ソフト99 Research Memo(2):自動車・家庭用ケミカル用品の製造販売会社で売上高の6割弱が自動車分野(1)
[21/06/23]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■事業概要
ソフト99コーポレーション<4464>は1954年(昭和29年)創業の自動車用・家庭用ケミカル用品の製造販売会社である。事業セグメントとしてはファインケミカル事業、ポーラスマテリアル事業、サービス事業、不動産関連事業の4つのセグメントで区分している。自動車分野を中心にM&Aも活用しながら業容を拡大しており、直近では2020年8月に病院向け衛生関連用品の企画開発・販売会社であるアズテックを子会社化した。現在、グループの連結子会社数は10社となっている。
直近5年間の事業セグメント別構成比を見ると売上高は大きな変動がなく、ファインケミカル事業が約5割、ポーラスマテリアル事業とサービス事業がそれぞれ2割強の水準で推移している。また、セグメント利益の構成比で見ると、2021年3月期にファインケミカル事業の構成比が従来の5割強から7割まで上昇している。後述するが、コロナ禍による生活様式の変化によって自動車用、家庭用品等製品の販売が好調だったことによるもので、ポーラスマテリアル事業と合わせると全体の9割強を占めた。利益面では、ファインケミカル事業とポーラスマテリアル事業が主軸となっているが、そのほかの事業も安定して収益を得ており、バランスのとれた事業ポートフォリオになっている。なお、市場別売上構成比で見ると、自動車分野向けが6割弱を占める主力市場となっている。
1. ファインケミカル事業
ファインケミカル事業は大きく分けて、コンシューマ向けに販売されるカー用品(ボディケア、ガラスケア、リペアグッズ等)や家庭用品(メガネケア製品、クリーナー等)、自動車ディーラーや自動車美装業者、あるいはその他業界向けに販売される業務用製品(コーティング剤等)のほか、海外事業(主にカー用品)、タイヤ空気圧監視装置(以下、TPMS)、電子機器・ソフトウェア開発、その他(輸入販売・樹脂容器販売含む)の7つに区分される。2021年3月期の売上構成比を見ると、コンシューマ向けカー用品が全体の60%を占め、次いで業務用製品が13%、家庭用品等、海外事業が各10%、電子機器・ソフトウェアが4%、TPMSが1%となっている。
コンシューマ向けカー用品の市場シェアを見ると、カーワックスを中心としたボディケア分野で約4割となっている。競合大手はウィルソンやシュアラスターなどで、同社を含めて4〜5社で競っている。また、ガラスケア分野は、撥水剤において約7割の市場シェアを持ち、雨天でも視界を確保するガラスコーティング剤「ガラコ」シリーズが高い支持を集めている。競合は錦之堂やシーシーアイなどがある。リペアグッズ(補修材)は約6割の市場シェアを持ち、市場は同社と武蔵ホルトの2社で寡占市場となっている。
業務用製品は、主にコーティング剤を自動車美装業者向けに販売しているほか、自動車メーカーやディーラー向けにOEM製品も販売している。また、ここ数年では飲料用自動販売機や船舶、鉄道車両など、自動車業界以外の市場開拓も進めており、同事業の1割弱の比率を占めるまでになっている。なお、業務用コーティング剤の競合としては、自動車メーカー・ディーラー向けでは中央自動車工業<8117>のシェアが高い。また、2回目以降のコーティング費用を低価格で済ませたいユーザー向けには、KeePer技研<6036>がガソリンスタンド等を通じて販売している。ただ、耐久性能や品質では同社製品の評価が高く、輸入車専門ディーラー向けでも多く採用されている。
家庭用製品ではメガネケア製品で業界トップシェアを確立しているほか、各種衛生用品の製造販売を行っている。海外事業ではロシアや中国、東アジア向けが売上の中心で、現地代理店経由でコンシューマ向けカー用品や業務用製品の販売を展開している。また、ここ最近では欧州地域やインド、ブラジル等の新市場の開拓にも取り組んでいる。
TPMS事業では、国内の運送事業者(トラック・バス)向けTPMSの開発販売に加えて、2020年3月期より乗用車向けOEM製品の販売を開始している。TPMS(Tire Pressure Monitoring System)とは、タイヤ内の空気圧や温度をセンサーで常時監視し、異常が発生した場合に運転者に通知するシステムで、仕組みとしてはエアバルブと一体化したセンサー付き発信器をホイールに組み付け、運転席に設置される受信機に無線で信号を送信、モニタに数値データ等の情報を表示する。トラック運送事業者などは、車体の不具合に起因する交通事故を未然に防止するため、運行前点検の厳格化が指導されている。タイヤ空気圧も点検項目として必ず実施しているが、TPMSを搭載すれば点検作業が省力化できるほか、走行中の「安心・安全」にもつながることになり、ここ2〜3年で主に長距離トラックの運送業者向けに普及が進んでいる。
2019年3月期より新たに加わった電子機器・ソフトウェア開発事業は、主に工場の受変電設備や道路・河川の状況を計測・制御するための遠隔監視システムやコインパーキングの緊急電話システム、これらのシステムを制御するための組込みソフトウェアの開発・販売を行っている。
ファインケミカル事業の直近5年間の営業利益率は、10%台で安定して推移している。コンシューマ市場で高いシェアを獲得できていること、利益率の高い業務用製品の販売が着実に伸びていることが要因と見られる。海外事業の収益性に関しては仕入販売が含まれていることもあり低水準だが、現地専売品など付加価値の高い製品を投入していくことによって改善に取り組んでいる。また、TPMS事業についてはまだ損益分岐点に達しておらず、電子機器・ソフトウェア開発事業は若干の黒字となっている。
2. ポーラスマテリアル事業
子会社のアイオンで展開するポーラスマテリアル事業は、1999年にカネボウ(株)から譲り受けた事業で、ポリビニルアルコール(PVA)素材をベースとしたスポンジ(機能性多孔質吸収体)のパイオニア企業として知られている。高い吸水性能を生かして、主に産業資材や生活資材向けに開発製造を行っている。用途としては、産業資材では半導体やハードディスクの製造ライン用(洗浄・吸水工程、研磨工程)、コンシューマ向け生活資材では洗車用タオルやスポーツ用タオルなどがある。2021年3月期の売上構成比で見ると、産業資材が76%、生活資材が24%となっており、ここ数年で見ると産業資材が若干上昇傾向にある。また、海外売上比率が50%前後と高いことも特長で、特に半導体分野では韓国、台湾や米国の大手半導体メーカーを顧客に持ち、最先端プロセスの製造ライン用では、米国の1社と市場シェアを二分する格好となっている。一方で、同社は半導体業界の需要に左右されない事業基盤の構築と規模の拡大を図るべく、新用途の開拓にも積極的に注力している。具体的には、医療分野向け(インフルエンザ検査用キットの吸液スポンジ等)やプリンタ向け(インクヘッド部の吸液材)での採用が進んでいる。また、医療分野に関しては2020年8月に病院向け衛生関連製品の企画開発販売を行うアズテックを子会社化している。アズテックでは、特に大規模病院の手術室用モップでシェアが高く、直販並びに医療製品卸会社を通じて販売している。
直近5年間の営業利益率は10%台前半で安定して推移している。付加価値の高い半導体・ハードディスク製造ライン用製品がけん引しているためで、産業用資材のうちハイテク産業向けの売上比率は5割弱の水準となっている。なお、海外向けに関しては円建て取引のため、為替変動の直接的な影響はない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>
ソフト99コーポレーション<4464>は1954年(昭和29年)創業の自動車用・家庭用ケミカル用品の製造販売会社である。事業セグメントとしてはファインケミカル事業、ポーラスマテリアル事業、サービス事業、不動産関連事業の4つのセグメントで区分している。自動車分野を中心にM&Aも活用しながら業容を拡大しており、直近では2020年8月に病院向け衛生関連用品の企画開発・販売会社であるアズテックを子会社化した。現在、グループの連結子会社数は10社となっている。
直近5年間の事業セグメント別構成比を見ると売上高は大きな変動がなく、ファインケミカル事業が約5割、ポーラスマテリアル事業とサービス事業がそれぞれ2割強の水準で推移している。また、セグメント利益の構成比で見ると、2021年3月期にファインケミカル事業の構成比が従来の5割強から7割まで上昇している。後述するが、コロナ禍による生活様式の変化によって自動車用、家庭用品等製品の販売が好調だったことによるもので、ポーラスマテリアル事業と合わせると全体の9割強を占めた。利益面では、ファインケミカル事業とポーラスマテリアル事業が主軸となっているが、そのほかの事業も安定して収益を得ており、バランスのとれた事業ポートフォリオになっている。なお、市場別売上構成比で見ると、自動車分野向けが6割弱を占める主力市場となっている。
1. ファインケミカル事業
ファインケミカル事業は大きく分けて、コンシューマ向けに販売されるカー用品(ボディケア、ガラスケア、リペアグッズ等)や家庭用品(メガネケア製品、クリーナー等)、自動車ディーラーや自動車美装業者、あるいはその他業界向けに販売される業務用製品(コーティング剤等)のほか、海外事業(主にカー用品)、タイヤ空気圧監視装置(以下、TPMS)、電子機器・ソフトウェア開発、その他(輸入販売・樹脂容器販売含む)の7つに区分される。2021年3月期の売上構成比を見ると、コンシューマ向けカー用品が全体の60%を占め、次いで業務用製品が13%、家庭用品等、海外事業が各10%、電子機器・ソフトウェアが4%、TPMSが1%となっている。
コンシューマ向けカー用品の市場シェアを見ると、カーワックスを中心としたボディケア分野で約4割となっている。競合大手はウィルソンやシュアラスターなどで、同社を含めて4〜5社で競っている。また、ガラスケア分野は、撥水剤において約7割の市場シェアを持ち、雨天でも視界を確保するガラスコーティング剤「ガラコ」シリーズが高い支持を集めている。競合は錦之堂やシーシーアイなどがある。リペアグッズ(補修材)は約6割の市場シェアを持ち、市場は同社と武蔵ホルトの2社で寡占市場となっている。
業務用製品は、主にコーティング剤を自動車美装業者向けに販売しているほか、自動車メーカーやディーラー向けにOEM製品も販売している。また、ここ数年では飲料用自動販売機や船舶、鉄道車両など、自動車業界以外の市場開拓も進めており、同事業の1割弱の比率を占めるまでになっている。なお、業務用コーティング剤の競合としては、自動車メーカー・ディーラー向けでは中央自動車工業<8117>のシェアが高い。また、2回目以降のコーティング費用を低価格で済ませたいユーザー向けには、KeePer技研<6036>がガソリンスタンド等を通じて販売している。ただ、耐久性能や品質では同社製品の評価が高く、輸入車専門ディーラー向けでも多く採用されている。
家庭用製品ではメガネケア製品で業界トップシェアを確立しているほか、各種衛生用品の製造販売を行っている。海外事業ではロシアや中国、東アジア向けが売上の中心で、現地代理店経由でコンシューマ向けカー用品や業務用製品の販売を展開している。また、ここ最近では欧州地域やインド、ブラジル等の新市場の開拓にも取り組んでいる。
TPMS事業では、国内の運送事業者(トラック・バス)向けTPMSの開発販売に加えて、2020年3月期より乗用車向けOEM製品の販売を開始している。TPMS(Tire Pressure Monitoring System)とは、タイヤ内の空気圧や温度をセンサーで常時監視し、異常が発生した場合に運転者に通知するシステムで、仕組みとしてはエアバルブと一体化したセンサー付き発信器をホイールに組み付け、運転席に設置される受信機に無線で信号を送信、モニタに数値データ等の情報を表示する。トラック運送事業者などは、車体の不具合に起因する交通事故を未然に防止するため、運行前点検の厳格化が指導されている。タイヤ空気圧も点検項目として必ず実施しているが、TPMSを搭載すれば点検作業が省力化できるほか、走行中の「安心・安全」にもつながることになり、ここ2〜3年で主に長距離トラックの運送業者向けに普及が進んでいる。
2019年3月期より新たに加わった電子機器・ソフトウェア開発事業は、主に工場の受変電設備や道路・河川の状況を計測・制御するための遠隔監視システムやコインパーキングの緊急電話システム、これらのシステムを制御するための組込みソフトウェアの開発・販売を行っている。
ファインケミカル事業の直近5年間の営業利益率は、10%台で安定して推移している。コンシューマ市場で高いシェアを獲得できていること、利益率の高い業務用製品の販売が着実に伸びていることが要因と見られる。海外事業の収益性に関しては仕入販売が含まれていることもあり低水準だが、現地専売品など付加価値の高い製品を投入していくことによって改善に取り組んでいる。また、TPMS事業についてはまだ損益分岐点に達しておらず、電子機器・ソフトウェア開発事業は若干の黒字となっている。
2. ポーラスマテリアル事業
子会社のアイオンで展開するポーラスマテリアル事業は、1999年にカネボウ(株)から譲り受けた事業で、ポリビニルアルコール(PVA)素材をベースとしたスポンジ(機能性多孔質吸収体)のパイオニア企業として知られている。高い吸水性能を生かして、主に産業資材や生活資材向けに開発製造を行っている。用途としては、産業資材では半導体やハードディスクの製造ライン用(洗浄・吸水工程、研磨工程)、コンシューマ向け生活資材では洗車用タオルやスポーツ用タオルなどがある。2021年3月期の売上構成比で見ると、産業資材が76%、生活資材が24%となっており、ここ数年で見ると産業資材が若干上昇傾向にある。また、海外売上比率が50%前後と高いことも特長で、特に半導体分野では韓国、台湾や米国の大手半導体メーカーを顧客に持ち、最先端プロセスの製造ライン用では、米国の1社と市場シェアを二分する格好となっている。一方で、同社は半導体業界の需要に左右されない事業基盤の構築と規模の拡大を図るべく、新用途の開拓にも積極的に注力している。具体的には、医療分野向け(インフルエンザ検査用キットの吸液スポンジ等)やプリンタ向け(インクヘッド部の吸液材)での採用が進んでいる。また、医療分野に関しては2020年8月に病院向け衛生関連製品の企画開発販売を行うアズテックを子会社化している。アズテックでは、特に大規模病院の手術室用モップでシェアが高く、直販並びに医療製品卸会社を通じて販売している。
直近5年間の営業利益率は10%台前半で安定して推移している。付加価値の高い半導体・ハードディスク製造ライン用製品がけん引しているためで、産業用資材のうちハイテク産業向けの売上比率は5割弱の水準となっている。なお、海外向けに関しては円建て取引のため、為替変動の直接的な影響はない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>