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平和RE Research Memo(7):「運用資産の着実な成長」と「中長期的な安定収益の確保」を推進(2)

注目トピックス 日本株
■平和不動産リート投資法人<8966>の中長期の成長戦略

4. 財務戦略
財務戦略では、財務基盤の安定化を図り、持続的な成長を可能とすることを目的として、計画的かつ機動的な資金調達を目指す。すなわち、第1に有利子負債の返済・償還期限の長期化、固定化及び満期の分散化を進めることで市場金利変動の影響を受けにくい財務基盤を構築する。また、AA格への格上げによる信用力の改善と長期安定投資家の拡大を目指す。第2に適切なLTVコントロールによって、金融環境に左右されない安定した物件取得、ポートフォリオと収益の持続的な拡大を図る。第3に資金調達手段の多様化を図り、公募増資によるエクイティ調達、幅広い業態からなるレンダーフォーメーション、投資法人債等、様々な性格の資金へのアクセスを構築する。第4に現在の低金利環境が将来にわたって財務コスト削減に寄与できるように、金融コストの低減を図る。

借入余力を図る基準としている鑑定LTV(期末の鑑定評価額(帳簿価額+含み損益)に対する有利子負債の割合)は、投資法人債による資金調達とそれによる既存借入金の弁済が期を跨いだことから上昇したものの、引き続き41.0%の低水準を維持している。その結果、鑑定LTVを45%までとした場合、借入余力は172億円となり、同REITの資金調達力は安定している。

また、2020年11月末時点の有利子負債残高は86,167百万円であるが、金利の高い借入金の満期借り換えに伴い平均調達金利は0.776%と過去最低金利を更新しており、また平均調達年数は6.97年である。加えて、コロナ禍で懸念される不測の事態に備えて、2020年11月期より大手銀行からの融資枠のコミットメントラインを、従来の60億円から70億円に拡大している。さらに、資金調達手段の拡充のため、投資法人債の発行も実施済である。また、将来の金利上昇リスクに対しては、長期借入金固定化比率は87.0%と高く、目安の80%を上回っている。このように、今後も財務戦略により、同REITの成長を下支えする方針である。

弊社では、同REITが特化する東京都区部をメインとする市場は投資機会が豊富にあることから、今後も同REITの潜在的な成長力は高いと評価する。東京都区部では、主なテナント層である中小規模の事業所数が多く、オフィスビルに対して引き続き豊富な需要がある。また、東京都では人口増加傾向が続いており、居住用マンションについても堅調な需要が見込まれている。

また、強力なスポンサー・サポートの活用によって、着実な成長戦略の推進が可能と考える。すなわち、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件等の情報ソースを活用したり(外部成長サポート)、情報の共有化によって稼働率の向上を図ったり(内部成長サポート)、財務方針、資金調達等のかかる支援や指導を仰ぐこと(財務サポート)ができることが、同REITの大きな強みと言えよう。

既述のとおり、コロナ禍による賃料への影響は軽微にとどまっている。コロナ禍はいずれ収束に向かうと考えられるが、同REITでは、十分な内部留保やコミットメントラインの設定などの対策を講じている。その他の一般的なリスク要因としては、他のREITと同様、稼働率の低下、賃料の下落、金利の上昇等が考えられる。実際、東京都区内において2018年から巨大ビルが大量供給されており、稼働率の低下や賃料の下落が懸念されていた。ただ、同REITでは、オフィス稼働率は既に高水準に達しているものの、対象とする中規模以下のオフィスでは供給が限定的であり、今後も高稼働率の維持が可能と見ている。また、市場賃料の上昇が契約賃料の更改ペースを上回っていること(ポジティブギャップが拡大)から、オフィス賃料はさらに引き上げ可能と見られる。レジデンスにおいても、リニューアル工事の実施によって、物件競争力の強化と資産価値の維持向上を図っており、今後も高稼働率の維持と賃料水準の改善につながると見る。当面は金利の高い借入の借り換えに伴い、金融コストはさらに低下する見通しだが、将来の金利上昇リスクに対しては、金利の固定化によりリスクヘッジを進めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)




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