澁澤倉庫 Research Memo(7):2020年3月期は増収増益を達成
[20/06/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年3月期の業績動向
澁澤倉庫<9304>の2020年3月期業績は、売上高66,831百万円(前期比3.4%増)、営業利益3,906百万円(同4.5%増)、経常利益4,174百万円(同4.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,816百万円(同24.0%増)となった。期初計画と比べて、売上高で169百万円、営業利益で94百万円の未達、経常利益で74百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で316百万円の過達となった。国内経済は、雇用環境の改善が持続し、緩やかな回復基調を示してきたが、米中貿易摩擦及び中国経済の鈍化、消費増税後の消費鈍化、第4四半期以降は新型コロナウイルス感染症の拡大により世界規模で大きな影響を受けた。このため、国内の物流業界は輸出が弱含んで推移、第4四半期以降は国内景気も鈍化が懸念される状況となった。一方、不動産業界では都市部におけるオフィスビルの空室率は低い水準を維持し、賃料相場はわずかながら上昇傾向で推移した。
このような事業環境のもと、同社は、中期経営計画「Step Up 2019」に掲げた事業戦略を積極的に推進し、物流事業で、国内外で新規営業活動を展開し、物流一括受託業務や高付加価値業務の拡販、R&D施設を備えた複合物流施設の竣工及び新拠点の稼働など、事業基盤の強化に取り組んだ。また、不動産事業では、既存施設の保守や改良工事を計画的に実施し、現有資産の付加価値向上や安定収益基盤の維持に努めた。
同社は加えて消費税増税時に、顧客の在庫ニーズに短期賃貸で機動的に対応するなど、消費財を中心に国内での貨物の取扱いを大きく伸ばすことができた。このため、国際輸送業務で新型コロナウイルスにより輸出が減少、その他の物流業務で内航船事業が縮小するなどマイナス面もあったが、倉庫業務、陸上運送業務、港湾運送業務が伸長、業務効率化や固定費率の低下につながり、実際に運送を担っている子会社も同社同様に収益が拡大した。不動産事業も堅調に推移した。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が2ケタ増益となったが、理由は、前期に発生した拠点再開発に伴う建物解体費用や災害による損失計上が解消したことによる。また、期初計画比で営業利益が未達となったのは、新型コロナウイルスの発生で、主に第4四半期の国際輸送業務や港湾輸送業務、輸出入が圧迫されたためで、第3四半期までは予算に沿って推移した。
物流事業は好調、不動産事業は堅調に推移
2. 2020年3月期のセグメント別動向
物流事業全体の営業収益は61,065百万円(前期比3.8%増)、営業利益は2,809百万円(同5.6%増)、不動産事業の営業収益は5,879百万円(同横ばい)、営業利益は3,033百万円(同0.6%減)となった。物流事業の営業収益は増加、消費税増税前後の短期的な在庫積み増しニーズに対応したことで採算が向上、作業費や倉庫賃借費用などの増加を吸収した。不動産事業は、賃料改定により一部施設の賃貸収入が増加したが、取扱い減によるビル管理業務収入の減少や、環境負荷低減を目的としたLED照明導入など費用増により微減益となった。
物流事業では、倉庫業務で新設拠点の収益増、保管業務で日用品・飲料などの好調が寄与した。特に消費税増税前後で高まったメーカーの在庫積み増しニーズを確保できたことは大きかった。港湾運送業務は、上期の国内生産活動が好調だったことから原料輸入が拡大、日用品などの輸出入荷捌業務も増加した。陸上運送業務は、飲料の荷動き好調と倉庫業務の取扱高増により輸配送業務が拡大した。国際輸送業務は、輸入航空貨物の取扱いは堅調だったが、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響による中国向け機械やベトナム現地法人の取扱いの減少をカバーできなかった。その他の物流業務では、テナント退去に伴う物流施設賃貸収入が減少した(テナントが退去した施設は好調の倉庫業務で利用)。この結果、物流事業業務別の営業収益は、倉庫業務が14,802百万円(前期比5.5%増)、港湾運送業務が6,251百万円(同0.4%増)、陸上運送業務が33,366百万円(同5.1%増)、国際輸送業務が4,570百万円(同0.5%減)、その他の物流業務が2,073百万円(同7.7%減)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<EY>
1. 2020年3月期の業績動向
澁澤倉庫<9304>の2020年3月期業績は、売上高66,831百万円(前期比3.4%増)、営業利益3,906百万円(同4.5%増)、経常利益4,174百万円(同4.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,816百万円(同24.0%増)となった。期初計画と比べて、売上高で169百万円、営業利益で94百万円の未達、経常利益で74百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で316百万円の過達となった。国内経済は、雇用環境の改善が持続し、緩やかな回復基調を示してきたが、米中貿易摩擦及び中国経済の鈍化、消費増税後の消費鈍化、第4四半期以降は新型コロナウイルス感染症の拡大により世界規模で大きな影響を受けた。このため、国内の物流業界は輸出が弱含んで推移、第4四半期以降は国内景気も鈍化が懸念される状況となった。一方、不動産業界では都市部におけるオフィスビルの空室率は低い水準を維持し、賃料相場はわずかながら上昇傾向で推移した。
このような事業環境のもと、同社は、中期経営計画「Step Up 2019」に掲げた事業戦略を積極的に推進し、物流事業で、国内外で新規営業活動を展開し、物流一括受託業務や高付加価値業務の拡販、R&D施設を備えた複合物流施設の竣工及び新拠点の稼働など、事業基盤の強化に取り組んだ。また、不動産事業では、既存施設の保守や改良工事を計画的に実施し、現有資産の付加価値向上や安定収益基盤の維持に努めた。
同社は加えて消費税増税時に、顧客の在庫ニーズに短期賃貸で機動的に対応するなど、消費財を中心に国内での貨物の取扱いを大きく伸ばすことができた。このため、国際輸送業務で新型コロナウイルスにより輸出が減少、その他の物流業務で内航船事業が縮小するなどマイナス面もあったが、倉庫業務、陸上運送業務、港湾運送業務が伸長、業務効率化や固定費率の低下につながり、実際に運送を担っている子会社も同社同様に収益が拡大した。不動産事業も堅調に推移した。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が2ケタ増益となったが、理由は、前期に発生した拠点再開発に伴う建物解体費用や災害による損失計上が解消したことによる。また、期初計画比で営業利益が未達となったのは、新型コロナウイルスの発生で、主に第4四半期の国際輸送業務や港湾輸送業務、輸出入が圧迫されたためで、第3四半期までは予算に沿って推移した。
物流事業は好調、不動産事業は堅調に推移
2. 2020年3月期のセグメント別動向
物流事業全体の営業収益は61,065百万円(前期比3.8%増)、営業利益は2,809百万円(同5.6%増)、不動産事業の営業収益は5,879百万円(同横ばい)、営業利益は3,033百万円(同0.6%減)となった。物流事業の営業収益は増加、消費税増税前後の短期的な在庫積み増しニーズに対応したことで採算が向上、作業費や倉庫賃借費用などの増加を吸収した。不動産事業は、賃料改定により一部施設の賃貸収入が増加したが、取扱い減によるビル管理業務収入の減少や、環境負荷低減を目的としたLED照明導入など費用増により微減益となった。
物流事業では、倉庫業務で新設拠点の収益増、保管業務で日用品・飲料などの好調が寄与した。特に消費税増税前後で高まったメーカーの在庫積み増しニーズを確保できたことは大きかった。港湾運送業務は、上期の国内生産活動が好調だったことから原料輸入が拡大、日用品などの輸出入荷捌業務も増加した。陸上運送業務は、飲料の荷動き好調と倉庫業務の取扱高増により輸配送業務が拡大した。国際輸送業務は、輸入航空貨物の取扱いは堅調だったが、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの影響による中国向け機械やベトナム現地法人の取扱いの減少をカバーできなかった。その他の物流業務では、テナント退去に伴う物流施設賃貸収入が減少した(テナントが退去した施設は好調の倉庫業務で利用)。この結果、物流事業業務別の営業収益は、倉庫業務が14,802百万円(前期比5.5%増)、港湾運送業務が6,251百万円(同0.4%増)、陸上運送業務が33,366百万円(同5.1%増)、国際輸送業務が4,570百万円(同0.5%減)、その他の物流業務が2,073百万円(同7.7%減)となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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