リソー教育 Research Memo(4):少子化を追い風にして第2次ゴールデン成長期に入る
[20/06/08]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
3. 特長・強み
リソー教育<4714>は様々な特長や強みを有しているが、弊社では特に以下の2つが重要だと考えている。すなわち、1)長期的にほぼ一貫して業績が拡大基調を歩んでいることと、2)高い利益率を実現していること、の2つだ。これら2つの特長は、同社が構築してきた優位性のある事業モデルに起因するものと考えており、これらを理解することで同社の中長期的な成長シナリオに対する理解度や確信度が高まるものと考えている。
同社の売上高は創業初年度となる1986年6月期で163百万円を計上し、2013年2月期まで増収を継続してきた(2006年2月期は決算期変更によって8ヶ月の変則決算のため減収となったが、12ヶ月換算すると実質的に増収を達成)。その後、不適切な会計処理の問題発覚とその対応に追われたことで、2016年2月期まで業績の停滞が続いたが、2017年2月期に4期ぶりに過去最高売上高を更新して以降は再び増収基調をたどっており、同社では2017年2月期以降を「第2次ゴールデン成長期」と位置付けている。
重要なことは、少子化の進行により学習塾・予備校市場が頭打ちとなるなかで、参入企業が増加し生徒獲得競争が激化するなど、業界全体としては決して良い環境とは言えないなかで、「TOMAS」や「名門会」「伸芽会」と主要事業においていずれも生徒数を伸ばし、成長を続けてきたことにある。
一方、同社の利益率について、売上総利益率、販管費率及び営業利益率を見ると、直近期の2020年2月期の売上高営業利益率は10.2%と2ケタ台をキープしている。同社自身は現在の10%前後という営業利益率には決して満足しておらず、営業利益率で15%を当面の目標に掲げて全力で取り組んでいる最中にある。学習塾・予備校業界を俯瞰した場合、営業利益率10%の水準は平均よりも上位に位置する。上場する同業他社の中には同社よりも高い営業利益率を実現している企業も複数あるが、それらは集団指導を中核の事業モデルとしているかFC事業展開によりロイヤルティ収入を獲得している企業となる。同社のように直営教室だけで個別指導をメインとするか、集団と個別とを半々で展開するような業態で、2ケタの営業利益率を実現できている同業他社は極めて少ない。
2020年2月期までは新規教室の開設や新規事業の立ち上げなど先行投資を実施していることも考慮すれば、営業利益率で15%の水準も十分達成可能と弊社では考えている。その先の将来においては更なる利益率の上昇もねらえるが、一方でコンプライアンスなども重視され、かつて(たとえば上場以前の営業利益率20%超を誇っていた時代)とは内部管理体制にかかるコストも一定水準必要となる。このため、同社が目指す営業利益率15%という目標設定は妥当な水準と言えるだろう。
同社が持つ安定した売上成長と高い収益性という2つの特長は、同じところに起因するというのが弊社の理解だ。現取締役会長の岩佐氏は創業にあたり中国の一人っ子政策から2つの大きなヒントを得た。それは一人っ子政策による少子化の進行と、少子化の結果として子ども1人当たりに投下される教育費が増大するということの2点だ。このヒントをもとにして、少子化を当初から想定して事業モデルを構築してきたことが、現在までの成長につながっており、また子ども1人当たりの教育費が増大する点を看破したことで、少子化を逆風ではなく追い風に変えることに成功している。
少子化を追い風にするための重要なポイントが、1)1対1の完全個別指導による高品質な教育サービスの提供と、2)その目的(ゴール)を進学指導に置いたこと、の2点にある。この2つは現在の「TOMAS」をはじめとする各業態に共通した要素でもある。1)と2)の2つを組み合わせた個別指導を本格的に展開しているところは現状ではほかに見当たらない。現在の個別指導市場における一般的なモデルは、1対少数(2〜3名)の“凖”個別指導で、学校の授業の補習目的というものが多い。他社が同社のモデルを採用しない大きな理由は明確で、一言で言えば事業リスクが高いためだ。完全個別指導を行おうとすれば料金は高くせざるを得ないが、“授業の補習”ではその高い料金を正当化することはできない。高い授業料を正当化するものは唯一、進学実績だけという厳しい現実がある。このため、同社と同様の事業モデルで新規参入する企業はほとんどなく、個別指導の進学学習塾として高いブランド力を確立している要因となっている。
同社は、質の高い個別指導の提供を設立目的としながらも創業当初は「1クラス6名の学力別クラス編成」という集団指導からスタートし、岩佐氏が思い描いていた完全個別指導を提供したのは創業5年後の1990年だった。その間は同社内でも意見・方針の対立もあったと推察されるが、最終的に完全個別指導が実現したのは、「学習塾産業はサービス業である」という意識の導入とその徹底にある。その意識の下、高い顧客満足度を提供することに心を砕いてきた。学習塾・予備校業界における高い顧客満足度とは志望校への合格にほかならない。同社は創業以来、現在に至るまでサービス業という意識が一貫して保持されており、サービス事業者の使命として進学実績の追求を最大の経営目標としている。この“進学実績追求型”の事業モデルこそが同社の強みの源泉であり、冒頭の安定増収と高利益率の2つの特長につながっている。
同社がサービス産業という意識を高く持って経営していることを表す1つの事例が、同社の正社員はマネジメントに徹するというスタイルだ。前述したとおり、「TOMAS」では同社の講師陣は学生や社会人のアルバイトであり、各教室に在籍する正社員はそうした講師陣と児童・生徒、及びその保護者との調整役に徹している。具体的には、1)生徒・保護者の本音の目的・目標(ゴール)を引き出し、2)それを担当講師としっかり共有したうえでカリキュラムを作成し、3)授業開始後は進捗状況やその後の指導方針等について保護者に対して説明責任を果たす、という作業だ。この一連のサイクルを繰り返して行うことで、高い顧客満足度を維持しつつ、最終的に志望校合格という最大の顧客満足へとつなげている。
同社の安定成長・高利益率という状況が将来的に持続可能かという点については投資のタイムホライズンをどう設定するかにもよるが、5年から10年という時間軸の中では持続する可能性は十分高いと弊社では考えている。まず、同社の展開する事業モデル(高価格・高品質のサービス)に対する需要は常に一定数存在することが挙げられる。次に、その市場への他社の参入がポイントになるが、この点は前述のように他社の参入で過当競争に陥るリスクは小さいと見ている。同社が創業から長年構築してきた事業モデルを後追い・再現するには、事業リスクが高いためだ。同社の進学実績追求型事業モデルに対する参入障壁の高さは同社の3つ目の特長と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 特長・強み
リソー教育<4714>は様々な特長や強みを有しているが、弊社では特に以下の2つが重要だと考えている。すなわち、1)長期的にほぼ一貫して業績が拡大基調を歩んでいることと、2)高い利益率を実現していること、の2つだ。これら2つの特長は、同社が構築してきた優位性のある事業モデルに起因するものと考えており、これらを理解することで同社の中長期的な成長シナリオに対する理解度や確信度が高まるものと考えている。
同社の売上高は創業初年度となる1986年6月期で163百万円を計上し、2013年2月期まで増収を継続してきた(2006年2月期は決算期変更によって8ヶ月の変則決算のため減収となったが、12ヶ月換算すると実質的に増収を達成)。その後、不適切な会計処理の問題発覚とその対応に追われたことで、2016年2月期まで業績の停滞が続いたが、2017年2月期に4期ぶりに過去最高売上高を更新して以降は再び増収基調をたどっており、同社では2017年2月期以降を「第2次ゴールデン成長期」と位置付けている。
重要なことは、少子化の進行により学習塾・予備校市場が頭打ちとなるなかで、参入企業が増加し生徒獲得競争が激化するなど、業界全体としては決して良い環境とは言えないなかで、「TOMAS」や「名門会」「伸芽会」と主要事業においていずれも生徒数を伸ばし、成長を続けてきたことにある。
一方、同社の利益率について、売上総利益率、販管費率及び営業利益率を見ると、直近期の2020年2月期の売上高営業利益率は10.2%と2ケタ台をキープしている。同社自身は現在の10%前後という営業利益率には決して満足しておらず、営業利益率で15%を当面の目標に掲げて全力で取り組んでいる最中にある。学習塾・予備校業界を俯瞰した場合、営業利益率10%の水準は平均よりも上位に位置する。上場する同業他社の中には同社よりも高い営業利益率を実現している企業も複数あるが、それらは集団指導を中核の事業モデルとしているかFC事業展開によりロイヤルティ収入を獲得している企業となる。同社のように直営教室だけで個別指導をメインとするか、集団と個別とを半々で展開するような業態で、2ケタの営業利益率を実現できている同業他社は極めて少ない。
2020年2月期までは新規教室の開設や新規事業の立ち上げなど先行投資を実施していることも考慮すれば、営業利益率で15%の水準も十分達成可能と弊社では考えている。その先の将来においては更なる利益率の上昇もねらえるが、一方でコンプライアンスなども重視され、かつて(たとえば上場以前の営業利益率20%超を誇っていた時代)とは内部管理体制にかかるコストも一定水準必要となる。このため、同社が目指す営業利益率15%という目標設定は妥当な水準と言えるだろう。
同社が持つ安定した売上成長と高い収益性という2つの特長は、同じところに起因するというのが弊社の理解だ。現取締役会長の岩佐氏は創業にあたり中国の一人っ子政策から2つの大きなヒントを得た。それは一人っ子政策による少子化の進行と、少子化の結果として子ども1人当たりに投下される教育費が増大するということの2点だ。このヒントをもとにして、少子化を当初から想定して事業モデルを構築してきたことが、現在までの成長につながっており、また子ども1人当たりの教育費が増大する点を看破したことで、少子化を逆風ではなく追い風に変えることに成功している。
少子化を追い風にするための重要なポイントが、1)1対1の完全個別指導による高品質な教育サービスの提供と、2)その目的(ゴール)を進学指導に置いたこと、の2点にある。この2つは現在の「TOMAS」をはじめとする各業態に共通した要素でもある。1)と2)の2つを組み合わせた個別指導を本格的に展開しているところは現状ではほかに見当たらない。現在の個別指導市場における一般的なモデルは、1対少数(2〜3名)の“凖”個別指導で、学校の授業の補習目的というものが多い。他社が同社のモデルを採用しない大きな理由は明確で、一言で言えば事業リスクが高いためだ。完全個別指導を行おうとすれば料金は高くせざるを得ないが、“授業の補習”ではその高い料金を正当化することはできない。高い授業料を正当化するものは唯一、進学実績だけという厳しい現実がある。このため、同社と同様の事業モデルで新規参入する企業はほとんどなく、個別指導の進学学習塾として高いブランド力を確立している要因となっている。
同社は、質の高い個別指導の提供を設立目的としながらも創業当初は「1クラス6名の学力別クラス編成」という集団指導からスタートし、岩佐氏が思い描いていた完全個別指導を提供したのは創業5年後の1990年だった。その間は同社内でも意見・方針の対立もあったと推察されるが、最終的に完全個別指導が実現したのは、「学習塾産業はサービス業である」という意識の導入とその徹底にある。その意識の下、高い顧客満足度を提供することに心を砕いてきた。学習塾・予備校業界における高い顧客満足度とは志望校への合格にほかならない。同社は創業以来、現在に至るまでサービス業という意識が一貫して保持されており、サービス事業者の使命として進学実績の追求を最大の経営目標としている。この“進学実績追求型”の事業モデルこそが同社の強みの源泉であり、冒頭の安定増収と高利益率の2つの特長につながっている。
同社がサービス産業という意識を高く持って経営していることを表す1つの事例が、同社の正社員はマネジメントに徹するというスタイルだ。前述したとおり、「TOMAS」では同社の講師陣は学生や社会人のアルバイトであり、各教室に在籍する正社員はそうした講師陣と児童・生徒、及びその保護者との調整役に徹している。具体的には、1)生徒・保護者の本音の目的・目標(ゴール)を引き出し、2)それを担当講師としっかり共有したうえでカリキュラムを作成し、3)授業開始後は進捗状況やその後の指導方針等について保護者に対して説明責任を果たす、という作業だ。この一連のサイクルを繰り返して行うことで、高い顧客満足度を維持しつつ、最終的に志望校合格という最大の顧客満足へとつなげている。
同社の安定成長・高利益率という状況が将来的に持続可能かという点については投資のタイムホライズンをどう設定するかにもよるが、5年から10年という時間軸の中では持続する可能性は十分高いと弊社では考えている。まず、同社の展開する事業モデル(高価格・高品質のサービス)に対する需要は常に一定数存在することが挙げられる。次に、その市場への他社の参入がポイントになるが、この点は前述のように他社の参入で過当競争に陥るリスクは小さいと見ている。同社が創業から長年構築してきた事業モデルを後追い・再現するには、事業リスクが高いためだ。同社の進学実績追求型事業モデルに対する参入障壁の高さは同社の3つ目の特長と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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