企業調査レポート(ESG統合版) クラボウ<3106>---イノベーションの実現によりビジネスモデル変革と収益力向上図る
[20/10/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
企業調査レポート(ESG統合版)は、企業の価値を評価するに重要なESG情報などを加味し、フィスコのアナリストが同社の公開資料及び独自取材に基づき作成した企業調査レポートです。
■要約
1. 事業内容
クラボウ<3106>は、1888年創業の大手繊維メーカーである。創業以来、常に時代の先を見据えながら、新しい価値の創造に挑み続けてきた。現在は、暮らしを支える繊維、自動車、住宅、食品や、産業を支えるエレクトロニクス、半導体、環境プラント、バイオメディカル、工作機械など幅広い分野に事業領域を展開している。また、創業当時より社会貢献活動にも積極的に取り組んできた実績があり、今後も国際社会の共通目標であるSDGs(持続可能な開発目標)への対応を含め、健康、快適、環境への配慮などをテーマとした商品・技術開発の追求により、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会の創造に向けて貢献していく方針である。
2. 業績推移
ここ数年の業績を振り返ると、売上高は国内外での市場環境の変化や為替相場の影響などにより減収傾向をたどってきた。特に、「繊維事業」が国内カジュアル衣料分野の需要低迷や海外製品との価格競争激化に加え、不採算ビジネスからの撤退などにより大きく後退。一方、損益面についても、「環境メカトロニクス事業」などで高付加価値化が進んできたものの、「繊維事業」の落ち込み等をカバーできず、営業利益率は3%台の水準で伸び悩んでいる。また、足元の業績についても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、低調に推移している。
3. 成長戦略
2020年3月期より3ヶ年の中期経営計画「Creation’21」をスタート。前中計の反省と成果を踏まえ、1)高付加価値ビジネスの拡大、2)海外事業の強化・拡大、3)R&D活動の推進と新規事業創出、4)多様な人材の活躍推進、5)クラボウブランドの価値向上と信頼される企業づくりなどの重点施策に取り組んでいる。特に、自社の商品・技術により社会にどのような貢献ができるかという視点でイノベーションを生み出し、ビジネスモデルの変革と高収益事業体制の確立を図る方向性を打ち出しており、社会課題の解決につながる商品・サービスの開発・提供に注力するとともに、収益力の強化を図る考えである。なお、想定外の新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により数値目標の達成は厳しくなってきたが、基本的な戦略の方向性に見直しはない。長期目線で成長基盤をしっかりと整備していく考えである。
4. SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み
同社グループの事業活動は、経営理念である「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します」に基づいており、その目指すところは、現在世界中で関心が高まっているSDGsにも通じている。中期経営計画「Creation’21」においても、SDGsに掲げられた目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」など、同社グループが貢献すべき分野を明確にし、事業計画の中に具体的に落とし込んでいる。
5. 環境対応
1970年代から、「公害の未然防止」や「省エネルギー推進」など環境保全にも積極的に取り組んでおり、1998年には「クラボウ環境憲章」を定め、同社の環境に対する基本方針と社員が取るべき行動指針を明確にし、グループ全体で共有している。特に、「CO2(二酸化炭素)排出量の削減」と「ゼロエミッション推進」(再資源化率の向上)をテーマに掲げ、中期環境目標(3ヶ年の数値目標)を設定し、地球温暖化防止や資源の有効活用に努めるとともに、大気汚染防止・水質汚濁防止にも取り組んでいる。
6. 社会的責任(CSR)及び社会貢献活動
グループ全体を統括するクラボウCSR委員会を設置し、法令・ルールの遵守をはじめ、品質保証、情報セキュリティ、人権啓発や環境への対応、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。
7. コーポレートガバナンスの状況
2016年6月より監査等委員会設置会社へ移行。取締役12名のうち、社外取締役4名はすべて監査等委員である。「社外取締役の独立性基準の制定」「コーポレートガバナンス ガイドラインの制定」「指名・報酬諮問委員会の設置」などの主体的な取り組みにより、経営の透明性と客観性の強化を図っている。一方、役員報酬体系は、「基本報酬」及び「業績連動型株式報酬」により構成。「業績連動型株式報酬」は中期経営計画の達成度合いに応じて株式が付与されるため、計画達成に向けてインセンティブが働く仕組みとなっている。
8. アナリストの視点
同社が持続的な成長を実現していくためには、事業構造改革を進め、市場変化に対応した新たな価値を創造していくことが不可欠であり、そのためにもSDGs視点による社会課題の解決に向けた取り組みがカギを握るものと見ている。特に、「イノベーションと高収益」の実現を掲げた「長期ビジョン2030」の達成に向けては、現在の中期経営計画「Creation’21」において、具体的な方向性と成果を社内外に示すことが重要となるだろう。環境対応をはじめ、ITを活用したスマート衣料「Smartfit」(スマートフィット)やセンシング技術によるロボットビジョンシステムなど、新しい社会を見据えた同社ならではの取り組みを、いかに成長機会に結び付けていくのかに注目したい。また、イノベーションの実現に向けて、どのようにガバナンス機能を発揮していくのか、「攻めのガバナンス」の面からも、今後のESGの状況をフォローしていく必要がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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■要約
1. 事業内容
クラボウ<3106>は、1888年創業の大手繊維メーカーである。創業以来、常に時代の先を見据えながら、新しい価値の創造に挑み続けてきた。現在は、暮らしを支える繊維、自動車、住宅、食品や、産業を支えるエレクトロニクス、半導体、環境プラント、バイオメディカル、工作機械など幅広い分野に事業領域を展開している。また、創業当時より社会貢献活動にも積極的に取り組んできた実績があり、今後も国際社会の共通目標であるSDGs(持続可能な開発目標)への対応を含め、健康、快適、環境への配慮などをテーマとした商品・技術開発の追求により、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会の創造に向けて貢献していく方針である。
2. 業績推移
ここ数年の業績を振り返ると、売上高は国内外での市場環境の変化や為替相場の影響などにより減収傾向をたどってきた。特に、「繊維事業」が国内カジュアル衣料分野の需要低迷や海外製品との価格競争激化に加え、不採算ビジネスからの撤退などにより大きく後退。一方、損益面についても、「環境メカトロニクス事業」などで高付加価値化が進んできたものの、「繊維事業」の落ち込み等をカバーできず、営業利益率は3%台の水準で伸び悩んでいる。また、足元の業績についても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、低調に推移している。
3. 成長戦略
2020年3月期より3ヶ年の中期経営計画「Creation’21」をスタート。前中計の反省と成果を踏まえ、1)高付加価値ビジネスの拡大、2)海外事業の強化・拡大、3)R&D活動の推進と新規事業創出、4)多様な人材の活躍推進、5)クラボウブランドの価値向上と信頼される企業づくりなどの重点施策に取り組んでいる。特に、自社の商品・技術により社会にどのような貢献ができるかという視点でイノベーションを生み出し、ビジネスモデルの変革と高収益事業体制の確立を図る方向性を打ち出しており、社会課題の解決につながる商品・サービスの開発・提供に注力するとともに、収益力の強化を図る考えである。なお、想定外の新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により数値目標の達成は厳しくなってきたが、基本的な戦略の方向性に見直しはない。長期目線で成長基盤をしっかりと整備していく考えである。
4. SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み
同社グループの事業活動は、経営理念である「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します」に基づいており、その目指すところは、現在世界中で関心が高まっているSDGsにも通じている。中期経営計画「Creation’21」においても、SDGsに掲げられた目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」など、同社グループが貢献すべき分野を明確にし、事業計画の中に具体的に落とし込んでいる。
5. 環境対応
1970年代から、「公害の未然防止」や「省エネルギー推進」など環境保全にも積極的に取り組んでおり、1998年には「クラボウ環境憲章」を定め、同社の環境に対する基本方針と社員が取るべき行動指針を明確にし、グループ全体で共有している。特に、「CO2(二酸化炭素)排出量の削減」と「ゼロエミッション推進」(再資源化率の向上)をテーマに掲げ、中期環境目標(3ヶ年の数値目標)を設定し、地球温暖化防止や資源の有効活用に努めるとともに、大気汚染防止・水質汚濁防止にも取り組んでいる。
6. 社会的責任(CSR)及び社会貢献活動
グループ全体を統括するクラボウCSR委員会を設置し、法令・ルールの遵守をはじめ、品質保証、情報セキュリティ、人権啓発や環境への対応、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。
7. コーポレートガバナンスの状況
2016年6月より監査等委員会設置会社へ移行。取締役12名のうち、社外取締役4名はすべて監査等委員である。「社外取締役の独立性基準の制定」「コーポレートガバナンス ガイドラインの制定」「指名・報酬諮問委員会の設置」などの主体的な取り組みにより、経営の透明性と客観性の強化を図っている。一方、役員報酬体系は、「基本報酬」及び「業績連動型株式報酬」により構成。「業績連動型株式報酬」は中期経営計画の達成度合いに応じて株式が付与されるため、計画達成に向けてインセンティブが働く仕組みとなっている。
8. アナリストの視点
同社が持続的な成長を実現していくためには、事業構造改革を進め、市場変化に対応した新たな価値を創造していくことが不可欠であり、そのためにもSDGs視点による社会課題の解決に向けた取り組みがカギを握るものと見ている。特に、「イノベーションと高収益」の実現を掲げた「長期ビジョン2030」の達成に向けては、現在の中期経営計画「Creation’21」において、具体的な方向性と成果を社内外に示すことが重要となるだろう。環境対応をはじめ、ITを活用したスマート衣料「Smartfit」(スマートフィット)やセンシング技術によるロボットビジョンシステムなど、新しい社会を見据えた同社ならではの取り組みを、いかに成長機会に結び付けていくのかに注目したい。また、イノベーションの実現に向けて、どのようにガバナンス機能を発揮していくのか、「攻めのガバナンス」の面からも、今後のESGの状況をフォローしていく必要がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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