窪田製薬HD Research Memo(4):スターガルト病を対象とした第3相臨床試験は順調に進捗
[20/03/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■主要開発パイプラインの概要と進捗状況
1. 開発パイプラインの進捗状況について
窪田製薬ホールディングス<4596>が現在進めている開発パイプラインは、医薬品でエミクススタト塩酸塩(適応症:スターガルト病、増殖糖尿病網膜症)、ヒトロドプシン※を用いた遺伝子治療(適応症:網膜色素変性)があり、また、医療デバイスでは遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS」がある。また、有人宇宙探査に携行可能な超小型眼科診断装置SS-OCTの開発をNASAと共同で進めており、2019年12月期までの進捗と今後の開発方針は以下のとおりとなっている。
※ヒトの網膜の杆体細胞を構成するタンパク質の一種で、光受容体(光信号を電気信号に変えて脳に伝達する)の機能を果たす。
(1) エミクススタト塩酸塩(スターガルト病)
エミクススタト塩酸塩のうち、スターガルト病を適応症とした開発は第3相臨床試験(2018年11月開始、目標被験者登録数162例)が世界11ヶ国、30ヶ所の医療施設で進んでおり、2020年1月までに108名の被験者登録が完了している。被験者の登録状況については各医療施設の稼働が遅れたことや、稀少疾患で対象患者数が少ないこともあり、初期段階ではスローペースだったが、直近では登録ペースも順調に進んでおり、2020年内の登録完了が視野に入ってきている。2年間の観察期間があるため、第3相臨床試験の終了は早くても2022年後半になるものと予想される。
まだ、スターガルト病治療薬で承認された医薬品はなく、アンメット・メディカルニーズの高い分野であり、2027年には世界市場規模で約1,600億円になるとの調査会社の予測※1もある。2019年6月には欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)からオーファンドラッグ指定※2を受けたことを発表している。
※1 出典:WISEGUY RESEARCH CONSULTANTS PVT LTD.(インド)
※2 欧州では、生命を脅かすような疾患や重篤で慢性的な衰弱状態の疾患で、1万人当たり5人未満の発症率である疾患の診断や治療のための医薬品が指定対象となり、上市後10年間の市場独占販売権、医薬品の製造販売承認申請費用の減額、優先承認審査等のインセンティブを受けられることになる。なお、米国でも2017年1月にオーファンドラッグ指定(上市後7年間の独占販売権)を受けている。
(2) エミクススタト塩酸塩(増殖糖尿病網膜症)
増殖糖尿病網膜症を適応症とした開発については、2018年1月に第2相臨床試験を完了し、主要評価項目は達成しなかったものの、網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーであるVEGF(血管内皮増殖因子)濃度の軽度改善が確認されている。また、米国の視覚と眼科学研究協会(ARVO)が発行する学術雑誌「Investigative Ophthalmology & Visual Sciense(IOVS)」において、マウスモデルでエミクススタト塩酸塩が低照度環境下における網膜内の過剰なエネルギー消費を抑制し、さらに網膜の酸素需要も減らせることを立証したこと、また、同研究結果から網膜の酸素不足を大きな要因として発症すると考えられている糖尿病網膜症のような虚血性網膜疾患に対してエミクススタト塩酸塩の効果が期待できる、との論文が掲載されたことを2019年12月に発表している。同疾患に関しては今後、これらエビデンスをもとに共同開発パートナーの探索を進めていく方針となっている。
(3) 遺伝子治療(網膜色素変性)
網膜色素変性を適応症としたヒトロドプシンを用いた遺伝子治療については、2018年1月にSIRION(ドイツ)とアデノ随伴ウイルスベクター※1確立のための共同開発契約を締結し、同年11月よりプロモーター※2、カプシド※3、導入遺伝子(ヒトロドプシン)の最適化プロセス確立に向けた取り組みを開始している。現在、遺伝子の導入効率や発現量の向上に向けてウイルスベクターの改良研究を重ねている段階にある。今後の開発スケジュールに関して、従来は2021年-2022年の非臨床試験開始と量産化技術確立、2022年のIND(臨床試験用の新医薬品)申請を目標としていたが、今回、具体的なスケジュール目標については非公表とした。研究開発は進めているものの、開発資金の効率的な運用が求められるなかで、他のパイプラインに優先的に資金を振り向ける方針としたためだ。
※1 治療する細胞に治療遺伝子を導入するために利用されるウイルス。
※2 ゲノムから遺伝子の転写が行われるときの、転写開始部分として機能している領域のことを指す。
※3 ウイルスゲノムを取り囲むタンパク質の殻のことを指し、ウイルスゲノムを核酸分解酵素などから保護し、細胞のレセプター(受容体)への吸着に関与している。カプシドはウイルスが細胞に侵入後、細胞またはウイルス自身の酵素によって取り除かれる。
(4) PBOS
米国で開発を進めている「PBOS」については、2018年後半に臨床試験を終了し、量産型試作機の完成を待って510(k)申請を2020年前半に行い、年内の商品化を目指していたが、今回、事業戦略を見直し販売パートナーとの契約締結後に510(k)申請を行う方針とした。試作品がほぼ出来上がったことで、関心を持つ製薬企業やデバイスメーカーと具体的な交渉が進むようになり、そうしたなかで「PBOS」に対して求める機能や性能が相手先企業によって異なることがわかったためだ。このため、まずはパートナー先を決定し、その後に量産型試作機を仕上げて510(k)申請を行うことにした。同社としては2020年内に相手先を決定したい考えで、そうなれば2021年にも商品化できるものと弊社では予想している。
なお、保険収載の適用を受けるためには臨床試験を実施する必要があるため、販売後に状況を見ながら臨床試験を行う予定にしている。臨床試験のデザインとしては、PBOS利用患者と未使用患者(過去データ援用の可能性もあり)で症状の悪化度合いを比較する内容になる可能性が高く、期間として1〜2年程度かかるものと予想される。
(5) 宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置SS-OCT
2019年3月に発表したNASAとの開発受託契約では、宇宙飛行で発症する眼疾患に関する研究を行うための超小型眼科診断装置SS-OCTの開発を進めている。2020年1月にNASAに対してプロトタイプによるデモを行い、良好な評価を受けている。2月末で第1フェーズの開発を終了しており、今後2ヶ月間で開発レポートをNASA・TRISHに提出、順調に進めば第2フェーズに入る可能性が高い。ただ、国家予算のなかでヘルスケア関連の予算削減の動きがあり、その状況次第では第2フェーズの開始時期が遅れる可能性もある。開発プロジェクトは第3フェーズまであり、最終的には2022年-2023年頃の完成を目指している。なお、第1フェーズの開発受託収入40百万円は2020年12月期の事業収益として計上される予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 開発パイプラインの進捗状況について
窪田製薬ホールディングス<4596>が現在進めている開発パイプラインは、医薬品でエミクススタト塩酸塩(適応症:スターガルト病、増殖糖尿病網膜症)、ヒトロドプシン※を用いた遺伝子治療(適応症:網膜色素変性)があり、また、医療デバイスでは遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS」がある。また、有人宇宙探査に携行可能な超小型眼科診断装置SS-OCTの開発をNASAと共同で進めており、2019年12月期までの進捗と今後の開発方針は以下のとおりとなっている。
※ヒトの網膜の杆体細胞を構成するタンパク質の一種で、光受容体(光信号を電気信号に変えて脳に伝達する)の機能を果たす。
(1) エミクススタト塩酸塩(スターガルト病)
エミクススタト塩酸塩のうち、スターガルト病を適応症とした開発は第3相臨床試験(2018年11月開始、目標被験者登録数162例)が世界11ヶ国、30ヶ所の医療施設で進んでおり、2020年1月までに108名の被験者登録が完了している。被験者の登録状況については各医療施設の稼働が遅れたことや、稀少疾患で対象患者数が少ないこともあり、初期段階ではスローペースだったが、直近では登録ペースも順調に進んでおり、2020年内の登録完了が視野に入ってきている。2年間の観察期間があるため、第3相臨床試験の終了は早くても2022年後半になるものと予想される。
まだ、スターガルト病治療薬で承認された医薬品はなく、アンメット・メディカルニーズの高い分野であり、2027年には世界市場規模で約1,600億円になるとの調査会社の予測※1もある。2019年6月には欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)からオーファンドラッグ指定※2を受けたことを発表している。
※1 出典:WISEGUY RESEARCH CONSULTANTS PVT LTD.(インド)
※2 欧州では、生命を脅かすような疾患や重篤で慢性的な衰弱状態の疾患で、1万人当たり5人未満の発症率である疾患の診断や治療のための医薬品が指定対象となり、上市後10年間の市場独占販売権、医薬品の製造販売承認申請費用の減額、優先承認審査等のインセンティブを受けられることになる。なお、米国でも2017年1月にオーファンドラッグ指定(上市後7年間の独占販売権)を受けている。
(2) エミクススタト塩酸塩(増殖糖尿病網膜症)
増殖糖尿病網膜症を適応症とした開発については、2018年1月に第2相臨床試験を完了し、主要評価項目は達成しなかったものの、網膜症の発症や悪化に関連するバイオマーカーであるVEGF(血管内皮増殖因子)濃度の軽度改善が確認されている。また、米国の視覚と眼科学研究協会(ARVO)が発行する学術雑誌「Investigative Ophthalmology & Visual Sciense(IOVS)」において、マウスモデルでエミクススタト塩酸塩が低照度環境下における網膜内の過剰なエネルギー消費を抑制し、さらに網膜の酸素需要も減らせることを立証したこと、また、同研究結果から網膜の酸素不足を大きな要因として発症すると考えられている糖尿病網膜症のような虚血性網膜疾患に対してエミクススタト塩酸塩の効果が期待できる、との論文が掲載されたことを2019年12月に発表している。同疾患に関しては今後、これらエビデンスをもとに共同開発パートナーの探索を進めていく方針となっている。
(3) 遺伝子治療(網膜色素変性)
網膜色素変性を適応症としたヒトロドプシンを用いた遺伝子治療については、2018年1月にSIRION(ドイツ)とアデノ随伴ウイルスベクター※1確立のための共同開発契約を締結し、同年11月よりプロモーター※2、カプシド※3、導入遺伝子(ヒトロドプシン)の最適化プロセス確立に向けた取り組みを開始している。現在、遺伝子の導入効率や発現量の向上に向けてウイルスベクターの改良研究を重ねている段階にある。今後の開発スケジュールに関して、従来は2021年-2022年の非臨床試験開始と量産化技術確立、2022年のIND(臨床試験用の新医薬品)申請を目標としていたが、今回、具体的なスケジュール目標については非公表とした。研究開発は進めているものの、開発資金の効率的な運用が求められるなかで、他のパイプラインに優先的に資金を振り向ける方針としたためだ。
※1 治療する細胞に治療遺伝子を導入するために利用されるウイルス。
※2 ゲノムから遺伝子の転写が行われるときの、転写開始部分として機能している領域のことを指す。
※3 ウイルスゲノムを取り囲むタンパク質の殻のことを指し、ウイルスゲノムを核酸分解酵素などから保護し、細胞のレセプター(受容体)への吸着に関与している。カプシドはウイルスが細胞に侵入後、細胞またはウイルス自身の酵素によって取り除かれる。
(4) PBOS
米国で開発を進めている「PBOS」については、2018年後半に臨床試験を終了し、量産型試作機の完成を待って510(k)申請を2020年前半に行い、年内の商品化を目指していたが、今回、事業戦略を見直し販売パートナーとの契約締結後に510(k)申請を行う方針とした。試作品がほぼ出来上がったことで、関心を持つ製薬企業やデバイスメーカーと具体的な交渉が進むようになり、そうしたなかで「PBOS」に対して求める機能や性能が相手先企業によって異なることがわかったためだ。このため、まずはパートナー先を決定し、その後に量産型試作機を仕上げて510(k)申請を行うことにした。同社としては2020年内に相手先を決定したい考えで、そうなれば2021年にも商品化できるものと弊社では予想している。
なお、保険収載の適用を受けるためには臨床試験を実施する必要があるため、販売後に状況を見ながら臨床試験を行う予定にしている。臨床試験のデザインとしては、PBOS利用患者と未使用患者(過去データ援用の可能性もあり)で症状の悪化度合いを比較する内容になる可能性が高く、期間として1〜2年程度かかるものと予想される。
(5) 宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置SS-OCT
2019年3月に発表したNASAとの開発受託契約では、宇宙飛行で発症する眼疾患に関する研究を行うための超小型眼科診断装置SS-OCTの開発を進めている。2020年1月にNASAに対してプロトタイプによるデモを行い、良好な評価を受けている。2月末で第1フェーズの開発を終了しており、今後2ヶ月間で開発レポートをNASA・TRISHに提出、順調に進めば第2フェーズに入る可能性が高い。ただ、国家予算のなかでヘルスケア関連の予算削減の動きがあり、その状況次第では第2フェーズの開始時期が遅れる可能性もある。開発プロジェクトは第3フェーズまであり、最終的には2022年-2023年頃の完成を目指している。なお、第1フェーズの開発受託収入40百万円は2020年12月期の事業収益として計上される予定となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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