窪田製薬HD Research Memo(1):遠隔医療デバイス「PBOS」の2019年中の販売承認申請を目指す
[19/04/03]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米アキュセラ・インクを子会社に持つ持株会社で、2016年12月に東証マザーズに上場した。現在は、スターガルト病と網膜色素変性を適応対象とした治療薬、及び網膜疾患患者向けの在宅遠隔医療モニタリングデバイス「PBOS (Patient Based Ophtalmology Suite)」の3つのパイプラインを中心に開発を進めている。また、2019年3月にNASA(米航空宇宙局)と宇宙飛行士の眼疾患診断用小型OCT(光干渉断層計)に関する共同開発契約を締結したことを発表している。
1. 遠隔医療モニタリングデバイス「PBOS」の開発状況
網膜疾患患者向けの在宅・遠隔医療モニタリングデバイスとして開発を進めている超小型モバイルOCT※1「PBOS」について、2019年内にも米国で510(k)※2による販売承認申請を行う見通しだ。量産型試作機完成後に、2018年に試作機で実施した臨床試験結果との再現性評価を行い、その後に販売承認申請を行う。「PBOS」は患者自身が在宅で網膜の厚さを測定し、インターネット経由で医者に撮影画像を送信、医者が治療の必要性の有無を診断する。このため患者は適切なタイミングで治療を受けることが可能となり、治療遅れによる症状悪化を防ぐことが可能となる。ビジネスモデルとしては、患者の初期コスト負担が掛からないよう毎月の利用料を徴収する方式となる可能性が高い。このため販売開始当初は同社のコスト負担となるが、普及が進めば安定した収益源として業績に貢献することが見込まれる。まずは米国市場で展開し、いずれは世界での普及拡大を目指している。網膜疾患患者は世界で1億人を超えるだけに潜在需要は大きく、高齢化が進むにつれて患者数の増加が見込まれることからも、眼科疾患の診断ソリューションにおける新たなイノベーションとして注目を浴びることになるだろう。
※1 OCT(Optical Coherence Tomography)は光干渉断層計という網膜の診断画像を撮影する検査機器のことで、網膜疾患や黄斑部の病変の診断用として使用される。
※2 510(k)申請…市販前届出制度。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることを確認できるデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。
医薬品の開発パイプラインでは、スターガルト病※を適応症とするエミクススタトの臨床第3相試験が2018年11月より開始されており、2021年内の試験終了を目指している。また、網膜色素変性を対象とした遺伝子療法については、2020年の非臨床試験開始、及び2021年のIND(臨床試験用の新医薬品)申請を目指し開発が進められている。眼科疾患の遺伝子治療薬としては2017年12月に米Spark Therapeutics Inc.の「ラクスターナ」が遺伝性網膜疾患(稀少疾患)向けに世界で初めて販売承認されており、両目で85万米ドルの薬価で販売されたことが話題となった。同社が開発を進めている遺伝子療法も失明患者の視機能回復を目指しており、今後の動向が注目される。
※スターガルト病は遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。
2. 業績動向
2018年12月期の連結業績は、事業収益の計上がなく、営業損失で3,274百万円(前期は3,620百万円の損失)となった。臨床試験費用の増加により研究開発費が前期比100百万円増加したものの、人件費等を中心に一般管理費が同446百万円減少したことが損失額の縮小要因となった。2019年12月期中に事業収益として計上されるかは明らかにしていないが、2019年3月に発表したNASAとの共同開発をはじめ、様々なパートナーシップの可能性が実り、提携を通じた収益が計上される可能性はある。営業損失については3,200百万円と前期並みの水準を見込んでいる。なお、2018年12月期末の手元資金は10,938百万円となっており、当面の事業業活動資金は確保されている。
■Key Points
・眼科領域に特化して革新的な医薬品・医療機器の開発を目指す米国発のベンチャー企業
・スターガルト病治療薬、「PBOS」の開発が順調に進む
・スターガルト病の開発費用は新株予約権の行使と手元資金で充当していく方針
・NASAとの共同開発を発表、有人火星探査に携行可能な超小型眼科診断装置を開発
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米アキュセラ・インクを子会社に持つ持株会社で、2016年12月に東証マザーズに上場した。現在は、スターガルト病と網膜色素変性を適応対象とした治療薬、及び網膜疾患患者向けの在宅遠隔医療モニタリングデバイス「PBOS (Patient Based Ophtalmology Suite)」の3つのパイプラインを中心に開発を進めている。また、2019年3月にNASA(米航空宇宙局)と宇宙飛行士の眼疾患診断用小型OCT(光干渉断層計)に関する共同開発契約を締結したことを発表している。
1. 遠隔医療モニタリングデバイス「PBOS」の開発状況
網膜疾患患者向けの在宅・遠隔医療モニタリングデバイスとして開発を進めている超小型モバイルOCT※1「PBOS」について、2019年内にも米国で510(k)※2による販売承認申請を行う見通しだ。量産型試作機完成後に、2018年に試作機で実施した臨床試験結果との再現性評価を行い、その後に販売承認申請を行う。「PBOS」は患者自身が在宅で網膜の厚さを測定し、インターネット経由で医者に撮影画像を送信、医者が治療の必要性の有無を診断する。このため患者は適切なタイミングで治療を受けることが可能となり、治療遅れによる症状悪化を防ぐことが可能となる。ビジネスモデルとしては、患者の初期コスト負担が掛からないよう毎月の利用料を徴収する方式となる可能性が高い。このため販売開始当初は同社のコスト負担となるが、普及が進めば安定した収益源として業績に貢献することが見込まれる。まずは米国市場で展開し、いずれは世界での普及拡大を目指している。網膜疾患患者は世界で1億人を超えるだけに潜在需要は大きく、高齢化が進むにつれて患者数の増加が見込まれることからも、眼科疾患の診断ソリューションにおける新たなイノベーションとして注目を浴びることになるだろう。
※1 OCT(Optical Coherence Tomography)は光干渉断層計という網膜の診断画像を撮影する検査機器のことで、網膜疾患や黄斑部の病変の診断用として使用される。
※2 510(k)申請…市販前届出制度。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることを確認できるデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。
医薬品の開発パイプラインでは、スターガルト病※を適応症とするエミクススタトの臨床第3相試験が2018年11月より開始されており、2021年内の試験終了を目指している。また、網膜色素変性を対象とした遺伝子療法については、2020年の非臨床試験開始、及び2021年のIND(臨床試験用の新医薬品)申請を目指し開発が進められている。眼科疾患の遺伝子治療薬としては2017年12月に米Spark Therapeutics Inc.の「ラクスターナ」が遺伝性網膜疾患(稀少疾患)向けに世界で初めて販売承認されており、両目で85万米ドルの薬価で販売されたことが話題となった。同社が開発を進めている遺伝子療法も失明患者の視機能回復を目指しており、今後の動向が注目される。
※スターガルト病は遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。
2. 業績動向
2018年12月期の連結業績は、事業収益の計上がなく、営業損失で3,274百万円(前期は3,620百万円の損失)となった。臨床試験費用の増加により研究開発費が前期比100百万円増加したものの、人件費等を中心に一般管理費が同446百万円減少したことが損失額の縮小要因となった。2019年12月期中に事業収益として計上されるかは明らかにしていないが、2019年3月に発表したNASAとの共同開発をはじめ、様々なパートナーシップの可能性が実り、提携を通じた収益が計上される可能性はある。営業損失については3,200百万円と前期並みの水準を見込んでいる。なお、2018年12月期末の手元資金は10,938百万円となっており、当面の事業業活動資金は確保されている。
■Key Points
・眼科領域に特化して革新的な医薬品・医療機器の開発を目指す米国発のベンチャー企業
・スターガルト病治療薬、「PBOS」の開発が順調に進む
・スターガルト病の開発費用は新株予約権の行使と手元資金で充当していく方針
・NASAとの共同開発を発表、有人火星探査に携行可能な超小型眼科診断装置を開発
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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