ワコム Research Memo(1):2021年3月期上期は想定を上回る大幅増収増益。コロナ禍に伴う需要増を取り込む
[20/11/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
ワコム<6727>は、デジタルペンとインクの事業領域で、技術に基づいた顧客価値の創造を目指すグローバルリーダーである。映画制作や工業デザインのスタジオで働くデザイナー、アニメーターなどプロのクリエイターからの支持により高いブランド力とシェアを誇る。自社ブランドで「ディスプレイ(液晶ペンタブレット)製品」や「ペンタブレット製品」等を販売する「ブランド製品事業」と、スマートフォンやタブレットなど完成品メーカー向けに独自のデジタルペン技術をコンポーネントとして供給する「テクノロジーソリューション事業」の2セグメントで事業を展開している。
1. 2021年3月期上期の業績
2021年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比17.9%増の55,326百万円、営業利益が同186.4%増の8,618百万円と想定を上回る大幅な増収増益となり、過去最高業績(上期ベース)を更新した。新型コロナウイルス感染症の世界的拡大(以下、コロナ禍)に伴い、販促イベントの自粛や営業活動の制限等による影響を受けたものの、オンライン教育及びテレワーク向け等の需要が急増したことを受けて、ディスプレイ製品やペンタブレット製品を中心に「ブランド製品事業」が大きく拡大した。また、「テクノロジーソリューション事業」についても、OEM提供先のメーカー向けに伸びている。すなわち、コロナ禍を追い風として、新たな需要の伸び(構造的要因)と需要前倒し(一過性要因)の両方を取り込めたことが、大幅な業績の上振れにつながったと評価できる。損益面でも、増収効果や製品ミックス改善、販管費の最適化等により、米国の対中追加関税や為替相場(円高)の影響等を吸収したうえで大幅な営業増益を実現した。
2. 2021年3月期の業績見通し
2021年3月期の連結業績予想について同社は、上期業績の状況等を踏まえ、期初予想(レンジ形式)を増額修正するとともに、ベースラインによる一本値にシフトした。修正後の売上高を前期比11.8%増の99,000百万円、営業利益を同61.7%増の9,000百万円と通期でも増収増益を見込んでいる。通期予想の達成のためには、下期売上高43,674百万円、営業利益382百万円あれば足りる。下期の業績予想が数字のうえで保守的となっているのは、コロナ禍に伴う経済活動の不確実性のほか、上期業績の上振れ分のうち、需要の前倒し部分については、下期に反動減となる可能性についても慎重に見ていることが理由である。同社は、「ベースライン」という表現を用い、達成可能性の高い数字を超える部分について、2022年3月期以降も見据えた取り組みを通じ、現時点では数値化しにくいオポチュニティ(業績上積み機会)を積極的に狙うということを決算説明会の場でも表明している。
3. 成長戦略
同社は2019年3月期から2022年3月期までの中期経営計画「Wacom Chapter 2」を推進しており、3年目を迎えている。「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として原点に立ち返り、ペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握りながら、顧客志向の価値創出により持続的な成長を目指す方向性である。また、その実現のために、1)テクノロジー・リーダーシップの推進、2)アイランド(島事業=ブランド事業)&オーシャン(海事業=テクノロジー事業)による緊密な連携、3)大胆な選択と集中、の3つの全社戦略に取り組んでいる。デジタル化の流れは同社にとって明らかに追い風となっており、新たな成長ステージに向けて将来を見据えた活動の成果に注目したい。
■Key Points
・2021年3月期上期はオンライン教育向け等の需要増により大幅な増収増益を実現
・コロナ禍に伴う新たな需要の取り込みにより、ディスプレイ製品やペンタブレット製品が大きく拡大
・2021年3月期の業績予想について同社は、期初予想(レンジ形式)を増額修正するとともに、
ベースラインによる一本値にシフト。通期でも大幅な増収増益を見込む
・「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として、ペンやインクのデジタル技術で市場の主導権を握りながら、顧客志向の価値創出により持続的な成長を目指す方向性
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<EY>
ワコム<6727>は、デジタルペンとインクの事業領域で、技術に基づいた顧客価値の創造を目指すグローバルリーダーである。映画制作や工業デザインのスタジオで働くデザイナー、アニメーターなどプロのクリエイターからの支持により高いブランド力とシェアを誇る。自社ブランドで「ディスプレイ(液晶ペンタブレット)製品」や「ペンタブレット製品」等を販売する「ブランド製品事業」と、スマートフォンやタブレットなど完成品メーカー向けに独自のデジタルペン技術をコンポーネントとして供給する「テクノロジーソリューション事業」の2セグメントで事業を展開している。
1. 2021年3月期上期の業績
2021年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比17.9%増の55,326百万円、営業利益が同186.4%増の8,618百万円と想定を上回る大幅な増収増益となり、過去最高業績(上期ベース)を更新した。新型コロナウイルス感染症の世界的拡大(以下、コロナ禍)に伴い、販促イベントの自粛や営業活動の制限等による影響を受けたものの、オンライン教育及びテレワーク向け等の需要が急増したことを受けて、ディスプレイ製品やペンタブレット製品を中心に「ブランド製品事業」が大きく拡大した。また、「テクノロジーソリューション事業」についても、OEM提供先のメーカー向けに伸びている。すなわち、コロナ禍を追い風として、新たな需要の伸び(構造的要因)と需要前倒し(一過性要因)の両方を取り込めたことが、大幅な業績の上振れにつながったと評価できる。損益面でも、増収効果や製品ミックス改善、販管費の最適化等により、米国の対中追加関税や為替相場(円高)の影響等を吸収したうえで大幅な営業増益を実現した。
2. 2021年3月期の業績見通し
2021年3月期の連結業績予想について同社は、上期業績の状況等を踏まえ、期初予想(レンジ形式)を増額修正するとともに、ベースラインによる一本値にシフトした。修正後の売上高を前期比11.8%増の99,000百万円、営業利益を同61.7%増の9,000百万円と通期でも増収増益を見込んでいる。通期予想の達成のためには、下期売上高43,674百万円、営業利益382百万円あれば足りる。下期の業績予想が数字のうえで保守的となっているのは、コロナ禍に伴う経済活動の不確実性のほか、上期業績の上振れ分のうち、需要の前倒し部分については、下期に反動減となる可能性についても慎重に見ていることが理由である。同社は、「ベースライン」という表現を用い、達成可能性の高い数字を超える部分について、2022年3月期以降も見据えた取り組みを通じ、現時点では数値化しにくいオポチュニティ(業績上積み機会)を積極的に狙うということを決算説明会の場でも表明している。
3. 成長戦略
同社は2019年3月期から2022年3月期までの中期経営計画「Wacom Chapter 2」を推進しており、3年目を迎えている。「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として原点に立ち返り、ペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握りながら、顧客志向の価値創出により持続的な成長を目指す方向性である。また、その実現のために、1)テクノロジー・リーダーシップの推進、2)アイランド(島事業=ブランド事業)&オーシャン(海事業=テクノロジー事業)による緊密な連携、3)大胆な選択と集中、の3つの全社戦略に取り組んでいる。デジタル化の流れは同社にとって明らかに追い風となっており、新たな成長ステージに向けて将来を見据えた活動の成果に注目したい。
■Key Points
・2021年3月期上期はオンライン教育向け等の需要増により大幅な増収増益を実現
・コロナ禍に伴う新たな需要の取り込みにより、ディスプレイ製品やペンタブレット製品が大きく拡大
・2021年3月期の業績予想について同社は、期初予想(レンジ形式)を増額修正するとともに、
ベースラインによる一本値にシフト。通期でも大幅な増収増益を見込む
・「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として、ペンやインクのデジタル技術で市場の主導権を握りながら、顧客志向の価値創出により持続的な成長を目指す方向性
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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