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スカラ Research Memo(10): 2030年6月期に売上収益5,000億円、営業利益500億円を目標に掲げる

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

2. 中期経営計画について
スカラ<4845>が2019年8月に発表した2030年までの中期経営計画では、基本方針として、同社が持つ「真の課題を探り出す」(価値創造経営支援事業)、「リソースの埋もれた価値を炙り出す」(AI/IoT/IT関連事業)、「課題とリソースの最適な組み合わせを提案・実行し、価値を最大化する」(社会問題解決型事業)という3つのケイパビリティを強みとし、これらを連携させながら中長期的な成長を目指していく戦略となっている。

経営数値目標として、2030年6月期に売上収益5,000億円、営業利益500億円を打ち出した。2020年6月期の売上収益見通しが100〜130億円規模であることを考えると壮大な目標と言えるが、同社では今後の成長ポテンシャルが高い「AI/IoTを中心としたITソリューション」「SGDsなど社会問題解決型事業」の2つの分野にフォーカスし、既存事業だけでなくM&A戦略も交えた新規事業への展開や海外市場への展開により成長を目指していく考えだ。

(1) 価値創造経営支援事業
価値創造経営支援事業では、売上収益目標として700〜1,100億円、営業利益で150〜300億円を長期的に目指す。SCLキャピタルで2020年4月に第1号ファンドを立ち上げ、投資と合わせてDX化支援やIR支援などを提供していく。今後、5年間で50社程度、金額で100億円程度の投資を行い、3〜4倍のキャピタルゲインをターゲットにしていく。DX化支援などでのストック収益は1社当たり毎年1〜2億円、5年度で合計50〜70億円の売上収益が見込めることになり、営業利益では10〜15億円の貢献が見込まれる。

また、2030年6月期までで、累計300社ほど国内外で投資を実行、キャピタルゲインで毎年平均100億円程度を獲得し、DX支援のSaaS/ASP事業で売上収益600〜1,000億円、営業利益ベースで60〜200億円を目標とする。同社では企業のDX支援と同時に企業価値を高めるためのIR支援なども行い、また出資も合わせて実行するなど、独自性の高いビジネスモデルによって、コンサルティング会社などの競合との差別化を図り、事業拡大を目指していくことになる。

(2) AI/IoT/IT事業
AI/IoT/IT事業については既存事業の延長線となる。売上収益目標は2030年6月期で2,000〜3,000億円としている。成長戦略の1つとして、大企業とのパートナー戦略を掲げている。日本の大企業では新規事業の立ち上げから事業化までのリスクをすべて負担することが難しく、革新的な新規事業が生まれない原因ともなっている。こうした課題を解消するため、同社グループにおいて大企業出身者を中心に、新規事業立ち上げのためのリスクシェアリングスキームを構築中で、新規事業のアイデアを持つ人材を登用し、新規事業立ち上げのための資金的支援を行い、ある程度事業化の目途が立ったところで、更なる事業拡大を大企業と連携して立ち上げていくスキームとなる。

また、従来のアジャイル開発によって月額収益を積み上げていくビジネスモデル(スカラモデルI)に加えて、顧客企業が持つ既存のレガシーIT経営資源を活用しながら、DXを推進する最適なIT基盤を構築する新たなビジネスモデル(スカラモデルII)を体系化することで、更なる事業規模拡大を推進していく。

さらに、新たな個人情報活用時代に合わせたデジタルIDソリューションとして、「xID」を活用した行政サービスの電子化、並びに金融機関や保険、人材派遣サービス会社等への導入を図っていく。特に、地方自治体ではデジタル化が遅れており、潜在的なポテンシャルは大きい。「xID」の導入と合わせて自社のSaaS/ASPサービスも合わせて導入提案していく。また、個人情報保護法の規制強化への対応も含めてコールセンターの運用についてもデジタル化が急速に進んでおり、同社ではコストパフォーマンスの高い基幹システム「C7」をベースに、コールセンター市場における収益拡大を目指していく。

(3) 社会問題解決型事業
社会問題解決型事業については長期的視点での取り組みにより、売上収益で1,000〜3,000億円、営業利益で100〜200億円を目指していく。

国内では地方創生をテーマにした自治体のブランディング、企業間同士の新たな事業展開を目的とした連携・マッチングサービス、必要な人材を連携するためのメディア構築などに取り組んでいく。2020年8月には「ブランディング×デジタルマーケティング」のソリューションを提供するブランディングテクノロジー<7067>と行政・自治体のDX推進を目的とした合弁会社、(株)ソーシャルスタジオの設立を発表しており、今後両社のノウハウを生かして行政・自治体・事業会社のデジタル化やマーケティング支援を展開していく計画だ。これらの取り組みを推進して地方自治体の行政サービスを向上し、働きやすく、住みやすい環境にすることで、居住者が増え将来を担う地方企業の活性化につながることを目指している。また、グリットグループホールディングスではHRテックを軸に、海外人材活用のための教育サービスや雇用支援等の仕組み構築、AIを活用した幼児教育事業などを展開していく。

海外展開としては、第1弾としてミャンマーに進出する。2020年6月にヘルステック領域での事業展開を進めるべく、現地のヘルステック企業であるMyanCareに資本出資したことを発表した。MyanCareは遠隔医療サービスのためのコールセンターやモバイルアプリケーションを開発している企業で、従業員数は30名規模の会社となる。ミャンマーは経済発展が著しい一方で、医療体制はまだ周辺国に対しても未整備な状態であり社会課題ともなっている。こうした課題を解決すべく、MyanCareでは、小児科に特化した医師常勤のコールセンターを核とした遠隔診療サービスや、スマートフォンアプリを通じた遠隔診療サービスを提供している。また、保険についてもプルデンシャル生命保険(株)と提携し、共同で販売とマーケティング活動を開始するなど積極的な事業展開を進めている。

一方で、同社は国内主要顧客に保険会社を有しており、IoT/ビッグデータ処理及び分析を通じて広範なサービスを提供している。こうした保険会社のミャンマー事業推進(2019年から保険業に対する外資規制が緩和され、営業活動が解禁された)に対して貢献すべく検討を進めている段階にある。今回、MyanCareに出資することで、MyanCareユーザーのパーソナル・ヘルスケア・レコード(以下、PHR)に関して同社の持つビッグデータ処理・分析ノウハウを活用することによって、医療・保険も含めたヘルスケア産業全般へ生かしていく、いわばヘルスケア領域におけるDX化のモデルケースとしていくことを想定している。PHRのビッグデータを分析することで、健康状態の管理や予防医療に役立つサービスの提供が可能となるほか、最適な健康保険システム並びに保険商品の開発も可能となる。

また、ミャンマー最大級のIT企業であるACE Data Systems Ltd.と合弁会社SCALA ACE Co.,Ltd.(出資比率35.0%)を2020年8月に設立したことを発表した。今後、両社のノウハウを生かして教育・医療・農業分野でAI/IoT/ITを活用し、ミャンマーの社会課題の解決を図るとともに、継続的に発展していくための事業創出基盤の構築に取り組んでいく。ACE Data Systemsはミャンマーの政府関連のITプロジェクトの実績も豊富なことから、国家戦略レベルのDXを連携して推進していく可能性もあり、今後の動向が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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