE(自己資本当期純利益率)は9.2%、ROA(総資産経常利益率)が9.4%、売上高営業利益率は10.2%であった。ROEでは、連結化した2社の売上高がそれぞれ8ヶ月と3ヶ月の寄与であったため、総資産回転率に不利に働いた。
2018年10月期末の現金及び現金同等物の残高は、4,167百万円と前期末比2,149百万円減少した。営業活動によるキャッシュ・フローは、2,009百万円の資金増加にとどまった。税金等調整前当期純利益2,779百万円と減価償却費1,054百万円の資金増加に対し、売上債権の増加(181百万円)とたな卸資産の増加(567百万円)などが資金を削減した。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社の取得による支出が2,304百万円と生産設備の新増設、更新及び合理化投資の充実で有形固定資産の取得による支出998百万円があり、3,341百万円の資金減少になった。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済などで837百万円の資金減少であった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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