リソル Research Memo(5):コロナ禍で減収も大幅な営業増益を達成
[21/07/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2021年3月期の業績動向
リソルホールディングス<5261>の2021年3月期の業績は、売上高19,534百万円(前期比5.2%減)、営業利益1,052百万円(同148.6%増)、経常利益1,673百万円(同66.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益310百万円(同191.1%増)となった。国内経済は、コロナ禍の影響により企業収益の大幅な減少や雇用情勢の悪化など厳しい状況にあったが、経済活動にも徐々に再開へ向けた動きが見られるようになり、ニューノーマルという環境への順応と同時に新たな可能性を模索する動きも活発となった。
こうした環境下、同社の業績は減収大幅増益となった。同社は、顧客や従業員の安全確保を最優先しながら、コロナ禍における新たな価値観に対応した新商品・サービスの開発を通じて、成長事業の拡大と事業基盤の構築を推進するなど積極経営を継続した。しかしながら売上面では、ホテル運営事業など一部事業でコロナ禍の影響を受け、運営施設の一時的な休館や顧客の利用自粛などにより減収となった。一方利益面では、コロナ禍における期間損失や新規施設の開業準備費を、投資再生事業における福島石川太陽光発電所第一設備や鹿児島のリゾートなどの売却、販管費の削減でカバー、営業利益で大幅な増益を達成することができた。なお、営業外収益で雇用調整助成金、特別損失で新型コロナウイルス感染症による損失を計上している。
特徴のシナジー効果を発揮
2. 2021年3月期事業部門別の業績動向
事業別部門の業績は、ホテル運営事業部門が売上高4,072百万円(前期比59.7%減)、経常損失1,709百万円(同2,289百万円の減益)、ゴルフ運営事業部門が売上高3,604百万円(同24.6%減)、経常利益114百万円(同57.9%減)、リソルの森事業部門が売上高2,080百万円(同5.5%減)、経常損失105百万円(同224百万円の増益)、福利厚生事業部門が売上高1,353百万円(同21.1%減)、経常利益133百万円(同132.3%増)、再生エネルギー事業部門が売上高1,239百万円(同258.9%増)、経常利益605百万円(同529.8%増)、投資再生事業部門が売上高7,183百万円(同392.0%増)、経常利益3,517百万円(同42.8%増)となった。コロナ禍におけるホテル運営事業とゴルフ運営事業の低迷を、再生エネルギー事業や投資再生事業が救った形で、6事業によるシナジーモデルがポートフォリオ効果を発揮したと言うことができる。
ホテル運営事業では、2020年7月に清潔感ある空間とくつろぎを演出した「ホテルリソル上野」、10月に日本人の美学“陰翳礼讃”をコンセプトとする「ホテルリソルトリニティ大阪」の運営を開始して事業基盤の拡大を目指した。しかし、コロナ禍や政府による緊急事態宣言の再度の発出、インバウンド宿泊者の激減などにより大きな打撃を受けることとなった。一時Go Toトラベルキャンペーンにより収益が改善する瞬間もあったが、最大16ホテルの休業(第1四半期)、予約キャンセルの大規模な発生、新規予約の低迷など、年間平均稼働率が大きく低下した。利益面では、休館に伴う経費などの削減に努めたが、期間損失に加え新規開業にかかわる開業準備費の発生も重なった。
ホテル内での感染防止対策や顧客と従業員の安心安全を最優先した運営サービスを徹底する一方、コロナ禍における新たな価値観に対応して、テレワークプランやマンスリーサブスクリプションなど3密を避けた商品・サービスの強化や、宿泊のみから観光案内も含めた利便性の高いプランなど、宿泊以外でも楽しめる付加価値を付けたプランを積極的に展開した。また、茨城県で展開する「スパ & ゴルフリゾート久慈」で建設を進めていたゴルフヴィラ3棟が2020年4月に完成したが、3密を避けた安心のプライベートリゾートとして顧客からの大きな支持を受けた。那須や伊豆高原で展開する“ペット & スパホテル”では、顧客満足度の向上と運営現場のローコスト化を推進したことで収益が改善した。
ゴルフ運営事業では、安心安全な運営サービスを図った上で動画やポスターを活用して来場を促し、屋外でのスポーツ需要は高まったものの、コロナ禍で企業需要(コンペや宴会など)が振るわなかった。そこで、コロナ禍に合ったプレースタイルとして、1人でもプレーできる「SOLO-GOLF」や健康維持のためのゴルフコースでの「ウォーキングプラン」、夜間のゴルフ場を利用したキャンプ、アラカルトを取り入れたレストラン運営など、特に個人の需要を喚起する新たなプランを提案した。また、2020年3月期に導入した「リソルカードナビステーション(ナビステ)」が、リソルカードで受付から精算までをワンストップで行うことで人との接触を低減できるため引き続き好評だったほか、QRコードによるポイント優待施策や積極的な情報配信などにより会員のロイヤリティ化を図り、「リソルカードG」会員のリピート率向上につなげることができた。
リソルの森事業では、緊急事態宣言の発出を受けて第1四半期と第4四半期は、ゴルフ場以外の施設を適宜クローズして最小限のコストでの運営を行った。第2四半期と第3四半期は、Go Toトラベル事業を最大限活用、増強したグランピングエリアや、ゴルフにリゾート宿泊を絡めた新商品が、高単価ながら高稼働を維持するなど好評だった。ゴルフ部門は、リニューアルした宿泊エリアとの相乗効果で新規会員権販売が好調に推移した。さらに、「Sport in lifeプロジェクト」の本格展開、「ゴルフバケーションクラブ」の企画・販売、「ウェルネスリタイアメントコミュニティ構想」の推進など、引き続き積極的に事業の基盤強化に取り組んだ。全体としては、団体の合宿や研修は厳しかったが、個人向けが堅調に推移したため収益改善が進んだ。なお、「グランヴォー スパ ヴィレッジ」内にある「紅葉乃湯」が2020年度のグッドデザイン賞を受賞した。
福利厚生事業では、コロナ禍における働く人々の健康と幸せづくりをサポートするためのサービス提供に注力したが、宿泊やレジャーメニューなどの人気サービスで利用者数が減少した。一方、直営施設を中心にGo Toトラベルキャンペーンや巣ごもり需要に対応した施策を実行、手数料売上の獲得と提携施設との連携強化を図ったことで収益改善につながった。2021年3月、同社子会社のリソルライフサポート(株)が、メンタルヘルスケア業界最大手のアドバンテッジリスクマネジメント<8769>を引受先とする第三者割当増資を行った。アドバンテッジリスクマネジメントの持つ、健康経営支援事業・(治療と仕事の)両立支援事業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームおよび課題解決のためのソリューション商品と、リソルライフサポートの有する総合的福利厚生サービスを活用し、「健康経営・両立支援」と「福利厚生」を一体化した、従業員エンゲージメント向上のための商品・サービスを開発する方針である。
再生エネルギー事業では、福島石川太陽光発電所の発電量確保のため施策周辺の整備などを実施した。また、「リソルの森」内で、2020年4月に地産地消エネルギーシステムを稼働、1.5メガワットの太陽光発電事業についても2022年3月期中の売電開始に向けて準備を進めた。世界的に脱炭素へ向けた動きが強まる中、「地球にやさしい」企業としてさらに再生エネルギーの事業に注力していく。投資再生事業では、旧ゴルフ場を用地変換して開発した福島石川太陽光発電所第一設備を、売電開始に伴って売却した。今後も脱炭素ニーズを見据え、既存ゴルフ場の一部や新規取得ゴルフ場の再生可能エネルギー転用を推進、再エネ権利付与地として売却する事業を推進していく考えである。さらに、運営施設のバリューアップ型投資再生ビジネスとして、鹿児島のリゾート施設の売却を行った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2021年3月期の業績動向
リソルホールディングス<5261>の2021年3月期の業績は、売上高19,534百万円(前期比5.2%減)、営業利益1,052百万円(同148.6%増)、経常利益1,673百万円(同66.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益310百万円(同191.1%増)となった。国内経済は、コロナ禍の影響により企業収益の大幅な減少や雇用情勢の悪化など厳しい状況にあったが、経済活動にも徐々に再開へ向けた動きが見られるようになり、ニューノーマルという環境への順応と同時に新たな可能性を模索する動きも活発となった。
こうした環境下、同社の業績は減収大幅増益となった。同社は、顧客や従業員の安全確保を最優先しながら、コロナ禍における新たな価値観に対応した新商品・サービスの開発を通じて、成長事業の拡大と事業基盤の構築を推進するなど積極経営を継続した。しかしながら売上面では、ホテル運営事業など一部事業でコロナ禍の影響を受け、運営施設の一時的な休館や顧客の利用自粛などにより減収となった。一方利益面では、コロナ禍における期間損失や新規施設の開業準備費を、投資再生事業における福島石川太陽光発電所第一設備や鹿児島のリゾートなどの売却、販管費の削減でカバー、営業利益で大幅な増益を達成することができた。なお、営業外収益で雇用調整助成金、特別損失で新型コロナウイルス感染症による損失を計上している。
特徴のシナジー効果を発揮
2. 2021年3月期事業部門別の業績動向
事業別部門の業績は、ホテル運営事業部門が売上高4,072百万円(前期比59.7%減)、経常損失1,709百万円(同2,289百万円の減益)、ゴルフ運営事業部門が売上高3,604百万円(同24.6%減)、経常利益114百万円(同57.9%減)、リソルの森事業部門が売上高2,080百万円(同5.5%減)、経常損失105百万円(同224百万円の増益)、福利厚生事業部門が売上高1,353百万円(同21.1%減)、経常利益133百万円(同132.3%増)、再生エネルギー事業部門が売上高1,239百万円(同258.9%増)、経常利益605百万円(同529.8%増)、投資再生事業部門が売上高7,183百万円(同392.0%増)、経常利益3,517百万円(同42.8%増)となった。コロナ禍におけるホテル運営事業とゴルフ運営事業の低迷を、再生エネルギー事業や投資再生事業が救った形で、6事業によるシナジーモデルがポートフォリオ効果を発揮したと言うことができる。
ホテル運営事業では、2020年7月に清潔感ある空間とくつろぎを演出した「ホテルリソル上野」、10月に日本人の美学“陰翳礼讃”をコンセプトとする「ホテルリソルトリニティ大阪」の運営を開始して事業基盤の拡大を目指した。しかし、コロナ禍や政府による緊急事態宣言の再度の発出、インバウンド宿泊者の激減などにより大きな打撃を受けることとなった。一時Go Toトラベルキャンペーンにより収益が改善する瞬間もあったが、最大16ホテルの休業(第1四半期)、予約キャンセルの大規模な発生、新規予約の低迷など、年間平均稼働率が大きく低下した。利益面では、休館に伴う経費などの削減に努めたが、期間損失に加え新規開業にかかわる開業準備費の発生も重なった。
ホテル内での感染防止対策や顧客と従業員の安心安全を最優先した運営サービスを徹底する一方、コロナ禍における新たな価値観に対応して、テレワークプランやマンスリーサブスクリプションなど3密を避けた商品・サービスの強化や、宿泊のみから観光案内も含めた利便性の高いプランなど、宿泊以外でも楽しめる付加価値を付けたプランを積極的に展開した。また、茨城県で展開する「スパ & ゴルフリゾート久慈」で建設を進めていたゴルフヴィラ3棟が2020年4月に完成したが、3密を避けた安心のプライベートリゾートとして顧客からの大きな支持を受けた。那須や伊豆高原で展開する“ペット & スパホテル”では、顧客満足度の向上と運営現場のローコスト化を推進したことで収益が改善した。
ゴルフ運営事業では、安心安全な運営サービスを図った上で動画やポスターを活用して来場を促し、屋外でのスポーツ需要は高まったものの、コロナ禍で企業需要(コンペや宴会など)が振るわなかった。そこで、コロナ禍に合ったプレースタイルとして、1人でもプレーできる「SOLO-GOLF」や健康維持のためのゴルフコースでの「ウォーキングプラン」、夜間のゴルフ場を利用したキャンプ、アラカルトを取り入れたレストラン運営など、特に個人の需要を喚起する新たなプランを提案した。また、2020年3月期に導入した「リソルカードナビステーション(ナビステ)」が、リソルカードで受付から精算までをワンストップで行うことで人との接触を低減できるため引き続き好評だったほか、QRコードによるポイント優待施策や積極的な情報配信などにより会員のロイヤリティ化を図り、「リソルカードG」会員のリピート率向上につなげることができた。
リソルの森事業では、緊急事態宣言の発出を受けて第1四半期と第4四半期は、ゴルフ場以外の施設を適宜クローズして最小限のコストでの運営を行った。第2四半期と第3四半期は、Go Toトラベル事業を最大限活用、増強したグランピングエリアや、ゴルフにリゾート宿泊を絡めた新商品が、高単価ながら高稼働を維持するなど好評だった。ゴルフ部門は、リニューアルした宿泊エリアとの相乗効果で新規会員権販売が好調に推移した。さらに、「Sport in lifeプロジェクト」の本格展開、「ゴルフバケーションクラブ」の企画・販売、「ウェルネスリタイアメントコミュニティ構想」の推進など、引き続き積極的に事業の基盤強化に取り組んだ。全体としては、団体の合宿や研修は厳しかったが、個人向けが堅調に推移したため収益改善が進んだ。なお、「グランヴォー スパ ヴィレッジ」内にある「紅葉乃湯」が2020年度のグッドデザイン賞を受賞した。
福利厚生事業では、コロナ禍における働く人々の健康と幸せづくりをサポートするためのサービス提供に注力したが、宿泊やレジャーメニューなどの人気サービスで利用者数が減少した。一方、直営施設を中心にGo Toトラベルキャンペーンや巣ごもり需要に対応した施策を実行、手数料売上の獲得と提携施設との連携強化を図ったことで収益改善につながった。2021年3月、同社子会社のリソルライフサポート(株)が、メンタルヘルスケア業界最大手のアドバンテッジリスクマネジメント<8769>を引受先とする第三者割当増資を行った。アドバンテッジリスクマネジメントの持つ、健康経営支援事業・(治療と仕事の)両立支援事業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォームおよび課題解決のためのソリューション商品と、リソルライフサポートの有する総合的福利厚生サービスを活用し、「健康経営・両立支援」と「福利厚生」を一体化した、従業員エンゲージメント向上のための商品・サービスを開発する方針である。
再生エネルギー事業では、福島石川太陽光発電所の発電量確保のため施策周辺の整備などを実施した。また、「リソルの森」内で、2020年4月に地産地消エネルギーシステムを稼働、1.5メガワットの太陽光発電事業についても2022年3月期中の売電開始に向けて準備を進めた。世界的に脱炭素へ向けた動きが強まる中、「地球にやさしい」企業としてさらに再生エネルギーの事業に注力していく。投資再生事業では、旧ゴルフ場を用地変換して開発した福島石川太陽光発電所第一設備を、売電開始に伴って売却した。今後も脱炭素ニーズを見据え、既存ゴルフ場の一部や新規取得ゴルフ場の再生可能エネルギー転用を推進、再エネ権利付与地として売却する事業を推進していく考えである。さらに、運営施設のバリューアップ型投資再生ビジネスとして、鹿児島のリゾート施設の売却を行った。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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