平和RE Research Memo(5):「着実な成長」と「持続可能な利益」により、投資口の流動性向上を推進
[21/08/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
1. 新中長期目標「NEXT VISION」
平和不動産リート投資法人<8966>は2009年9月に平和不動産が単独スポンサーとなり、2019年11月期で10周年を迎えた。その間、2011年5月期までの「成長基盤の再構築」、2011年11月期から2013年5月期までの「再成長軌道への回帰」を経て、2013年11月期からは「安定成長軌道」の段階に入った。すなわち、安定した資金調達による本格的な成長フェーズであり、着実な外部成長及び内部成長によって分配金向上を目指してきた。この結果、2009年11月期の物件数46件、資産規模921億円、分配金734円/口から、2021年5月期には物件数109件、資産規模1,841億円、分配金2,800円/口へと大きな成長を遂げており、2020年1月に掲げた前中期目標の分配金2,750円/口を前倒しで達成した。
そこで同REITでは、「NEXT VISION」とする新中長期目標を発表した。具体的には、今後5〜10年で目指す姿を「投資口の流動性向上を推進するステージ」と位置付け、「Steady Growth & Sustainable Profit(着実な成長と持続可能な利益)」をスローガンに、従来からの分配金と資産規模に加えて、格付とESG(環境・社会・ガバナンス)を目標に加えた。数値目標としては、分配金3,300円/口(2021年5月期比500円増)、資産規模3,000億円(同1,159億円増)、AA格への格上げ、再生エネルギー電力の導入割合100%の達成を目指す。なお、分配金向上については、外部成長で+209円/口、内部成長で+170円/口、費用削減で+26円/口の成長余地を見込むが、潤沢な内部留保を活用することで+5,200円/口の支払余地があることが同REIT大きな強みと言えよう。
2. 外部成長戦略
外部成長戦略で分配金向上+209円/口を達成するために、「着実かつ健全な外部成長」「継続的な入替戦略の実施」「厳選された用途・エリア」を運用方針とする。「着実かつ健全な外部成長」としては、過熱したマーケットに振り回されずにポートフォリオの質と収益性の向上に資する物件に厳選投資し、スポンサーと協働することで開発など多様な手法による取得機会の拡大を図ることに加え、フリーキャッシュ及び借入余力を活用した機動的な物件取得を行う。具体的には、資産入替を含めて年間物件取得金額150~200億円を目指す。「継続的な入替戦略の実施」としては、低収益物件、小規模レジデンスを優良なオフィスやレジデンスに入れ替えするなど、引き続きポートフォリオの収益力改善を図る。「厳選された用途・エリア」としては、優良なオフィス及びレジデンス双方への厳選投資や、東京都区部をメインエリアとしながらもスポンサー・サポートが得られる地方大都市にも厳選投資する方針だ。
3. 内部成長戦略
内部成長戦略で分配金向上+170円/口を達成するために、「高稼働率の維持・向上」「賃料増額に向けた取り組み」「戦略的な資本投下」「付帯収入増加と費用削減」を運用方針とする。「高稼働率の維持・向上」としては、スポンサーやPM(プロパティ・マネジメント)会社と連携し適切かつタイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取り込み、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)対応施策によるテナント退去の防止、ダウンタイム(空室期間)の短縮などを目指す。「賃料増額に向けた取り組み」としては、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額や是正を推進する。「戦略的な資本投下」としては、物件競争力、収益性及びCS向上につながるバリューアップ工事を計画的に実施する計画だ。オフィス及びレジデンスともに、なお、2021年5月期の稼働率はコロナ禍前の水準に回復しており、コロナ禍の影響は軽微にとどまっていることを示している。
4. 財務戦略
財務戦略で分配金向上+26円/口を達成するために、「財務基盤の強化」「LTVのコントロール」「資金調達手段の多様化」「金融コストの低減」を運用方針とする。「財務基盤の強化」としては、有利子負債の長期化、固定化及び満期の分散化を進めることで市場金利変動の影響を受けにくい財務基盤を構築することに加え、AA格への格上げによる信用力改善と長期安定投資家の拡大を目指す。なお、格付については、2021年11月期の期初にA+(ポジティブ)となったことから将来のAA到達が見えてきた。格上げにより、外国人投資家、日本銀行、地域金融機関など幅広い投資家層への訴求力の向上、投資口の流動性改善、投資口価格への好影響が期待される。
5. サステナビリティ
サステナビリティについては、Environment(環境活動)への取り組みとして、再生エネルギー電力の導入割合100%を「NEXT VISION」の1つに加えた。具体的には、2021年11月までに、保有するすべての物件で使用する電力を再生可能エネルギー由来に切り替えることを目指す。これに加え、地域社会との共働、ガバナンス強化、ESGレポートの発行と開示情報の拡充にも取り組む。なお、2020年に実施されたGRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク:Global Real Estate Sustainability Benchmark)リアルエステイト評価において、同REITは4年連続で「Green Star」の評価を取得している。これらのサステナビリティへの積極的な取り組みは、世界的なESG投資の拡大に対応する動きと考えられる。
弊社では、同REITが特化する東京都区部をメインとする市場は投資機会が豊富にあることから、今後も同REITの潜在的な成長力は高いと評価する。東京都区部では、主なテナント層である中小規模の事業所数が多く、オフィスビルに対して引き続き豊富な需要がある。また、東京都では人口増加傾向が続いており、居住用マンションについても堅調な需要が見込まれている。また、強力なスポンサー・サポートの活用によって、着実な成長戦略の推進が可能と考える。すなわち、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件等の情報ソースを活用したり(外部成長サポート)、情報の共有化によって稼働率の向上を図ったり(内部成長サポート)、財務方針、資金調達等のかかる支援や指導を仰ぐこと(財務サポート)ができることが、同REITの大きな強みと言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 新中長期目標「NEXT VISION」
平和不動産リート投資法人<8966>は2009年9月に平和不動産が単独スポンサーとなり、2019年11月期で10周年を迎えた。その間、2011年5月期までの「成長基盤の再構築」、2011年11月期から2013年5月期までの「再成長軌道への回帰」を経て、2013年11月期からは「安定成長軌道」の段階に入った。すなわち、安定した資金調達による本格的な成長フェーズであり、着実な外部成長及び内部成長によって分配金向上を目指してきた。この結果、2009年11月期の物件数46件、資産規模921億円、分配金734円/口から、2021年5月期には物件数109件、資産規模1,841億円、分配金2,800円/口へと大きな成長を遂げており、2020年1月に掲げた前中期目標の分配金2,750円/口を前倒しで達成した。
そこで同REITでは、「NEXT VISION」とする新中長期目標を発表した。具体的には、今後5〜10年で目指す姿を「投資口の流動性向上を推進するステージ」と位置付け、「Steady Growth & Sustainable Profit(着実な成長と持続可能な利益)」をスローガンに、従来からの分配金と資産規模に加えて、格付とESG(環境・社会・ガバナンス)を目標に加えた。数値目標としては、分配金3,300円/口(2021年5月期比500円増)、資産規模3,000億円(同1,159億円増)、AA格への格上げ、再生エネルギー電力の導入割合100%の達成を目指す。なお、分配金向上については、外部成長で+209円/口、内部成長で+170円/口、費用削減で+26円/口の成長余地を見込むが、潤沢な内部留保を活用することで+5,200円/口の支払余地があることが同REIT大きな強みと言えよう。
2. 外部成長戦略
外部成長戦略で分配金向上+209円/口を達成するために、「着実かつ健全な外部成長」「継続的な入替戦略の実施」「厳選された用途・エリア」を運用方針とする。「着実かつ健全な外部成長」としては、過熱したマーケットに振り回されずにポートフォリオの質と収益性の向上に資する物件に厳選投資し、スポンサーと協働することで開発など多様な手法による取得機会の拡大を図ることに加え、フリーキャッシュ及び借入余力を活用した機動的な物件取得を行う。具体的には、資産入替を含めて年間物件取得金額150~200億円を目指す。「継続的な入替戦略の実施」としては、低収益物件、小規模レジデンスを優良なオフィスやレジデンスに入れ替えするなど、引き続きポートフォリオの収益力改善を図る。「厳選された用途・エリア」としては、優良なオフィス及びレジデンス双方への厳選投資や、東京都区部をメインエリアとしながらもスポンサー・サポートが得られる地方大都市にも厳選投資する方針だ。
3. 内部成長戦略
内部成長戦略で分配金向上+170円/口を達成するために、「高稼働率の維持・向上」「賃料増額に向けた取り組み」「戦略的な資本投下」「付帯収入増加と費用削減」を運用方針とする。「高稼働率の維持・向上」としては、スポンサーやPM(プロパティ・マネジメント)会社と連携し適切かつタイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取り込み、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)対応施策によるテナント退去の防止、ダウンタイム(空室期間)の短縮などを目指す。「賃料増額に向けた取り組み」としては、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額や是正を推進する。「戦略的な資本投下」としては、物件競争力、収益性及びCS向上につながるバリューアップ工事を計画的に実施する計画だ。オフィス及びレジデンスともに、なお、2021年5月期の稼働率はコロナ禍前の水準に回復しており、コロナ禍の影響は軽微にとどまっていることを示している。
4. 財務戦略
財務戦略で分配金向上+26円/口を達成するために、「財務基盤の強化」「LTVのコントロール」「資金調達手段の多様化」「金融コストの低減」を運用方針とする。「財務基盤の強化」としては、有利子負債の長期化、固定化及び満期の分散化を進めることで市場金利変動の影響を受けにくい財務基盤を構築することに加え、AA格への格上げによる信用力改善と長期安定投資家の拡大を目指す。なお、格付については、2021年11月期の期初にA+(ポジティブ)となったことから将来のAA到達が見えてきた。格上げにより、外国人投資家、日本銀行、地域金融機関など幅広い投資家層への訴求力の向上、投資口の流動性改善、投資口価格への好影響が期待される。
5. サステナビリティ
サステナビリティについては、Environment(環境活動)への取り組みとして、再生エネルギー電力の導入割合100%を「NEXT VISION」の1つに加えた。具体的には、2021年11月までに、保有するすべての物件で使用する電力を再生可能エネルギー由来に切り替えることを目指す。これに加え、地域社会との共働、ガバナンス強化、ESGレポートの発行と開示情報の拡充にも取り組む。なお、2020年に実施されたGRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク:Global Real Estate Sustainability Benchmark)リアルエステイト評価において、同REITは4年連続で「Green Star」の評価を取得している。これらのサステナビリティへの積極的な取り組みは、世界的なESG投資の拡大に対応する動きと考えられる。
弊社では、同REITが特化する東京都区部をメインとする市場は投資機会が豊富にあることから、今後も同REITの潜在的な成長力は高いと評価する。東京都区部では、主なテナント層である中小規模の事業所数が多く、オフィスビルに対して引き続き豊富な需要がある。また、東京都では人口増加傾向が続いており、居住用マンションについても堅調な需要が見込まれている。また、強力なスポンサー・サポートの活用によって、着実な成長戦略の推進が可能と考える。すなわち、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件等の情報ソースを活用したり(外部成長サポート)、情報の共有化によって稼働率の向上を図ったり(内部成長サポート)、財務方針、資金調達等のかかる支援や指導を仰ぐこと(財務サポート)ができることが、同REITの大きな強みと言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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