神戸物産 Research Memo(3):業務スーパー事業の成長が続き、業績は過去最高を連続で更新
[19/02/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2018年10月期業績の概要
神戸物産<3038>の2018年10月期の連結業績は、売上高が前期比6.2%増の267,175百万円、営業利益が同7.6%増の15,722百万円、経常利益が同0.3%増の15,831百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同24.2%増の10,363百万円と増収増益決算となり、過去最高を連続で更新した。また、会社計画に対しても売上高、利益ともに上回って着地している。主力の業務スーパー事業が新規出店効果や既存店舗での売上拡大を背景に、増収増益となったことが主因だ。
売上原価率は前期比1.2ポイント上昇の85.1%となった。同社単独では前期比横ばい水準だったものの、子会社で展開するクックイノベンチャー事業で不採算店舗の整理を進めたことが影響した。同様に販管費率についても同社単独では前期比横ばい水準だったが、クックイノベンチャー事業の販管費が減少したことに伴い、前期比で1.3ポイント低下し、結果、営業利益率は同0.1ポイント上昇の5.9%となった。
営業利益の増益率に対して経常利益の増益率が小幅にとどまったのは、為替関連差益が前期比で1,221百万円減少したことによる。前期は円安が進行したことにより1,258百万円の為替関連差益が発生したが、2018年10月期は期末レートで113円/ドルとほぼ前期末並みの水準にとどまり、37百万円の差益にとどまった。また、前期比で特別損益が改善したことにより(減損損失が2,428百万円から907百万円に減少、子会社工場の火災発生に関連した受取保険金634百万円の計上等)、親会社株主に帰属する当期純利益は2ケタ増益となった。
業務スーパーは既存店の売上、新規出店数ともに会社計画を上回る
2.事業セグメント別動向
(1) 業務スーパー事業
業務スーパー事業の売上高は前期比9.0%増の236,624百万円、営業利益は同9.0%増の17,185百万円と増収増益基調が続いた。新規出店効果に加え、PB商品を中心に既存店での売上が順調に拡大したことが要因だ。また、営業利益率は増収効果やグループ子会社の収益改善効果により、前期比横ばいの7.3%となった。
2018年10月期末の店舗数は前期末比で33店舗増の813店舗となった。地域別の状況を見ると、関東直轄エリアが13店舗増、関西直轄エリアが5店舗増、九州直轄エリアが1店舗増、その他直轄(北海道)エリアが2店舗、地方エリアが12店舗増と万遍なく増加した。同社が注力エリアとして位置付けている関東直轄エリアでの出店が順調に拡大しており、なかでも東京都については前期末比5店舗増の72店舗と大阪府の89店舗に次ぐ規模にまで拡大した(3番目は兵庫県の65店舗)。
また、既存店向け商品出荷額についても前期比4.5%増と会社計画の2%増を上回る伸びを見せた。同期間におけるスーパーマーケット業界全体の売上高(食品売上高、既存店ベース)が0.6%増であったことからすれば、引き続き「業務スーパー」の集客力、販売力の高さが裏付けられる格好となっている。特に、2018年10月は総力祭でPB商品を中心に販売キャンペーンを積極的に展開し、前年同月比9.9%増と大幅な伸長を見せた。既存店売上高が業界平均を上回る伸びを続けている要因としては、顧客ニーズに合致したPB商品の開発・製造や自社輸入商品の拡充に取り組んでいることが挙げられる。
PB商品のなかでも売れ筋商品となった自社グループ工場の商品としては、「上州高原どり」や「吉備高原どり」のもも肉及びウインナー、「菊川の鬼ころし(日本酒)」などが挙げられる。「上州高原どり」は需要が旺盛なことから鶏舎を増設し、養鶏数を増やす予定となっている。また、「菊川の鬼ころし」も味と価格が顧客から高い支持を集め、直轄店だけでなく地方エリア店での導入が進み売上が伸長した。独自で酒類を仕入れていた加盟店が商品の好調な売れ行きを見て順次切り替えが進んでいると言う。自社輸入品では、「ブラジル産鶏もも正肉」や「ベルギー産フライドポテト」のほか冷凍野菜の販売が好調だった。2018年は天候不順により野菜価格が高騰したことも追い風となったようだ。これらPB商品の販売増によって、PB商品の売上構成比は前期の29.75%から30.01%に上昇している。
(2)神戸クック事業
神戸クック事業の売上高は前期比37.3%増の1,712百万円、営業損失は43百万円(前期は108百万円の損失)となった。2018年10月期末の店舗数を見ると、「神戸クック・ワールドビュッフェ」が前期末比3店舗増の19店舗、「Green's K」が同1店舗減の8店舗、新業態の「馳走菜」が3店舗出店、「Green's K 鉄板ビュッフェ」が同1店舗減の1店舗となった。
増収の要因は、「神戸クック・ワールドビュッフェ」の店舗数増加が寄与した。FCオーナーの募集を再開しており、新規オーナーの出店も寄与した。2ケタ増収にも関わらず営業損失が続いたのは、「Green's K 鉄板ビュッフェ」や過去に展開していた業態における在庫評価損を第2四半期に計上したことが主因となっている。第3四半期は黒字化(第3四半期単独で15百万円の利益)しており、通期で見ても在庫評価損を除けば若干の黒字となっている。また、新業態である「馳走菜」については直営1店舗、FC2店舗を出店したが、いずれも販売が好調で黒字となっており、今後収益性の低い「Green's K」のFCオーナーに対して業態変更を薦め、業務スーパー内での出店も拡大していく方針となっている。
(3)クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業の売上高は前期比15.3%減の27,454百万円、営業利益は同34.8%減の701百万円となった。主力の外食事業において売上低迷が長期化している居酒屋業態を中心に不採算店舗の閉店を進めたほか、2018年3月に教育事業から撤退したことが減収減益要因となった。現在は収益回復に向け、需要が堅調なヘルシー志向のレストラン業態や国産牛にこだわった焼肉業態などブランド力の高い業態への転換を進めているほか、ファーストフード店等複数のM&Aも下期に実施しており、2019年10月期以降の収益回復に向けた施策を進めている段階にある。
(4)エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業の売上高は前期比123.8%増の1,184百万円、営業利益は同937.5%増の166百万円となった。メガソーラー発電事業において、2018年2月に14拠点目となる発電所(大阪府)が稼働し、期末の総出力で前期末比約2.1MW(メガワット)増加の約18.0MWに拡大したほか、2018年8月より北海道白糠郡白糠町において木質バイオマス発電所(最大出力6.25MW)が本格稼働を開始したことが増収増益要因となった。そのほか、大分県では出力50kWの地熱発電設備を稼働している。
(5)その他
輸入食品店の「ガレオン」事業や観光事業、設備賃貸事業等が含まれるその他セグメントの売上高は前期比22.6%減の199百万円、営業損失は216百万円(前期は176百万円の損失)となった。リゾート温浴施設「ホットラグーン大分」(2016年10月開業)を2017年9月末から一時休業していることが減収要因となった。同施設の営業再開を図るべく集客力向上のための投資計画を2018年秋に決定する予定であったが、投資回収期間の見直しも含めて再度検討に入っている段階で、営業再開の時期は未定となっている。
一方、「ガレオン」の店舗数は直営1店舗(神奈川県)、FC1店舗(千葉県)の2店舗とオンラインショップ1店舗を運営している。ここ数年、収益モデルの構築に取り組んできたが、2017年12月に千葉県内のショッピングセンターに出店した「モリシア津田沼店」を今後のモデル店舗として収益化を図ったうえで、多店舗展開していく方針となっている。小型店舗となるため、駅ナカやショッピングモール等での出店が可能だが、1店舗当たりの売上規模は小さいため、業績への影響は軽微となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2018年10月期業績の概要
神戸物産<3038>の2018年10月期の連結業績は、売上高が前期比6.2%増の267,175百万円、営業利益が同7.6%増の15,722百万円、経常利益が同0.3%増の15,831百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同24.2%増の10,363百万円と増収増益決算となり、過去最高を連続で更新した。また、会社計画に対しても売上高、利益ともに上回って着地している。主力の業務スーパー事業が新規出店効果や既存店舗での売上拡大を背景に、増収増益となったことが主因だ。
売上原価率は前期比1.2ポイント上昇の85.1%となった。同社単独では前期比横ばい水準だったものの、子会社で展開するクックイノベンチャー事業で不採算店舗の整理を進めたことが影響した。同様に販管費率についても同社単独では前期比横ばい水準だったが、クックイノベンチャー事業の販管費が減少したことに伴い、前期比で1.3ポイント低下し、結果、営業利益率は同0.1ポイント上昇の5.9%となった。
営業利益の増益率に対して経常利益の増益率が小幅にとどまったのは、為替関連差益が前期比で1,221百万円減少したことによる。前期は円安が進行したことにより1,258百万円の為替関連差益が発生したが、2018年10月期は期末レートで113円/ドルとほぼ前期末並みの水準にとどまり、37百万円の差益にとどまった。また、前期比で特別損益が改善したことにより(減損損失が2,428百万円から907百万円に減少、子会社工場の火災発生に関連した受取保険金634百万円の計上等)、親会社株主に帰属する当期純利益は2ケタ増益となった。
業務スーパーは既存店の売上、新規出店数ともに会社計画を上回る
2.事業セグメント別動向
(1) 業務スーパー事業
業務スーパー事業の売上高は前期比9.0%増の236,624百万円、営業利益は同9.0%増の17,185百万円と増収増益基調が続いた。新規出店効果に加え、PB商品を中心に既存店での売上が順調に拡大したことが要因だ。また、営業利益率は増収効果やグループ子会社の収益改善効果により、前期比横ばいの7.3%となった。
2018年10月期末の店舗数は前期末比で33店舗増の813店舗となった。地域別の状況を見ると、関東直轄エリアが13店舗増、関西直轄エリアが5店舗増、九州直轄エリアが1店舗増、その他直轄(北海道)エリアが2店舗、地方エリアが12店舗増と万遍なく増加した。同社が注力エリアとして位置付けている関東直轄エリアでの出店が順調に拡大しており、なかでも東京都については前期末比5店舗増の72店舗と大阪府の89店舗に次ぐ規模にまで拡大した(3番目は兵庫県の65店舗)。
また、既存店向け商品出荷額についても前期比4.5%増と会社計画の2%増を上回る伸びを見せた。同期間におけるスーパーマーケット業界全体の売上高(食品売上高、既存店ベース)が0.6%増であったことからすれば、引き続き「業務スーパー」の集客力、販売力の高さが裏付けられる格好となっている。特に、2018年10月は総力祭でPB商品を中心に販売キャンペーンを積極的に展開し、前年同月比9.9%増と大幅な伸長を見せた。既存店売上高が業界平均を上回る伸びを続けている要因としては、顧客ニーズに合致したPB商品の開発・製造や自社輸入商品の拡充に取り組んでいることが挙げられる。
PB商品のなかでも売れ筋商品となった自社グループ工場の商品としては、「上州高原どり」や「吉備高原どり」のもも肉及びウインナー、「菊川の鬼ころし(日本酒)」などが挙げられる。「上州高原どり」は需要が旺盛なことから鶏舎を増設し、養鶏数を増やす予定となっている。また、「菊川の鬼ころし」も味と価格が顧客から高い支持を集め、直轄店だけでなく地方エリア店での導入が進み売上が伸長した。独自で酒類を仕入れていた加盟店が商品の好調な売れ行きを見て順次切り替えが進んでいると言う。自社輸入品では、「ブラジル産鶏もも正肉」や「ベルギー産フライドポテト」のほか冷凍野菜の販売が好調だった。2018年は天候不順により野菜価格が高騰したことも追い風となったようだ。これらPB商品の販売増によって、PB商品の売上構成比は前期の29.75%から30.01%に上昇している。
(2)神戸クック事業
神戸クック事業の売上高は前期比37.3%増の1,712百万円、営業損失は43百万円(前期は108百万円の損失)となった。2018年10月期末の店舗数を見ると、「神戸クック・ワールドビュッフェ」が前期末比3店舗増の19店舗、「Green's K」が同1店舗減の8店舗、新業態の「馳走菜」が3店舗出店、「Green's K 鉄板ビュッフェ」が同1店舗減の1店舗となった。
増収の要因は、「神戸クック・ワールドビュッフェ」の店舗数増加が寄与した。FCオーナーの募集を再開しており、新規オーナーの出店も寄与した。2ケタ増収にも関わらず営業損失が続いたのは、「Green's K 鉄板ビュッフェ」や過去に展開していた業態における在庫評価損を第2四半期に計上したことが主因となっている。第3四半期は黒字化(第3四半期単独で15百万円の利益)しており、通期で見ても在庫評価損を除けば若干の黒字となっている。また、新業態である「馳走菜」については直営1店舗、FC2店舗を出店したが、いずれも販売が好調で黒字となっており、今後収益性の低い「Green's K」のFCオーナーに対して業態変更を薦め、業務スーパー内での出店も拡大していく方針となっている。
(3)クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業の売上高は前期比15.3%減の27,454百万円、営業利益は同34.8%減の701百万円となった。主力の外食事業において売上低迷が長期化している居酒屋業態を中心に不採算店舗の閉店を進めたほか、2018年3月に教育事業から撤退したことが減収減益要因となった。現在は収益回復に向け、需要が堅調なヘルシー志向のレストラン業態や国産牛にこだわった焼肉業態などブランド力の高い業態への転換を進めているほか、ファーストフード店等複数のM&Aも下期に実施しており、2019年10月期以降の収益回復に向けた施策を進めている段階にある。
(4)エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業の売上高は前期比123.8%増の1,184百万円、営業利益は同937.5%増の166百万円となった。メガソーラー発電事業において、2018年2月に14拠点目となる発電所(大阪府)が稼働し、期末の総出力で前期末比約2.1MW(メガワット)増加の約18.0MWに拡大したほか、2018年8月より北海道白糠郡白糠町において木質バイオマス発電所(最大出力6.25MW)が本格稼働を開始したことが増収増益要因となった。そのほか、大分県では出力50kWの地熱発電設備を稼働している。
(5)その他
輸入食品店の「ガレオン」事業や観光事業、設備賃貸事業等が含まれるその他セグメントの売上高は前期比22.6%減の199百万円、営業損失は216百万円(前期は176百万円の損失)となった。リゾート温浴施設「ホットラグーン大分」(2016年10月開業)を2017年9月末から一時休業していることが減収要因となった。同施設の営業再開を図るべく集客力向上のための投資計画を2018年秋に決定する予定であったが、投資回収期間の見直しも含めて再度検討に入っている段階で、営業再開の時期は未定となっている。
一方、「ガレオン」の店舗数は直営1店舗(神奈川県)、FC1店舗(千葉県)の2店舗とオンラインショップ1店舗を運営している。ここ数年、収益モデルの構築に取り組んできたが、2017年12月に千葉県内のショッピングセンターに出店した「モリシア津田沼店」を今後のモデル店舗として収益化を図ったうえで、多店舗展開していく方針となっている。小型店舗となるため、駅ナカやショッピングモール等での出店が可能だが、1店舗当たりの売上規模は小さいため、業績への影響は軽微となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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