窪田製薬HD Research Memo(1):遠隔医療モニタリングデバイスで販売パートナー契約の締結を目指す
[20/03/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米アキュセラ・インク(2020年4月よりクボタビジョン・インクに屋号変更)を子会社に持つ持株会社である。現在は、加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者向けの遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」と、スターガルト病及び網膜色素変性を適応対象とした治療薬候補品の開発を主に進めている。また、2019年3月にNASA(米航空宇宙局)と、宇宙飛行士の眼疾患診断用小型OCT(光干渉断層計)※に関する開発受託契約を締結し、2020年2月にフェーズ1の開発が終了し、2ヶ月以内に開発レポートを提出する予定となっている。
※OCT(Optical Coherence Tomography)は赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のことで、緑内障や加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者の診断用として使用される。
1. 開発パイプラインの進捗状況
主要開発パイプラインのうち、最も早く商用化が見込まれる「PBOS」については、今回開発戦略を変更したことを発表した。当初は2020年内の米国での販売開始に向け、510(k)申請※を行う予定であったが、製薬企業またはデバイスメーカーとの販売パートナー契約の締結を優先することとした。現在、複数社と交渉を進めているが、相手先によってPBOSに求める機能や性能が異なるためだ。2020年中にパートナーを確定した上で量産型試作機を仕上げ、510(k)申請を目指すことになる。販売パートナー先が決定すれば、収益化への道筋が従来よりも明確に見えてくるため、その動向が注目される。
※510(k)申請:市販前届出制度。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることを確認できるデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。
一方、スターガルト病※を適応症とする「エミクススタト塩酸塩」の第3相臨床試験(被験者数約160名)については、2018年11月より欧米を中心に約11ヶ国で進められており、2020年1月末までに108名の登録が完了し、2020年内にすべての症例登録を終える見通しだ。観察期間は2年となるため、順調に進めば2023年にも販売承認される可能性がある。スターガルト病治療薬はまだなく、市場規模は2027年に1,600億円規模になるという予測もあり、今後の進捗が期待される。一方、網膜色素変性を対象とした遺伝子治療薬候補品については、導入ウイルスベクターの最適化に向けた開発を進めている。従来は2021年の非臨床試験入りを目指していたが、現時点では開発資金の効率を考えて優先順位がやや下がった状況となっている。
※スターガルト病:遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。
なお、NASAから開発受託した宇宙飛行士向けの超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT(以下、SS-OCT)」プロジェクトについては、2020年2月に第1フェーズが完了し、今後、第2フェーズに移行するものと予想される。同社では2022年-2023年頃の製品化を目指して開発を進めていく考えだ。
2. 業績動向
2019年12月期の連結業績は、事業収益の計上がなく、営業損失で3,321百万円(前期は3,273百万円の損失)となった。人件費を中心に一般管理費が前期比242百万円減少したが、スターガルト病の臨床試験費用や「PBOS」の開発費用等を中心に研究開発費が同290百万円増加した。2020年12月期はNASAプロジェクトの開発受託金40百万円を事業収益として計上し、営業損失は研究開発費の削減により2,500百万円と前期から縮小する計画となっている。
■Key Points
・眼科領域に特化して革新的な医薬品・医療デバイスの開発を目指す米国発のベンチャー企業
・スターガルト病を対象とした第3相臨床試験は順調に進捗、PBOSは販売パートナー契約の締結を優先して進める方向に見直し
・2020年12月期は研究開発費の大幅削減により損失額が縮小する見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
窪田製薬ホールディングス<4596>は革新的な眼疾患治療薬及び医療デバイスの開発を進める米アキュセラ・インク(2020年4月よりクボタビジョン・インクに屋号変更)を子会社に持つ持株会社である。現在は、加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者向けの遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」と、スターガルト病及び網膜色素変性を適応対象とした治療薬候補品の開発を主に進めている。また、2019年3月にNASA(米航空宇宙局)と、宇宙飛行士の眼疾患診断用小型OCT(光干渉断層計)※に関する開発受託契約を締結し、2020年2月にフェーズ1の開発が終了し、2ヶ月以内に開発レポートを提出する予定となっている。
※OCT(Optical Coherence Tomography)は赤外線を利用して網膜の断面を精密に撮影する検査機器のことで、緑内障や加齢黄斑変性症等の網膜疾患患者の診断用として使用される。
1. 開発パイプラインの進捗状況
主要開発パイプラインのうち、最も早く商用化が見込まれる「PBOS」については、今回開発戦略を変更したことを発表した。当初は2020年内の米国での販売開始に向け、510(k)申請※を行う予定であったが、製薬企業またはデバイスメーカーとの販売パートナー契約の締結を優先することとした。現在、複数社と交渉を進めているが、相手先によってPBOSに求める機能や性能が異なるためだ。2020年中にパートナーを確定した上で量産型試作機を仕上げ、510(k)申請を目指すことになる。販売パートナー先が決定すれば、収益化への道筋が従来よりも明確に見えてくるため、その動向が注目される。
※510(k)申請:市販前届出制度。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることを確認できるデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。
一方、スターガルト病※を適応症とする「エミクススタト塩酸塩」の第3相臨床試験(被験者数約160名)については、2018年11月より欧米を中心に約11ヶ国で進められており、2020年1月末までに108名の登録が完了し、2020年内にすべての症例登録を終える見通しだ。観察期間は2年となるため、順調に進めば2023年にも販売承認される可能性がある。スターガルト病治療薬はまだなく、市場規模は2027年に1,600億円規模になるという予測もあり、今後の進捗が期待される。一方、網膜色素変性を対象とした遺伝子治療薬候補品については、導入ウイルスベクターの最適化に向けた開発を進めている。従来は2021年の非臨床試験入りを目指していたが、現時点では開発資金の効率を考えて優先順位がやや下がった状況となっている。
※スターガルト病:遺伝性の若年性黄斑変性で、症状の進行とともに視力の低下や色覚障害を引き起こし、有効な治療法がいまだ確立されていない稀少疾患。患者数は欧米、日本で合計約15万人弱と少ない。
なお、NASAから開発受託した宇宙飛行士向けの超小型眼科診断装置「Swept Source-OCT(以下、SS-OCT)」プロジェクトについては、2020年2月に第1フェーズが完了し、今後、第2フェーズに移行するものと予想される。同社では2022年-2023年頃の製品化を目指して開発を進めていく考えだ。
2. 業績動向
2019年12月期の連結業績は、事業収益の計上がなく、営業損失で3,321百万円(前期は3,273百万円の損失)となった。人件費を中心に一般管理費が前期比242百万円減少したが、スターガルト病の臨床試験費用や「PBOS」の開発費用等を中心に研究開発費が同290百万円増加した。2020年12月期はNASAプロジェクトの開発受託金40百万円を事業収益として計上し、営業損失は研究開発費の削減により2,500百万円と前期から縮小する計画となっている。
■Key Points
・眼科領域に特化して革新的な医薬品・医療デバイスの開発を目指す米国発のベンチャー企業
・スターガルト病を対象とした第3相臨床試験は順調に進捗、PBOSは販売パートナー契約の締結を優先して進める方向に見直し
・2020年12月期は研究開発費の大幅削減により損失額が縮小する見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>