日本電技 Research Memo(3):計装にはAIやIoTなど最新技術も取り込んでいる
[21/07/07]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■事業概要
1. 事業内容
日本電技<1723>の事業は空調計装関連事業と産業システム関連事業に大別され、2021年3月期の売上高構成比はそれぞれ84.6%、15.4%となっている。空調計装関連事業は、建物の建設時に空調計装工事を行う新設工事と、既設建物のメンテナンスやリニューアル工事を行う既設工事に分けることができる。空調計装の新設工事はサブコンから受注することが多く、既設工事はビルオーナーなどと直接契約して同社が元請になることが多い。一方、産業システム関連事業は、工場の生産ラインや搬送ラインなどをつなぐ計装から産業用ロボットの販売および制御などへと事業領域を拡大している。また、ジュピターアドバンスシステムズと連携、産業計装におけるシステム開発力を強化している。このほか、継続してAIやIoT、クラウドといった最新技術を取り込んでいる。これにより、次世代の空調計装「Building IoT」や産業計装「Industrial IoT」といった技術の開発に弾みをつけ、計装エンジニアリング企業として付加価値の高い新しいサービスの提供を目指している。
建物空調の自動制御をトータルプロデュース
2. 空調計装関連事業
空調計装とは、熱源制御、空調制御、動力制御、中央監視装置などによって、非居住用建築物の空調自動制御システムを総合的にプロデュースすることである。最適な自動制御システムにより快適なビル空間を実現し、また、設備・機器の更新提案や建物のエネルギー管理のサポート、省エネ化提案などを行うことで、顧客の建物資産の保全やライフサイクルコストの低減を支援している。同社の空調計装関連事業は、ビルシステム事業とソリューション事業に分けられる。ビルシステム事業は同社の主軸であり、建物の建築時に導入される空調・給排水衛生設備などのシステム設計から施工管理、引渡し前の試運転・調整、引き渡し時の取扱説明までをワンストップで行っている。また、建物が完成した後も、納入した設備・機器の保守や保全に携わり、エネルギー使用状況などの管理・分析や省エネ化を目的とした設備改修・更新などを提案することで、継続的に支援を行っている。ソリューション事業は、空調計装関連事業(既設)の施主やエンドユーザーなどと直接取引・契約をし、省エネ化など様々な課題に対し計装技術を用いて解決を図るビジネスである。
システム開発もできる「計装エンジニアリング」企業
3. 産業システム関連事業
産業システム関連事業とは、生産プロセス(生産工程)や搬送、工場全体を自動制御することであり、小規模工場から大規模工場までの自動制御に関わるシステムを提供する。そして、製品管理や品質保持、生産性向上、省コスト化、環境への配慮などを通じて、顧客のバリューチェーンを高度化することを目的としている。同社は、制御システムの設計から制御盤の製造、施工、メンテナンスまで、「計装エンジニアリング」技術に裏付けられたトータルプロデュース力に定評がある。具体的には、主に食品や医薬品の製造現場において、電気計装工事や特殊仕様のユーティリティ設備(冷温水、蒸気、圧縮空気等)などを設計施工、安全性の確保や仕分け作業の精度向上、効率性向上などをサポートしている。また、工場などで不要になって排出される廃温水や廃熱などを有効活用し、環境負荷の低減や工場・プラントでの省エネ化、運用コストの削減などにもつなげている。さらに、箱詰め・検査・組み立て・荷捌といった人手のかかる工程において、ピッキングロボットを活用するなど、生産性の向上や人材不足の解消、人が介在しないことによる安心・安全(フードディフェンス)の確保といった様々な課題に応えている。
強みの計装技術にAIやクラウドなどの最先端技術を融合
4. 研究開発の取り組み
IoT(Internet of things)とは「モノのインターネット」と呼ばれ、センサと通信機器が組み込まれたモノがインターネットを通じて相互につながり情報交換を行うことで、新たな価値やサービスを提供する仕組みのことである。同社は、次世代の空調計装や産業計装の確立を目指し、計装技術にAIやクラウドなどの最先端技術を融合した「Building IoT」や「Industrial IoT」を開発しているところである。
(1) 「Building IoT」
「Building IoT」では、ビル最適化運用、エネルギー管理サービス、遠隔保守サービスといったアプリケーションとサービスを提供している。ビル最適化運用は、ビルのエネルギー需要予測とデマンドレスポンス信号に応じて、熱源空調設備および電気設備(太陽光発電+蓄電池)の最適運用を図る。エネルギー管理サービスは、ビルの室内環境および電気、ガスなどのエネルギー消費の見える化アプリケーションによって、データ分析に基づいた省エネルギーサービスを提供している。遠隔保守サービスは、管理員が常駐しない中小規模ビル向けに、点検業務の自動化などビル設備の遠隔保守サービスを提供している。テレワークニーズにも対応すると考えられる。これらにより、例えば、天気予報と過去の運用実績データ(ビッグデータ)から人工知能がビルの冷暖房などに必要なエネルギー量を予測し、熱源設備や蓄電池設備などの運転計画を作成している。
(2) 「Industrial IoT」
「Industrial IoT」では、生産状況管理や品質管理、エネルギー管理など工場生産設備向けのアプリケーションとサービスを提供している。生産状況管理アプリケーションは、生産設備・装置の稼働状況や製品の生産状況をモニタリングし、計画と実績の比較など生産活動をリアルタイムに把握している。品質管理アプリケーションは、生産設備・装置の異常発生や製品の検品状況をモニタリングし、異常発生の原因特定や改善サポートを行う。エネルギー管理アプリケーションは生産設備・装置およびユーティリティ設備のエネルギー消費状況をモニタリングし、製品の生産状況と合わせて、工場全体のエネルギー利用効率などを分析する。これらにより、例えば、コンベア上を流れる製品をカメラで撮影し、AIを用いた画像診断で製品の識別を行い、自動仕分や良否判定を行うことができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<ST>
1. 事業内容
日本電技<1723>の事業は空調計装関連事業と産業システム関連事業に大別され、2021年3月期の売上高構成比はそれぞれ84.6%、15.4%となっている。空調計装関連事業は、建物の建設時に空調計装工事を行う新設工事と、既設建物のメンテナンスやリニューアル工事を行う既設工事に分けることができる。空調計装の新設工事はサブコンから受注することが多く、既設工事はビルオーナーなどと直接契約して同社が元請になることが多い。一方、産業システム関連事業は、工場の生産ラインや搬送ラインなどをつなぐ計装から産業用ロボットの販売および制御などへと事業領域を拡大している。また、ジュピターアドバンスシステムズと連携、産業計装におけるシステム開発力を強化している。このほか、継続してAIやIoT、クラウドといった最新技術を取り込んでいる。これにより、次世代の空調計装「Building IoT」や産業計装「Industrial IoT」といった技術の開発に弾みをつけ、計装エンジニアリング企業として付加価値の高い新しいサービスの提供を目指している。
建物空調の自動制御をトータルプロデュース
2. 空調計装関連事業
空調計装とは、熱源制御、空調制御、動力制御、中央監視装置などによって、非居住用建築物の空調自動制御システムを総合的にプロデュースすることである。最適な自動制御システムにより快適なビル空間を実現し、また、設備・機器の更新提案や建物のエネルギー管理のサポート、省エネ化提案などを行うことで、顧客の建物資産の保全やライフサイクルコストの低減を支援している。同社の空調計装関連事業は、ビルシステム事業とソリューション事業に分けられる。ビルシステム事業は同社の主軸であり、建物の建築時に導入される空調・給排水衛生設備などのシステム設計から施工管理、引渡し前の試運転・調整、引き渡し時の取扱説明までをワンストップで行っている。また、建物が完成した後も、納入した設備・機器の保守や保全に携わり、エネルギー使用状況などの管理・分析や省エネ化を目的とした設備改修・更新などを提案することで、継続的に支援を行っている。ソリューション事業は、空調計装関連事業(既設)の施主やエンドユーザーなどと直接取引・契約をし、省エネ化など様々な課題に対し計装技術を用いて解決を図るビジネスである。
システム開発もできる「計装エンジニアリング」企業
3. 産業システム関連事業
産業システム関連事業とは、生産プロセス(生産工程)や搬送、工場全体を自動制御することであり、小規模工場から大規模工場までの自動制御に関わるシステムを提供する。そして、製品管理や品質保持、生産性向上、省コスト化、環境への配慮などを通じて、顧客のバリューチェーンを高度化することを目的としている。同社は、制御システムの設計から制御盤の製造、施工、メンテナンスまで、「計装エンジニアリング」技術に裏付けられたトータルプロデュース力に定評がある。具体的には、主に食品や医薬品の製造現場において、電気計装工事や特殊仕様のユーティリティ設備(冷温水、蒸気、圧縮空気等)などを設計施工、安全性の確保や仕分け作業の精度向上、効率性向上などをサポートしている。また、工場などで不要になって排出される廃温水や廃熱などを有効活用し、環境負荷の低減や工場・プラントでの省エネ化、運用コストの削減などにもつなげている。さらに、箱詰め・検査・組み立て・荷捌といった人手のかかる工程において、ピッキングロボットを活用するなど、生産性の向上や人材不足の解消、人が介在しないことによる安心・安全(フードディフェンス)の確保といった様々な課題に応えている。
強みの計装技術にAIやクラウドなどの最先端技術を融合
4. 研究開発の取り組み
IoT(Internet of things)とは「モノのインターネット」と呼ばれ、センサと通信機器が組み込まれたモノがインターネットを通じて相互につながり情報交換を行うことで、新たな価値やサービスを提供する仕組みのことである。同社は、次世代の空調計装や産業計装の確立を目指し、計装技術にAIやクラウドなどの最先端技術を融合した「Building IoT」や「Industrial IoT」を開発しているところである。
(1) 「Building IoT」
「Building IoT」では、ビル最適化運用、エネルギー管理サービス、遠隔保守サービスといったアプリケーションとサービスを提供している。ビル最適化運用は、ビルのエネルギー需要予測とデマンドレスポンス信号に応じて、熱源空調設備および電気設備(太陽光発電+蓄電池)の最適運用を図る。エネルギー管理サービスは、ビルの室内環境および電気、ガスなどのエネルギー消費の見える化アプリケーションによって、データ分析に基づいた省エネルギーサービスを提供している。遠隔保守サービスは、管理員が常駐しない中小規模ビル向けに、点検業務の自動化などビル設備の遠隔保守サービスを提供している。テレワークニーズにも対応すると考えられる。これらにより、例えば、天気予報と過去の運用実績データ(ビッグデータ)から人工知能がビルの冷暖房などに必要なエネルギー量を予測し、熱源設備や蓄電池設備などの運転計画を作成している。
(2) 「Industrial IoT」
「Industrial IoT」では、生産状況管理や品質管理、エネルギー管理など工場生産設備向けのアプリケーションとサービスを提供している。生産状況管理アプリケーションは、生産設備・装置の稼働状況や製品の生産状況をモニタリングし、計画と実績の比較など生産活動をリアルタイムに把握している。品質管理アプリケーションは、生産設備・装置の異常発生や製品の検品状況をモニタリングし、異常発生の原因特定や改善サポートを行う。エネルギー管理アプリケーションは生産設備・装置およびユーティリティ設備のエネルギー消費状況をモニタリングし、製品の生産状況と合わせて、工場全体のエネルギー利用効率などを分析する。これらにより、例えば、コンベア上を流れる製品をカメラで撮影し、AIを用いた画像診断で製品の識別を行い、自動仕分や良否判定を行うことができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<ST>