アエリア Research Memo(7):事業再編でシナジーとガバナンスを強化
[19/05/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■M&A戦略と事業の再編
3. 事業再編
(1) 子会社・コンテンツの見直し
「A3!」や「アイ★チュウ」のヒットにより、アエリア<3758>はIPビジネスという新たなビジネスフィールドを得ることになった。2018年には「イケメンシリーズ」も手中に収めたことで、IPビジネスで成長していく自信が付いたと思われる。したがって、こうしたIPビジネスに経営資源を投入していくためにも、また、新たな技術や訪日外国人旅行客という新規領域へ拡張するためにも、広げた戦線を集約し、選択と集中により一旦事業基盤を強化することになった。このため2018年12月期第2四半期以降、事業の再編を開始したのである。まず、事業計画の進捗が遅れているアリスマティックなどのれんの減損損失(655百万円)を計上した。さらに、連結子会社4社の業績を保守的に見直してのれんの減損損失(686百万円)と、連結子会社5社のソフトウェアの減損損失(659百万円)を計上した。また、アスガルドについて、開発コストの増加や売上の伸び悩みなどにより債務超過の状態にあったことから、アスガルド役員からの借入金(657百万円)に関して債務免除を受け(債務免除益657百万円計上)、そのうえで相互の弱みを補強するため分割型吸収分割によりアスガルドをアリスマティックに統合した。また、他社IPの多い(株)エイタロウソフトと、民泊清掃でのシナジーの期待が薄れた清匠(株)の株式を売却し、連結対象から外している。
(2) 事業の再編によるシナジーとガバナンスの強化
選択と集中の次は、事業体として効率的なビジネスモデルの構築を目指すことになる。同社は、中間持株会社の(株)アエリアコンテンツ・ホールディングス(ACH)を設立し、同社長嶋会長が社長、リベル・エンタテインメントの林田浩太郎(はやしだこうたろう)代表取締役社長が取締役に就任して、コンテンツ事業を包括的に管理監督する体制を整えた。これにより、1)各社における新規ゲームタイトルの開発は林田取締役を中心としたACH経営陣と連携し、2)管理機能を共有化して管理コストの抑制を図り、3)人的リソースの最適配置により採用コストの抑制や人的資源の有効活用を進め、4)ACHをハブとし各社の情報・ナレッジの共有を進めることになった。また、(株)アエリアワンを設立し、既存事業セグメントの発想に囚われず、グループ内外に新たな事業機会を見出すことで、IPなどグループの事業資産を生かしたシナジーの創出やアライアンスの推進に積極的に取り組む方針である。
新しい技術と成長する市場を取り込む
4. 期待される新規領域
事業再編にかかわらず、同社は、AIやVR/AR、ブロックチェーンなど新たな技術と、増加する訪日外国人観光客に関連する市場を新規領域として、事業へ取り込もうと企図してきた。いずれも大きなスケールで、社会構造を根底から変えてしまうほどの影響力のある領域と言える。
(1) 新たな技術領域
新たな技術については、ブロックチェーンではトレカサービスを実用化しつつあり、VR/ARは宿泊施設への利用を検討しているもようだが、いまだ将来をにらんだ動きの段階である。AIのクリエイティブへの応用については、ディープラーニングを用いたAI技術を有するベンチャー企業の(株)データグリッドに出資した。データグリッドは、AIを利用して「キャラクターの顔画像を自動生成する技術」などの研究開発を行っている。この技術を活用すれば、例えば、キャラクターの顔画像だけでなく、シナリオ、音声の自動生成、自然言語処理などをAIに任せ、人は教育と監修をするだけで、世界に1つだけのカスタマイズされたゲームを制作することができる可能性がある。現段階では、キャラクター顔画像の自動生成については、20万件以上のデータから7万件のキャラクターを自動で生成することに成功している。キャラクターを無限に増やすことができれば収益も増やせるし、人の手で1から描いているものをAIが代わってすればコストも抑制できる。魅力的なプロジェクトと言える。ゲーム以外にも、民泊の予約や鍵の受渡しや宿泊権利のやり取り、ブロックチェーンなどへの応用も可能と思われる。
(2) 成長マーケット領域にいるアセットマネージメント事業
ところで、2018年の訪日外国人数は3,119万人と前年比8.7%増となった(出所:日本政府観光局)。2019年も1月、2月と引き続き伸びている。観光立国を目指す国家施策もあり、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催へ向けて、訪日外国人の数がさらに拡大することが期待されている。一方、日本には宿泊施設が非常に不足している。その狭間を埋めると期待されるのが「民泊」である。その民泊を本格的に解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が2018年6月に施行された。新法の狙いは民泊の育成だが、営業日数の制限、届け出や宿泊者の本人確認の義務化などの規制も設けている。騒音やゴミ出しなどのマナー違反や犯罪利用など、近隣住民の不安に配慮して規制を強める自治体も増えつつある。しかし、民泊新法により登録された正規の事業者が増えるなど、中長期的に民泊事業の健全化が進む見込みである。同社はまさにこうした分野を狙ってアセットマネージメント事業を開始したのであり、部屋数の拡大を目指して現在準備・実験中である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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3. 事業再編
(1) 子会社・コンテンツの見直し
「A3!」や「アイ★チュウ」のヒットにより、アエリア<3758>はIPビジネスという新たなビジネスフィールドを得ることになった。2018年には「イケメンシリーズ」も手中に収めたことで、IPビジネスで成長していく自信が付いたと思われる。したがって、こうしたIPビジネスに経営資源を投入していくためにも、また、新たな技術や訪日外国人旅行客という新規領域へ拡張するためにも、広げた戦線を集約し、選択と集中により一旦事業基盤を強化することになった。このため2018年12月期第2四半期以降、事業の再編を開始したのである。まず、事業計画の進捗が遅れているアリスマティックなどのれんの減損損失(655百万円)を計上した。さらに、連結子会社4社の業績を保守的に見直してのれんの減損損失(686百万円)と、連結子会社5社のソフトウェアの減損損失(659百万円)を計上した。また、アスガルドについて、開発コストの増加や売上の伸び悩みなどにより債務超過の状態にあったことから、アスガルド役員からの借入金(657百万円)に関して債務免除を受け(債務免除益657百万円計上)、そのうえで相互の弱みを補強するため分割型吸収分割によりアスガルドをアリスマティックに統合した。また、他社IPの多い(株)エイタロウソフトと、民泊清掃でのシナジーの期待が薄れた清匠(株)の株式を売却し、連結対象から外している。
(2) 事業の再編によるシナジーとガバナンスの強化
選択と集中の次は、事業体として効率的なビジネスモデルの構築を目指すことになる。同社は、中間持株会社の(株)アエリアコンテンツ・ホールディングス(ACH)を設立し、同社長嶋会長が社長、リベル・エンタテインメントの林田浩太郎(はやしだこうたろう)代表取締役社長が取締役に就任して、コンテンツ事業を包括的に管理監督する体制を整えた。これにより、1)各社における新規ゲームタイトルの開発は林田取締役を中心としたACH経営陣と連携し、2)管理機能を共有化して管理コストの抑制を図り、3)人的リソースの最適配置により採用コストの抑制や人的資源の有効活用を進め、4)ACHをハブとし各社の情報・ナレッジの共有を進めることになった。また、(株)アエリアワンを設立し、既存事業セグメントの発想に囚われず、グループ内外に新たな事業機会を見出すことで、IPなどグループの事業資産を生かしたシナジーの創出やアライアンスの推進に積極的に取り組む方針である。
新しい技術と成長する市場を取り込む
4. 期待される新規領域
事業再編にかかわらず、同社は、AIやVR/AR、ブロックチェーンなど新たな技術と、増加する訪日外国人観光客に関連する市場を新規領域として、事業へ取り込もうと企図してきた。いずれも大きなスケールで、社会構造を根底から変えてしまうほどの影響力のある領域と言える。
(1) 新たな技術領域
新たな技術については、ブロックチェーンではトレカサービスを実用化しつつあり、VR/ARは宿泊施設への利用を検討しているもようだが、いまだ将来をにらんだ動きの段階である。AIのクリエイティブへの応用については、ディープラーニングを用いたAI技術を有するベンチャー企業の(株)データグリッドに出資した。データグリッドは、AIを利用して「キャラクターの顔画像を自動生成する技術」などの研究開発を行っている。この技術を活用すれば、例えば、キャラクターの顔画像だけでなく、シナリオ、音声の自動生成、自然言語処理などをAIに任せ、人は教育と監修をするだけで、世界に1つだけのカスタマイズされたゲームを制作することができる可能性がある。現段階では、キャラクター顔画像の自動生成については、20万件以上のデータから7万件のキャラクターを自動で生成することに成功している。キャラクターを無限に増やすことができれば収益も増やせるし、人の手で1から描いているものをAIが代わってすればコストも抑制できる。魅力的なプロジェクトと言える。ゲーム以外にも、民泊の予約や鍵の受渡しや宿泊権利のやり取り、ブロックチェーンなどへの応用も可能と思われる。
(2) 成長マーケット領域にいるアセットマネージメント事業
ところで、2018年の訪日外国人数は3,119万人と前年比8.7%増となった(出所:日本政府観光局)。2019年も1月、2月と引き続き伸びている。観光立国を目指す国家施策もあり、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催へ向けて、訪日外国人の数がさらに拡大することが期待されている。一方、日本には宿泊施設が非常に不足している。その狭間を埋めると期待されるのが「民泊」である。その民泊を本格的に解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が2018年6月に施行された。新法の狙いは民泊の育成だが、営業日数の制限、届け出や宿泊者の本人確認の義務化などの規制も設けている。騒音やゴミ出しなどのマナー違反や犯罪利用など、近隣住民の不安に配慮して規制を強める自治体も増えつつある。しかし、民泊新法により登録された正規の事業者が増えるなど、中長期的に民泊事業の健全化が進む見込みである。同社はまさにこうした分野を狙ってアセットマネージメント事業を開始したのであり、部屋数の拡大を目指して現在準備・実験中である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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