イージェイHD Research Memo(6):2021年5月期業績も会社計画を上回る可能性が高い
[20/08/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2021年5月期の業績見通し
E・Jホールディングス<2153>の2021年5月期の連結業績は、売上高が前期比8.6%増の33,000百万円、営業利益が同0.5%増の3,000百万円、経常利益が同3.2%減の3,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.4%減の2,000百万円を見込んでいる。受注高については補正予算等の特殊要因を考慮せず、前期比7.0%減の33,000百万円を想定している。2020年度についても自然災害の多発によって補正予算が組まれる可能性が高い。一方で、新型コロナウイルス対策費用が膨らんでいることもあり、前期のように大幅な積み増しは期待しにくい。売上高については豊富な受注残高を抱えていることもあり、達成は十分可能と見られる。
売上原価率は前期比2.3ポイント上昇の69.7%を計画している。「働き方改革」の一環として、残業時間の削減や有給休暇取得の推進に取り組む一方で、業務量の増加に対応するための人員体制強化を進めており、労務費率が上昇することが主因となっている。ただ、選別受注により付加価値の高い案件が増えていることから、売上原価率は会社計画よりも低くなる可能性が高いと弊社では見ている。販管費については前期まで取り組んできたIT投資が一段落することもあり、前期比0.9%増と微増にとどまる見通し。
営業外収支が前期比で119百万円悪化する見込みとなっているが、これは持分法による投資利益を考慮していないためで、保守的な前提となっている。また、2021年5月期より二神建築事務所とダイミックの2社を新たに連結業績に組み込む予定となっている。なお、2021年5月期末の従業員数は前期末比で33名増の1,550名、うち技術職は同28名増の1,105名を予定している。
技術提案型業務や自然災害リスク軽減分野の受注が引き続き拡大する見通し
2. 2021年5月期の営業方針と売上計画
2021年5月期の営業方針としては、「技術提案型業務の受注拡大」「グループ連携の強化」「海外コンサルタントの事業領域拡大」の3点を掲げている。
(1) 技術提案型業務の受注拡大
ここ数年、多発している豪雨や地震などの自然災害に備えるための国土強靭化対応を行う。具体的には、ハザードマップの作成・更新など自然災害リスク軽減分野での技術提案や、発注者支援対応としてインフラマネジメント分野での技術提案等である。これを、2020年5月期より新たに加わったグループ企業との連携を図りながら推進していく。これらの取り組みにより、技術提案型業務の受注高は前期比8.5%増の13,000百万円を計画している。また、BIM/CIM※による新技術開発を推進し、技術提案に活用するとともに、品質向上並びに生産性の向上を目指す。
※BIM(Building Information Modeling)は、コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルによって、建築プロジェクトの業務効率化等に寄与するワークフローのこと。コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報共有・活用するためのソリューションである。公共事業等のコスト低減を目的に国交省でCIMと合わせたガイドラインを策定している。
CIM(Construction Information Modeling/Management)は、建設プロジェクトにおいて計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入し、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としたITシステムのこと。その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有が容易となる。
また、重点事業5分野の受注額は前期比7.8%増の19,700百万円を見込んでいる。分野別では自然災害リスク軽減分野が同16.4%増の8,450百万円と引き続き拡大する。2020年も7月に九州で集中豪雨による河川の氾濫が発生し、地域経済に多大な被害を与えるなど、治水対策は喫緊の課題となっている。現在の河川堤防等の設計基準は50年前のままで、直近の集中豪雨を想定した作りになっていない。そのため、今後は、ハザードマップの作成を含めて治水対策の需要増加が見込まれる。環境・エネルギー分野、都市・地域再生分野においては、事業拡大を目指し注力するとしている。
(2) グループ連携の強化
グループ各社の専門性を発揮するとともに各社の技術連携により、業務量の拡大を図っていく。引き続き、インフラマネジメント事業、地域創生事業、社会資本メンテナンス事業の上流から下流までのワンストップサービスを提供していく。弱点領域については引き続きM&A戦略により強化していく方針となっている。2019年には九州北部エリアで発注者支援業務を展開しているアイ・デベロップ・コンサルタンツを子会社化した。また、兵庫県内で建築設計・監理業務を行う二神建築事務所と、栃木県内で道路・橋梁、河川砂防、環境、上・下水道設計分野で豊富な実績を持つダイミックを子会社化した。今後、それぞれの域内シェアを拡大していく。
(3) 海外コンサルタントの事業領域拡大
アフリカ、東南アジア諸国での実績を生かし、諸国間を結ぶ広域インフラ整備、都市開発、廃棄物処理分野等への展開を強化していく。特に、東南アジア市場では2020年8月にタイの駐在員事務所を現地法人化する予定となっている。また、ミャンマー事務所との協働も進めながら、受注拡大に取り組んでいく方針となっている。タイでは現地法人を設立することで現地での直接受注が可能となるため、今後の事業拡大が期待される。なお、現在は新型コロナウイルスの影響で現地に出向していた社員を国内に戻しており、新規案件についても一旦、ストップした状況となっている。
(4) 発注機関別・地域別売上計画
2021年5月期の売上高を発注機関別に見ると、中央省庁が前期比13.1%増、都道府県が同4.8%増、市町村が同2.5%増、民間が同14.2%増、海外が同27.0%増となる見通し。海外については新型コロナウイルスの影響が続いているため下振れする可能性がある。しかし、官公庁や民間向けの増加によってカバーできるものと見られる。
また、地域別売上高では、北海道・東北が震災復興需要の一巡により前期比13.8%減と落ち込む見通しとなっているが、関東、近畿がそれぞれ同15.2%増となる。なかでも、九州はM&A効果もあって同36.5%増と大きく伸長する。その他の地域についても中部で同6.1%増、中国で同3.2%増、四国で同9.8%増とそれぞれ堅調な推移を見込んでいる。中国については2018年の集中豪雨に伴う復興・復旧プロジェクトが一巡することもあり、伸び率は低くなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2021年5月期の業績見通し
E・Jホールディングス<2153>の2021年5月期の連結業績は、売上高が前期比8.6%増の33,000百万円、営業利益が同0.5%増の3,000百万円、経常利益が同3.2%減の3,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.4%減の2,000百万円を見込んでいる。受注高については補正予算等の特殊要因を考慮せず、前期比7.0%減の33,000百万円を想定している。2020年度についても自然災害の多発によって補正予算が組まれる可能性が高い。一方で、新型コロナウイルス対策費用が膨らんでいることもあり、前期のように大幅な積み増しは期待しにくい。売上高については豊富な受注残高を抱えていることもあり、達成は十分可能と見られる。
売上原価率は前期比2.3ポイント上昇の69.7%を計画している。「働き方改革」の一環として、残業時間の削減や有給休暇取得の推進に取り組む一方で、業務量の増加に対応するための人員体制強化を進めており、労務費率が上昇することが主因となっている。ただ、選別受注により付加価値の高い案件が増えていることから、売上原価率は会社計画よりも低くなる可能性が高いと弊社では見ている。販管費については前期まで取り組んできたIT投資が一段落することもあり、前期比0.9%増と微増にとどまる見通し。
営業外収支が前期比で119百万円悪化する見込みとなっているが、これは持分法による投資利益を考慮していないためで、保守的な前提となっている。また、2021年5月期より二神建築事務所とダイミックの2社を新たに連結業績に組み込む予定となっている。なお、2021年5月期末の従業員数は前期末比で33名増の1,550名、うち技術職は同28名増の1,105名を予定している。
技術提案型業務や自然災害リスク軽減分野の受注が引き続き拡大する見通し
2. 2021年5月期の営業方針と売上計画
2021年5月期の営業方針としては、「技術提案型業務の受注拡大」「グループ連携の強化」「海外コンサルタントの事業領域拡大」の3点を掲げている。
(1) 技術提案型業務の受注拡大
ここ数年、多発している豪雨や地震などの自然災害に備えるための国土強靭化対応を行う。具体的には、ハザードマップの作成・更新など自然災害リスク軽減分野での技術提案や、発注者支援対応としてインフラマネジメント分野での技術提案等である。これを、2020年5月期より新たに加わったグループ企業との連携を図りながら推進していく。これらの取り組みにより、技術提案型業務の受注高は前期比8.5%増の13,000百万円を計画している。また、BIM/CIM※による新技術開発を推進し、技術提案に活用するとともに、品質向上並びに生産性の向上を目指す。
※BIM(Building Information Modeling)は、コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルによって、建築プロジェクトの業務効率化等に寄与するワークフローのこと。コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報共有・活用するためのソリューションである。公共事業等のコスト低減を目的に国交省でCIMと合わせたガイドラインを策定している。
CIM(Construction Information Modeling/Management)は、建設プロジェクトにおいて計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入し、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としたITシステムのこと。その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有が容易となる。
また、重点事業5分野の受注額は前期比7.8%増の19,700百万円を見込んでいる。分野別では自然災害リスク軽減分野が同16.4%増の8,450百万円と引き続き拡大する。2020年も7月に九州で集中豪雨による河川の氾濫が発生し、地域経済に多大な被害を与えるなど、治水対策は喫緊の課題となっている。現在の河川堤防等の設計基準は50年前のままで、直近の集中豪雨を想定した作りになっていない。そのため、今後は、ハザードマップの作成を含めて治水対策の需要増加が見込まれる。環境・エネルギー分野、都市・地域再生分野においては、事業拡大を目指し注力するとしている。
(2) グループ連携の強化
グループ各社の専門性を発揮するとともに各社の技術連携により、業務量の拡大を図っていく。引き続き、インフラマネジメント事業、地域創生事業、社会資本メンテナンス事業の上流から下流までのワンストップサービスを提供していく。弱点領域については引き続きM&A戦略により強化していく方針となっている。2019年には九州北部エリアで発注者支援業務を展開しているアイ・デベロップ・コンサルタンツを子会社化した。また、兵庫県内で建築設計・監理業務を行う二神建築事務所と、栃木県内で道路・橋梁、河川砂防、環境、上・下水道設計分野で豊富な実績を持つダイミックを子会社化した。今後、それぞれの域内シェアを拡大していく。
(3) 海外コンサルタントの事業領域拡大
アフリカ、東南アジア諸国での実績を生かし、諸国間を結ぶ広域インフラ整備、都市開発、廃棄物処理分野等への展開を強化していく。特に、東南アジア市場では2020年8月にタイの駐在員事務所を現地法人化する予定となっている。また、ミャンマー事務所との協働も進めながら、受注拡大に取り組んでいく方針となっている。タイでは現地法人を設立することで現地での直接受注が可能となるため、今後の事業拡大が期待される。なお、現在は新型コロナウイルスの影響で現地に出向していた社員を国内に戻しており、新規案件についても一旦、ストップした状況となっている。
(4) 発注機関別・地域別売上計画
2021年5月期の売上高を発注機関別に見ると、中央省庁が前期比13.1%増、都道府県が同4.8%増、市町村が同2.5%増、民間が同14.2%増、海外が同27.0%増となる見通し。海外については新型コロナウイルスの影響が続いているため下振れする可能性がある。しかし、官公庁や民間向けの増加によってカバーできるものと見られる。
また、地域別売上高では、北海道・東北が震災復興需要の一巡により前期比13.8%減と落ち込む見通しとなっているが、関東、近畿がそれぞれ同15.2%増となる。なかでも、九州はM&A効果もあって同36.5%増と大きく伸長する。その他の地域についても中部で同6.1%増、中国で同3.2%増、四国で同9.8%増とそれぞれ堅調な推移を見込んでいる。中国については2018年の集中豪雨に伴う復興・復旧プロジェクトが一巡することもあり、伸び率は低くなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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