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アジア投資 Research Memo(6):注力する「戦略投資」は順調に拡大。「物流施設」等へのプロジェクト投資も開始

注目トピックス 日本株
■日本アジア投資<8518>の活動実績

1. PE投資
(1) ファンド運用残高(ファンド新設の進捗)
同社グループが管理運営等を行っているファンドの運用残高は11件で17,390百万円(前期末は10件で16,494百万円)と増加した。ただ、稼働済みメガソーラープロジェクトを投資対象とするファンド設立※によるものであり、組成を計画していた2つのPEファンド(海外進出支援及び対日直接投資支援を目的としたもの)については設立に至っていない。もっとも、地域の中堅中小企業の海外進出を支援するファンドについては、地域金融機関向けに募集活動を開始しており、まもなく実現する見通しである。

※JAICソーラー2号投資事業有限責任組合(ファンド総額1,359百万円)。同社のメガソーラープロジェクトの売却先(7件中の6件)となっている。


(2) 投資実績(戦略投資の実行、及び既存資産の流動化の進捗)
一方、同社グループの自己勘定及び同社グループが管理運営等を行っているファンドからの投資実行額については12社に対して合計1,224百万円(前期は4件136百万円)を行った。そのうち、プロジェクト投資のパートナー企業への戦略投資は5件※となっており、中期経営計画の目標(戦略投資残高10億円)を前倒しで達成することができた。その一方で、中期経営計画に従い、国内上場株式の売却や海外未上場株式の売却(流動化)を進めたことにより、2020年3月末の投資残高は98社で8,405百万円(前期末は108社で8,437百万円)と若干減少した。

※スマートソーラー(株)(メガソーラー関連)、KICホールディングス(株)(ディストリビューションセンター関連)、MD−Farm(株)(イチゴの閉鎖型植物工場プラント関連)、ソーシャルインクルー(株)(障がい者向けグループホーム関連)、(株)森久エンジニアリング(植物工場関連)


(3) IPOの実績
2020年3月期におけるIPO実績は国内3件、米国(NASDAQ)1件となった。2019年8月9日にステムリム<4599>※1、9月12日にピー・ビーシステムズ<4447>※2、11月1日にファンドゥ−ドゥー・ネットワーク・グループ(Fangdd Network Group)※3、2020年3月13日にリグア<7090>※4が上場している。

※1 生体内に存在する幹細胞を活性化し、損傷組織の再生を誘導する医薬品・医療機器及び遺伝子治療等製品の研究、開発、製造、販売を行う。
※2 企業の基幹システムをクラウド化する「セキュアクラウドシステム事業」、VRシアター4D王の製造販売を行う「エモーショナルシステム事業」を展開。
※3 中国最大の不動産仲介サイト「房多多」を運営。
※4 接骨院などの経営支援を行う接骨院ソリューション事業、保険代理店や金融商品仲介業を行う金融サービス事業。


(4) アジアネットワークの強化
中国西安市ハイテク産業開発区※1(2019年9月)、煙台市投資促進センター※2(2019年12月)、武漢市商務局※3(2019年12月)と協力協定を締結。今後も、中国の主要な市政府との提携を拡大する方針である。また、タイでは現地のベンチャーキャピタル、証券会社と協力協定を締結し、M&A事業の立ち上げや投資先企業の支援に活用していく考えだ。

※1 1991年3月に中国国務院の承認により設立された、産業技術の発展を目的とした行政区。
※2 中国煙台市人民政府により設立された、企業や投資の誘致を行う専門機関。
※3 中国武漢市人民政府内の経済担当部門。


2. プロジェクト投資
(1) 投資実績
既存プロジェクトへの追加投資を含め、10件に対して合計2,150百万円(前期は12件に対して合計3,612百万円)の投資を実行した。そのうち、メガソーラープロジェクトへの投資実行は4件(新規3件、既存1件)となっている。その結果、2020年3月末の管理運営するメガソーラープロジェクトは建設・企画中のものを含めて合計25件(97.5MW)※1となっている。また、2020年3月末に保有しているメガソーラープロジェクト以外の再生可能エネルギープロジェクトは、木質バイオマス1件(売電中)、バイオガス2件(売電中1件、建設中1件)、風力1件(企画中)の合計4件(最大28.83MW)が進行中である。なお、バイオガスのうち1件は、廃棄物の中間処理時に発生するバイオガスを原料としており、その中間処理施設のオペレーターに対しても投資を実行した(既存1件)。加えて、新規事業テーマである「スマートアグリ」については、植物工場(1号)への操業資金を追加投資するとともに、「ヘルスケア」では、高齢者向け施設(1件)や障がい者向けグループホーム(3件)の建設プロジェクトへ新規投資している。さらには、新たな投資分野として、国内の物流施設の建設プロジェクトや商業ビルの運営プロジェクトにも参入した。それらの結果、2020年3月末の管理運営するプロジェクトの合計は32件で6,696百万円※2(前期末は26件で5,514百万円)となっている。注目すべきは、FITの低下に伴い投資機会に時限性のあるメガソーラーに代わるプロジェクト投資の領域をいかに開拓していくのかにあるが、これまでの長期保有目的としたプロジェクトに代わり、開発型のような短・中期のプロジェクトが増えてきたところは、戦略的な意図(詳細は後述)が示されていると言えよう。

※1 そのうち、6件(14.2MW)についてはJAICソーラー2号投資事業有限責任組合から投資しているプロジェクトである。
※2 ただし、JAICソーラー2号投資事業有限責任組合から投資しているプロジェクト(6件)を除くと、同社が保有するプロジェクト(B/S計上分)は合計26件で5,337百万円となっていることに注意が必要である(中期経営計画の進捗の箇所で再度説明)。


(2) 植物工場の状況
2019年3月に操業をスタートした植物工場(兵庫県丹波篠山市)第1号案件※については、大手外食チェーンを販売先として確保し順調に稼働中である。ただ、2020年3月末までにフル稼働させ、単月黒字化を目指していたものの実現しておらず、2021年3月末までの単月黒字化に軌道修正した。工場野菜への需要の高さや他の工場野菜との差別化(食感の良さや安全性の高さ)には手応えを感じているものの、大口受注の見立て違いなどにより販路開拓に遅れが生じたことが理由である。現在は、物流の効率性も考慮に入れ、西日本を中心に分散して販路を開拓しているようだ。また、2号工場への投資については、1号工場の黒字化の目途をつけた後に行う計画である。

※リーフレタスや結球レタスなどを栽培。フル稼働での年間生産量は約200t、年商は約2億円を見込んでいる。


(3) 新たなプロジェクトへの取り組み
「ヘルスケア」分野では、パートナー企業のソーシャルインクルーと障がい者向けグループホーム※1の建設プロジェクト(3件)※2を開始したほか、新たな投資分野として、EC拡大に伴って需要が増えているディストリビューションセンター(物流施設)の建設プロジェクト(2件)※3についても、パートナー企業のKICホールディングスと開発を進めている。特に、後者については、プロジェクトの初期段階に投資する開発型プロジェクトであり、比較的短期間での売却で高いリターンを目指すところに特徴がある。今後も、パートナー企業の有する情報力や知見(地権者との調整や開発ノウハウなど)を活用しながら、投資家ニーズの強い対象物件を中心に開発型プロジェクトを積み上げていく方針である。

※1 障がい者向けグループホームでは、10名から20名程度の身体・知的・精神障がい者が、24時間常駐の世話人の支援を受けながら共同生活をする。従来の障がい者向け入所施設に比べ小規模なため、入居者ひとりひとりのニーズに沿った支援が可能となる。また、入居の効果として、孤立の防止、生活への不安の軽減、共同生活による身体・精神状態の安定などが期待される。
※2 静岡県浜松市(営業開始予定2020年7月)、栃木県宇都宮市、広島県広島市(営業開始予定2020年8月)でのプロジェクトを開始。
※3 埼玉県越谷市(竣工予定2021年9月)、神奈川県厚木市(竣工予定2022年2月)でのプロジェクト。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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