1stコーポ Research Memo(5):土地の手当が引き続き課題に
[21/08/11]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の展開
1. 事業環境と見通し
マンション開発において「土地を制する者がすべてを制する」(中村利秋(なかむらとしあき)代表取締役社長)と言われるなかで、ファーストコーポレーション<1430>は本格的に土地開発の専任部隊を置き、良質な土地を確保している。そこにデベロッパーと協調しながら良い建物を建てていく──そうした形で事業を進めているが、現実に造注方式の大元となる建設用地の確保が着実に進んでいる。
直近の収益動向は、コロナ禍による一時的な悪化要因のほか、用地確保が厳しかったことが伸び率の鈍化につながった。ホテルとの競争激化が沈静化しながらも、なお、地権者は強気な状況にあり、用地取得についての環境は引き続き楽観視できない。
ただ、土地取引に関しては、かつてがそうだったように、潮目が変わるとがらりと様相が変化する特徴がある。用地確保がスムーズになるとともに、造注方式による案件のさらなる増加が見込めるようになれば、収益が再び上向くことを期待できるようになり、現在はその兆候が現れている状況だ。今後も、良質な土地をいかに手当てできるかが課題となる。
また、将来的な成長を考えるうえで注目できるのが、健康な高齢者向けのマンション、いわゆるアクティブシニア向けのマンションだ。高齢者向けのマンションというと、多くの業者が介護付きのサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で展開しており、アクティブシニア向けを手掛ける業者は少ないが、同社はこの分野で先行している。
アクティブシニア向けは、そもそも通勤仕様ではないため、駅前立地でなくて良い。さらに、温泉やジムなど付帯設備の建設で単価がアップできるなど、利益面でも期待できる案件だ。2021年5月期に売却して収益に貢献した大型案件である東京都八王子市のプロジェクトも、アクティブシニア層を主要ターゲットとしたマンションとして共同事業で行った案件だ。
大型案件のなかには、デベロッパーと共同事業で行うケースもある。これまでもいくつか実績があるものの、今後もデベロッパーと組む案件が多くなっていくものと見られる。これらは収益の下支え効果をもたらしそうだ。
顧客となる取引先も増加した。2020年5月期は31社だったのが、2021年5月期には三菱地所レジデンス(株)、野村不動産(株)が加わり33社に増加している。このほか、具体的な取引先としては、(株)アーネストワン、東京建物<8804>、日本土地建物(株)、日鉄興和不動産(株)、三井不動産レジデンシャル(株)、阪急阪神不動産(株)、東急不動産(株)、(株)中央住宅といった大手の著名デベロッパーが多く名を連ねている。今後も取引先が拡大するとともに、ビジネスの幅も広がっていきそうだ。
再開発事業の開花によって収益は上昇基調に
2. 再開発事業
さらに同社は、再開発事業に注力している。この分野では現在、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に事業施行者として参画している。ここでは、地上27階建の施設を建設するなど、同社にとって大きな案件だ。2020年に着工し、当面の収益源として貢献する。このプロジェクトで高層建築の実績を構築でき、今後のタワーマンションへの展開に強力な武器となることも見逃せない。このプロジェクトについては、2023年10月の工事完了を見込んでいる。
さらに、再開発に関しては、横浜市緑区においても大規模事業に参画、デベロッパーとジョイントで計画を具現化していく。そのほかにも、青森県弘前市でも既に用地を取得するとともに、準備組合に加盟するなど今後が楽しみな案件になりそうだ。将来的にこれらの再開発ビジネスが次々に開花すれば、同社の収益は上昇基調を確実なものにすると思われる。
他方、一般の施工案件でも、業界で大型工事と言われる10,000百万円以上の案件を手掛けていることも見逃せない。千葉市中央区の案件は、JR千葉駅至近にある案件で、同社の造注案件としては最大規模である。工期は本体だけでも3年間に及ぶため、当面の安定的な収益源になる。
コロナ禍における新しい生活様式へも対応
3. コロナ禍への対応
同社でもコロナ禍の影響は少なからずあった。2020年の緊急事態宣言下では、モデルルームでの商談ができない状況に陥るなど、販売に大きく影響した。対策としてはバーチャルリアリティーを駆使した商談が考えられるが、販売会社が対応していない。というのも、マンション購入というのは、一般消費者にとって「一生に一度の買い物」である。それをオンライン取引で完結するのはどうにも無理が生じる。現地でモデルルームを観る、実際に物件を直接チェックして初めて、購入に踏み切るものであろう。そうした意味において、コロナ禍の終息が1日も早く待たれるところだ。
一方で、コロナ禍による新しい生活様式は、マンション販売動向にも微妙な影響を及ぼしている。マンション販売は、都心部の高価格帯物件と郊外のリーズナブルな物件の二極化が進んでいるが、昨今ではテレワーク化の推進によって、郊外の案件に住居ニーズが移りつつあるという。それに合わせ、同社も郊外の案件に目を向けて実際に商談を進めており、今後も注力していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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1. 事業環境と見通し
マンション開発において「土地を制する者がすべてを制する」(中村利秋(なかむらとしあき)代表取締役社長)と言われるなかで、ファーストコーポレーション<1430>は本格的に土地開発の専任部隊を置き、良質な土地を確保している。そこにデベロッパーと協調しながら良い建物を建てていく──そうした形で事業を進めているが、現実に造注方式の大元となる建設用地の確保が着実に進んでいる。
直近の収益動向は、コロナ禍による一時的な悪化要因のほか、用地確保が厳しかったことが伸び率の鈍化につながった。ホテルとの競争激化が沈静化しながらも、なお、地権者は強気な状況にあり、用地取得についての環境は引き続き楽観視できない。
ただ、土地取引に関しては、かつてがそうだったように、潮目が変わるとがらりと様相が変化する特徴がある。用地確保がスムーズになるとともに、造注方式による案件のさらなる増加が見込めるようになれば、収益が再び上向くことを期待できるようになり、現在はその兆候が現れている状況だ。今後も、良質な土地をいかに手当てできるかが課題となる。
また、将来的な成長を考えるうえで注目できるのが、健康な高齢者向けのマンション、いわゆるアクティブシニア向けのマンションだ。高齢者向けのマンションというと、多くの業者が介護付きのサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)で展開しており、アクティブシニア向けを手掛ける業者は少ないが、同社はこの分野で先行している。
アクティブシニア向けは、そもそも通勤仕様ではないため、駅前立地でなくて良い。さらに、温泉やジムなど付帯設備の建設で単価がアップできるなど、利益面でも期待できる案件だ。2021年5月期に売却して収益に貢献した大型案件である東京都八王子市のプロジェクトも、アクティブシニア層を主要ターゲットとしたマンションとして共同事業で行った案件だ。
大型案件のなかには、デベロッパーと共同事業で行うケースもある。これまでもいくつか実績があるものの、今後もデベロッパーと組む案件が多くなっていくものと見られる。これらは収益の下支え効果をもたらしそうだ。
顧客となる取引先も増加した。2020年5月期は31社だったのが、2021年5月期には三菱地所レジデンス(株)、野村不動産(株)が加わり33社に増加している。このほか、具体的な取引先としては、(株)アーネストワン、東京建物<8804>、日本土地建物(株)、日鉄興和不動産(株)、三井不動産レジデンシャル(株)、阪急阪神不動産(株)、東急不動産(株)、(株)中央住宅といった大手の著名デベロッパーが多く名を連ねている。今後も取引先が拡大するとともに、ビジネスの幅も広がっていきそうだ。
再開発事業の開花によって収益は上昇基調に
2. 再開発事業
さらに同社は、再開発事業に注力している。この分野では現在、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に事業施行者として参画している。ここでは、地上27階建の施設を建設するなど、同社にとって大きな案件だ。2020年に着工し、当面の収益源として貢献する。このプロジェクトで高層建築の実績を構築でき、今後のタワーマンションへの展開に強力な武器となることも見逃せない。このプロジェクトについては、2023年10月の工事完了を見込んでいる。
さらに、再開発に関しては、横浜市緑区においても大規模事業に参画、デベロッパーとジョイントで計画を具現化していく。そのほかにも、青森県弘前市でも既に用地を取得するとともに、準備組合に加盟するなど今後が楽しみな案件になりそうだ。将来的にこれらの再開発ビジネスが次々に開花すれば、同社の収益は上昇基調を確実なものにすると思われる。
他方、一般の施工案件でも、業界で大型工事と言われる10,000百万円以上の案件を手掛けていることも見逃せない。千葉市中央区の案件は、JR千葉駅至近にある案件で、同社の造注案件としては最大規模である。工期は本体だけでも3年間に及ぶため、当面の安定的な収益源になる。
コロナ禍における新しい生活様式へも対応
3. コロナ禍への対応
同社でもコロナ禍の影響は少なからずあった。2020年の緊急事態宣言下では、モデルルームでの商談ができない状況に陥るなど、販売に大きく影響した。対策としてはバーチャルリアリティーを駆使した商談が考えられるが、販売会社が対応していない。というのも、マンション購入というのは、一般消費者にとって「一生に一度の買い物」である。それをオンライン取引で完結するのはどうにも無理が生じる。現地でモデルルームを観る、実際に物件を直接チェックして初めて、購入に踏み切るものであろう。そうした意味において、コロナ禍の終息が1日も早く待たれるところだ。
一方で、コロナ禍による新しい生活様式は、マンション販売動向にも微妙な影響を及ぼしている。マンション販売は、都心部の高価格帯物件と郊外のリーズナブルな物件の二極化が進んでいるが、昨今ではテレワーク化の推進によって、郊外の案件に住居ニーズが移りつつあるという。それに合わせ、同社も郊外の案件に目を向けて実際に商談を進めており、今後も注力していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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