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学研HD Research Memo(5):教育サービス事業の減益をそのほかの事業の増益でカバーする

注目トピックス 日本株
■学研ホールディングス<9470>の業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) 教育サービス事業
教育サービス事業の売上高は前期比3.7%減の32,969百万円、営業利益は同56.3%減の424百万円となった。コロナ禍の影響により、学研教室や進学塾の会員生徒数が減少したことが減収減益要因となった。

内訳を見ると、学研教室事業は売上高で前期比7.3%減の9,819百万円、営業損失で24百万円(前期比676百万円の減益)となった。2020年3月以降、コロナ禍の影響により休・退会者が増加したほか、新規入会生の獲得も低調に推移したことが減収要因となった。2020年9月期末の会員数は前期末比9.0%減の378,787人と2期ぶりの減少に転じ、また、ここ数年増加傾向が続いていた教室数も同2.6%減の15,716教室と減少に転じるなど、コロナ禍の影響を強く受ける格好となった。また、利益面では減収要因に加えて、2020年度からの学習指導要領改訂に対応した教材改訂費用の増加も減益要因となった。

進学塾事業は売上高で前期比5.7%減の18,567百万円、営業損失で55百万円(前期比235百万円の減益)となった。コロナ禍の影響により新規生徒の募集活動が低調となり、2020年9月期末の生徒数が前期末比6.6%減の47,589人と減少したことが減収要因となった。オンラインによる双方向授業の導入や短期集中講座の実施、コスト削減等に取り組んだものの、減収による利益減をカバーしきれなかった。

教材出版事業については、売上高で前期比15.7%増の4,581百万円、営業利益で同265.2%増の504百万円と好調に推移した。3月から5月にかけて学校が休校となったことに伴い、ドリル関連など家庭学習教材の販売が好調だったことが要因だ。

(2) 教育コンテンツ事業
教育コンテンツ事業の売上高は前期比5.9%減の26,643百万円と減収となったものの、営業利益は同165.7%増の1,440百万円と大幅増益となった。巣ごもり需要により児童書・学習参考書の販売が好調だったことに加え、不採算事業の見直しに取り組んだことが増益要因となった。

内訳を見ると、出版事業は売上高で前期比2.2%減の16,300百万円、営業利益で同43.6%増の2,231百万円となった。学校の休校に伴う家庭学習の需要増加により、児童書・学習参考書などの販売が増加した一方で、第4四半期にメディア事業を会社分割により切り離し、定期雑誌やムック本等の売上高が減少したことが減収要因となった。利益面では、児童書・学習参考書の販売が好調だったことや第4四半期に見込んでいた書店からの返品が大幅に減少したことなどが増益要因となった。

新刊点数については前期比13点増加の731点となった。学習指導要領改訂に対応した学習参考書の新刊点数が91点増加したことが要因だ。一方で、ムック本やその他雑誌の新刊点数は減少している。また、返品率について見ると書籍が前期の31%から35%に上昇したが、これは学習参考書の旧刊在庫がまとまって返品された一時的な要因による。一方、雑誌や定期誌についてはそれぞれ順調に改善が進んでいる。

医学看護事業の売上高は前期比1.3%減の2,791百万円、営業利益は同5.5%減の451百万円となった。看護師向けe-ラーニングについては契約病院数が順調に拡大したことで増収となったものの、医学書や看護書の販売が各種イベントの自粛に伴う販売機会の減少により落ち込んだことが響いた。利益面でも書籍の販売減少が減益要因となっている。なお、e-ラーニングの契約病院数は前期末比306施設増加の1,788施設と増加ペースが加速している。看護師は多忙で集合研修など時間が取れないことも多く、看護学習ツールとしていつでもどこでも学べるe-ラーニングサービスとの親和性は高い。特に、コロナ禍によって集合研修ができないなかで、その需要が一段と高まったものと考えられる。病院は全国で8千ヶ所程度あり、今後も普及拡大により高成長が続くものと期待される。

出版以外の事業は売上高で前期比14.3%減の7,550百万円、営業損失で1,242百万円(前期比247百万円の損失縮小)となった。第2四半期にアニメ事業の一部を売却※したほか、文具・玩具商品の販売が減少したことなどが減収要因となった。一方、損益面ではアニメ等の不採算事業を売却したことが改善要因となっている。

※(株)学研プラスで発行していたアニメの月刊誌3誌、ムック本の販売及びアニメ情報サイト「超!アニメディア」を2020年2月にイード<6038>に売却した。

(3) 教育ソリューション事業
教育ソリューション事業の売上高は前期比0.1%増の19,098百万円、営業利益は同17.7%増の425百万円となった。小学校向けの教科書や教師用指導書の発行が増益要因となった。

内訳を見ると、幼児教育事業は売上高で前期比8.3%減の12,549百万円、営業損失で22百万円(前期比579百万円の減益)となった。コロナ禍の影響で幼児教室の休室が3月以降、長期間続いたことで会員数が減少したほか、園舎設計や新学期用品、備品類の販売が落ち込んだことも減収要因となった。損益面では、減収要因に加えて、営業活動が6月以降も制約を受けており、固定費負担の圧迫も減益要因となっている。

一方で、学校教育事業は売上高で前期比0.4%減の4,161百万円、営業利益で367百万円(前期比671百万円の増益)となった。小学校向け教科書(保健及び道徳)の新刊発行年にあたり、採算の良い教師用指導書の販売が伸長したことが増益要因となった。なお、2021年春は中学校向けで同様に保健体育と道徳の2教科の新刊が発行されるが、小学校に対して学年数が半分であり、教師用指導書の発行部数も減少するため、学校教育事業の業績としては2020年9月期が一旦のピークとなる見通しだ。

社会教育事業は売上高で前期比95.5%増の2,387百万円、営業利益で同25.2%減の80百万円となった。第1四半期より、ODAコンサルティング事業を展開するアイ・シー・ネットが連結対象として加わったことで増収となった。一方、利益面ではコロナ禍の影響により、海外渡航禁止で損益が悪化したことなどが減益要因となった。

(4) 医療福祉サービス事業
医療福祉サービス事業の売上高は前期比9.7%増の60,786百万円、営業利益は同2.5%増の2,562百万円となった。サ高住や保育園・学童の拠点数拡大が増収増益要因となった。

内訳を見ると、高齢者福祉事業(MCS除く)の売上高は前期比15.8%増の23,810百万円、営業利益は同11.7%増の1,161百万円と好調に推移した。サ高住の事業所数が前期末比で12事業所増加の148事業所と拡大し、入居数も同11.2%増の6,600室と順調に拡大し、入居率も前期末比横ばいの91.9%と高水準が続いたことが増収増益要因となった。

一方、MCSの業績は売上高で前期比5.5%増の31,995百万円、営業利益で同7.4%減の1,284百万円となった。グループホームを4事業所開設したものの、給与改定の実施やスタッフの増員により人件費が増加したほか、新型コロナウイルス感染症対策の費用が増加したことが減益要因となった。

子育て支援事業は売上高で前期比9.6%増の4,980百万円、営業利益で同62.5%増の117百万円となった。新たに保育園2施設(累計45施設)を開園したほか、学童保育施設6ヶ所(累計26ヶ所)の運営を受託したことにより増収となり、利益面でも増収効果により増益となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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