コスモスイニシア Research Memo(2):都市環境をプロデュースする企業へと進化
[21/07/19]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 会社概要
コスモスイニシア<8844>は首都圏や近畿圏を中心にマンションや一戸建を取り扱う、大和ハウスグループの中堅デベロッパーである。1次取得者向けファミリータイプのマンション開発を長年事業展開してきており、新築マンションの累計供給戸数は107,000戸に達している。ちなみに、主力のマンションブランドは「イニシア」で、リクルートコスモス時代には「コスモ」を使用していた。顧客のニーズが多様化するなか、新築マンションのほか、一戸建の新築分譲やリノベーションマンション販売、リフォーム工事、リテール仲介、入居後サービスなど、一般消費者向けに様々な商品とサービスをワンストップで提供するようになった。2000年代に入って本格化した一戸建て住宅は、すでに累計供給戸数が4,500戸に迫ろうとしている。また、事業用不動産保有者向けには、投資用不動産販売、賃貸マンションやオフィスビルのサブリース、事業用不動産仲介、不動産コンサルティングなど不動産活用のワンストップソリューションを提供している。このように、従来のマンション開発を軸とした事業から、同社は事業ポートフォリオを大きく広げ、都市環境をプロデュースする企業へと進化を続けている。
宿泊事業以外は限定的だったコロナ禍の影響
2. 沿革と大和ハウス工業との資本業務提携によるメリット
1969年に日本リクルートセンターの子会社、株式会社日本リクルート映画社として同社は設立されたが、1974年に不動産事業に転換した。1985年には社名を株式会社リクルートコスモスに変更し、1986年に店頭公開(現東証JASDAQ市場)、2005年にMBOによりリクルートグループから独立し、2006年に現社名となった。リーマンショックによる不動産市況悪化の影響を受けて2009年に債務超過に陥ったことから事業再生ADR手続を申請、金融機関による金融支援や大和ハウス工業へのマンション管理会社の売却などを軸とした事業再生計画をスタートした。2013年に事業再生ADR債務を完済し事業再生計画が終了したのち、大和ハウス工業と資本業務提携契約を締結し子会社となった。
ちなみに、この、大和ハウス工業による同社の子会社化は、シナジー発揮の典型例と言える。同社にとって、不動産開発を行ううえで重要な資金調達力が向上、信用の補完や総合力のサポートという点で大きな支援となった。また、買収に際して大和ハウス工業は被買収企業の経営を尊重することから、同社の場合も、人材活用や運営、上場維持など自主性が重んじられた。このため、経営やブランドの継続性を維持することができ、その後の収益回復の原動力となった。一方、戸建住宅や賃貸住宅、商業・事業施設など多くの事業を抱える大和ハウス工業にも、マンション事業において、最大市場である首都圏でのプレゼンスが小さいという課題があった。それが、首都圏中心に用地取得などで強みを持つ同社がグループに加わったことで、マンション事業の拡大に弾みが付くことになったのである。
同社は、大和ハウスグループ入りした後、このような良好な関係の中で成長戦略を推進してきた。ところが、2020年に世界に蔓延したコロナ禍の影響を、同社も受けることとなった。但し、後述するように、影響は宿泊事業で強く生じたが、主力のレジデンシャル事業やソリューション事業などへの影響は非常に限定的であった。2021年3月期の業績を見て、短中期に同社の成長戦略がストップしたかのように見えるかもしれないが、同社の考える中長期の経営方針に大きな変化はないと考えられることから、成長トレンドは遠からず従来のペースに回帰していくと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<ST>
1. 会社概要
コスモスイニシア<8844>は首都圏や近畿圏を中心にマンションや一戸建を取り扱う、大和ハウスグループの中堅デベロッパーである。1次取得者向けファミリータイプのマンション開発を長年事業展開してきており、新築マンションの累計供給戸数は107,000戸に達している。ちなみに、主力のマンションブランドは「イニシア」で、リクルートコスモス時代には「コスモ」を使用していた。顧客のニーズが多様化するなか、新築マンションのほか、一戸建の新築分譲やリノベーションマンション販売、リフォーム工事、リテール仲介、入居後サービスなど、一般消費者向けに様々な商品とサービスをワンストップで提供するようになった。2000年代に入って本格化した一戸建て住宅は、すでに累計供給戸数が4,500戸に迫ろうとしている。また、事業用不動産保有者向けには、投資用不動産販売、賃貸マンションやオフィスビルのサブリース、事業用不動産仲介、不動産コンサルティングなど不動産活用のワンストップソリューションを提供している。このように、従来のマンション開発を軸とした事業から、同社は事業ポートフォリオを大きく広げ、都市環境をプロデュースする企業へと進化を続けている。
宿泊事業以外は限定的だったコロナ禍の影響
2. 沿革と大和ハウス工業との資本業務提携によるメリット
1969年に日本リクルートセンターの子会社、株式会社日本リクルート映画社として同社は設立されたが、1974年に不動産事業に転換した。1985年には社名を株式会社リクルートコスモスに変更し、1986年に店頭公開(現東証JASDAQ市場)、2005年にMBOによりリクルートグループから独立し、2006年に現社名となった。リーマンショックによる不動産市況悪化の影響を受けて2009年に債務超過に陥ったことから事業再生ADR手続を申請、金融機関による金融支援や大和ハウス工業へのマンション管理会社の売却などを軸とした事業再生計画をスタートした。2013年に事業再生ADR債務を完済し事業再生計画が終了したのち、大和ハウス工業と資本業務提携契約を締結し子会社となった。
ちなみに、この、大和ハウス工業による同社の子会社化は、シナジー発揮の典型例と言える。同社にとって、不動産開発を行ううえで重要な資金調達力が向上、信用の補完や総合力のサポートという点で大きな支援となった。また、買収に際して大和ハウス工業は被買収企業の経営を尊重することから、同社の場合も、人材活用や運営、上場維持など自主性が重んじられた。このため、経営やブランドの継続性を維持することができ、その後の収益回復の原動力となった。一方、戸建住宅や賃貸住宅、商業・事業施設など多くの事業を抱える大和ハウス工業にも、マンション事業において、最大市場である首都圏でのプレゼンスが小さいという課題があった。それが、首都圏中心に用地取得などで強みを持つ同社がグループに加わったことで、マンション事業の拡大に弾みが付くことになったのである。
同社は、大和ハウスグループ入りした後、このような良好な関係の中で成長戦略を推進してきた。ところが、2020年に世界に蔓延したコロナ禍の影響を、同社も受けることとなった。但し、後述するように、影響は宿泊事業で強く生じたが、主力のレジデンシャル事業やソリューション事業などへの影響は非常に限定的であった。2021年3月期の業績を見て、短中期に同社の成長戦略がストップしたかのように見えるかもしれないが、同社の考える中長期の経営方針に大きな変化はないと考えられることから、成長トレンドは遠からず従来のペースに回帰していくと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<ST>