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ピクスタ Research Memo(8):事業基盤の強化と定額制販売の拡大により、安定的・継続的な2ケタ成長目指す

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

2. PIXTA事業の成長戦略
(1) PIXTA事業の現状
中核事業のPIXTAはここまで順調な成長を続けている。ストックフォトのマーケットプレイスである同事業にとってKPI(重要経営評価指標)としてはコンテンツ数やクリエイター数がある。2019年12月期第2四半期末時点のコンテンツ数は4,257万点で、2019年12月期末には4,650万点にまで積み上がるとの見通しを示している。

素材を投稿するクリエイター数は30万人を突破し、こちらも順調な拡大が続いている。クリエイター育成の取り組みは継続的に実施しており、2019年12月期第2四半期は初心者向けイベント「PIXTA Creator’s Cafe」を関西で初めて開催した。また、アジア各国でもクリエイター育成が順調に進捗している。

(2)PIXTA事業の成長戦略
PIXTA事業に対するピクスタ<3416>の期待は高い。売上構成比の高さから言ってもPIXTAの成長率が全社ベースのそれを決定する形になる。同社はPIXTA事業について、年率10〜15%の成長を安定的に実現することを目指している。より緻密には、国内PIXTA事業と海外PIXTA事業とに分けて考えるべきであるが、現状は国内事業の売上高が圧倒的であり、国内PIXTA事業の動向がPIXTA事業全体の動向を決定すると言える。

それに向けた取り組みの筆頭が定額制販売の拡大だ。PIXTA事業の創業当初は単品販売からスタートしたが2014年12月期から定額制販売を開始し、その育成に注力している。定額制強化の狙いの第1は収益の安定化だ。単品販売はいわゆるフロー型モデルであるのに対して、定額制販売はストック型モデルの性格を有する。また利益率の点でも定額制販売のほうが高いという面もある。

同社は定額制販売に対しては、レギュラープランに加え、個人やフリーランサーなどのライトユーザー向けの少量定額プランを導入(2017年5月)している。また、2018年12月期には少量定額制プランに繰り越し機能を導入(2018年5月)して利便性向上を図った。こうした施策が奏功し、定額制販売は高成長が続いている。

一方、単品販売は売上高の構成比では依然としてPIXTA事業の62%(2019年12月期第2四半期実績ベース)を占めており、重要な位置を占めている。しかしながら定額制販売と比較すればその成長率は低く、2019年12月期第2四半期(累計期間)の売上高は前年同期比4.2%増にとどまった。これは同社が定額制シフトを進める現状に照らせば当然とも言えるが、売上高構成比が62%を占める現実を考えるならば、同社が単品販売の成長についてどのように考えているか、投資家の視点からは気になるところだ。

この点について同社は、PIXTA事業について同社が想定する収益構成や成長率を達成するためには、単品販売についても年率5%前後の成長を確保したいと考えているもようで、その実現に向けて様々な施策を実施・検討している。その1つは2018年12月期第4四半期中に実施した単品販売の値上げだ。これは価格と需要の弾性値を図ることが目的で、結果は、ユーザー数が想定を超えて減少した一方、単価が想定以上に上昇し、売上高としては計画通りの着地となった。こうした結果を踏まえて単品販売における価格設定の最適化を図っていく方針だ。さらに、将来的にはプリペイド(前払い)方式や法人需要喚起に向けた(ライセンス付与のあり方も含めた)仕組みの見直しなども検討していく方針だ。

弊社では、単品販売の成長鈍化について特段懸念はしていない。既述のように定額制販売シフトの結果として当然の動きであるためだ。むしろ、定額制販売と単品販売という販売手法に主眼を置いて成長戦略を論じるステージもそろそろ終盤に近付いているのではないかと考えており、別な角度からPIXTAの成長戦略を見直すことも検討すべき時期に差し掛かっていると弊社では考えている。

同社にとって重要なことはPIXTA事業の売上高が期待どおりの成長を続けるかどうかだ。PIXTAはマーケットプレイスであるが、これまでの取り組みは商品(写真・映像コンテンツ)の充実と、価格設定に注力してきた。弊社では持続的成長の実現のためには“次のステージ”に進む必要があるのではないかと考えている。具体例としては、コンテンツの活用の仕方を提案することを挙げることができる。PIXTAの知名度・認知度が向上し、SNSの発達などで潜在ユーザーが急拡大している今こそが、そうした施策の導入で成長を加速させるベストタイミングなのではないかと考えている。

(3) 2019年12月期第3四半期以降の取り組み
同社は今後の取り組みの代表的な事例として4K/MP4動画の販売開始と、新検索機能の導入を挙げている。

動画についてはこれまでもPIXTAの重要なコンテンツの1つとして位置付けていたが、想定ほどに拡大していないのが実情のようだ。しかし動画にはスチル写真とは異なる使用価値があり、引き続き重要コンテンツとして注力する方針だ。4K/MP4という新たなフォーマットに対応した機器の普及が進んだことで、その取扱開始を決定した。

新検索機能とは、手持ちの画像で似た画像素材を探せる“類似画像検索”機能だ。手持ちの写真(手描きのイメージなどでも可)をアップロードすると自動で似た画像素材を検索できる。コンテンツ数はマーケットプレイスの価値を決めるKPIの1つであることは前述の通りだが、それを活用できない(しにくい)のでは意味がない。その意味で検索機能の強化は極めて重要なポイントと言え、今回の類似画像検索機能は、実用性が高い機能としてユーザーの生産性向上に大きく寄与し、コンテンツ販売の促進につながると期待される。

(4)PIXTA事業の拡大構想
同社はPIXTA事業の成長スピードをさらに加速させるべく、派生サービスの追加も含めた、PIXTA事業の拡大構想を描いている。10〜20年後を見据える長期構想の中では非常に重要な意味を持つと弊社では考えている。

その派生型新サービスの詳細はまだ明らかにされていないが、同社はPIXTA事業の拡大構想について下に掲げるようなイメージ図を示している。現行のPIXTA事業の基盤(クリエイター、ユーザー、コンテンツ)を活かして新たなサービスを展開するというのが方向性の大枠となっている。具体例として制作仲介クラウドソーシングやクリエイター制作支援ツールなどが想定されている。前者はクリエイターに対して直接、写真等の素材の制作を発注することを仲介するサービスだ。後者はユーザーが素材を購入した後のフォローとして購入素材を使って(広告やパンフレットなどを)制作することをサポートすることや、クリエイターの素材制作や自己マーケティングのためのサイト作りを支援すること等が想定されている。デジタル素材の新ジャンルの開拓も重要なピースと言える。こうした新サービスについて、早ければ2019年12月期から検討が開始される可能性があると弊社では推測している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)




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