平成最後に振り返る−「リーマンショック」期でも売上高を更新し続けた企業イー・ギャランティ 江藤公則社長インタビュー(1)
[19/02/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
みなさん、こんにちは。フィスコ企業リサーチレポーターの馬渕磨理子です。
東証1部 イー・ギャランティ<8771>の江藤公則(えとうまさのり)社長にインタビューさせていただきました。(以下、敬称略)2回に分けて配信いたします。
イー・ギャランティがジャスダックに上場したのは2007年、その後、すぐに“リーマンショック”に突入することになる。しかし、同社はリーマンショックの真っ只中でも、ショックの後でも『売上高・利益ともに更新し続け』、12期連続増収増益を誇り、現在は東証1部の企業へと成長しました。同社の強さはどこにあるのか?
??平成が終わり、これから新しい時代に入るこのタイミングで、リーマンショックという金融危機を経て、不景気、アベノミクス以降の低金利政策、どの局面でも成長を続けてきたイー・ギャランティの真実に迫ることで、我々は次の時代を生き抜くヒントを得ることができるかもしれない。
■リーマンショックの前兆は『企業の倒産件数』データから把握。
2007年に上場して、2008年にはリーマンショックが起きるわけですが、債務を保証するというビジネスモデルから、売上高は2007年14億、2008年19億、2010年27億円と成長しています。同社は、企業の売掛債権の貸し倒れのリスクを保証する点から、『企業の倒産件数の推移』の経済データで注視しています。2008年の9月時点で、リーマンショックが話題になり未曾有の金融危機となっていましたが、社内では、企業の倒産件数を長年ウォッチしていましたので、2007年時点で、企業の倒産件数が14,091件と、前年比6.3%増、2年連続前年比増加している状況を把握していました。リーマンショックの前後では、企業の倒産件数が増加することで、貸し倒れリスクが高まりますので、リスクの高いゾーンの保証は引き受けないスタンスを取っていました。そのため、売上高に直結する「保証残高」の伸びは鈍るものの、「保証料」を上げることで対応し、売上高の前年比増を達成していました。実際に2010年が過去最高の3.2%の保証料となっています。(2018年が保証料1.6%である事から、2010年がいかに高かったのかが分かります。)
■鍵になる年は2011年?舵取りは柔軟に。
その後、2011年は同社のターニングポイントとなる年だと言えます。2011年は、東証2部へ上場し、一気に認知度が高まり大企業との取引も増加し、「保証残高」が1000億円台に乗り、企業としての加速が始まった時期です。この流れの背景には、中小企業金融円滑化法の後押しもありました。2008年秋以降の金融危機・景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、金融庁は、中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸付条件の変更を行うことができる法律を定めました。これによって『企業が倒産しにくい環境』になり、その流れを受けて、今まで受けていなかったローリスクゾーンの引き受けを増やしました。ローリスクゾーンが増えたため、保証料は下げましたが、その分、規模で勝負できるステージに入っていきました。この辺りから、リスクヘッジという商品から、売上拡大のための商品や、企業のアウトソーシングなどの方向に舵を切り出したのです。2011年くらいから、大企業のお客様も増え、規模感を持って動き出した、会社の境目の時期と言えます。
■売上高総利益率(粗利÷売上高)が2017年からは8割を超えてきている。
着実に売上原価を抑えています。2008年からの売上高総利益率を見ると、50%台だったものが80%台になっています。これには、売上原価を抑えることに成功した背景があります。同社が顧客と契約する「保証料率」と同社がリスクの「移転先に支払う再保証料率」のギャップが売上原価になります。このため、この部分の高度化を進めることで再保証料率の低減を進めています。つまり、リスク移転による原価変動要因についても、子会社としてファンドを組成し支払保証料の社外流出を抑えることでも原価低減を図っています。
■再保証先を、社外ではなく子会社のファンドが引受するリスクがあるように思いますが?
長年の実績と企業のデータの蓄積により、倒産リスクを見る目、ナレッジが社内に蓄積しているのです。そのため、子会社としてファンドを組む際は、リスク分散と適切なリスク配分をすることで、自社の売上原価を抑えることにつなげていますので、リスクヘッジができています。また、ファンドの保証履行額が万が一悪化したとしても、再保証する契約をリース会社や損保などの金融機関と別で結んでいます。高額免責保証です。高額免責は例えば、ファンドで引き受けたリスクが「数百億億円」あって、そのうち数億円億円以上損失が出たら、初めて保証金が降りるという再保証によって更なるリスクヘッジも行っています。
■毎月約2万社の審査を行う
現在は、月々の審査依頼件数は2万社を越えてきています。月に1000社ほどしか審査していなかった時代と比べて、倒産データ、企業の信用データが集まってきています。だからこそ、2018年はローリスクゾーンだけでなく、ミドルリスクまで手を広げることができました。圧倒的なビッグデータをもとに、厳正に審査行うことで、今後もミドルリスクの引受先の拡大を行っていきます。
【インタビューを終えて】金融危機を経て、不景気、アベノミクス以降の低金利政策、どの局面でも成長を続けてきたイー・ギャランティの真実に迫ることができました。次回は、企業情報のナレッジが蓄積された同社の次のステージについて深掘りします。ベンチャー企業向けの新しい取り組み、ビッグデータ活用、中長期戦略について迫ります。
(フィスコ企業リサーチレポーター 馬渕磨理子)
<SF>
東証1部 イー・ギャランティ<8771>の江藤公則(えとうまさのり)社長にインタビューさせていただきました。(以下、敬称略)2回に分けて配信いたします。
イー・ギャランティがジャスダックに上場したのは2007年、その後、すぐに“リーマンショック”に突入することになる。しかし、同社はリーマンショックの真っ只中でも、ショックの後でも『売上高・利益ともに更新し続け』、12期連続増収増益を誇り、現在は東証1部の企業へと成長しました。同社の強さはどこにあるのか?
??平成が終わり、これから新しい時代に入るこのタイミングで、リーマンショックという金融危機を経て、不景気、アベノミクス以降の低金利政策、どの局面でも成長を続けてきたイー・ギャランティの真実に迫ることで、我々は次の時代を生き抜くヒントを得ることができるかもしれない。
■リーマンショックの前兆は『企業の倒産件数』データから把握。
2007年に上場して、2008年にはリーマンショックが起きるわけですが、債務を保証するというビジネスモデルから、売上高は2007年14億、2008年19億、2010年27億円と成長しています。同社は、企業の売掛債権の貸し倒れのリスクを保証する点から、『企業の倒産件数の推移』の経済データで注視しています。2008年の9月時点で、リーマンショックが話題になり未曾有の金融危機となっていましたが、社内では、企業の倒産件数を長年ウォッチしていましたので、2007年時点で、企業の倒産件数が14,091件と、前年比6.3%増、2年連続前年比増加している状況を把握していました。リーマンショックの前後では、企業の倒産件数が増加することで、貸し倒れリスクが高まりますので、リスクの高いゾーンの保証は引き受けないスタンスを取っていました。そのため、売上高に直結する「保証残高」の伸びは鈍るものの、「保証料」を上げることで対応し、売上高の前年比増を達成していました。実際に2010年が過去最高の3.2%の保証料となっています。(2018年が保証料1.6%である事から、2010年がいかに高かったのかが分かります。)
■鍵になる年は2011年?舵取りは柔軟に。
その後、2011年は同社のターニングポイントとなる年だと言えます。2011年は、東証2部へ上場し、一気に認知度が高まり大企業との取引も増加し、「保証残高」が1000億円台に乗り、企業としての加速が始まった時期です。この流れの背景には、中小企業金融円滑化法の後押しもありました。2008年秋以降の金融危機・景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、金融庁は、中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸付条件の変更を行うことができる法律を定めました。これによって『企業が倒産しにくい環境』になり、その流れを受けて、今まで受けていなかったローリスクゾーンの引き受けを増やしました。ローリスクゾーンが増えたため、保証料は下げましたが、その分、規模で勝負できるステージに入っていきました。この辺りから、リスクヘッジという商品から、売上拡大のための商品や、企業のアウトソーシングなどの方向に舵を切り出したのです。2011年くらいから、大企業のお客様も増え、規模感を持って動き出した、会社の境目の時期と言えます。
■売上高総利益率(粗利÷売上高)が2017年からは8割を超えてきている。
着実に売上原価を抑えています。2008年からの売上高総利益率を見ると、50%台だったものが80%台になっています。これには、売上原価を抑えることに成功した背景があります。同社が顧客と契約する「保証料率」と同社がリスクの「移転先に支払う再保証料率」のギャップが売上原価になります。このため、この部分の高度化を進めることで再保証料率の低減を進めています。つまり、リスク移転による原価変動要因についても、子会社としてファンドを組成し支払保証料の社外流出を抑えることでも原価低減を図っています。
■再保証先を、社外ではなく子会社のファンドが引受するリスクがあるように思いますが?
長年の実績と企業のデータの蓄積により、倒産リスクを見る目、ナレッジが社内に蓄積しているのです。そのため、子会社としてファンドを組む際は、リスク分散と適切なリスク配分をすることで、自社の売上原価を抑えることにつなげていますので、リスクヘッジができています。また、ファンドの保証履行額が万が一悪化したとしても、再保証する契約をリース会社や損保などの金融機関と別で結んでいます。高額免責保証です。高額免責は例えば、ファンドで引き受けたリスクが「数百億億円」あって、そのうち数億円億円以上損失が出たら、初めて保証金が降りるという再保証によって更なるリスクヘッジも行っています。
■毎月約2万社の審査を行う
現在は、月々の審査依頼件数は2万社を越えてきています。月に1000社ほどしか審査していなかった時代と比べて、倒産データ、企業の信用データが集まってきています。だからこそ、2018年はローリスクゾーンだけでなく、ミドルリスクまで手を広げることができました。圧倒的なビッグデータをもとに、厳正に審査行うことで、今後もミドルリスクの引受先の拡大を行っていきます。
【インタビューを終えて】金融危機を経て、不景気、アベノミクス以降の低金利政策、どの局面でも成長を続けてきたイー・ギャランティの真実に迫ることができました。次回は、企業情報のナレッジが蓄積された同社の次のステージについて深掘りします。ベンチャー企業向けの新しい取り組み、ビッグデータ活用、中長期戦略について迫ります。
(フィスコ企業リサーチレポーター 馬渕磨理子)
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