1stコーポ Research Memo(2):分譲マンションに特化したゼネコン
[21/08/11]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ファーストコーポレーション<1430>の事業内容と沿革
1. 事業内容
創業は2011年6月で、資本金40,000千円でスタートした。以来、「より良質な住宅を供給し、豊かな住環境に貢献する」を社是、「安全・安心・堅実」をモットーとして、良質で安価な住宅を供給してきた。分譲マンション建設に特化したゼネコンである。
事業エリアは、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で展開している。これら首都圏と呼ばれるエリアは、全国的に人口減少となるなかで、依然として人口が増加傾向にあるほか、再開発需要が旺盛であるため、マンション需要はなお拡大する見通しだ。
国土交通省の建築着工統計調査報告によると、首都圏1都3県のマンション建設の着工戸数は、2020年は53,913戸と前年比で9.2%減となった。2018年に落ち込んだ後、2019年に回復する兆しをみせたところで、新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)の影響もあって再びダウンしているが、2021年には前年比11.3%増の60,000戸と回復する見通しだ。コロナ禍においては不透明感が残りながらも、消費者のマンション購入意欲が強いことが示された。一方、マンションの供給戸数は、さらに増加率が大きく、2020年の27,228戸から2021年は同17.5%増の32,000戸となる見通しだ。コロナ禍の影響でモデルルームの稼働が止まるなど、販売活動が大きく制限されたものが、徐々に落ち着いてくるものとみられる。
価格面では良好な状態に変わりがみられない。首都圏のマンション価格は2018年に一段落した格好となったが、2019年から再び上向いている。2020年の都下の販売価格平均は6,082万円と2019年の5,980万円から上昇し、2021年は5月までの統計で6,449万円となった。とりわけ、都区部の上昇が著しく、2020年は7,712万円と2019年の7,286万円からアップし、2021年も5月までで8,100万円とついに8,000万円を突破した。
このように、東京圏においては都区部と都下や神奈川、千葉、埼玉3県など郊外との価格に二極化が進んでいる。都区部は富裕層向けに、後者は一般勤労者向けにそれぞれニーズが高い状況だが、同社が主体とするファミリー向けについては、価格面から消費者が郊外に物件を求める傾向が強いという。また、コロナ禍の影響によるテレワーク化の推進で、居住地を都心に求める必要がなくなる層も拡大、生活様式の変化から今後は郊外案件の引き合いも活発化しそうな状況だ。
そのため、優良な案件については、都区部のみならず郊外においても競争が激化しており、用地確保の環境は激戦となることが想定されている。そうしたなか、同社は強みである「造注方式」を生かして良質なマンションを供給し、収益アップを図る意向だ。
同社は、この「造注方式」を武器に創業後は急速に成長、2015年3月には東証マザーズに創業からわずか3年9ヶ月で上場し、2016年12月には東証1部に指定替えとなった。現在は、成長の踊り場となっている格好だが、今後は再開発事業など業容に厚みが加わることから、再び成長路線を歩むことが想定されている。
造注方式により収益力がアップ
2. 事業モデル
同社が急成長を遂げた背景に、「造注方式」と呼ぶ事業モデルがある。これは他社に先駆けて、マンション用地を仕入れ、企画・設計を行い事業主に提案、特命で工事を受注して施工し引き渡す方式だ。各事業主のニーズに合った事業開発を提案するなかで、精度の高い用地情報を幅広く収集して、用地情報の確保から企画提案までを最短10日間というスピードで実現している。
造注方式の具体的な流れは、まず不動産会社や金融機関、土地所有者など、多岐にわたる独自のネットワークを駆使してマンション用地情報の収集を行い、次に、立地特性を最大限に生かせるよう、周辺環境、マーケティング、権利関係、各種法規制等の調査を実施し、クオリティの高い、そうしたプランから事業主に対し、土地代、建築費、設計料等の諸経費をもとに事業収支を作成し、より緻密で正確な事業計画の提案を行う。そのうえで、事業主の要望を立案する。
そして、効率的なプランをベースに適正かつ有効的な建築費の見積りを行い、オリジナルの各種標準仕様を選定する。最大限に考慮した建築費の見積りを提示し、工事を特命で受注することになる。
造注方式は、同社が土地を押さえることによって主体的に企画提案を行うことができるため、競争入札で建設工事を受注する場合と比較して契約条件が良くなる。一般的に、建設会社はこうした特命工事の比重をいかに高められるかが、収益向上につながるポイントとなるが、同社は「造注方式」により高い特命比率を実現し、事業運営の効率化や安定した利益確保を可能としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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1. 事業内容
創業は2011年6月で、資本金40,000千円でスタートした。以来、「より良質な住宅を供給し、豊かな住環境に貢献する」を社是、「安全・安心・堅実」をモットーとして、良質で安価な住宅を供給してきた。分譲マンション建設に特化したゼネコンである。
事業エリアは、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で展開している。これら首都圏と呼ばれるエリアは、全国的に人口減少となるなかで、依然として人口が増加傾向にあるほか、再開発需要が旺盛であるため、マンション需要はなお拡大する見通しだ。
国土交通省の建築着工統計調査報告によると、首都圏1都3県のマンション建設の着工戸数は、2020年は53,913戸と前年比で9.2%減となった。2018年に落ち込んだ後、2019年に回復する兆しをみせたところで、新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)の影響もあって再びダウンしているが、2021年には前年比11.3%増の60,000戸と回復する見通しだ。コロナ禍においては不透明感が残りながらも、消費者のマンション購入意欲が強いことが示された。一方、マンションの供給戸数は、さらに増加率が大きく、2020年の27,228戸から2021年は同17.5%増の32,000戸となる見通しだ。コロナ禍の影響でモデルルームの稼働が止まるなど、販売活動が大きく制限されたものが、徐々に落ち着いてくるものとみられる。
価格面では良好な状態に変わりがみられない。首都圏のマンション価格は2018年に一段落した格好となったが、2019年から再び上向いている。2020年の都下の販売価格平均は6,082万円と2019年の5,980万円から上昇し、2021年は5月までの統計で6,449万円となった。とりわけ、都区部の上昇が著しく、2020年は7,712万円と2019年の7,286万円からアップし、2021年も5月までで8,100万円とついに8,000万円を突破した。
このように、東京圏においては都区部と都下や神奈川、千葉、埼玉3県など郊外との価格に二極化が進んでいる。都区部は富裕層向けに、後者は一般勤労者向けにそれぞれニーズが高い状況だが、同社が主体とするファミリー向けについては、価格面から消費者が郊外に物件を求める傾向が強いという。また、コロナ禍の影響によるテレワーク化の推進で、居住地を都心に求める必要がなくなる層も拡大、生活様式の変化から今後は郊外案件の引き合いも活発化しそうな状況だ。
そのため、優良な案件については、都区部のみならず郊外においても競争が激化しており、用地確保の環境は激戦となることが想定されている。そうしたなか、同社は強みである「造注方式」を生かして良質なマンションを供給し、収益アップを図る意向だ。
同社は、この「造注方式」を武器に創業後は急速に成長、2015年3月には東証マザーズに創業からわずか3年9ヶ月で上場し、2016年12月には東証1部に指定替えとなった。現在は、成長の踊り場となっている格好だが、今後は再開発事業など業容に厚みが加わることから、再び成長路線を歩むことが想定されている。
造注方式により収益力がアップ
2. 事業モデル
同社が急成長を遂げた背景に、「造注方式」と呼ぶ事業モデルがある。これは他社に先駆けて、マンション用地を仕入れ、企画・設計を行い事業主に提案、特命で工事を受注して施工し引き渡す方式だ。各事業主のニーズに合った事業開発を提案するなかで、精度の高い用地情報を幅広く収集して、用地情報の確保から企画提案までを最短10日間というスピードで実現している。
造注方式の具体的な流れは、まず不動産会社や金融機関、土地所有者など、多岐にわたる独自のネットワークを駆使してマンション用地情報の収集を行い、次に、立地特性を最大限に生かせるよう、周辺環境、マーケティング、権利関係、各種法規制等の調査を実施し、クオリティの高い、そうしたプランから事業主に対し、土地代、建築費、設計料等の諸経費をもとに事業収支を作成し、より緻密で正確な事業計画の提案を行う。そのうえで、事業主の要望を立案する。
そして、効率的なプランをベースに適正かつ有効的な建築費の見積りを行い、オリジナルの各種標準仕様を選定する。最大限に考慮した建築費の見積りを提示し、工事を特命で受注することになる。
造注方式は、同社が土地を押さえることによって主体的に企画提案を行うことができるため、競争入札で建設工事を受注する場合と比較して契約条件が良くなる。一般的に、建設会社はこうした特命工事の比重をいかに高められるかが、収益向上につながるポイントとなるが、同社は「造注方式」により高い特命比率を実現し、事業運営の効率化や安定した利益確保を可能としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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